第十三話 アンクのバイト先とアニス信者と歩く都市伝説 |
アニスサイド
今日ははやての診察の日……何だけど……。
「あーうー……ごめんねはやてちゃん、俺の背が小さすぎだから、車いす押せなくて……」
「あはは!そんな事気にしてへんで、アニス君。その心遣いだけで嬉しいで」
「……はぅ……」
「あぁもうかわぇぇな!!大丈夫やて、アニス君達が来る前は、自分一人で行って帰って来てたんやで?」
そう言われると……少し空気が重くなるよはやて……。
それにしても、アンク何処行っちゃったんだろう?朝起きたら既にいなかったし……。
「ねぇはやてちゃん。アンク何処に行ったか知ってる?」
「あれ?アンクさんならバイトに行ったけど……」
「……何それ初耳……」
アンクめ!俺に内緒でバイトを入れたんか!せっかくの休日、俺が朝から活動できる限られた時間、今日はアンクとイチャコラしてやろうかと思ってたのにぃ!!
とは思ってないですよ?流石に、俺にいバイトが決まった云々の所だけ本当だけど、後は嘘だよ?
だって、俺が無理言って働いてくれてるんだし、仕方ないよ。
でも、言ってくれよぉ〜。気になるじゃんか〜。
「はやてちゃん、アンクが何のバイト始めたか知ってる?」
「いや、知らへんな〜。何も言ってへんかったし」
アンクぇ……お願いだから言わないってのは止めてください……。
「良し、探してみよう」
アンクの魔力を辿れば、何とか辿り着けると思うんだ。
でも……はやてがな〜……。
俺は考え事をしてはやてをチラッと見、また考え事をしては、チラッとはやてを見……それを数度繰り返す。
「あぁもうかわぇぇなぁ!!そう何度もチラチラ見んといて!探して来れば良いやん。アニス君の事や、魔法かなんかで探ってみるんやろ?」
「あはは、まぁ、当たらずも遠からずだね。ただアンクの魔力を辿ってみようかなって考えてた所」
「行ってきてえぇよ?ウチは気にせぇへんから」
「……もぅ、何て言うか……はやてちゃん大好きだぁぁぁぁ!」
「ウチもやぁぁぁぁぁ!」
テンションたっか。
あ、俺もか。気にしない気にしない。さて、行きますか。
「ごめんねはやてちゃん、今度俺が付き添うから!それじゃっ!」
俺はダッシュで玄関に向かおうとしたら、はやてちゃんに手を引っ張られて止められる。
「キャッ!?……は、はやてちゃん……肘抜ける……痛い……」
「あ、すまへんな。でもアニス君、その恰好は駄目やって、アンクさんも言ってたやん。スパッツはえぇ、だけどその上!ワイシャツは脱ぎぃ!そしてちゃんと服着ぃ!」
「あ、そうだった。まだ寝間着のままだったっけ。えへへ、うっかりうっかり」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「さっ!行くか!」
「ほな、行ってらっしゃい」
「うん!」
あの後俺は速効で着替え、アンクを探すミッションに向かう。
え?今日の服装?ふっふーん、良くぞ聞いてくれた!今日の服装は上が普通のパーカー、下はスパッツにニーソックス!そこ!ロウきゅーぶとか言わない!!そして女装じゃねーよ?うん、違うから。
「あぁ、アニス君アニス君……ハァハァ……生足もえぇけど……あのチラッと除く太もももえぇ……」
後ろに居る|変態《はやて》は気にしない。鼻血出し過ぎて倒れないでね?
「ふんふふーん♪」
うん、やっぱどうどうと青空の下を歩るくのは、気分が清々しくなって気持ちいいな〜。
学校、通ってみようかな?でもでも、アンクやはやてに迷惑や負担が掛かっちゃうし、諦めよう。
「……むぃ?」
目の前にぬこはけーん。さて、何をしようか?
先ずお腹をもふもふする……それから……っと、いかんいかん。今はアンクだ。
俺はぬこをスルーして歩き出す。
飼いたいな〜、ぬこ飼いたいな〜。にゃーにゃー。
「さて、真面目に探そう」
俺は少し集中し、アンクの魔力を探る……。
……うん、こっからもう少し行った所に魔力を感じるな……でも、反応が二つなのはな何故?
まさかなのはの?はははー、まっさかー、アンクが喫茶翠屋でバイト何て、ありえないでしょ〜。
そう思っていた時期が、俺にもありました……。
ドンっ!
「……あはは……」
着きましたのは喫茶翠屋……その中にアンクの魔力が感じられる……。
「あー、あの子可愛い」
「本当だー、お母さんのお使いかな?」
道行くお姉さん方、これでも男なんだぜ?こんなナリして、男なんだぜ?
まぁ、冗談はさて置き、中に入らん事には始まらない。
カランカラ〜ン♪
相変わらず、良い香りがスッと鼻に入ってくる。
良いねぇ、やっぱ調和だよ調和。完全調和(パーフェクトハーモニー)!そう、それだ!
「いらっしy……」
「……ほぅ……」
そこには、いつも見慣れた奴が、見慣れない格好で、営業スマイルを浮かべていたアンクが居た。
が、俺だと分かるや否や、顔が引きつる。
「……アンク……」
「……何だ……」
「……グッジョブ!!」
「うるせぇ!だからお前達には教えたくなかったんだ!特にアニス!!て言うかスパッツ脱げっていっつも言ってんだろ!!」
「アンクのウェイター姿!いただきました!!だからスパッツは俺のジャスティス!!」
「帰れぇ!!そしてズボンを穿け!女みたいな格好してんじゃねぇ!」
いやはや、まさかアンクが喫茶翠屋でウェイターとしてバイトするとか……。
あぁ、アンクはどんな姿させてもカッコ良いなぁ……。て言うか、心外、これは女装じゃないんだよ?
「アンク君、どうしたの?そんな大きな声出して」
「あ……何でも……ない……」
「?あらー、アニス君じゃない。こんにちは」
「桃子さん、こんにちは!」
「今日はどうしたの?またお菓子買いに来てくれたの?」
「ううん!今日はアンクをからかいに来たの!」
「てめぇ!やっぱそれが目的か!」
「だって、アンクバイト入れたのに教えてくれないんだもん。だから探しちゃった♪テヘぺロ☆」
「えぇい!帰れ!八神はどうした!?お前と病院行くとか言ってたぞ!?」
「もちろんはやてちゃんには無理を言っちゃいました☆アニスたんったら強引☆」
「八神ぃぃぃぃぃ!!」
「ア、アンク君、落ち着きましょう!?アニス君も煽らないの!」
「ハァ……ハァ……すいません……」
「ごめんなさい」
さて、若干俺も歯止めがきか無くなった気があったが、そんな事はなかったぜ!
「それで、アニス君とアンク君の関係は?」
「結婚を前提に付き合ってるんです」
「馬鹿か!」
ドスッ!
「っ!……っつ〜、アンク〜、冗談なんだから〜……一々殴らないでよ〜……」
「ふんっ。ただの兄弟だ……です」
「ぷっ、アンクったら、敬語下手だね」
「うるせぇ」
「兄弟にしては……似てないわねぇ」
「まぁ、気にするな……です」
嘘だから仕方ないんだよ桃子さん……。
でも、アンク金髪だから案外外人に見えるし……大丈夫かな?
「さて、お話はこれ位にして!アンク君、仕事仕事!」
「了解だ。それじゃ、俺は戻る」
「分かったよ〜」
そう言うと、アンクは仕事に戻って行った……。
桃子さん?何で貴女は俺の隣に居るのですか?貴女も仕事あるんじゃないんですか?
「それにしても、アニス君は相変わらず可愛いわねぇ」
「あはは、褒め言葉として受け取っておきますよ」
「あ、そうだ。なのは呼んでみましょうか。アニス君も久々にお話ししたいんじゃない?」
桃子さん、それは要らんお節介なのですよ。
ってあぁ、なのはを呼ばないで!いやだ!止めて!
「はーい、どうしたのお母s……」
「や、やっほー……」
なのはは何故かいきなり無言になり、数秒後、つかつかと俺の所に来る。
しかも無言でだ……。
「アニス君……」
「な……何……かな?」
「……お持ち帰りはしてますか?」
「当店のアニスは、テイクアウト禁止です☆」
「でも持ち帰るの!」
「いやぁ!止めて!?引っ張らないで!?桃子さん!貴女はあらあらみたいな顔で見ないで助けてください!!」
「もうアニス君可愛い!!そうだ!お母さん!ウェイトレスの服って確かあったよね?あ、でもサイズ無いんだっけ……」
「ふふふ、なのは、その点は抜かりないわ!ちゃんとアニス君用のウェイトレス服を用意しているわ!」
「ちょっ!いつ俺のサイズ測ったし!?」
「アニス君。身長は95p、体重は19キロ。それ位で大体は出来るわ!」
「俺ですら知らない身長と体重を知ってる……だと……つうか俺100pも無かったんだ……orz」
せめて100pは欲しかったな……もう伸びないだろうね。八歳辺りからもう成長止まって来てるし……神様、あんた極端だよ。
「さぁ、着替えるの!」
「……有無を言わさぬその言動……」
流石魔王となりうる器……ははは、君の願いは断れないです。
「はぁ……とうとう女装か……」
もう、何も思うまい……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「うわー、アニス君可愛い〜」
「あはは、ありがとう……」
着て来たお……スパッツが無かったら即死していた。
ははは、サンキュースパッツ!!
「うぉぉー!可愛いぞぉ!」
「あれが男……だと……」
「違う!第三の性別!アニスだ!」
「うぉー!アニスたーん!俺だ!けっk「言わせねぇよ!?」」
「……何ぞこれ……」
何か、いつの間にか翠屋がこんな事になってるお……。
つうか何で俺の名前知ってるし……。
「あれ?アニス君知らないの?」
「へっ?何が?」
「アニス君、海鳴市では都市伝説みたいになってるんだよ?九歳とは思えない大人びた口調、それに見合わない身長に、凄く可愛い。なのに男の子!って感じでね」
「なん……だと……」
この俺が、都市伝説化……だと。
某とあるの、超能力が効かない男、脱ぎ女みたいに……歩く都市伝説化しただと……。
「……てめぇら帰れ!」
「アニスたーん!」
「男勝り……ハァハァ……いや、男か」
「もう男でも女でもなんでも良い!けっk「だから言わせねぇよ!?」」
「……はぁ……どないせいッちゅうねん……」
「………」パシャッパシャッ!
何かバカテスのムッツリーニみたいな奴が、鼻血を出しながら写真撮ってるんだが……。
「なっ……あいつは!?」
「あぁ、間違いない……奴だ……」
「ゲンドウ乙」
「アニスたんに並んぶ、もう一人の歩く都市伝説……」
「……|寡黙なる性識者《ムッツリーニ》」
「……………」ブンブンブンブン!
「分かりやす過ぎなのに!頑なに否定してるぞ!?」
「流石はムッツリーニ!」
お前、この世界でもそう呼ばれてるんだな……バカテスに帰れ。
「ね、ねぇ、君名前は?」
「………|土夜孝太《つちやこうた》……」
漢字が違うだけじゃねぇか!!
ありえねぇ……この世界、何でもありか……。
「よ、よろしく、土夜君」
「……できたら孝太と……」ブシャァァァァ!
「こ、孝太君……?」
「……悔い……なし……」ガクッ
「ムッツリィィィィニィィィィィ!!」
「な、なんて事だ……スカウターが壊れた……だと……」
「……ス、スカートの中……が……」ブッシャァァァァァァァ!!
「あぁ!?倒れたことで!傷口が悪化した!?ムッツリーニ!何色だ!?教えてくれぇぇぇぇぇ!!」
「……ス……スパッツ……ムチムチ……」ガクッ……
「ムッツリィィィィィィィィィニィィィィィィィィィィィィ!!」
おいそこの変態共……いい加減にしろや……。
もう収集つかんぞこれ……まぁ、俺もやり過ぎた感は……無いな。今回、俺は何もしてないし……。
その時。
「ホラっ」
パサッ……。
「……アンク?」
「着てろ……お前のその恰好見られんの、何か癪に障る」
アンクは何処からか大き目な上の服を持ってきて、俺に掛ける。
……えへへ……アンクは優しいな、まだバイト中なのに。
「……えへへ、アンクありがとう」
「……ふん……」
鼻を鳴らして、アンクはまたバイトに戻る……。
「アニスたんが……ハニカンだ……だと……」
「奴は誰だ!?」
「はっ!数日前からこの喫茶翠屋でバイトをしてる、アンクと言う男です!女性客に人気があるイケメンでございます!」
「異端会議だ!」
「戦争だ!!」
「アンク×アニス……ありだと思います……」
今度は日傘を差した子が現れたぞおい……今度は西園さんかコノヤロー。
髪の色、若干被ってるじゃねぇかコノヤロー。
「……アニスさんは、お好きですか?」
「……何が?」
「……男と男の、濡れ場ですよ」
「……あはは、ごめん、分からないよ」
「……そうですか……では、また今度、何処かでお会いしましょう。貴方は完全に、こっち側ですから」
そっち側ってどういう事さ!?怖い!この子怖い!
ヤバい、やっぱりこの子、あの某小さな破壊者に出てくるあの子だよ!
「あ、名前聞いても……良いかな?」
「……|仁紫園澪《にしぞのみお》です」
この子も漢字が違うだけか!?本当に何でもありだな、この世界……。
まさか、バカテス、リトバスと来ましたか……。
何だか、今日は疲れたよ……。
「にゃはは、お疲れ様アニス君」
「張本人の癖に……ちゃっかり自分は安全地帯に居るなんて……酷いや、なのはちゃん」
「にゃはは、ごめんごめん。でも、まさか宣伝して数分で、あんなになるとは思わなかったんだよ」
「……宣伝したの?」
「うん!」
「……頭痛くなってきちゃった……取り敢えず、なのはちゃんは極刑ね」
「えぇ!?」
何となく、なのはちゃんは俺と同じ苦しみを味わってみればいいよ。さっきの苦労が分かるよ?
いきなりたん付で呼ばれるわ、写真は撮られるわ、挙句の果てには求婚だよ?
もぅ、俺は疲れた……、帰って寝る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
取り敢えず、あれから着替えて帰りました。
あ、ちゃっかりムッツリーニと仁紫園さんとは仲良くなったよ?一応メルアド交換しました。
「あぁ、疲れた〜」
「お帰りアニス君。それで、何でそんなに疲れとるん?」
「いやぁ、ちょっとね。アンクのバイト先に着いたんだけど……そこで着せ替え人形みたいにされちゃって……」
「……ほぅ、それは興味があるなぁ……」
「興味持たないでよ。それで、アンクは喫茶翠屋でバイトしてたんだ」
「……マジかいな……ウェイターとして?」
「うん、そうだよ」
「はーっ、さぞカッコえぇんやろうな〜」
「うん!それはもうカッコ良かったよ!」
「うわっ、惚気や惚気」
「もぅ、からかわないでよ〜」
「……ぷっ、あはははは!冗談や冗談!さっ、夕飯の支度しよか」
「そうだね。俺もやる!」
「オーケーや」
そんなこんなで、今日はアンクが帰ってくるまではやてと一緒に料理を作りました。
いやぁ、もう何か……女装って怖いねぇ。
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