唯、IS学園に降臨する |
一夏誘拐事件から数年が過ぎた。
その間いろいろあった。
そう、いろいろ。
どこかの国
「はぁ!?どういうことだよそれ!?」
唯は任務を終え帰ってくるなり次の依頼に目を通すと信じられないことが書いてあった。
その依頼は・・。
「なんでIS学園に入学しなきゃいけないんだよ!しかも束と愛琉も一緒だし!」
唯がIS学園に入学、愛琉とともに束、一夏たちの護衛というもの。
しかも唯が男でありながらISを起動できるという声明も出した後だった。
「ゆいにゃんも学校っていうものを知らなきゃいけないでしょ?それに、いっくんと箒ちゃんたちも守んなきゃいけないし。それに・・。」
束はいつものふざけた表情から真剣な表情に変わる。
「ゆいにゃんを実験したやつらもまだ全員見つかってないんでしょ?もしやつらがコソ泥ユーレイと組んだりしたら・・。」
「・・たしかにそうだな。IS学園にいって些細な情報もほしい。あそこは一応最先端技術の固まりだからな。」
こうなった以上、束に何を言っても無駄だと保護されてから一緒に住んでわかった。
千冬の苦労が垣間見えた瞬間でもあった。
「はぁ〜。わかった。で、愛琉の立ち位置は?」
唯は青を基調とした服を着こなした少女に眼を向ける。
その少女の雰囲気は年不相応で大人っぽく、スタイルも抜群にいい。
「いるちゃんは生徒さんで束さんは講師。」
「後は政府に交渉材料に提出するISとかか。・・汎用性の利くISの提出とビーム兵器の開発理論でいいだろ。あれは俺にしか作れない代物だから。」
「それでいいんじゃないかしら?」
愛琉はフフと笑い唯は設計図を書き始める。
「よし、それじゃはじめるか。」
そういって唯はキーボードで次々データを打ち込んでいく。
「初心者向けでそれなりに機動力があって応用の利きそうなもの・・。やっぱりM1アストレイでいこう。アストレイ専用のビームライフルとビームサーベル・・。専用の小型ジェネレーターを設置して解決できる・・。ビーム兵器以外の武器のほうは打鉄とラファールで流用できるようにしておこう。後はビーム開発の理論・・。」
思考の渦に入り込み真剣な表情で画面を見る唯を見て束と愛琉は顔を赤く染めていた。
数時間後・・。
「・・よし。できた。後はデータを政府に送れば終わりだな。束、いつ行けばいいんだ?」
「今から!」
「「・・は?」」
束の言葉に唯と愛琉が間抜けな声を上げる。
と同時に地響きが起こる。
「んじゃいっくよー!」
「うわわ・・ってロケットかよ!これ!」
なんと簡易研究所が飛び上がったのだ。
IS学園
一夏サイド
はじめまして、織斑一夏です。
あの誘拐事件後、千冬姉から弟である唯が生きていたことを知り涙しました。
私はあの時の悔しさをばねにISの勉強に励み日本代表候補生に上り詰めることができました。
最近幼馴染の箒の姉であり私の専用IS・白式の開発者であり、ISの生みの親でもある束さんが声明を発表しました。
なんと、唯が男の子でありながらISを起動できるというものでした。
どうして唯が・・?
そんなことを考えているとクラス代表を決める選挙が始まりました。
一夏 SIDEOUT
千冬がクラス代表を決めるため声を上げる。
「誰か立候補はいないか?自薦他薦、明日来る予定の転校生でもかまわんぞ。」
「私は織斑さんを推薦しま〜す!」
「わたしも〜。」
「私は転校生が来てからにします。」
「ならば織斑、転校生。この2人で締め切るぞ。」
千冬が締めようとしたとき、金髪ロールの女子・セシリアが口を開く。
「待ってください!弱い者を代表など、頭が悪いとしか考えられませんわ。大方転入生もそこのメス猿と同じように頭が悪いのでしょう!」
一夏は感じた。
悪寒がすると。
主に頭の後ろから。
ゆっくりと振り向くと、千冬が身内にしか分からない怒りの表情をしていた。
「オルコット、そう言うのなら転入生を倒せるんだな?」
千冬が静かに口を開いた。
その言葉にセシリアは、少したじろぐが「ええ!!もちろんですわ!!」と言った。
千冬は口を釣り上げた。
「そうか。・・ならお前はそれまでというわけだな。」
「どういう事です?」
セシリアは千冬の言葉を理解する事はできなかった。
全員そうだ。
その言葉に含まれる意味など、千冬にしか知るよしはない。
「なに、転入生と臨時職員の待遇を少しある物達と照らし合わせただけさ・・。」
つまり、千冬は転入生達を知っているという事だ。
(どういうことなのかな?)
全員が不思議そうな顔をする中、千冬はセシリアを睨む。
「お前のISは死んだ。お前はあいつに瞬間的に負け本気を出せぬまま地に叩き落とされ、ISは完全破壊されると言ったのだ。それも赤子の手を捻るかのような感じで、な。」
その言葉に教室にいる物達が唖然とした。
その声には、怒気が含まれていた。
(こんな姉さん、久しぶりに見た・・。)
一夏は久しぶりに見る、姉に恐怖した。
唯一セシリアだけは、意味を正しく理解し反論した。
「そんな訳あり得ませんわ!!」
「なるほどな。それじゃあ、今から試してみるか?」
「いいですわ、どうせ雑魚なのでしょう!?・・?」
千冬は口を開こうとしたとき、言葉は遮られた。
セシリアがその言葉に、反射的に答えてしまった。
廊下からの声に。
「弱い奴ほどよく吠えるんだよね〜。」
「まぁ、今の時代だとそう思っても仕方がない・・。だが相手の力量もわからずに吠えるのは二流・・いや、三流以下だな。」
「本当ね。その過信が身を滅ぼすことになるのに。」
そこには絶賛指名手配中の天才科学者、話題の男子生徒、すごくスタイルのいい女子生徒が半眼で立っていたのだから。
「やぁやぁ。ち〜ちゃんにいっくん。箒ちゃんもお久だね〜。急いできたよ。」
「おかげでこっちは疲れたけどな・・。」
「まったくね・・。」
そう言ってアリス服の女性は顔を笑顔にし男子生徒と女子生徒は疲れた表情を見せる。
3人はつい先ほど学園から離れた場所に到着(墜落?)してそのままこちらに来た。
知らない人の登場で教室はさらに混乱し始める。
薄紫髪のウサミミを付けたアリス服の女性と、元の制服に赤のラインが入った改造制服を着た黒髪の男子生徒と女子の青のラインが入った改造制服を着た女子生徒がいたのだから。
一夏と箒は見間違えなかった。
(あ・・。)
自分を助けてくれた英雄(ヒーロー)であり、ずっと会いたかった弟・・そして初恋の相手と会えたのだから。
全員の視線が、一夏と箒に向けられる。
その目が「誰?」と聞いていた。
「・・オルコット座れ・・。」
その言葉に、混乱していたセシリアは素直に従った。
「・・予定が早まった・・、臨時職員と転校生2名だ・・。」
そう言って名前がモニターに浮かぶ。
「「「「「「「「え!?」」」」」」」」
そこには、ISの開発者であり絶賛行方不明中の篠ノ之束と世界で唯一ISを操れる男・織斑唯、IS適正ランクA・水樹愛琉と出ていたのだから。
束の名前と唯の名前を見た瞬間、教室は混沌の極みになる。
なぜここにくることになったのか唯が簡単に説明する。
政府との取引。
IS学園に入るため、開発したISのデータ収集の許可と新型ISの無償提供とビーム兵器開発理論。
この提示を見たとき、政府はすぐにOKした。
IS学園への転入を許可するだけで新型ISの無償提供とレーザー兵器を超えるビーム兵器の開発理論が手に入るのだ。
唯にしたらM1アストレイは黒百合に比べてはるかに簡単で製作できるもの。
ともかく、束にしてみたらお尋ね者から開放され肩の荷が下りたというところか。
「織斑、水樹・・自己紹介しろ。」
「わかったわ。・・私は水樹愛琉。よろしくね。」
「次は俺だな。知っていると思うが世界で唯一ISを操れる男・・織斑唯だ。織斑教諭とそこにいる一夏の弟だ。こんな容姿だが男だ。よろしく。」
「私は天才の束さんだよ。ハロー。ここには臨時教員としてきました〜。以上、終わり。プギュ!?」
唯は束の頭をしばく。
そして生徒のほうに向き直る。
「すまないな。こいつによ〜くいって聞かせるから。こいつは筋金入りの他人嫌いでな。これでも少しはマシになったほうなんだ。」
「・・まぁ、そういうことだ。」
「さて、自己紹介も済んだところで・・俺に勝てるっていったやつはどいつだ。」
「私ですわ。」
その言葉にセシリアは立ち上がる。
「ほぉ・・。」
「へぇ・・。」
まるでセシリアを品定めするかのような視線。
次の言葉は・・。
「この程度じゃ俺に勝つどころか愛琉にも勝てない。」
「確かにそうね。私も負ける気がしないわ。」
「うんうん。その程度の実力でゆいにゃんといるちゃんに勝てると思うなんておめでたいね〜。」
唯と愛琉と束はセシリアをあざ笑うかのように言った。
セシリアはついに限界が超えたのか、大声で「決闘ですわ!!」と叫んだ。
クラス全体が、驚いただろう。
「ま、いいけど。教諭、俺IS使わないから。」
「・・いいだろう。」
まさかのISを使わない宣言。
実際に手合わせした千冬はこれを許可する。
セシリアは当然・・。
「あなた!私を侮辱してますの!?」
「言っとくが、ISを展開したらすぐに終わってしまう。せっかく見せ場を作ってやろうとしてるんだ。」
「〜〜!!私を侮辱したこと後悔することね!!」
ついにIS学園に降り立った(降ってきた?)唯。
隣にいる美少女・水樹愛琉とはいったい何者なのか?
アリーナで唯の実力が明らかになりその姿を見て一夏、箒は何を思うのか・・。
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