二度目の転生はネギまの世界 第十三話 |
第十三話「大戦から少し離れるが、いいよな?」
ラカンSide
「そーいやさ、ラカン。何でそこまで強さを求めてんだ?」
「……なに言ってんだ、ナギ?」
((紅き翼|アラルブラ))に入ってから一週間ほどしたある日。突然のナギの言葉に、やや動揺しつつも平静に俺は返す。俺が強さを求めている事はまだ誰にも言っていないのに、何故ばれた?
「確かに、やや焦っているように見受けられることがありますからね」
「だな。他人の技を盗もうとしていることも時々あったし」
「そもそも((紅き翼|アラルブラ))に入るときに、そのようなことを言ってなかったかの?」
言った気もするが……疲れ切っていたその時のことなんざ覚えてねえな。
まあ、丁度いいか。((紅き翼|ここ))も結構気に入っちまったしな。
「はぁ……俺が強さを求めてんのはな、奴隷から解放されたその日にあった出来事が由来だ。
俺は奴隷として拳闘大会に出場させられていた。まだそのころはそこまで強くなかったしよ、最初の頃はどうあがいてもダメだった。抜けるためには優勝しかなかったのにな。
だから鍛えて、鍛えて、鍛え抜いて。何年かかったかなんて忘れたが、十分に実力をつけたと自負できたときには、拳闘大会での優勝なんて簡単だったさ」
「だから鍛えていると? もう奴隷に逆戻りしたくないために?」
アルが話を遮る。確かにそう考えてしまっても仕方ないところもあるあろう。もうあの頃のようになりたくないと、そう思い鍛えていると。
だが、俺の話はまだ終了してないぜ。
「残念だが、『優勝までは』だ。優勝するのは簡単だったが、その直後に起きた出来事こそ、俺が鍛え続けている理由さ」
あの、悪夢のような出来事。それは…………
「優勝した直後、観客席と闘技場を隔てている障壁を抜けて侵入した輩がいた。当時の俺は世間を知っているわけじゃなかったからな、それが誰なのかは分からなかった。
そいつの見た目は全身を暗赤色のフード付きのローブで包み青銀色の仮面を付けた男と、貴族のような服を着た華奢な金髪の女の二人組だった」
今でも極稀に夢に見る、二人組。あれから一度も会っていなくとも、下手をすれば死ぬまで忘れることはないかもしれない。
「その二人……もしや((沈黙者|サイレンサー))と((黄金女帝|ゴールドエンプレス))ではないかの? わしはその二人しか出ぬのじゃが」
「なんだぁ、((沈黙者|サイレンサー))に((黄金女帝|ゴールドエンプレス))ぅ?」
「聞いたことがあるような……アル、知っていますか?」
「知っているもなにも、魔法世界で知らない者はいないほどの有名人ですよ。神出鬼没にして受けた依頼の平均達成率90%オーバーを誇る『伝説の賞金稼ぎ』です。名前でしたら、男の方はアラン。女の方は公式の場で名乗ったことがないため不明です」
勝手に情報を共有する((紅き翼|アラルブラ))の面々。外れていたらどうするつもりだか。まあ。
「後で知ったことだが、その二人だ。話を続けるが、その時は会場がとんでもないほど盛り上がったな。まあ、伝説とまで言われた二人組が、公式の場に現れたことが滅多なことではないっつーのもあるようだったが。
で、突然乱入してきた奴らの内男の方が、俺に手招きをしてきやがったんだ。かかって来い、とでも言わんばかりにな。そのときゃ既に相手の力量くらいは探れるようになっていたから探ってみたが、女のほうはともかく、男の方からは特にプレッシャーも感じなかった。だから俺は思った。なめてんじゃねぇぞ、とな」
今思えば、恐ろしいほどの蛮勇だった。観客席と闘技場を隔てる障壁は、奴隷がいくら暴れても抜け出すことができないように強固にできている。それを難なく越えてきただけで十分に恐ろしいことだというのに、それに気づかなかったのだから。
「だから俺は挑んだ。だが何もできなかった。すれ違いざまの一撃でダウンさせられた。 次に気づいた時には、既に二人はいなかった。何がしたかったのかは未だにわからん。だから、俺は鍛え続ける。次に会ったときに、あの時の借りを返すためにな」
解放された後にいくつかわかったのは、あの障壁を切り裂いたのは女の方で、男の方は俺を叩きのめしただけだということ。そして、奴らの異常性。
「これが女の方の、百年以上前に撮られた写真だ。そしてこっちが、十年ほど前に撮られたものだ」
二枚の写真を取り出す。男の方は素顔を曝したことがないためだろうが、口元しか判別できない写真しかないから集めることを止めた。
「ふ〜〜ん……あんま変わってねーな」
「長命種ならあり得る、のか?」
「なるほどのぅ、これは確かに異常じゃの」
「さすがの長命種でも、百年も変わらないことはあり得ないのでは……?」
そう、この女の写真では、少なくとも変化しているようには見えない。いくらなんでも、百年もの間変化しないことはあり得ない。
そして俺様がたどり着いた結論。それは。
「おそらくこの女、人じゃねえ。最悪は((真祖の吸血鬼|ハイデイライトウォーカー))の可能性もある」
「……可能性はありますね」
変化しない存在。そんなものは不老不死になった存在しかあり得ない。ならばこれが真祖である可能性は高いはずだ。
「ではなぜ日常生活に困らんのか不明じゃな。真祖であろうと、吸血は必要ではなかったか?」
だが、ゼクトの言葉で矛盾に到達した。吸血鬼としての必須、というよりは存在理由(?)である吸血行為をしているといった情報は一切ない。
的外れだったか? 真祖に関する情報も少ねぇし、ここでグダグダ悩んでも思考の無駄か。
「まあ、話はそれちまったが。これが俺様が力を求める理由だ」
適当に切り上げる。ナギはまだ聞きたそうな眼をしているが、既に語るべきことは語りつくしちまったからな。済まねえがもう話せねえよ。
ラカンSide out
■■■■改めリュミス Side
「お初にお目にかかります、アリカ・アナルキア・エンテオフュシア様。護衛としての契約のために参りました、アランでございます」
普段の彼を知るものが聞けば、あり得ないと叫びかねないほど丁寧にアランは自己紹介をする。けれど、私はそこまでは驚かない。彼は((謙|へりくだ))るべき場では言葉づかいを正す。そして、本当に自分より上だと認めた相手には、言葉遣いを正すらしい。見たことはないけれどね。
「私は……そうね。護衛の間はリュビと呼んで」
そして私は対等である口調は直さない。たとえ王族であろうと、人に対して頭を下げる意味も理由もない。((須|すべか))らく、子供のようなものよ。
「申し訳ありません。しかしリュビは……」
「よい。この者が誰に対しても頭を下げぬことは知っておる。では二人に告げる――」
私たちは真祖と古龍。ただ実力が必要な依頼であれば、何であろうとこなすことができる。諜報は老若男女変幻自在のアラン一人でほぼどうにでもなってしまう。さて、護衛条件は何かしらね。
「――最長五年、最短で戦争が終結するまで、私を守り通せ。以上だ」
「その依頼、五年が経過した時点で戦争が終結しなかった場合、私たちは解雇されるのでしょうか?」
「それはない。再び私がそなた達を雇う。その時にどうするかはそなた達しだいではあるが。それでどうするのだ。雇われるか、否か」
私はアランに全権を委譲している。別に人間社会は嫌いではないけれど、そこまでこだわるものではなかったから。今では長いスパンで歴史を繰り返しながらも、そのたびに苦悩し乗り越え成長する人に興味を抱いている。それでも、アランのほうが的確な判断を下せるから権利を主張しない。
「承知しました。それではこれ以後五年間、私アランと相棒リュビはアリカ・アナルキア・エンテオフュシア様に仕える護衛となります。契約書へ条件を書き込んだ上でサインをお願いできますか?」
「これは、正式のものか。少々待つがよい」
そう言い、一字一句間違いがないか、不利になる記述がないか、矛盾がないか、読み解いていく。無意味よ。それは一切の私情を挟まず、今回の契約に合わせてアランが書き綴ったもの。間違いが起きたことなど一度もない、私の知る限り完全無欠の契約書なのだから。
「……ふむ、大丈夫そうだな。では『五年経過するか戦争が終結するまで』と。これでよいな?」
「はい。では私のサインを『A.R.A.N.』と……」
「『リュビ』ね」
「血のサイン……なるほど、偽名ですら意味をなさぬようにするためか。では私も『アリカ・アナルキア・エンテオフュシア』」
瞬間、契約書が発光し、此度の契約が完成したことを告げる。
「それではこれより五年間、よろしくお願いいたします。アリカ・アナルキ――」
「アリカでよい。姫や様の敬称は不要だ。それといい加減猫かぶりはよすがよい」
「かしこまりました――これからよろしく頼む、アリカ」
さて、がんばりましょうか。((完全なる世界|コズモエンテレケイア))の目的、『魔法世界の崩壊』は私たちの生きようとする意志と相容れないのだから。その馬鹿げた幻想、潰してあげるわ。せいぜい首を洗って待っていなさい。
そういえば、なんでアランが直接((完全なる世界|コズモエンテレケイア))を叩き潰そうとしないのか分からないけど……ま、それはどうでもいいわね。目的成就の瞬間に潰してあげるのが、せめてもの((慈悲|悪意))ってことで。
説明 | ||
ラカンの過去。そして王女と契約する主人公達。 | ||
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