IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・
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『織斑先生、聞こえますか?』

 

 

 そんな拓神の声が千冬に届いたのは真耶からアンノウンの増援と、一夏・箒両名の撃墜の報告が届いてすぐだった。

 救助班に一夏と箒の救助に行くことを言いつけると、通信に反応する。

 

「ああ。……玖蘭、なぜ独断で行動した」

 

 通信越しでも反論を許さない威圧感のある千冬。しかし拓神は普通に口を開く。

 

『こいつらは、俺が倒すべき相手とだけ言わせてもらいます』

 

 音声だけの通信だが、よく聞くと物が高速で通り抜ける音や衝撃の音が聞こえてくる。

 

「交戦中のお前との通信を長引かせるつもりは無いからな、最低限だけ伝える。まず、織斑と篠ノ乃は撃墜された。よって作戦は失敗だ」

 

『……といっても、俺は抜け出せそうにありませんけどね』

 

「次だ。今からそっちに専用機持ちの増援を送る」

 

 千冬の判断は指揮官としては当たり前だ。

 拓神とアンノウンの対比は一対十。

 さらにアンノウンの正体は不明だが、拓神の状況を鑑みるにISと張り合えるほどのものなのだ。

 

『必要ないです、というか邪魔』

 

 だが、拓神は増援を断った。

 千冬が反論する前に拓神は言葉を続ける。

 

『言っときますけど、こいつらはそこに居るメンバーと張り合えます。しかも今の篠ノ乃みたいに慣れてないなんてことは無い。まあ、エースほどの強さを持ってるわけでも無いですけどね。ああ、さっき追加された三機は別で第四世代並みのエースですけど』

 

 多少早口気味に言っていたが、聞き取りにくいわけではない。

 つまり、"拓神は第三世代機並みの機体十機を相手している"。

 しかも第四世代に相当するエースが三機居るとまで言った。

 それならなおさら―――と思うだろう。しかし千冬は経験からくる確証があった。

 

 

 

 

 ―――今の玖蘭拓神に、他人を気にしながら戦う余裕は無い。

 

 

 

 ここに居る専用機持ちが弱いとは思わない。むしろ各国家の最高戦力と呼べるだろう。それだけの価値が専用機持ちとその専用機にはある。

 ……まあ、それでも千冬にとってまだまだ未熟なこの四人を制圧することは容易いが。

 しかし、今の拓神にとっては邪魔にしかならない。

 

 基本的な拓神の戦闘スタイルは一対多。

 ……使用している『ガンダム』がもとよりその状況を想定されていることもあるが。

 だが、自分側が複数の場合でも拓神は十分に動ける。ただし条件として―――

 

 

 ―――そのパートナーが拓神についていけるなら。

 

 

 今のセシリア・鈴音・シャルロット・ラウラが、拓神の戦闘についていくことはできない。

 現実的に今現在、世界中を探しても拓神についていけるのは『更識楯無』だけ。

 楯無と同程度のIS技能を持つ人間は他にもいるだろう。だがその他の人間は拓神の動きを知らない。つまり、拓神に合わせられないし拓神も合わせることができない。

 だから、今の千冬にできることは無かった。

 

「……できるのか? お前に」

 

『さあ? でも最悪、刺し違えてでもここに居るのは倒します』

 

 そんなことをさらっと言いのけた拓神に、千冬だけでなく真耶をはじめとするその場に居る全員が唖然とする。

 しかし千冬以外は会話に口を挟むわけにもいかず、黙るしかなかった。

 

『……黙らないでくださいよ。俺が今から特攻するみたいじゃないですか』

 

「……いや、お前のやろうとしていることはそれと同義だぞ?」

 

『言いましたよね、最悪は。です最悪。それ以外は俺の勝ちですから』

 

 何より―――

 

『楯無残して俺が死ぬことは無いんで。心配しなくていいですよ』

 

 つまり拓神は十機ものISと同等な敵を相手に勝つ。と言っている。

 それは、全盛期の千冬にも難しいこと。

 

「そうか……なら一つだけ命令だ」

 

 説得を諦めた千冬は、一つだけ命令を出すことにした。

 

「死ぬな。必ず生きて帰って来い。……これは命令だ。達成できれば、お前への懲罰は無しにしてやる」

 

 それは、少しでも拓神が勝つ確立を上げるための命令。

 

『……了解です』

 

「では、私は健闘を祈らせてもらう。次話すのは、こっちに帰ってきたときだ。ではな」

 

 プッ―――

 と、通信が切れた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

『織斑教諭からの命令は守れそうか?』

 

「守らなきゃ、織斑先生だけじゃなくて楯無にも怒られるっての」

 

 俺はのんきかも知れないが、通信を切った後GNフィールドの中で雑談まがいのことをしていた。

 それでも頭は状況打開のために動いている。

 GNフィールドの周りにはジンクスの赤いビームが飛び交い、GNフィールドが無ければ今頃蜂の巣。

 ツヴァイのバスターソードとファングの攻撃はファングの射撃だけ。接近しては来ない。来れば他の機体のビームでほいほい撃墜されるだろうしな。

 それとなぜジンクスのことをバグが知ってるか、なんて無駄な思考はとっくに捨てた。

 

「さて、勝率は? ティエリア」

 

『現状を考えて計算すると……勝率は十%あればいい方だ』

 

「十%以下ね……十分だ」

 

『リミッターを解除すれば確実に――』

 

「いや、いい。まだ世界に見せるには早すぎる」

 

 十%あれば勝てる。

 俺とガンダムをなめるなよ?

 

「GNバズーカへの粒子チャージ再開。ああ、遅くていいぞ。GNフィールドの粒子圧縮率をなるべく下げるな」

 

『わかった』

 

 さっきとは逆に、GNフィールドの緑がほんの少しだけ薄くなった。

 今の俺が警戒することは実体剣かそれと同等のものだけ。通常の射撃はGNフィールドの前では無力だ。

 それに接近するにも、バグジンクスの射撃を何とかしなければどちらからも接近できない。

 ……膠着だなぁ。

 

「打開するにはトライアルシステム――駄目だ。こいつらコアが無ぇ。……やっぱり『トランザム』か」

 

 トランザムの限界時間を過ぎればやられる。

 でも、リミッターを解除せずに現状を打破するにはそれしかないのは事実。

 

『粒子チャージ完了。チャージ分のGN粒子をGNフィールドに』

 

 GNフィールドの濃さがさっきと同じに戻った。

 

「ティエリア、トランザム発動準備」

 

『打って出るつもりか?』

 

「その通り。あとは――エクシアとキュリオスの展開もすぐできるようにしておいてくれ」

 

『デュナメスは?』

 

「この状況下じゃまともに使えるのはミサイルとピストルだけだ。それならエクシアとキュリオスで代えが効く」

 

『では、エクシアにセファーは?』

 

「要る。即座に展開できる準備もだ」

 

『了解。全部で三十秒もらえれば済む』

 

「オーライ。任せた」

 

 

 

 ここまでと同じ弾幕を耐えて十秒経過。

 

 

 

 ジンクスはこれまで通り。スローネはツヴァイとドライがアインに粒子供給用ケーブルを繋いだ。十五秒経過。

 

 

 スローネアインのGNランチャーの砲身が展開され、GNハイメガランチャーの発射準備が終わる。二十秒

 

 ズガァァァァァァッ!

 

 莫大な攻撃力を持ったGNハイメガランチャーが、俺だけに向けて放たれた。

 GNフィールドを展開していても途方も無い衝撃。それと同時に一気に斜め下へGNハイメガランチャーで押され、小島のような陸地に叩きつけられる。

 その衝撃で小島の中心部にはクレーターが出来、小島全体が爆煙に包まれた。

 GNハイメガランチャーの掃射は終わり、様子見なのかバグジンクスの攻撃も止まる。三十秒!

 

 

『((準備完了|スタンバイ・コンプリート))!』

 

「はっ、ナイスだティエリア。――トランザム!!」

 

 貯蔵された圧縮粒子が開放され、爆煙のなかでヴァーチェが赤に染まる。

 

「GNバズーカハイパーバーストモード」

 

 体の前でGNバズーカを両手で構え、砲身を展開する。

 

「目標を消滅させる……圧縮粒子全面開放!!!」

 

 ―――ズガアァァァァァァッ!!

 

 無人機襲撃のときに撃ったビームより数倍太い、さっきのGNハイメガランチャーよりも太いビームが煙幕を切り裂き、スローネを狙う。

 俺がまず狙ったのはツヴァイ。一番脅威になる存在。

 

 極太のビームはかわそうとしてアインの真後ろに行ったツヴァイの右半身と動けなかったアインの右半身をえぐって後ろに突き抜けて、その後ろに居たバグジンクス二機を文字通り消滅させながら、青い空に図太い一条の光の柱を築いた。

 これでも、この後のことを考えて粒子の消費はなるべく抑えている。

 

 右半身を持っていかれた二機は本当のMSなら爆散してるだろうが、まだ動けるといったようにツヴァイは左のバインダーから四基のファングを展開し、二機ともに残った左手にビームサーベルを持った。

 

「まだだ!」

 

 掃射が終わると、すぐに俺は動いた。

 

「――キュリオス!」

 

 装甲をキュリオスに変え、バグジンクスの弾幕を抜けて一瞬で距離を詰める。

 

「――エクシア!」

 

 距離を詰めることが出来たところで、エクシアに換装。

 背のGNプロトビット六基をファングにぶつけて相殺。コアブロックを収納。

 その間にも自分自身はツヴァイに肉薄してGNソードとGNロングブレイドでツヴァイを斬る。

 GNソードはビームサーベルに止められるが、残ったGNロングブレイドで上半身と下半身を真っ二つに。ツヴァイは黒い霧になって消えた。

 背後から切りかかってくるアイン。トランザムの速度なら簡単に避けられる。一瞬でアインの背後に回りこむと、両腕の剣でX字に切り裂く。ツヴァイと同じく黒い霧のようになって消滅した。

 

「次っ!」

 

 バグを倒した達成感を味わう暇は無い。

 

 腕を左右に広げてバグジンクス二機の間を通り抜ける。

 ドライは戦闘能力はジンクス以下だから後回しだ。

 俺が通り抜けたあと、左右のバグジンクスはツヴァイと同じく上半身と下半身が別れて消滅。

 

「次っ!」

 

 残りはドライを入れて四機。

 

 一体のバグジンクスに狙いを定めて急加速。

 赤い残像を残しながら接近し、GNソードを振り下ろす。

 ビームサーベルで防御する暇も無く、そのバグジンクスは真っ二つになって消滅する。

 

「ハァッ!」

 

 左手のGNロングブレイドを一体のバグジンクス向けてダガーのように投擲。

 不意打ちに、そのバグジンクスはビームサーベルを抜いていたが胸部にGNロングブレイドが突き刺さる。

 

「これで!」

 

 そしてそれを俺はライフルモードにしたGNソードで撃つ。

 GNロングブレイドに当たったビームは、GNロングブレイドを爆散させてそのバグジンクスを破片でギタギタにした。黒い霧になって消滅する。

 

「まだだ!」

 

 俺に残された時間は約十秒。

 でもトランザムなら十分な時間。

 

 GNソードのグリップから手を離して、ビームサーベル二本を抜く。

 そしてそれも投擲。続いて残ったビームダガーも投擲する。

 わざと回転を与えて投げたそれは、バグジンクスをしっかり五つに分解して消滅させた。

 

「ラスト!」

 

 あと五秒。

 左腰のGNショートブレイドを左手に持ちながらドライの真上に。

 真上から真下のドライ向けてショートブレイドを投げる。そしてそれを追うように、GNソードのグリップを再度持ってソードモードにしながら自身もドライに向かう。

 真上から投げられたGNショートブレイドは重力でさらに加速されて、ドライの頭部から深々と刀身部分を全てドライに埋める。

 そしてその動けないドライを、俺は上からGNソードでGNショートブレイドごと切り裂いた。

 ドライも黒い霧になって消滅する。

 

 

『『トランザム』終了』

 

 

 そこまで終えてトランザムの限界時間。

 エクシアの機体が、赤のコントラストからトリコロールに戻った。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……やった、のか?」

 

 自分でもあまりのことに肩で息をする。

 いまのは、今の俺が出来る全力だった。

 

 

『バグの一定範囲からの消滅を確認』

 

 それを聞いて、俺はやっと一息ついた。

 ……ふぅ、何とかなったか。

 

説明
第45話『スローネ強襲』
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