けいおん!大切なモノを見つける方法 第7話 澪先輩の壁を壊す方法 |
第7話 澪先輩の壁を壊す方法
※顔文字、絵文字等は省略
TO:律先輩
SUB:どーだった?Re:Re:Re
TEXT:大げさでもなんでもなくマジで息がつまりそうだったんスからね!?俺がどんなに話題振っても澪先輩モゴモゴしてるし
TO:フユ
SUB:どーだった?Re:Re:Re:Re
TEXT:アハハ、それメッチャ想像できる(笑) まあ、学校から帰る方向がアタシらと一緒なコトを呪うんだな
TO:律先輩
SUB:どーだった?Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:や、別にイヤってんじゃないですけどね。つーか、律先輩挟んで3人で帰るトコまでは澪先輩フツーにしてるんですよね、律先輩と別れて2人になった途端……
TO:フユ
SUB:どーだった?Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:アイツもイロイロ困ってんだよ。お前が入部した日の晩なんて『リツ、どうしようどうしよう!?』って半泣きになりながら長電話されてホント大変だったんだからな?
TO:律先輩
SUB:どーだった?Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:そ、そこまで……。前も訊きましたけど、昔なんかあったワケじゃないんでしょ?クラスの男子からイジメられてたりだとか、片思いの先輩にひでぇフラれ方したとか
TO:フユ
SUB:どーだった?Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:そーいうわかりやすいのはないな。ただ、澪はモテる上にイジられ体質だし、小学校のときなんかは男子からよくちょっかいかけられてたよ。子供特有の屈折した愛情表現ってヤツ?
TO:律先輩
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TEXT:なるほど、律先輩は澪先輩を守るためにそんな悪ガキを片っ端からボコボコにしてったんですね?スゲーなぁ
TO:フユ
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TEXT:あたしゃ澪のSPかっ!?
TO:律先輩
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TEXT:どっちかっつーと、澪先輩のヤンキーの彼氏って感じ(笑)
TO:フユ
SUB:どーだった?Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:………ちなみに、だ!この際ハッキリ言っておくが澪はあくまで『部活の後輩』としてお前を気にしてるんであって、異性としては全くこれっぽっちも微塵も気にしてないからな!調子に乗って勘違いすんなよ?
TO:律先輩
SUB:どーだった?Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:そこまでストレートに言わんでもいいだろ!?終いにゃ泣くぞコラ!
TO:フユ
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TEXT:ま、そんなどうでもイイコトは置いといて。本題に入るぞ、ザ・フー聴いてみたか?どーだった?
TO:律先輩
SUB:どーだった?Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:超強引に話題変えましたね……。って件名の『どーだった?』ってソレのことかい!?
指が痛い。
「ほらー冬助くん、音ビビってるよ!もっとちゃんとフレット押さえて!」
「おっす」
本格的に俺のギター練習が始まった。
放課後、いつもの部室で俺は中野さんにギターの基礎を教えてもらっている。澪先輩たちは曲のパートいじりに四苦八苦しているので全体練習ができないウチに、とここ数日中野さんにマンツーで鍛えてもらっているワケだ。
ちなみに唯先輩はあれだけ俺にギター教えると豪語していたが、俺に((奥義|チャルメラ))を伝承してから飽きたらしく、中野さんに匙を投げたようだ。とんでもねぇ先輩である。
ちらりと横目で唯先輩を見てみると、お茶しながら楽しそうに律先輩と話し込んでいる。
「よそ見しないっ!集中しなきゃダメだよ」
そして、中野さんは意外とスパルタだった。けっこう怖い。
「中野センセイ……指すっげぇ痛いです」
「マメできるまでの辛抱だよ、誰もが通る道なんだから」
純も似たようなコト言ってたっけなぁ。
俺の左手の指は弦との摩擦で若干赤くなって腫れている。
「続けるよ?スローテンポでいいからEADGの順にコードチェンジしてみて」
今練習しているのは、コードの練習である。決められたフレットの弦を押さえながらピッキングを行うという、ギターにおいて必須なのだそうだ。
メトロノームを使いながらおぼつかない指運びでジャカジャカとストロークを繰り返していく。ちなみに山中センセイから借りているこのギターは、先日メンテに出してみたところコレといって異常はなかった。思ったより保存状態が良かったらしい。
「じゃあ次はFね。ニガテ意識払拭して、がんばってやってみて」
「うわぁ、出たよF」
メジャーコード、マイナーコードで俺はこのコードが一番苦手だ。
なんとかフレットを押さえていざ弾こうとしてもヘンテコなビビリ音がするだけだ。そんで指がすげぇツリそう。
「こんなんよくできるよなぁ、みんな」
「まぁFコードは初心者の壁って言われてるぐらいだからね。でも慣れると本当に簡単だよ」
「ホントかよ?……俺って指短ぇのかな?けっこう手ぇ大きい方だと思ってたんだけど」
「そんなのは甘えだよ。ほら、私なんてこんなに掌小っちゃいんだから」
そう言って、中野さんは右手を広げて見せる。確かに小さい。
俺は中野さんの右手に合わせるように自分の左手をピタリとくっつけて、比べてみる。
「げぇ!?中野さんの手、こんなに小さいん!?……こんなんでよくあんなに指廻りまくれるなぁ」
「…………っ」
「中野さん?」
手を離す。彼女は何故か顔を赤くして、自分の右手を見つめている。
「おーい、どしたん?」
「……な、なんでもないっ。ホラ練習続けてっ!」
「お、おぉ。なんでそんな慌ててんの?」
そのとき、挙動不審な中野さんの背後から唯先輩がにゅっと現れ、彼女に抱き着いた。
「なーにしてるの、あずにゃ〜ん?」
「ひゃああっ!?唯先輩っ、いきなり抱き着かないでください!?」
神出鬼没な唯先輩は、中野さんのコトをあずにゃんと呼ぶ。……まぁちょっと猫っぽいけどさぁ。
こんなバカ騒ぎに便乗しようと律先輩もニヤニヤしながら近づいてくる。
……もうぜってぇ練習できねぇワ。
俺はギターを長椅子に立てかけ、そんな先輩たちと入れ替わるようにテーブルの方に近づいた。
「おつかれっす、ムギ先輩、澪先輩。アレンジの調子どうです?」
テーブルに散乱したTAB譜や楽譜とにらめっこしている2人に俺は声をかけた。
席に着き、すっかり冷めてしまった紅茶を煽る。
「ごめんねフユくん、まだもうちょっとかかりそうなの」
「いえいえ、むしろゆっくりやってくれた方が俺の基礎練時間が増えて嬉しいっていうか」
「フユくんすごいがんばってるね。ギターの才能あると思うわ」
「中野センセイと唯センセイの教え方がいいんじゃないかな?」
「フフっ、そうかもね」
俺とムギ先輩がこんな風に話していても澪先輩は落ち着きなくソワソワしている。
「澪先輩も。俺の所為で全体練習できなくてすいません。それにそんな根詰めてやらんでも大丈夫ですからね?」
「あ、ああ。フユが気にするコトじゃないからっ。平気平気!」
そう言って、澪先輩はぎこちなく笑う。
澪先輩は俺に対して今みたいによく笑う。他のみんなに見せる笑顔とは全く違う、ムリしてつくった嘘の笑顔だ。
澪先輩は俺に気を遣ってくれている。
俺は、そんな風に澪先輩にこんな笑わせ方をさせてしまっている、そんな自分がひどく情けなかった。
「じゃあな、また明日っ。澪、フユ!」
帰り道、いつものように律先輩が別れの挨拶をする。
「あ、そうだ。……頑張れよ、フユぅ?」
「あーあーあー、うっせっ」
そう言って、律先輩は悪戯っぽく笑いながら家に入っていった。
……澪先輩と二人っきりだ。
「ん?フユ、頑張れってなんのコトなんだ?」
「あー、や、別に気にしなくていいですよ。しょーもないコトっす」
「?」
俺たちは2人で歩き出す。
カコカコと俺の突く杖の音がやけにクリアに聞こえてくる。
「すいませんね、歩く早さ合わせてもらって。フツーこういうのって逆じゃないッスか?男が女に合わすのが普通なのに」
「い、いや別にいいよ。私も歩くの遅いし……」
「へぇ、意外だなぁ。澪先輩、脚なげーから、なんか歩くの早そうな印象です」
「そ、そうかな?」
「そんで律先輩みたいに小っちゃい人は歩くの遅ぇイメージ。うはは、完全な偏見だけど」
「そ、そうか……」
「俺も怪我する前から歩くの遅かったから、大変なんですよ。朝、何回も遅刻しそうになったし。まぁ寝坊が原因なんですけどね」
「そ、そっか……」
「ええ、そうなんですよ……」
「うん……」
「…………」
「…………」
もう慣れっこだが、会話が止まってしまった。
うーん、どうしよっかな。
こないだ購買で澪先輩と間違えて話しかけたら全然知らないヒトでナンパと勘違いされて大恥かいたコト話してみようかな。それとも別の―――
「ごめんな、フユ……」
「え?」
唐突にポツリと澪先輩が呟いた。
「自分でもわかってるんだ、このままじゃダメだって。せっかくフユは気を遣ってイロイロ話しかけてくれたりしてるのに……」
「澪先輩……」
「律たちみたいに自然に良い先輩でいれないんだ……」
「…………」
「後輩にこんなに気を遣わせて、なのに自分はナニもできなくて……。私、先輩失格だ……っ」
俺だけじゃなかった。
相手に気を遣わせている自分を歯痒く思っていたのは、俺だけじゃなかったんだ。
俺と澪先輩は、同じコトで悩んでいたんだ。
「唯先輩なら、こーいうときなんて言うかなぁ?」
「……え?」
「『気にしないでいいよ』……は、なんか違いますよね、月並み過ぎる。うーん……」
「ふ、フユ?」
「『美味しいもの食べてゆっくり寝れば、きっと万事オーケーだよ』とか?……あー、言いそう。つーか絶対言うな、あの人なら言う言う」
「さっきからナニ言って―――」
「唯先輩はすごいよな。言いたいコトを誰にでも好きなだけ言えて。感情に蓋せずに好きなように生きて。それでいて周りにいつも人がたくさんいて」
澪先輩が俺をじっと見ている。
「たくさんの人から、好きになってもらえる」
「…………」
「たかだか出会って数日だけど、俺は唯先輩が羨ましい」
気付くと、俺も澪先輩も、足が止まっていた。
「そんで、そんな風に唯先輩のコト思ってるのは、多分俺だけじゃない。……澪先輩も一緒でしょう?」
「……うん、唯はすごい。私は、唯みたいになりたかった」
「でも、俺たちはどうやったって唯先輩にはなれないワケで。で、……えっと。ん?あれ?………結局ナニが言いたかったんだっけ?あれ、やべぇ……っ」
俺が話の着地点を見失ってワタワタと混乱していると。
「……ふふっ」
そんなテンパる俺を見て、澪先輩がクスクスと笑っていた。
……結果オーライ、か?
「とにかく俺が言いたかったんは………、俺と澪先輩ってちょっと似てんね」
「うんっ。私も今、同じコト思った」
「ま、ガンバリましょうよ」
「頑張るってナニを?」
「さぁ、なんスかね?」
「なんだ、そりゃ」
そう言って、俺たちは顔を見合わせて、おかしそうに笑った。
「あ、澪先輩っ。今度俺にベース教えてくださいよ、ベースっ」
「バーカ、フユはそれよりギター頑張らなきゃだろ?」
「じゃあ、約束っすよ?俺がみんなの足引っ張んないくらいにギター上手くなったら、ベース教えくださいね」
「ま、しょうがないな。そのときは私がフユのベースの師匠だからな」
澪先輩は、少し嬉しそうに、ニッコリと笑った。
ソレは今まで見てきた嘘の笑顔とは違う、とても素敵なモノだった。
TO:律先輩
SUB:やったぜ!Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:つーワケで、澪先輩いつか俺にベース教えてくれるって!マジで嬉しいなぁ!
TO:フユ
SUB:やったぜ!Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:お前、さっきからテンション高スギ
TO:律先輩
SUB:やったぜ!Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:なんスか、せっかく澪先輩の壁崩壊記念の報告なのに
TO:フユ
SUB:やったぜ!Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:ベルリンの壁崩壊記念みたいに言うなよっ!?
TO:律先輩
SUB:やったぜ!Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:いやー、ホンットに嬉しい。あ、ソレに澪先輩初めてフツーに笑ってくれたし!
TO:フユ
SUB:やったぜ!Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:……言っとくけどな、澪に手ぇ出したらブっっ殺スからな、ゴラァ!?
TO:律先輩
SUB:やったぜ!Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re
TEXT:えぇ?何キレてんの、この人……?
説明 | ||
勢いとノリだけで書いた、けいおん!の二次小説です。 Arcadia、pixivにも投稿させてもらってます。 よかったらお付き合いください。 首を長くしてご感想等お待ちしております。 |
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