魔法戦記リリカルなのは聖伝 〜SDガンダム・マイソロジー〜 006ステージ −絡み合う意志−
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(…さて、最悪は雷斗殿を無理矢理でもフリーダムの姿で首に縄を付けてでもフェイト殿の前に突き出すべきでござるか…。)

 

冒頭から物騒な事を考えている龍也だった。

 

先ほど合流したクロノに連れられて、なのはとフェイトと共に龍也は激しい戦いで破損したレイジングハートとバルディッシュのいる部屋まで案内されていた。

 

警戒心全開の場所でデスティニーの姿になっていないのは、流石になのはの前で敵意を全開にするのもどうかと考えた結果である。最悪拘束されてもデスティニーの姿に変身出来ない訳はなく、クロスディアを召喚すれば簡単に逃げられる。実際、“前回”の時には時也が同じ事をしていたし。

 

さて、暫くして部屋に付いた三人を出迎えたのはユーノとアルフだった。

 

「あっ、なのは! ……と龍也ぁ!?」

 

「なのは、体は大丈夫かい? 龍也も元気そうだね。」

 

「ユーノ君、アルフさん。……ユーノ君、どうしたの?」

 

「ああ、アルフさんも久しぶり。って、ユーノ…どうしたんだ?」

 

龍也の顔を見た瞬間、思いっきり距離を取って蹲りながら『ゴメンナサイ』と連呼しているユーノの姿を見ながら思わず呆然と聞いてしまうなのはと龍也だった。

 

「お、おーい、ユーノ…。」

 

「ひぃぃい!? ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、光る掌は止めて!!!」

 

PT事件の時、龍也に会った時に叩き込まれた『パルマ・フィオキーナ』がトラウマになっている様子のユーノだった。

 

「あー…オレ、席を外した方がいいのかな…これ?」

 

怯えるユーノを指差しながらそう問い掛けずには居られない龍也だった。確かに頭に来たとは言え全力でパルマ・フィオキーナを非殺傷設定でとは言え叩き込んでしまったが、まさかここまで怯えられるとは思わなかった。

 

クロノの手で強制的に正気に戻されたユーノと、アルフに半年振りに挨拶を交わすと、龍也もユーノと半年前の事を謝りあう。

 

そんな会話を交わした後、フェイトが部屋の中央にある装置の中に浮かんでいる相棒の下へ歩き出すとなのはと龍也もその装置の中を覗き込む。

 

「随分と酷くやられたな…。」

 

装置の中には激しい戦闘によって皹の入ってしまっている二人の相棒(パートナー)、レイジングハートとバルディッシュが有った。

 

一度変身を解除すれば武器が勝手に完全に復活する龍也のデスティニーの武装とは違い、ただの武器では無い相棒(パートナー)の姿に悲しそうな表情を浮かべている二人が視界に入る。

 

「ユーノ、二機の状態は?」

 

「うん、二機とも損傷が激しくて、今は自己修復機能で直しているけど、一度再起動をかけてから、部品の交換もしないと…。」

 

クロノの質問にユーノは、なのは達にレイジングハートとバルディッシュの状態を説明する。

 

「そうか。一応聞いておくが、龍也、君の武器は?」

 

「オレの武器は一度元に戻れば、再変身する時は完全に修復されてるから、大丈夫。流石に最後のクロノディメンションだとアロンダイトに皹は入てったけどな。」

 

今更ながら、流石にシグナムの一撃を受け止めた後、ゴッドの拳とぶつけ合い、必殺技(クロノディメンション)の使用の流れは思った以上にデスティニーの愛剣アロンダイトにもダメージが多かったようだ。

 

(身体能力だけじゃなくて、武器の強度も多少退化しているみたいでござる。こう言う時、武器が実態剣じゃない時也殿や雷斗が羨ましいでござる。)

 

ビームサーベル等の武器が主力の二人に対して、そう思わずには居られない龍也だった。なお予断だが、焔…ゴッドの武器は拳なので別に羨ましくは無い。

 

「でも、あいつらが使っていたデバイス…だったか? あれはなんだか、なのちゃん達の使っているデバイスとは違うみたいだけど…あれは?」

 

「あれは『ベルカ式』と呼ばれる物だ。中・遠・広範囲での戦闘を主体にしている『ミッド式』とは違って、ベルカ式は“対人戦闘”に特化した物で、その使い手は『騎士』と呼ばれている。」

 

前回の記憶から『アームドデバイス』と『ベルカ式』の事は知っているのだが、それを隠す為に一応そう質問する龍也にクロノが答える。

 

「じゃあ、あの弾丸みたいな物は?」

 

「あれはベルカ式のデバイスの特徴である『カートリッジシステム』。儀式で圧縮した魔力を込めた弾丸を使って、瞬間的に圧縮的な破壊力を生み出す事の出来るシステムだよ。古代ベルカ時代でよく使われていた機能らしいよ。」

 

フェイトがシグナムとの戦闘中に自分の持つデバイスに弾丸の様な物を装填していた事を思い出し質問すると、その説明はユーノがしてくれた。

 

「…ところで、龍也、奴等と一緒に居た君と似ている奴が連れていた赤い鳥の事を教えてもらえないか?」

 

「…………。軍神の星、火星(マルス)を守護に持つ聖獣(マイソロジー)で名前はアレシディア。能力は炎を操る事。聖獣使い(バインダー)は『ゴッドガンダム』、接近戦の格闘能力に特化した奴。…って、デスティニーが記憶してる。」

 

「…相変わらず規格外だな、君達は…。では、君が戦った黒い人型は何者なんだ?」

 

「それに関しては黙秘する。」

 

何が理由かは分からないが敵対している焔の情報はあっさりと幼馴染の安全の為に説明する事を選んだ龍也。最近は彼の優先順位が『なのは<時也達』になりつつある様である。

 

だが、流石に管理局の事を嫌っている時也の情報については黙秘を通す事を選んだ。下手に教えて余計な手出しをされても、自分が時也に恨まれるのだし、時也にまで敵に廻られたら、自分が苦労するのは目に見えている。

 

(…このKY(クロノ)を生贄に捧げて三人で袋叩きにした後で、雷斗をフェイト殿の前に連れて来て、時也殿にも協力を頼む切欠になるのなら、別に良いでござるが…。)

 

クロノは時也と雷斗の特殊召喚のためのコストか!? 取り合えず失敗した時のリスクを考えて却下する。

 

「何故だ?」

 

「さあ?」

 

龍也がそんな物騒な事を考えているとも知らず、互いに睨み合いながらそんな事を言い合っている龍也とクロノ。静かだが完全に険悪なムードある。これで、ここに雷斗と時也の二人まで加わった何処まで空気が悪くなる事か。

 

「レイジングハート、いっぱい頑張ってくれてありがとう。今はゆっくり休んでね…。」

 

その険悪な空気を一切感じさせず・気付かせずにいる龍也の努力によって、一切険悪な空気を感じていないなのはは戦いで傷ついたレイジングハートにお礼を言っていた。

 

さて、睨みあっていても話は進まないと思ったのか、クロノはなのは達三人に会って欲しい人物がいると話、三人を連れて出て行く。

 

 

 

 

 

「あー、なんでオレまで…。」

 

不機嫌な様子で何度目になるか分からない心底嫌そうな顔の龍也の言葉が響く。

 

「りゅ、龍くん。」

 

「うるさい、君は黙って着いて来たらどうだ!」

 

「何でお前の命令を聞かなきゃならない? 大体誰なんだ、オレ達に開いたいって人は。」

 

「本局に勤務する『ギル・グレアム』提督だ。地球で活躍する魔導師に会いたいそうだ。」

 

クロノの言葉に余計に不機嫌そうに顔を歪める。

 

「なんで、それにオレも含まれるんだ。なのちゃんは兎も角、オレは魔導師なんかじゃないぞ、KY(チビ)。」

 

「誰がチビだ! 誰が!!! 大体君の方が年下だろうが!? もう少し、年上を敬え!」

 

怒鳴るクロノを鼻で笑いつつ、龍也はクロノに近づき、

 

「オレの方が背は高い。背を伸ばすには牛乳を飲むよりも適度な運動と睡眠が良いんだぞ。」

 

「っ!? そ、そうなのか!?」

 

龍也の言葉に過剰な反応をして『orz』な体制で蹲るクロノ。

 

「そ、そうだったの?」

 

「そうだよ、なのちゃん。オレは普段から学校に行く前に家の道場での素振りと走りこみ、睡眠時間にしても規則正しい生活を送ってるから。」

 

そして、『ビシッ!』とクロノを指差し、

 

「その歳で成長阻害するような職業着いてる時点で、背については“絶望的”だぞ!」

 

クロノにトドメとなる一言を言い放つ。

 

「グハッ!!!」

 

「ク、クロノ!」

 

その一言で完全に崩れ落ちるクロノであった。実際、年下の龍也の方がクロノよりも背は高い。

 

「ところで、魔導師って所で、なのちゃんとフェイトさんは兎も角、何でオレまで呼ばれたんだ? オレは魔導師じゃないのに。」

 

「あ、ああ。君の力の事を教えたら、興味を持ってな。一度会って…ブッ!」

 

「なに、人の秘密べらべら喋ってくれてるかァ! このォ、口軽豆粒KYドチビがァ!!!」

 

「ク、クロノ君!」

「ク、クロノ!」

 

顎に突き刺さる龍也の見事なアッパーに殴り飛ばされるクロノと、それを心配するなのはとフェイトだった。

 

「りゅ、龍也くん、やり過ぎなの!」

 

「い、いやー…ユーノの時の反省から、手加減したんだけどな…。」

 

そりゃそうだろう、ユーノの場合は問答無用の『パルマ・フィオキーナ』だったのに、クロノの場合はアッパーなのだから、十分過ぎるほどの手加減に………なるのか?

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

時也SIDE

 

「…何故でしょうか…妙に危険な胸騒ぎがするのは?」

 

雷斗の呟きが漏れる。

 

「どうしたんだ、雷斗?」

 

「い、いえ…何故か身の危険を感じてしまったので。」

 

丁度それは、時空管理局の本局で龍也が雷斗をフェイトの前に連れて行く方法を考えている頃だった。

 

「それはそうと…気付いてますか?」

 

「ああ、さっきから人気が無い。結界を張られたらしいな。守護騎士達か、それとも管理局の狗か?」

 

臨戦態勢を取ろうとした二人の前に白い羽が舞い散る。

 

「どちらでもない、オレだ。裏切り者達。」

 

ウイングゼロカスタムが空からゆっくりと降りてくると、彼は顔を上げ時也達へと視線を向ける。

 

「「翼!?」」

 

「まあ、待て。」

 

二人がガンダムとフリーダムに変身しようとした瞬間、ウイングゼロは手を上げてそう告げる。

 

「今のオレにお前達と戦う意思は無い。オレはお前達に総帥からの“宣戦布告”を届けに来た。」

 

そう言ってウイングゼロは時也に一つの封筒を投げ渡す。

 

「宣戦布告?」

 

封筒を受け止め、時也はウイングゼロを睨みつけながらそう問い掛ける。

 

「その通り、今回の夜天の魔道書を巡る戦いの黒幕と、黒幕の計画だ。それを知った上で、好きに動け…オレ達マイシスもその事件に介入する。“第二の究極聖獣のパーツ”を得る為に。」

 

「っ!? ア、究極聖獣(アルティメットマイソロジー)のパーツ!? 今回の事件にも関係していたんですか!?」

 

「その通り、運良く前回のPT事件の時には最初の一つをオレ達が得た。前回とは違い、今回はバインダー全員が揃っている。総帥の命により、マイシス親衛隊隊長『ウイングゼロ』…総帥に代わり、ここに宣言する。偉大なる総帥エイロスに反抗する愚かなる裏切り者、ガンダム、デスティニー、フリーダム、ゴッド…究極聖獣(アルティメットマイソロジー)のパーツを巡る戦いの始まりを!!!」

 

高らかと宣言するウイングゼロを睨みながら、時也はウイングゼロから受け取った封筒の感触を確かめる。

 

「教えておこう…第一のパーツの“再生”の力に対して、我々が狙っている第二のパーツは最も“破壊”の性質を強く持っている。精々気を付ける事だ。」

 

時也達へとそう告げてウインクゼロは純白の翼を広げて飛び去っていく。

 

(…これで、総帥から伝えておけと言われた事は全部伝えたか…。しかし、何故パーツの持つ性質まで教える必要がある?)

 

そんな疑問を持ちながら。

 

「…行きましたね…。時也さん…それはどうします?」

 

「そうだな…参考までに見ておくか…。」

 

そう言って二人はウイングゼロから渡された封筒を開く。

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

龍也SIDE

 

さて、あの遣り取りの後、クロノに案内された龍也となのは、フェイトの三人は『ギル・グレアム』と会っていた。

 

「初めまして、ギル・グレアムだ。」

 

「た、高町なのはです。」

 

「フェイト・テスタロッサです。」

 

「…時野龍也。」

 

グレアムもなのはと同じ管理外世界地球の出身で、子供の頃に偶然に出会った管理局の魔導師を救った事で自分に魔法の資質がある事を知り、そのまま管理局入りしたと言う。

 

(…ある意味、拙者の知るなのちゃん達の未来の『高町なのは』とは別の可能性でござるな。しかし、その管理局員、狙ってやったんじゃないだろうな?)

 

魔法との出会いがなのはと全く似た事に笑うグレアムと、自分と同じ世界の人間が提督と言う職についている事に驚くなのはに視線を向けながら、龍也はそんな事を考えていた。

 

そんな自分が知る限り僅か二回。そんなに偶然が重なる物かと言う疑問を浮かべる。全く同じ状況…それを考えての疑惑。

 

そして、時也とは違い、自分にとっての“過去”で有り、ある意味の未来で敵対していた『高町なのは』を目の前にいるなのはとは別人と既に切り捨てている。

 

(…まあ、拙者が力を得る切欠よりはマシでござるな。)

 

クロスディアとハーディアのパーツ…その二つに宿る『デスティニーガンダム』の意思に選ばれた事、以前の自分にとっての悲劇の始まりを思い出すと苦笑してしまう。

 

そう考えた後、再びグレアムの話へと耳を向けると、彼はその持てる才能を発揮し、艦隊指揮官となり、後に執務官長に就いた“歴戦の勇士”と言う呼び声も有ったそうだ。

 

そこまで話を聞いた後、龍也は疑問に思う。“前回”のマイシスと管理局の戦争に目の前の男の名前は最後まで挙がらなかった。

 

それほどの人間ならば、翼の性格上間違いなく調べ上げ情報を全員に教えているだろう。現にJS事件等の関係者…機動六課の両分隊や前線に立たなかった守護騎士達を初めとする構成員、及びナンバーズと言った者達の戦闘データの詳細、能力、そこから分析できた弱点さえも『要注意人物』として見事に調べ上げていた。

 

(…前回の時に何らかの理由で前線から離れたとしても、指揮官としては立っていられるはず…寧ろ、翼なら『最優先で潰せ』と言うはず…。だとしたら…既にあの時点で引退していて、管理局も止めていたんだろう…。)

 

その後、グレアムは保護監察官としてフェイトにある条件を出す。その条件とは“自分を信頼してくれている友達や人を絶対に裏切らない事”だった。その条件を飲むと言うなら、フェイトの行動に何も制限しない事を話す。フェイトはその条件必ず守ると答えた。

 

「ところで、君が報告に有ったデバイス無しで魔力を操る変わったレアスキルを持った少年だね。」

 

「まあ、確かにバインダーの力は変わっているのは認めますけど、オレに何のようですか?」

 

「いや、君には是非とも管理局に入って貰いたい。君ほどの力が有れば多くの世界を「お断りします。」何故だね、その力は人の為に使ってこそ価値が有るのではないかね?」

 

グレアムの言葉に龍也は苦笑を浮かべる。

 

「無理ですね。オレには百人も千人も救いたいって言う考えは無い。」

 

そこまで言った後、龍也はデスティニーの姿に変わり、掌を握る。

 

「拙者が守りたい一握りの人達を守る。それだけで十分でござるよ。全てを守る為に必要なのは、意思でもなければ心でもない、全てを踏み躙るだけの力でござるよ。」

 

デスティニーは握っていた掌を広げ、

 

「そんな力に興味はないし、意味も無い。…そんな物は手に入れた時点で守りたい人達を失い…“信頼してくれている人達を裏切る”だけでござる。だから、拙者はそれで十分。」

 

そう、デスティニーの力を得た事で龍也は“前回”は両親や故郷、そこに住む人々を失った。強大な力を得る事の代価は大切な人々の命と理解している。

 

デスティニーへの変身を解除し、元の姿に戻ると、

 

「一握りの人達を守る。それがオレの力を振るう理由。だから、管理局には入らない。理解していただいたでしょうか?」

 

「いや、すまなかったね。そこまでしっかりした考えを持っているなら、勧誘は無理そうだ。」

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

焔SIDE

 

八神家にて、ヴォルケンリッターのシグナム、シャマル、ヴィータ、そして、狼形態の『盾の守護獣ザフィーラ』と、彼等と協力関係にある焔はヴォルケンリッターの主で有るはやてと共にゆったりと、食後の時間を過ごしていた。

 

「っと、もうこんな時間か。そろそろ、帰らないとな。」

 

時計を確認すると焔はソファーから立ち上がる。

 

「ええー、焔兄、もう帰るんか?」

 

「今日は泊まってけば、いいじゃん。」

 

残念そうにそう言うのははやてとヴィータの二人。そんな二人の頭を撫でながら、

 

「悪いな、はやて、ヴィータ。流石に今日も帰ってこないだろうけど、帰らないと母さんが心配するんでな。」

 

「ええ〜、だったら電話しとけばええやん。」

 

「主にヴィータも、あまりジンノを困らせては行けません。」

 

そんな二人をシグナムが嗜める。

 

「ま、明日も遊びに来るからさ。」

 

「うう〜…しゃあないな。」

 

「わーったよ。」

 

焔を引きとめようとしていた二人が離れると、

 

「じゃ、また明日な♪」

 

「またな、焔兄。」

 

「絶対に来いよ、約束だからな!」

 

そう言って八神家を後にする焔を見送る様にはやてとヴィータの声が響く。

 

(…たくっ、事態の進行が早いからって、一般の人間や、時也にまで手を出して、あいつ等は…。)

 

今日のヴィータとシグナムの行動に帰り道で思わずそう考えて頭を抱えてしまう、焔。色々と説教はしておいたが、はやての為と言われるとそれほど強くは出れない。不幸中の幸いか、今回の一件で管理局がこっちに向かってきてくれるのだから、向かってくる局員を返り討ちにでもして蒐集すればいい。

 

危険性は高いがそれで数は稼げるだろう。最悪は…。

 

「向かってくる敵はオレが叩き潰す。それだけだ。」

 

「それだけで済むほど事は自体はシンプルじゃないぞ、焔。」

 

焔は突然聞こえてきた声に反応し、身構える。

 

「お前…翼!?」

 

「…久しぶりだな…焔。」

 

そこで相対するのは、かつての親友同士…。電柱の影から現れた翼を睨みながら、焔は何時でもゴッドガンダムに変身できるように身構える。

 

「…そう怖い顔をするな。今日は戦いに来たんじゃない。」

 

「なに?」

 

「…お前に二つほど伝えておく…。この時点での守護騎士達は知らないだろうが、夜天の魔道書に巣くう“闇”は完成した時に動き出す。」

 

「どう言う意味だ!?」

 

「…完成して直に力が渡される訳は無いと言う訳だ。詳しい事は戻ってくるなら教えるが…そんな気は無いんだろう?」

 

「当たり前だ!」

 

「…残念だ…。もう一つ…総帥からのご命令で、オレとクロスボーンは全面的にお前達に協力する事になった。お前くらいには先に話を通しておこうと思った。…オレがここに来たのは、ただそれだけだ…。」

 

翼の言葉に焔はより視線を鋭くし、翼を睨みつける。

 

「ハッ、協力だと…冗談は止めろ!」

 

「冗談じゃない…。それに、オレ達の目的も有る。」

 

「目的…なんだよ、それ?」

 

「報酬はちゃんと受け取る。それだけだ。なに、それほど高い物じゃない。お前達…いや、夜天の魔道書の主にとっても…“不要”な“ゴミ”を引き取ろうと言う訳だ。」

 

「はぁ?」

 

「夜天を闇に変える二つの元凶…それがオレ達には必要なだけだ。」

 

「っ!? 翼ァ!!!」

 

翼の言葉を聞きゴッドガンダムへと変身して殴りかかるが、その拳はウインクゼロに変身した翼に簡単に避けられる。

 

「…受け入れられない心境は分かるが…今は協力して貰おう…。同盟を受け入れるなら今回の一件が終わるまで、お前達とは戦わないと総帥の名に賭けて誓おう。」

 

「教えて貰おうか、なんでそれをオレに聞く!?」

 

ゴッドのラッシュを避けながら言葉を続けるウイングゼロに更に叫びながら問うが、

 

「…守護騎士側でオレ達の事を知っているのが、お前だけだからだ…。それに、総帥は代金はもう一つ用意しているそうだ。」

 

「もう一つだと?」

 

「…最大の犠牲者を救う為の情報…。協力した方が得だと思うぞ、オレ達の欲しい物はお前達がどう動いても手に入るんだからな。」

 

ウイングゼロの言葉にゴッドは大きく拳を振り上げる。

 

「だったら、何でオレ達に協力しようとする!?」

 

大振りな一撃…今までのラッシュの方が避けられないであろうその一撃をウインクゼロは顔に、

 

「総帥はその方法も考えていた。だが、お前達達と言うイレギュラーの存在を考えれば、協力した方が確実…そう考えただけだ。」

 

黙って受けていた。

 

「オレと有った事は、次に会う時まで黙っていて貰おう…。判断は次に有った時…守護騎士達と決めて貰えばいい。それだけだ。」

 

そう告げてウイングゼロは翼を広げ飛び去っていく。

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

龍也SIDE

 

とある部屋にアースラスタッフと龍也が集まっていた。

 

「さて、私達アースラスタッフは今回、ロストロギア『闇の書』の捜索、及び魔導師襲撃事件の捜査を担当する事になりました。しかし、肝心のアースラが暫く使えない都合上、事件発生地の近隣に臨時の作戦本部を置く事になります。」

 

クロノの母で有りアースラの館長『リンディ・ハラオウン』がそう話を切り出し、スタッフに役割を伝えていく。

 

「それで、君はどうするんだ? 君は魔導師でもなんでもない、ただの民間人だ。何の関係もないこの事件を手伝う必要は無いんだぞ。」

 

「そうだけどな、向こうにオレと同じ聖獣使いが居る以上、オレが手を貸さない訳にはな。それに…オレとしても、幼馴染に怪我させてくれた奴等には落とし前を付けさせるたいし…なにより。」

 

クロノの言葉にそう答えながら、龍也はなのはへと視線を移す。

 

「なのちゃんが心配だからな。今回だけは手を貸してやる。」

 

「そうか。」

 

心底嫌そうな顔でそう答えるクロノだが、

 

「だったら、せめてこちらの命令には「…納得がいく範囲なら、従うけど、納得行かないなら勝手に行動させてもらう。」君は…。」

 

「以前…町を危険に晒した事をもう忘れたか? オレやフリーダム、なのちゃんが動かなかったら、町にまで被害が及んでたぞ。」

 

そう…クロスボーンと戦う事となり、クロノに破壊力以上に殺傷力を高めたもう一つのクロノディメンションを打ち込みたくなった一件である。

 

「因みに司令部は、なのはさんの保護を兼ねて、なのはさんのお家の、すぐ近所になりま〜す。」

 

「え?」

 

リンディが悪戯っ子の様な笑みを浮かべて言った言葉になのはは、一瞬ポカンとした後、フェイトと顔を見合わせ。

 

「よかったね、なのちゃん。」

 

「わぁ〜!」

 

嬉しさからそう笑みを零した。

 

 

 

 

 

翌日、引越しが始まっていた。なのはは家からすぐ近くだった為に、フェイトと一緒に嬉しそうにはしゃいでいる。

 

「あ、龍也くんに雷斗くんと、そっちの人達は?」

 

雷斗と時也をほぼ無理矢理に連れてきた龍也も手伝いに来た。時也は最後まで嫌がったのだが、

 

「うん、オレの文通相手の時也と、そのお姉さんの時音さんだよ。時也達もこっちに引っ越してきたから、一緒に紹介しようと思ってね。」

 

偶然にも話を聞いた時音に連れてこられた訳である。

 

「始めまして、高町なのはです。」

 

「フェイト・テスタロッサです。」

 

「始めまして、フェイトさん。私は光羽雷斗と言います。どうぞ、よろしく。」

 

「始めまして、なのはちゃんにフェイトちゃん、私は月宮時音って言うの、こっちは弟の時也。時也は同じ年だから、仲良くしてあげてね。」

 

「はい!」

 

時音の言葉に元気よく返事をするなのは。そして、時也は時音に促され、

 

「月宮時也……まあ、よろしく。」

 

自己紹介する時也だった。そして、時也は龍也に近づき、

 

「なんで、思いっきり敵地に連れてきてるんだよ、お前は?」

 

「いや、どの道、時也はオレ達と同じ学校に転校するんだろう。なのちゃんとは学校で顔を合わせるんだから、一緒だろ?」

 

「まあ、確かにそうなんですけどね。…気付かれませんか?」

 

「大丈夫でござるよ。…多分。それに、気付かれるなら遅いか早いかの違いでござる。それよりも…。」

 

「時音さん…エイロスで有る可能性のある人ですか?」

 

「…ああ…。」

 

小声でそんな事を話している三人だった。

 

なお、アルフは子犬モード、ユーノはフェレットモードである。

 

フェイトは時也と龍也の二人と小声で話している雷斗の背中を見つめながら…。

 

「? どうしたの、フェイトちゃん?」

 

「あっ、なんでもない。(何でだろう…フリーダムさんの様な気がする。)」

 

微妙にフリーダムの正体に近づいているフェイトでした。

 

そんな中、なのはの友人の『アリサ・バニングス』と『月村 すずか』と一緒になのはの家である喫茶店『翠屋』でお茶をする事になったのだが…。

 

(…味が分からない…。)

 

警戒心全開な為に何を口にしても全く味を感じない時也だった。

 

「まあ、気持ちは分かりますけどね…慣れですよ、慣れ。」

 

「うんうん。」

 

時音を含んだ女性陣とは別に男三人で揃ってお茶している時也達だが、二度とこの店には近づくまいと心に決める時也だったが、常に現実は彼に残酷である(笑)

 

さて、その後、アースラスタッフがフェイトに聖祥小学校の制服を渡し、時音が『私と時也も同じ学校なのよ。』と言われた事で同じ学校に通う事が明らかになったのである。

 

 

 

 

 

その日の夢の中…

 

「…オレの気が休まる時って…?」

 

「あー…なんか、悪い事しちゃったでござるか?」

 

「良いでしょう、どうせ何時かは分かる事なんですから…。」

 

(彼の認識の上では)敵と学校まで同じになってしまった事に心底落ち込んでいるガンダムの姿の時也だった。

 

だが、同じクラスでも一切警戒していない龍也と雷斗も居るのだが、その辺は警戒心と敵意の差だろうか? それとも、“前回”の彼女達と今の彼女達を重ねてみていると時也と、別人として割り切っている龍也達の差だろうか?

 

付け加えておくと、焔に至っては一応、前回の時で戦っていたヴォルケンリッター(外見まで変わってないし)やはやて達と一切気にせず仲良くやっているのは、『過去は過去、今は今』で割り切っているのも有るが、彼の性格上、龍也以上に警戒していないだけである。こう言う時、一切苦労しないタイプなのだ。

 

なお、地球に居る機動六課の中心人物達に対して警戒心の低い順は、

焔(警戒心0)<龍也(気にするほどじゃないでござる)<雷斗(少しは気をつけましょう)<時也(警戒心全開)

である。

 

多分、心境が変化するまで永遠に時也に安らぎの時は訪れないだろう。

 

「あー…バレたらバレたで、最初はあのKYが出てくると思うでござるから…ストレス解消に全力で戦えば良いでござるよ…。」

 

デスティニーはクロノを生贄にガンダムを回復。

 

「まあ、生きてさえ居ればどれだけボコボコにしても大丈夫だと思いますから、取り合えず聖獣(マイソロジー)がバレるとか考えない方がいいですよ。KYまでなら返り討ちにすればいいだけですから。」

 

フリーダムもクロノを生贄にガンダムを回復。

 

「で、出てきたのが悪魔と死神だったらどうする気だ?」

 

「「まあ、その時はその時考えれば良いですよ(でござる)。って、悪魔(死神)とか呼ばないで上げて下さい(でござる)。」」

 

そう即答する二人だった。二人の中で優先順位が高い位置にあるなのはとフェイトの二人とは比べ物にならない程扱いの悪い優先順位が下から数えた方が早いクロノだった。………下手をしたら、クロノ、良くて管理局引退レベルのダメージを負うのではないだろうか…? 他でもない、ガンダムのハーディアを使ったストレス解消によって。

 

「あー…だから、態と聖獣(マイソロジー)の事をバラして、クロノ殿を呼び出すのは無しでござるよ。」

 

「分かってる。ストレス解消のサンドバック用意する為にそんな危険は払わないよ。」

 

「…それなら、良いんですけどね。」

 

明後日の方向へと視線を向けながら、ガンダムは一言呟く。

 

「はぁ…スバルちゃんに会いたい…。」

 

10年と言う時也の予想よりも早く最初の再会は起こるのだが、それはまた未来の話である。

 

 

 

 

 

次なる戦いへ向けての暫しの休息(一名を除いて。)。

 

ガンダム達反マイシスチーム、アースラチーム、守護騎士達、マイシス…四者の思惑が絡み合う戦いへの新たな幕が開こうとしていた。

説明
神候補である星の加護を持った聖なる獣達に宿った鋼鉄の戦士達の力を受け継いだ戦士達と魔法の物語。あるSDガンダム物とリリカルなのはのクロスした小説です。自サイトで連載している小説です。修正を加えていますけど基本的に内容は変わりません。
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