異世界冒険譚 月殺し編 其の拾 新月 |
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見渡す限り人人人。村の人間すべてがここに集まっているんじゃないかと思うくらいの人の数。ここは古手神社。そう。今日は綿流しのお祭りだ。
人の笑いが絶えず。祭囃子が響き渡る。そこに俺たちはいた。
「今年も行くよーー! 綿流し七凶爆闘!!」
魅音が宣言する。みんな気合が入っていてそれでいて楽しそうだ。俺も其の流れに乗って本気で参加する。
そうやって祭りを楽しんでいると、大人たちが話しかけてきた。みんな沙都子の事を心配してくれているようだ。今までの事を謝ってくれて村の一員だと認めてくれた。本当に……良かったなあ。思わず涙ぐんでしまう。年をとると涙脆くなっていかん。
さらに回っていると。今度は圭一の事で話された。どうやらお魎さんとの話し合いの事がかなり誇張されて広まっているようだ。大人たちは大したものだと圭一を褒め称える。食べ物をサービスして貰ったりもした。
圭一がオークションの司会をやり大成功を収めていたりもした。
梨花が奉納演舞を披露する。さすがにたくさん踊っているだけあって素晴らしかった。
赤坂さんも来た。梨花が赤坂は使えないと冗談も行ったりしていたが。
『こんな楽しい綿流しは初めてなのです』
羽入が梨花に話しかける。
「そうね。みんなで結束したから今日という日が訪れたのよ」
「ほうはは。らはまおひはらはふほいは」
「食べてから喋りなさい」
怒られてしまった。
「やっと、運命との戦い方がわかったわ。私の死の運命に抗うためにまずあの二人がいつも綿流しの晩に殺される絶対運命を変えてみせるわ!」
時報は無理な気がする。
「あの二人の運命を変えるのは難しいよ?」
「わかってる。でも、絶対にやってみせる!」
はてさて、どうなるのかな?
「あらぁ、楽しそうね」
「こんばんわ。みんな」
話していた俺たちに猫なで声の女性の声と、やさしそうな男性の声がかかった。声の方向を向くと富竹と鷹野がこっちに歩いてきた。
祭りの最後にみんなで綿を流している時に俺、梨花、鷹野、富竹の四人は離れて話していた。
「オヤシロさまの祟りで今晩、僕と鷹野さんが死ぬって言ってたよね?」
富竹は少し困った顔をして言う。
「でも、どうして僕たちが殺されなきゃならないんだい?」
「それは……わかりません。でも、富竹は首を掻き毟って、鷹野はどこか遠くの山奥で焼かれて死にますです」
梨花ちゃんはあくまで真剣に言う。
「喉を掻き毟って死ぬって……それは……あれの事かい?」
俺が知っているか分からないので富竹は雛見沢症候群の事をぼかして言う。
「大丈夫だよ。僕はちゃんと予防接種はうけてるし、公見えても体を鍛えているんだ」
富竹はそう言って腕の筋肉を盛り上げる。なるほど、確かにかなり鍛えているようだ。数の暴力には勝てないだろうが。
「そうよ。危なくなったらジロウさんが守ってくれるわよ」
鷹野もくすくすと笑いながら言う。
「僕はオヤシロさまの巫女だからわかりますです。今夜、二人きりの時に襲われるはず……だから今夜は二人っきりになっては駄目なのですよ!」
「梨花ちゃん……もしかして私たちに妬いているの? おませさんねぇ」
ま、そう思われるだろうな。普通は。
「まぁ、せいぜい気をつけるわ。じゃあね」
「ま、待ってくださいです!」
梨花も二人に取りすがる。
だがただの子供の遊びや狂言だと思われているので、二人とも困った顔をする。
俺は鷹野たちの前に出て道を塞ぐ。
「あら、雪人君。君も何か予言でもあるの?」
「ふうん。そうだね。梨花が予言だから、僕は少し運命を変える事ができるってところかな」
「へえ、面白いわね。じゃあ私たちが殺されちゃう運命を変えてくれるかしら?」
「うんわかった。じゃあ、鷹野さんは今日は何事も無く帰れるよ」
高野を指差して言う。
「そして、富竹さんは死なないけど、誰かに連れ去られちゃいます!」
富竹を笑いながら指差す。
「酷くないかい!?」
「こんな美人の彼女を連れている罰です!」
リア中爆発しろ!
「あらあら、上手ねぇ」
これで空気が和みその後、普通に分かれた。
「さて、そうは言ったものの、どうする? このままじゃ、あの二人は……」
俺は梨花に聞く。
「他の人にも警告しましょう。少しでも運命を狂わすの!」
「うん! じゃあ、俺もお父さんとかに話してみるよ!」
「お願い!」
そう言って俺と梨花は分かれる。俺は梨花がどこかに走り去っていくのをじっと見ていた。
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綿流しの祭りが終わって私とジロウさんは二人っきりで診療所への道を歩いていた。あたりは林で辺りはやっぱり暗い。
歩きながら二人で他愛の無い話をしていた。
すると道の反対側から誰か歩いてきた。富竹さんと同じくらいの背丈で、肩幅は結構狭い。暗くてよく見えないが眼鏡を掛けているようだ。
「おや? 鷹野さん。こんばんわ」
高科藤隆さん。あの高科雪人の父親。でも、調べると怪しい事が出てくる出てくる。経歴も嘘。出身地も嘘。顔も本物かどうか。
「ええ、こんばんわ」
「そちらの男性は? 旦那さんですか?」
「あらあら。まだ、と言っておきます」
「た、鷹野さん!?」
ジロウさんが面白いくらいに焦る。こういう所が可愛いのよね。
「ははっ。良いですね。……おっと、もう行かないと。雪人を迎えに行く約束をしているんです」
「あらあら、待たせちゃ悪いわね。早く行ってあげないと」
「そうですね。それじゃあ」
そう言って高科藤隆とすれ違う。その瞬間。
「っ! おっと!?」
「きゃっ!?」
高科藤隆が私の方に転んできた。
「す、すみません!」
高科藤隆が眼鏡を直し、立ち上がりながら謝ってきた。
「き、気を付けてください」
危うく、厳しい言葉で罵倒しそうになった。
まったく、ジロウさんは何をしているの。守ってくれるんじゃなかったの?
「痛たたた……あれ? ジロウさん?」
そこで私はおかしい事に気がついた。こんなになっている私をジロウさんが心配しないはずが無いのだ。でも、まだ声すらかけてくれない。
私はジロウさんのいるはずの場所を見る。そこに……ジロウさんはいなかった。
「な!? 富竹さんが!? どこに!?」
高科藤隆も驚く。
「今、そこにいましたよね!?」
「え、ええ」
「富竹さん! どこですか!?」
高科藤隆が大声でジロウさんを呼ぶが答える声は無い。
「どういうことだ? 消えた? この短時間で?」
「もしかして……オヤシロさまの……?」
私は出来るだけ焦り取り乱しているように演技して言う。
「そうかはわかりませんが兎に角、警察に届け出ましょう」
「え、ええ…………」
そう言って私たちは神社の方へ向かい。警備している警察官に富竹さんが失踪した事を話した。警察はすぐに対応して富竹さんを探してくれるように言ってくれた。
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綿流しから数日。
村は富竹が祭りの後、恋人の鷹野の目の前で消えたという噂でいっぱいだ。消えた原因はやはりオヤシロさまの祟りなのではないかと噂されている。
そして鷹野さんも立て続けに消えて、焼死体で見つかった事は住民の間では有名な話だ。
「みんな、ちょっと聞いてくれ。梨花ちゃんの事について話したい事があるんだ」
圭一が俺と魅音、詩音、レナ、沙都子がいる時に話してきた。
「冷静に聞いて欲しい。梨花ちゃんが今日、話してくれたことがあるんだ」
圭一が梨花から聞いたということを話す。梨花ちゃんが何か悩みを抱えているらしくそれを俺たちに相談したら俺達が殺されると言われたらしい。敵が誰かわからない。でも確実に梨花が殺されるという話をされたらしい。梨花と話していて本気だと感じたらしい。どんなやつかは分からないが皆で警戒しようということらしい。
その翌日。梨花が学校を休んだ。
怪しい。もしかしたら昨日話してくれた事と何か関係があるんじゃないか。そう思った俺達は梨花と沙都子の家に行く事にした。
「うわ!?」
梨花の家に着いた俺達は驚いた。家の中に知らない男たちがいたのだ。
話してみるとどうやら私服警官で梨花の護衛をしているらしい。
家にあげさせてもらった俺達はすぐに二回の部屋に上がる。
「梨花! 下のお巡りさんはなんなんですの!?」
「悩みがあるって事と関係あるのかな?」
沙都子とレナが梨花に聞く。
「私服警官がいるなんてよっぽどの事だよ!」
「どうやらお見舞いに来て正解のようですね」
「梨花ちゃん。どういうことなのか説明してくれよ!」
他のみんなも梨花を心配して話しかけている。
「話せば巻き込んでしまうって心配してくれているみたいだけど……梨花ちゃんがピンチの時点ですでに私たちも巻き込まれてるんだよ」
レナが言う。
「そうさ! 私たちは仲間で部活メンバーなんだよ! 梨花ちゃんの危機はメンバー全体の危機さ!」
「そうです! それにもし命を狙われるとか物騒な話ならますます園崎家の出番です!」
みんな仲間のために立ち上がってくれている。自分の命が危ないと分かっていても仲間のために助けてくれるなんて梨花は本当に幸せものだ。
「梨花」
沙都子が一歩前に出て梨花に話しかける。
「どうして警察に話せて私たちに話してくれませんの?」
「それは……僕は皆に迷惑を掛けたくないのですよ」
梨花はそう呟いた。その言葉に沙都子は少なからずショックを受けたようだ。
「梨花が自分で私に言いましたのよ。戦う勇気を持てと。なのにあなたは一人で耐えて実践してないではございませんの!」
「でも……信じてもらえない話なのです」
梨花は絶対に信じてもらえないと思っているのだろう。でも、ここにいるのは全員仲間馬鹿だ。信じてくれるはずだ。
「いいや、どんな話でも梨花ちゃんが真実を話す限り信じる。そして、俺達が一緒に戦う!」
圭一が言う。それを聞いた梨花が本当に嬉しそうに笑う。
「わかりました。では話しますです。僕が命を狙われている事。そして、雛見沢症候群の事も!」
「雛見沢……症候群?」
皆の顔に「?」が浮かぶ。
梨花が雛見沢症候群について説明する。
雛見沢症候群
雛見沢にある風土病であり、その病にかかると疑心暗鬼に囚われ、極度の被害妄想により周りが悪人に見えて味方を殺し、最後は首を掻き毟って死ぬという病気。さらにこの病気、村を離れたりストレスを溜めて人を疑う事で発症すると考えられている。
「なんで、そんな危ない病気を発表しないんだ?」
圭一が尋ねる。
「治療方法が確立していないため村人の不安を煽るだけだから。けど、この奇病を解明し治療薬の開発も進められています。その研究の施設が入り江診療所。入江とそのスタッフは極秘に派遣されてきた研究者たちなのです」
梨花の言葉に皆驚いている。あの入江がそんな一大プロジェクトに係わっていた事に驚いているのだろう。
「でも、派遣って一体どこから」
「それは【東京】と呼ばれる秘密の組織からなのです。【東京は】日本の財政界の長老たちで構成され政府に関与できる強い力を持っているらしいのです。その力で入江診療所が立てられました。当初、雛見沢症候群は細菌兵器として活用しようと目論まれていましたが、所長の入江は治療薬を熱心に研究史重い症状も注射で抑えることが出来るまでに成果を挙げました」
富竹は研究の査定や予算の調整。研究の報告を受ける役。
鷹野は研究の進行管理と機密保持が最大の任務。そしてそのために山狗と呼ばれる鷹野の部下がいる。
話が終わるとあまりの話の大きさにみんなシンとなる。
「……おいおい。本当にとんでもない話だな。俺達は全員、恐ろしい病気にかかっていて監督や鷹野さんがその研究者なんて……けど、それと梨花ちゃんが殺される話とどう関係するんだ?」
圭一が梨花に尋ねる。
「さっき僕は雛見沢を離れたら病気になると言いましたが、入江の研究によると【女王感染者】である僕のそばを離れると病気を発症するらしいのです」
古手家は病原体の親分核を体内に受け継いでいて女王蜂のようにある種のフェロモンを発して雛見沢症候群の発生を防ぐらしい。
「待ってくれよ! 俺達はその病気に感染してるんだろ? じゃあ梨花ちゃんが殺されたら」
みんな分かったようだ。梨花が死ねば親を失った子は暴れ全員が末期症状を起こし被害妄想で村は殺しあう地獄になってしまう。
といっても目明し編を見ている限りそれは間違っているのだろう。
「僕の死は村の死。それにどんなメリットがあるか分からないけど、何者かがその危険を犯してでも僕を殺そうとしているのです」
梨花が話し終えた。みんな表情が暗い。
「こんな話。信じられなくて当然なのですよ」
梨花は言う。しかし、
「いいや、信じるぜ。梨花ちゃんの話してくれたこと全部!」
「圭ちゃんの言うとおりだよ」
「梨花ちゃまは真剣に話してくれた。それで十分です」
「むしろ、村の秘密が解けてスッキリしましたわ」
ここにいる圭一たちは信じた。
「それに今までたった一人でよくそれだけ大変な事を背負ってきたね。梨花ちゃんは偉いよ」
レナが梨花を褒める。
「なあ、この前の夜、富竹さんが消えて鷹野さんが殺されたのは二人が東京の関係者だったからか?」
圭一が梨花に尋ねる。
「はい」
「それで、二人を殺した連中が梨花ちゃんを狙っていると……」
「僕もそう思っていました。でも、大石が鷹野の死は偽装である可能性があると言っています」
あれ。富竹が消えてもそれはあると思われているのか。まずいな。確か大石さん死ぬよな? ちょっと注意しておこう。
「鷹野さんが生きているってことか」
「はい。そしてそんな事をするという事は鷹野が敵になると思いますです。そして鷹野が敵なら山狗も敵になります」
「監督は敵か、それとも無関係でしょうか」
「監督はそんな事をするとは思えないけど」
詩音と魅音が言う。
「疑わしきは黒。東京とは全く関りの無い人達に助けを求めるべきですわね」
「その意味では梨花ちゃんは大石さんに応援を求めたのは良い判断ってことになるな」
沙都子と圭一が言う。
「ですが大石にはまだ全てを話してはいないので彼は東京の事も山狗の事も知りません」
「なら大石さんにも早く真実を話したほうがいいと思うな」
その時、この家の電話が鳴り響く。
どうやら大石さんから電話のようだ。鷹野の死が偽装だったことがようやく判明した。
梨花が大石に話したい事があると伝えると一時間後にはこっちに着くらしく、皆で待つ事にした。
「…………遅いね大石さん。約束の時間からだいぶ過ぎたよ」
確かに、約束の一時間をとっくに過ぎている。
「まさか……東京って連中にに襲われたとか?」
「圭ちゃん。天下の大石ですよ? そんな事ないはずです」
圭一が言った言葉に詩音が反論する。
だが、新しい警官が交代に来ても大石は来なかった。
「じゃあ、また明日」
交代した警察官に帰る事を促されて俺達は帰る事にした。帰っている途中にレナが圭一に話しかける。
「圭一くん。怪しい人達がいるよ」
帰っている途中にレナが圭一に話しかける。
「本当か?」
「うん。梨花ちゃん達の家の方を向いてる。たぶんあの人達が梨花ちゃんの言ってた山狗だよ」
みんなはレナについていき。山狗らしき人物達を監視し始めた。
少し経った時、遠くから癇癪玉の音が聞こえてきた。
「圭ちゃん! これって!」
「ああ、沙都子だ! 急ごう!」
現場に着く。山狗三人が梨花たちに拳銃のような物を向けている。そして梨花が沙都子の前に立って手を広げている。
「私は逃げない。運命なんて金魚掬いの網より薄い事を知っているから!」
梨花ちゃんが叫ぶ。それと同時に圭一が山狗に向かって跳ぶ。
「その通りだぜ梨花ちゃん!」
圭一は跳んだ勢いを利用し山狗の一人に飛び蹴りを喰らわせる。俺はそれを追撃し、頭を石で殴りつける。今の俺はは魔力とか封印してるからかなり強い小学生だからな。
他に敵はいないかと周りを見るが他のみんなが倒していた。やっぱ身体能力異常だな。このメンバー。
「大丈夫か。梨花ちゃん、沙都子!」
「みんな、どうして!?」
「怪しい奴がいたからさ張り込んでたんだ」
「そうだったんですか。みんなのおかげで助かったのです。ありがとうなのです!」
梨花が嬉しそうにお礼を言った。
「……ここにいたら、すぐにやつらの応援が来るな。どうする?」
「私たち魅音さんの家にあるっていう地下の隠し部屋に逃げ込むつもりでしたのよ」
圭一の問いに沙都子が答える。
「なるほど、地下祭具殿ですか」
「確かにあそこなら秘密の通路がいくつもあるし連中の裏をかけるねえ」
魅音もその意見には同意するようだ。
「なら早く行こう!追っ手が来てる!」
レナが言う。俺達がレナの向いている方向を見るとワゴン車がこっちに向かって走ってきていた。
車が止まり山狗が七人飛び出してくる。
「早く逃げるのですよ!」
梨花が逃げようとするが魅音がとめる。
「全員で逃げたら足の遅い子は捕まるかもしれない。けどこっちも七人!みんなで全力でぶちのめして車を奪えばいい!」
「それは名案ですわねぇ!」
確かに名案だ。名案なんだけど。おかしい。なんだっけ? 大切な事を忘れているような……
「よし、そうと決まれば速攻だぜ!」
大切な事を思い出す前にみんなが飛び出していってしまう。
しかたない!
俺も走り出す。目の前の山狗を見る。俺が子供だからか油断が見える。その油断が命取りだ!
「ロデオ・ドライブ!」
上半身を振って緩急をつけ、山狗の懐に飛び込む!
「っ!?」
山狗は驚いて止まろうとするが急には止まれない。
「カウロイ!」
全力疾走同士からの膝蹴り。いくら俺が子供だからってこれでは無事じゃすまないだろう。
俺の相手をしていた山狗は気絶する。
他の人のを見ると山狗は全員倒していた。やっぱみんなつえーー。
「へっ、梨花ちゃんの話を聞いてとんでもねえ奴らだとビビッてたけど。どうやら俺達でも勝てそうじゃねえか」
いや、俺、結構ギリギリやで? まあ、いいや。
一応、気絶していない山狗のアバラに真横からの全力蹴りを加えておいた。折れなくても痛みで気絶ないし少しの間動けないだろう。
「おいみんな! 早いとこワゴンをいただくぜ!」
そう言って圭一がワゴン車に向かって走り出す。
なんだろう。本当に嫌な予感が……
そう思ったが俺も走り出す。……しかし、急に体が動かなくなる。
「なんだ? 体が……動かない!?」
どうなっているんだ!? 一体何が起こっているんだ? まるで時が止まったみたいにみんな動かない。
「け、圭一」
梨花が震えた声で言う。
「その、胸の前で浮いてるのはなんですか?」
「何って、なんだよ?」
俺達は一斉に圭一の胸の前を見る。そこには……銃弾が浮かんでいた。
「これ……なんだよ?」
「どうして銃弾が浮いているんですか」
「これって時間が止まっているからなの!?」
「嘘、そんな!」
「じゃあ、時が動き出したら圭一さんは!」
圭一も詩音も魅音もレナも沙都子も梨花も目の前の現実にただただ絶望するしかなかった。
俺は……圭一を助けるために力を解き放とうとしていた。
「魔力開放」
エラー
「気開放」
エラー
「妖力開放」
エラー
「霊力開放!」
エラー
「くそぉ!」
いくらやっても封印がとかれない。時間が止まっているせいか!? 自分の馬鹿さか現に腹が立つ。皆殺し編でみんなが死ぬタイミングを忘れていたなんて!
何かないか? 魔力も気も使わずに圭一の盾になる方法!考えろ、考えるんだ!
俺はふと思い出した。前世での死の瞬間。こんな事があった。死の瞬間、時が遅くなった。その時俺は何と言っていた?
「っ! ……圭一。皆」
皆が俺の方を向く。
「皆よく聞け。動けるようになったら後ろに向かって走り出すんだ。何があってもだ!」
「そんな……圭一を見捨ててなんて「良いんだ梨花ちゃん」圭一」
「皆、雪人の言うとおりだ。皆後ろに向かって走ってくれ!」
圭一が皆に言う。皆は悔しそうに頷いた。
「さあ、そして……時は動き出す。神速!」
俺は圭一の胸の前に向かって走り出す。次の瞬間。俺の意識は無くなった。
side out
keiiti side
信じられない光景が目の前に広がっていた。
死んだと思っていた。目の前に銃弾が浮かび時が動き出した瞬間、俺は死ぬんだと覚悟していた。だけど俺は生きている。それとも死んでるって分からないだけか? いや、違う。そうじゃない。
「どう……して……」
何故、どうして、どうやって? そんな言葉が頭に浮かぶ。嘘だと思いたかった。だが、重みが現実の物だと俺に教えてくれている。
「どうしてだよ! 雪人おおおおおお!」
俺の目の前で雪人が頭を撃たれ死んでいた。
Game over
説明 | ||
交通事故によって死んでしまった主人公。しかし、それは神の弟子が起こした事故だった!?主人公はなぜか神に謝られ、たくさんの世界へ冒険する。 | ||
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コメント | ||
ZERO&ファルサさま。コメントありがとうございます。 次回をお楽しみに。(RYO) kyonさまコメントありがとうございます。備えも戦力も番犬もありませんからね。このままではお陀仏でしょう。(RYO) okakaさまコメントありがとうございます。やはりトミーは時報にしかなれなかった。黙祷をささげておきましょう。(RYO) なにい! いったいどうなるんだ!?(ZERO&ファルサ) おいおい……、雪人が死んだらいくら部活メンバーとはいえ、詰んでんじゃね?(kyon) ついに黒幕が動きだしたと思ったらまさかの死亡!?最終回!?まぁリレイズされそうだけど・・・そしてやっぱり時報はあるのか・・・ってソウルブラザートミーが!(okaka) |
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