チラ裏程度のリリカルなのは 作者は著作権を譲渡したいようです 第11話 〜 第14話 |
第11話
検査の方はいつも病院でやっている検査の中でも簡易版の方で、大体1時間くらいで終わった。
病院だと普通の検査で2時間程度、長い検査になるとお泊まりもたまにある。
まぁそんなに長い検査は1年に一度くらいだけどね。
ただ今回の検査は時間は短かったが逆に増えたモノが合った。
それは体に張り付ける検査用のコードだ。
たぶん通常の50倍くらいに増えてたと思う。
人から見たらお前はモ○ジャラか!?と突っ込まれるほど元の体が見えないくらいコード付けられた。
…ってか、検査の時間は短くてもコード付けるだけで30分掛かったりしてたら簡易検査の意味ないじゃん。
リスティさん達には普段くらいのコードしか付いていなかったので俺にコード付けた亜羅々木先生に聞いたら「ホラ、貴方って面白いから」って言われた。
面白いのは俺のフィンであって俺自体が面白いわけじゃないですから!(←無自覚)
そんなこんなで1時間後に検査結果の用紙を見せられた。
うん、良く分からない数字ばかりでさっぱりわからん。
「亜羅々々木先生、これってどう意味ですか?」
「……はやと君、『ら』が1つ多いわよ」
「失礼、噛みました」
ほら、お約束だしね。
「私の名前って言いにくいかしら?……まぁ良いわ。こっちがフィリス達の検査結果だけど見比べてどう思う?」
どうやら用紙に書かれていたのは俺の結果だけじゃなかったようでフィリス先生達の検査数値を指さされた。
てかコードの数は違っても数値は同じように並べるんですね。これだったら普通のコードの数でも良かったんじゃない?
そして改めて数値を見比べてみる、
「……すごく……大きいです」
もちろん数値がだよ。
「そう、貴方の数値はフィリス達の5倍近くあるわ。つまり貴方の能力はフィリス達の5倍くらいの出力を出せる可能性があるのよ」
5倍というとかなり大きいなぁ。赤い彗星以上だ。
「でも、これはあくまで出力的によ。いくら出力が強くても効率良く力を発揮できなければ能力を使った”結果”が5倍になるとは限らないわ」
つまりタンクは大きくても燃費の悪い外国車のようなものかな。
つまり俺ってGM?経営破綻しそうなんですけどwww
「まぁ貴方の場合、ここの数値が海鳴病院から貰った資料からも大幅にぶれがあるから、まだ貴方の細胞が超能力を使うためのモノに完全になっていないからと予想されてるわ」
うん、それは矢沢先生からも聞いた。
「で、亜羅木先生。この検査から俺のフィンが毎度変わる理由はわかったんですか?」
「亜羅々木よ、『ら』が1つ足りないわ。いいえ、全く分からないわ」
……言い切られた。
「じゃが今日の検査で、君にはHGSとして世界的にも上位の力があるリスティ君や知佳君よりも大きな力の原石だとわかったのじゃよ!これだけでもすごいことじゃ!!」
今までリスティさん達の方に行っていた大木田博士が、まるで大発見でもしたように興奮気味で突然やってきた。
だがしかし、さっきまで検査のために薄着となった女性陣の方に付いて行って、検査が終わったら戻ってくる大木田先生を俺はもうただのスケベ親父にしか見えない。
「わしが思った通り君には普通とは違う何かがあるんじゃな!ん?どうしたのじゃ、変な眼でわしを見て?」
「……いえ、なんでも」
大喜びの今の大木田先生に、何を言っても駄目なような気がするので俺は何も言わない。
「これは次の実験に期待が持てそうじゃの〜♪」
もうすっかり鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌だな。
「ありゃりゃぎ木先生、次の実験って本当に安全なんですか?」
食堂で安全と聞いたけどその場にいなかったありゃりゃぎ先生にもう一度聞いてみた。
「亜羅々木よ、私の名前はそんな困った時のような名前じゃないわ。大木田博士の道楽よ、申し訳ないけど付き合ってあげて。……ところで、もうワザとでしょ?」
「いえ、噛みまみた」
「……はぁ〜、もういいわ。フィリス達が着替えから戻ってきたら次の実験室に行きましょう」
なんか諦められた。まだラララギ先生とかセセラギ先生、デュララギ先生にアバライ先生など言ってないのがいっぱいあったのになぁ。
そんな無念な思いを胸に俺は次の部屋に向かった。
第12話
カーテンから洩れる朝日をまぶたの向こうに感じ、自分が眠りから覚めるのを自覚する。
そして混濁した意識がハッキリするに従い、先ほどまでは気にしていなかった耳に入る音の意味を理解し始める。
……これは昨日あった大木田博士の声だ。何か言っている。
『HGS 薬がなければ ただ病人』
『フィンとはね 直訳すれば 実はヒレ』
『テレパシー 恋しいあの娘に 届くかな』
どうやら五・七・五の川柳でHGSだか超能力を題材に歌っているらしいが、人が思ってもあえて触れなかった事や博士の爺面に合わない気持ち悪い俳句などがずっと読み上げられているようだが……。
「じゃかしいわっ!!何だコレは!?」
突然沸いた怒りに意識が一気に覚醒し、跳ね起きて頭に掛かっていたヘッドホンを投げ捨てた。
そして投げられたヘッドホンとそれにつながった音楽プレーヤーを見て、昨日の検査が終わった後の出来事を思い出した。
そう、それは昨日の検査が後に大木田博士の実験とやらで別室に移った時の事だった。
「さて、これから見せる装置はもし実験に成功すればこれまでのHGS能力者の常識を覆す発明であろうモノじゃ!」
自慢げに説明する大木田博士を前に、俺たちは8畳ほどの部屋で真ん中に置かれたテーブルを囲み、イスに座って話を聞いていた。
ここじろは相変わらず俺の頭の上。
部屋の壁際には棚が配置されて、棚の上には色んなガラクタ…もとい機械が置かれている。
大学の研究室もこんな感じだったなぁと懐かしく思う。
きっとこのガラク…もと……もういいや、ガラクタの中のどれかがその自慢の発明なのだろう。
個人的にはこのガラクタが合体してトランスフォームしてくれるような発明を期待するんだけど。
「その前に君たちは『HGS能力者』と『普通の超能力者』の違いは何だと思うかね?」
少し考えてからリスティさんが、
「……能力の発現効果の大きさかな。『普通の超能力者』ってボク達のほど強くないからね」
そしてすぐに知佳さんが、
「能力を複数持ってる事じゃないかな?『普通の超能力者』は多くても2〜3個くらいしか聞いた事ないけど、私たちの場合は5〜6個くらい持ってるから」
「でも知佳ちゃん。HGS能力者でも能力の低い人は1〜2個、それどころかほとんど使えない人もいるわ。
つい私たちを基本に考えちゃうけど、私たちはHGS能力者の中ではかなり能力ランクの高い分類に入るから」
と、フィリス先生が反論。さすがお義父さんはHGSのお医者さん。
「あっ、そっかぁ」
「それにテレビなんかで見る超能力者はほとんど偽者らしいからな。あんまりあてにはなんねーさ」
と穿った見方は真雪さん。
例えばユン○ラー、もといユリ・○ラーですね、わかります。
さて、みんな色々意見を出しているみたいだから俺も何か言った方がいいかな?
う〜んとそうだなぁ……。
「病気か病気じゃないかの違いとか?」
ここで豆知識。HGS能力者って障害者手帳出るから医療費の助成があるんだよ。
普段の検査や薬代だけじゃなく、他の病気や怪我にも適応されるから風邪くらいで医者行っても医療費掛からなくて便利です。
便利……なのか? まぁ、手帳持ってると映画館によっては介護者1名込みで半額になったりと色々割引が利くから、家計にはやさしいね♪
でも地方自治体ごとに助成の条件が違うから、詳しく知りたい人は住民票のある市区町村に確認してね。
「うむっ、なかなか色んな答えが出ておるな。どれも間違えとは言わん。じゃが、ワシが求める答えとして一番近いのははやと君かのぅ」
おっと俺、正解? しまったスーパーひとし君人形でも出しておけば良かったか?
「正確に言えば病気かという事ではなく、『普通の超能力者』と『HGS能力者』との大きな違いは遺伝子障害と言われておる特殊な遺伝子細胞の違いだとワシは思っておる。
本来、人間は脳の30%しか使っていないと言われておる。特に大脳は10%しか使っておらんという研究結果がある。
超能力とは『普通の人間』が使っておらんそういう脳の残りの部分を使って超能力を発生させていると考えられておる。
しかし、確かに『HGS能力者』は脳も一般に人間に比べれば知能が高いが世間で天才と言われている人間と比べればそう大きな違いはないのじゃ」
確かに知佳さんやリスティさん達は計算能力は高いけど、すごい閃きがあるとかじゃないもんなぁ。
「ワシの考えでは『HGS能力者』の知能が一般に『普通の人間』より高いのは、超能力を使う際に超能力を使うための脳以外で、能力の為の演算を行っているからだと思っておる。
『普通の人間』でも日常生活においていつも数学に関する演算を考えているうちに一般では考えられるほどの演算能力を身につけた人もおる。
それと同じように『HGS能力者』も日頃の超能力を使用する際に演算を行い、それにより脳の演算能力を鍛えている為に『普通の人間』以上の知能になったと予想しておるのじゃ」
ふむー、つまり超能力は使えば使うほど頭が良くなるという事か。今度から無意味に超能力使って暮らしてみよう。
あ、でも超能力を使えば使うほど頭が良くなるとすれば普通の超能力者も頭が良いのかな? いや、頭いいのかもしれない。
『とある魔術○禁書目録』シリーズの電気娘や白黒とかも中学生のわりに頭良いし、絶対可憐チル○レンの主役3人の内2人は知的キャラだし、他のアニメや漫画、小説などでも超能力者のキャラクターは比較的に頭の良いのが多い気がするしね。
「じゃが勿論、例外の人間もおる。超能力を使う際に計算で行うのではなく、勘や直感……いわゆる『第六感(シックスセンス)』で行う人間じゃ。
『第六感(シックスセンス)』に関しては脳で行っていると言う説もあるが、今のところは人間のどの器官で感知しているのかまったくわかっておらん。
じゃが少なくとも大抵の超能力者が行っている演算による能力行使を行っていない事だけは確かじゃろう」
それに自分に当て嵌めて考えてみると、何も考えず何となくでやっている俺はどう考えても勘(『第六感(シックスセンス)』)で超能力やってます。
つまり俺は能力使っても頭良くならないんですね……orz
「しかし『第六感(シックスセンス)』の超能力者としてはある意味天才じゃな。
なんせ本来は行なわなければいけない過程を省き能力行使をしているのじゃから……。
天才となんとかは紙一重と言うから、これもその1つの例かもしれん」
紙一重は紙一重でも、紙一重のバカにはなりたくないです。
『これでいいのだ』とバカ田大学なんて卒業したくない。
むしろ大学行くなら三浪して女子寮の管理人になって大学入って彼女作りたいね。
……子供の頃に大学一緒に入ろうと約束した幼馴染なんていないけどねっ!
「さて『普通の人間』と『HGS能力者』では超能力を使う脳以外は大差ないことは今の説明で分かったと思うが……。
では話を戻して『普通の超能力者』と『HGS能力者』との違いとは何かという事じゃが、それはさっき言ったように遺伝子障害、……つまり普通とは違う遺伝子に秘密がある。
実はこのセンターは、その秘密についてを主研究材料にしておる」
ふむ、こーゆー事を聞くと矢沢先生が言っていたセンターの人間は医者ではなく研究者だという意味がよくわかるな。
「HGS能力者の細胞の秘密の特性。 それのまず1つ目は、超能力をHGS能力者の細胞が増幅する能力を備わっておると言う事じゃ。
これにより『HGS能力者』は『普通の超能力者』より出力の能力を使う事が出来のじゃ。
つまりHGS能力者の細胞は1つ1つが増幅装置という事じゃ」
なんと! HGS能力者は細胞1つ1つが増幅装置のアンプ人間だと……!?
いやいや、この場合はニュアンス的にブースター、つまりブーステッドマンか。
うーん、……薬漬けといい似ているが早死にしそうだ。
「そして2つ目。
それはHGS能力者の細胞は他のHGS能力者や、稀ではあるが超能力者が超能力を発する時に脳から出る波長を無意識に感じ取り、その波長を少しづつではあるが学習することじゃ。
共振現象と言われセンターが作られた理由には、この効果を研究するために多くのHGS能力者を一ヶ所に集める目的も1つとしてあるのじゃ」
共振現象と言えば、確かとらハ2でリスティさん達を作った組織の人間が、安定した能力を持つ知佳さんの能力を共振現象でコピーしたくて、さざなみ寮にリスティさんを送り込んだんだったな。
結局、リスティさんはさざなみ寮に馴染んで組織の人間に従わず、回収のためにフィリスさんとシェリーさんを出しても返り討ちにされて組織も潰され今に至ったわけだ。
「最後の3つ目は、普通の人間より高い高い修復能力じゃな」
ふむ、確かリスティさんは普通の人の2倍の回復力で、知佳さんやリスティさんの妹のシェリーさんは一晩でちぎれた腕もくっつくくらいだったかな?
俺はどのくらいだろう? 痛いの嫌だからわざわざ怪我したことがないし、矢沢先生からもそれについて言われた事はないや。
普段の生活でも、前世の大人の経験からどの程度無茶な動きすればケガするのかわかってるから、そうそうケガなんてしないしね……。
子供は、体の柔らかい子供の頃に色んな危ない事をしてケガをしながらも、自分の体の限界を知るらしい。
俺はもうそういうの経験済みだから、事故のような突発的な出来事でもなければケガなんて全くしないや。
まぁ、最近は過保護の親が増えて、ちょっとでも危なければすぐ止めさせるから自分の体の限界を知らない子が運動音痴になったり、子供同士で喧嘩しても加減が分からずに相手に大ケガ負わせるケースが多い増えてるらしい。
最近の子供が色んな面でダメになってるのは、きっと過保護な親や社会が原因なんだろうなぁ。
……なんて考えてたら、まだ大木田博士の説明が続いていたようだぞ。
「ただし、これには欠点もある。
人間がケガを修復する際は、破損した細胞を正常な細胞が分裂して補うことで修復しておる。
しかし、人間の細胞は正常に分裂できる回数が決まっており、それを過ぎると分裂した細胞は劣化コピーとなる。
これが老いの正体じゃ。人間はケガをしなくても常日頃から細胞分裂を繰り返しており、これによって人は老いる。
だが、HGS能力者のように高い修復能力があるという事はこの細胞劣化も早いと思われる……。
まだHGS能力者については全てが解明しておらんので絶対とは言わんが、ケガの修復ばかりしていると老化の進行が早い恐れがあるんじゃ」
なるほどねぇ〜。まぁ今の話を聞く限りじゃケガさえしなきゃ別に老いないっぽいから、気にする事はないかな?
予防法―――ケガ(し)ナイ。
なんだろう、この海外の毛生え薬の説明書のとんでもない誤字みたいな感じは……w
「……さて、色々と長話になってしまったが今の話を踏まえて、本題のワシの発明について説明しようかのう」
確かに前振りにしてはちょっと長かった。
でも久しぶりに大学のゼミを思いだしてちょっと面白かったけどね。
「ワシの発明は先ほど言った、HGS能力者の細胞が持つ3つの特性の2つ目に関するモノじゃ」
そう言うと大木田博士は近くの棚から、何かの入ったスーパーなどの買い物カゴくらいの箱を持ってくる。
つまり共振現象に関するモノかぁ。
「それがコレじゃ!」
そう言って取り出して、トランプみたいに拡げて掲げて見せるのは4・5枚のCD?
みんなで覗き込むと、箱の中にもまだ何枚もあるようだ。
『CD』――それはコンパクトディスクの略。
容量は640M(メガ)から700Mの間で、音楽プレーヤーで聞ける音楽データなどの入ったものは『CD』と呼ばれ、パソコンで読み取れるデータが入ったCDは『CD−ROM』と呼ばれている。
他にもCD−RやCD−RWなどがあるが説明が面倒なので省略。
データ無しのCD−Rなんか1枚ずつにケースが付いていなければ、50枚入りで1000円ちょい……単価20円くらいで買えるような物のどこが発明なんだろうか?
ちなみに俺がこれを『CD』と判断したのは、箱の中にCDプレイヤーも一緒に入っていたからだ。
「このCDには他のHGS能力者や超能力者の発する脳波の波長をデジタライズして音波化したものが入っておる。
つまりこのCDをHGS能力者が聴くと共鳴現象の作用を利用し今まで使えなかった超能力をなるんじゃ!!」
おお〜!とみんなから感嘆の声漏れる。
確かにこの発明は凄いかもしれない。
現状では能力開発と言われる訓練を受けることによって新しい超能力を習得したりすることもできるけど、これには長い訓練が必要となる。
だが、このCDなら聴くだけで覚えられるというのだからラクチンだ。
しかしデジタライズかぁ……、音はデ○モンのデジメロディのような感じかな?
「これって普通のプレーヤーでも聴けるんですか?」
「今は専用のプレイヤーではないと無理じゃが将来的には可能にする予定じゃ。
さらに将来的には音データから逆変換して、波長そのものを今皆が着けておる制御装置から出せるように改良するつもりじゃ。
それができればヘッドホンやイヤホンなどは要らなくなる」
そりゃごちゃごちゃ持たなくて済むから便利だ。
スイッチさえ家の中で持つには邪魔なように思える俺には特にね。
「どうじゃ、これぞHGS能力者の今までの常識を変える大発明じゃろ?
ワシはこの世紀の発明の名前を『超能力わざマシン』と名付けておる!」
いや、まぁ何となくこのセンターの外観やスタッフの顔から予想はしてたけどね……。
「じゃあボク達はこれを聴いて新たな能力が得られるか確かめるのがその今回の実験って訳か……」
「そうじゃ。今回皆に試してもらいたいのは、ええと……コレとコレとコレ、コレじゃなくてコレじゃな」
そう言って出されたのは4枚のCD。
HGS能力者が4人だから1人1枚、皆別々の能力を試すようだ。
出されたCDに書かれたラベルは、『スプーン曲げ』『リフレクター』『ミラーコート』『癒しの波動』とある。
出された能力名は、どれもどこかで見覚えがあるモノだ。
このセンターの外観やスタッフの顔から予想は(以下略)。
「ボクとしてはこっちの方が面白そうなんだけど……」
そうリスティさんが箱から出したのは、『火炎放射』と書かれたCD。
それってエスパー技じゃないような気が……(ポ○モン的に)。
まぁ発火能力(パイロキネシス)ってのもあるから間違いじゃないけど。
「それはいろいろ問題があってのう……」
口を濁す大木田博士は、近くにあったリモコンを操作すると部屋の端に置かれたテレビがつく。
さらに操作するとビデオか何かの機器が動き出し、画面に再生という文字を映し出す。
「それはインドのある超能力者の能力をデジタライズしたんじゃが……」
映し出されたのは、インドと思われる農村と顔と頭に赤い化粧がされた腰みのだけの僧侶の姿。
「威力はかなりのものだが、出し方が問題でのう」
僧侶はおもむろに腰を落とすと力を込めて言い放つ。
『ヨガフレイム!!』
すると、バス1台くらい丸々包み込むかのような巨大な炎が僧侶の噴き出される。
……ただし尻から。
それってなんてグ○グル(グーグルで非ず)。
てか、それ以前にスト○ートファイターかよっ。
「これは……」
『火炎放射』を選ぼうかとしていたリスティさんは思わず顔が引き攣り、他の人も微妙な顔を浮かべている。
「この通りじゃ。他の場所から出せるか聞いてみたんじゃが……」
画面の中からは大木田博士の声で多分インド語で僧侶に何か言っているのが聞こえる。
うわぁ、わざわざ自分でインドまで取りに行ったのか。
そういえば亜羅々木先生は、この実験を先生の道楽と言ってたから『超能力わざマシン』の開発は大木田博士の独断の発明なのかもしれない。
おっと、また僧侶が別の場所から火炎放射をやるようだぞ。
『ヨガフレイム!!』
今度は普通に(?)口から出た。
でも尻から出るのと比べると小さい。
どのくらい小さいというと、ライターのつまみを調整して一番大きな火にしたくらい。
横の距離も出ずに僧侶だから良いけど、普通の人がやると絶対前髪が燃えてる。
あっ、眉毛に火が付いた。
「と、こういう感じじゃ」
そこでテレビは消される。この後どうなったんだろう?
てか、このビデオ欲しい。テレビ局の投稿ビデオ大賞送りたいわ。
「これでも良いなら試してみるかの?」
「や、やめておく……」
せいいっぱ顔を横に振るリスティさん。
どう見ても大道芸、それかアメリカ人がたまに撮るようなおバカ映像だから、これを見て同じような能力を得たいって人はまず居ないだろう。
「他の能力も、一応データは取ったが欠陥があったり、まだ未調整の部分があったりするので現状で実験できるのはこの4つだけじゃ。
しかしどれもワシが世界中の超能力者を捜し歩き、何度も交渉に赴いてやったのことでデータを取らせてもらった苦心の作じゃ。
どのくらい大変じゃったかと言うと……」
……ここからが長かった。
大木田博士がこの『超能力わざマシン』を思いついてから開発できるまでの事を、こちらのもうやめてくれという視線、そして堪えきれずに出た声さえも無視して語り始めてしまった。
最初の30分で真雪さんが自分は実験には関係ないから近くの取材に行くと言って姿を消し、1時間でリスティさんがトイレと言って姿を消し、1時間30分でフィリス先生がリスティさんが戻ってこないから探しに行くと言って姿を消し、それについて行くように知佳さんがさざなみ寮に連絡を入れる予定だったのと姿を消した。
そして部屋には俺と大木田博士だけ。
それからさらに1時間30分ずっと苦労話を聞かされ続けた。
途中でどこどこの料理がおいしかったや、頑張って研究してたら「この研究はなぜ一番じゃないとダメなんですか?二番じゃダメなんですか?」と言う財務の人間とのバトルをした話などになぜかなっていた気もする。
結局、最後はフィリス先生たちに連れられた亜羅々木先生にどつかれて話を止められ、やっとこの長話から抜け出すことができた。
あまりに話が長くて、お笑いの「レギュ○ー」ばりの立ったまま気絶の技を習得してなければさすがの俺も危なかった。
そんなわけで大木田博士の話が長すぎて実験する時間が無くなり、実験は寝ながら聞いても効果があるという事で今回は『超能力わざマシン』をホテルに持ち帰り寝ながら聞き、明日その能力が習得されているか確かめるという事で話がついた。
それからは真雪さんの車でペット連れOKのホテルに行き、夕食を食べると(ちなみに味はおいしかったが昼の方が遥かに上だった)、どうやら道中の疲れや大木田博士の長話の疲れがどっと出て、俺は風呂にも入らずに『超能力わざマシン』を付けるとベットに倒れこむように入って眠りについたのだった。
つまり寝起きに聞こえたのはあの『超能りょ……』、面倒なので省略してわざマシンからだったらしい。
気絶していてあまり覚えてないが、昨日の長話の中で「デジタライズした音はリズムも何もない人にとってはただの異音で長時間聞くには不感じゃろうから、人間の耳に聞こえない高周波の物にして、代わりの聞いていて楽しめるモノを入れておいたぞ」と言っていた気がする。
元の音がどんなものかわからないけど、あんな不快な川柳を聞かされるくらいなら元のままが良かったんじゃないかな?
こんな他の音を被せる技術があるなら、今度作ってもらう時はSEENAこと、さざなみ寮の椎名ゆうひさんの歌か、はやてに歌わせた『ワー○ドイズマイン -ワニはわかってないバージョン-』でも使って貰う事にしよう。
するとガチャと部屋のドアが開く音がする。
「あ、はやと君起きたんだ」
「起きたらなら、お風呂にでも入ったらどうだい?昨日は入ってないだろう」
入って来たのは同部屋のリスティさんとフィリス先生。
2人とも先に風呂に入っていたみたいで湯上り姿が色っぽい。
「ほほーい」
さて今日も色々やるみたいだし、お風呂でも入ってスッキリしてくるかな。
まだ眠そうなここじろを頭に乗せ、着替えやタオルを荷物から出すと大浴場に向かう用意をする。
「パンツかぶってパンツマン!!」
「ぶっ!?」
「行ってきまーす♪」
さぁって、おっふろ〜♪おっふろ〜♪おっふっろ〜♪
ところで昨日のわざマシンの話を聞いた部屋の端に3つの水槽があって、その中にトカゲとカエルとカメが飼われていたみたいだけどあれってもしかして……。
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HGS能力者って薬代や検査代がかなり掛るだろうと思い、障害者手帳所持にしてみました。
色々書いていますが、特に障害者の人たちに変な偏見があるわけではないのであしからず。
むしろ自分たちの特権をちゃんと使っていないのは勿体ないと思います。
ただし何処かであったように障害者でもない人が不正に取得するのはとんでもない事ですがね。
第13話
お風呂に向かった俺は、まずここじろをペット風呂に向かう。
このホテルはお風呂はちゃんと100%天然温泉で、男風呂、女風呂の間にペット風呂があり、清掃時間でない限りいつでも自由に入れられるそうだ。
それにペット風呂は、男湯と女湯の間にあり、飼い主が温泉に入ってる間にペットを預かってホテルの従業員が温泉に入れてくれるサービスもあるようだ。
もしかしたら女湯の覗き見防止策も兼ねてるのかもしれない。
それにそのサービスを受けにペット風呂に向かったら、何故かペンギンもいた。それも3匹。
後で聞くとこのペンギン、ホテルで飼ってるマスコットの温泉ペンギンだそうだ。
それってなんてエヴ○……。
だったらその内1匹くらいは名前がペンペンかと思いきや、銀次、ふぉるてしも・ぴっころ(緑の人で非ず)、新人というらしい。ネタが分かりずらいよ。
それにここまでの流れ的にはポッチャモあたりの予想もあったのに、1匹だけ性があるし、最後のは他の3匹はどうした……。
なんにせよ、従業員にここじろを預けて俺もゆっくり入浴し、そして温泉10メートル自由形。
水中前回り泳ぎと犬神家泳ぎで泳ぎ切ったら、先客の爺ちゃん達から拍手喝采。
風呂上りにビン牛乳奢ってもらった。
風呂上りはやっぱりコレを飲みながら腰に手を当てるのは基本だよね!コーヒー牛乳はかろうじて可、イチゴ牛乳は女子しか認めん!!
着替えてじいちゃん達と別れ、ペット風呂にここじろを迎えに行くとホテルの従業員にお礼を言われた。
何だろうと思ったら、なんでもここじろを預けてしばらくして預けられた大型犬が突然吠え出して他のペットたちがその事に怯え大暴れしそうになったところ、ここじろがその緒方拳、もとい大型犬の頭に乗り、頭の上に乗ったら吠えるのを止めて大人しくなったらしい。
さすがは元猫又。さすがはさざなみ寮周辺のボスの血族。格が違うらしい。
風呂上りで毛が濡れ、一回り小さくなった可愛い姿からは想像も出来ぬカリスマ性だ。
そういえば最近気が付いたんだけど、ここじろの尻尾は先っぽがそこ少し2つに分かれている。それに尻尾の先だけ真っ白の可愛いホワイトハート形だ。
時が経てばまた美緒ちゃんみたいなりっぱな猫又になるのかもしれない。てか美緒ちゃんって猫又なんだろうか?
原作には詳しく書いてなかったけど、今度薫さんにでも聴いてみるかな。
風呂から戻るとみんなで朝食を食べに大広間へ行く。
朝食はホテルでよくあるバイキング形式だ。
俺は5回もおかわりした。……スプーンをだけど。
だって昨日聴かされた『わざマシン』は、『スプーン曲げ』のだったので無意識に使っちゃったみたいで全部持った途端に曲がってしまうんで、結局箸で食事して何とか食べれてけど、ゼリーやヨーグルトは箸でなんて食べにくいったらありゃしない。
曲がったスプーンはそっと懐に入れてガメておいた。
よくこういうホテルだとよくオバちゃん達が、ホテルの備品をガメるのできっとバレはしないだろう。
あとで研究所経由でスプーン代は払う予定。
超能力で曲げてしまいましたなんてホテルの人にはあまり説明できないもんね。
そんなわけで曲がったスプーンを目にあて、ウル○ラマン・ウルト○マンセブン♪
これ持ってたら超能力の威力が上がったりするのかな?
食事後のセンターに向かう真雪さんの車の中で、リスティさんからわざマシンの事が振られて話題に上る。
「ハヤト、昨日のマシンって君は何が流れてた?」
「川柳が入ってました。俺は…って、あれってみんな違うのが入ってるんですか?」
「ああ、ボクのは演歌が流れてて、フィリスのはラップ調の歌(『超能力の技版ポ○モン言えるかな?』というべきだろうか?)、知佳は超能力に関するダジャレ百八連発だったらしいよ。……全部やってるのはあのオオキダ先生だったけど」
……本職の仕事をちゃんとしろよオッサン。
「あははは……(汗)。でも凄いよね、あんなに多芸なんて」
知佳さんがフォローして、フィリス先生もそれに追従する。
「所長には、他にも釣りとか色々な趣味があるみたい。センターにいる時はよく連れて行ってもらったわ。釣りなんか大会で賞も取ったくらいらしいわ」
「センターの所長って暇なのか?」
「あははは……」
真雪さんの一言にフィリス先生が苦笑。
「でも所長はHGSのようなヒトの超能力だけじゃなく、他の色々な生物も調べて生き物が持つ今の科学じゃ説明できない不思議な力の研究に関しても第一人者らしいわ。またそれらの力をどう活用すれば今の社会に有効活用できるか、なんかも調べてるって言ってた」
ふむ、地震直前に動物が動物が普段しない行動をするとか、そんな感じの研究だろうか?
昨今、地震予知の重要性が騒がれているから、もしちゃんとそのメカニズムが解明されれば地震予知に大いに役立ちかもしれない。
昨日の研究室の動物たちもこれで説明が付く。別に進化させてポ○モンを作ろうとしてた訳じゃなさそうだ。……少なくとも今は。
そんな会話をしながら俺たちは2日目のセンターに向かうのだった。
説明 | ||
死んだと思ったが気がついてみれば赤ん坊。さらに3年経ってやっと『リリカルなのは』の八神はやての双子の兄と発覚。下手すれば死亡フラグいっぱいの第二の人生であたふたしてたら『とらいあんぐるハート』シリーズのHGS能力者になっていた主人公。そんな主人公の織り成す原作脱線を生暖かい目でお読みください。 ※1.タイトルに関する疑問は注意書きに詳細があるのでお読みください。 ※2.にじファンより移転してきました。 |
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