仮面ライダークロス 仮面ライダークロス〜真ビギンズナイト〜前編 |
「父さん、母さん!誕生日おめでとう!」
光輝は小さな紙の袋を出して、目の前の二人に渡した。
この二人は光輝の両親である。
「ほう、覚えていたのか!」
光輝の父、白宮隼人は喜んだ。彼と隣にいる光輝の母、白宮優子は、偶然にも誕生日が同じなのだ。
「何が入っているのかな?」
優子が言い、二人は紙袋を開ける。
中にはキーホルダーが入っていた。
隼人のは剣の形をしており、優子のは銃の形をしている。
「ごめんね。こんなのしか思い付かなくて」
「いや、嬉しいよ。」
「大切にするわね。でも、何でこの形を選んだの?」
「それはもちろん」
光輝はいたずらっぽく笑う。
「二人が仮面ライダーだからだよ。」
「……はっ!」
僕は目を覚まして起き上がり、辺りを見回した。
「……夢か……」
そうだよね、あの二人が生きているはずがない。父さんも母さんも、一年前に死んだんだから…
僕はもう一度辺りを見回す。
この家は一度全焼している。だから、家には写真も、それを撮るためのカメラも、それを納めるためのアルバムもない。あの時に全て失われてしまった。
……まあ、カメラもアルバムも、新しく買えばいいんだけど、問題はそこじゃない。写真だ。
思い出が、失われてしまった。
父さんも母さんも、もう僕の記憶の中にしかいないんだ。
それがすごく、悲しかった。
「…はぁ…」
僕はため息をついて、時計を見た。そして目が飛び出そうになった。
「9時!?完璧に遅刻じゃないか!」
僕は慌てて身支度を整え、家を飛び出した。時間がないので、ロイヤルランナーに乗って行く。
僕は学園に向かった。
僕はロイヤルランナーを駐車場に停めて、校舎に走る。
それにしても変だな…校舎から人の気配がしない。
そのことを妙に思いながらも、僕は足を止めなかった。
…やっぱり変だ。中に入ったのに、人の気配が全くない。
とりあえずと、僕は三年B組の教室の戸を開けた。
「この本前に読んだな…」
僕を迎えたのは、読書に興じるドナルドの一言だった。
「ドナルド…」
「やあ、おはよう!」
「お、おはよう…」
僕は思わず挨拶した。
「え、ドナルド一人?みんなは?」
「うーん、ドナルドもかれこれ30分くらい待ってるけど、誰も来ないんだよね。」
「いや、気付こうよ。おかしいでしょ、それ」
でもどうしたんだろう?そういえば、ここに来るまで人の気配がなかった。
……これは調べてみる必要があるな。
「ドナルド。学園に人がいるか調べたいんだ。手を貸してくれないか?」
「もちろんさぁ♪」
「ありがとう。じゃあ二手に別れて探るよ」
僕達は別れた。
僕の思った通りだ。学園から人という人が、全員消えている。
中等部や小等部、先生達まで、本当に全員だ。
僕はドナルドと合流した。
「どう?誰かいた?」
「うーん、誰もいなかったねー。」
ドナルドも同じだった。
みんな本当にどうしたんだろう?ドナルドがいるから、休みってわけじゃないみたいだし……ひょっとして、何かの事件に巻き込まれた、とか?
どうしようか迷った挙げ句、僕は一つの打開策を思い付く。
「こうなったら、鳴海探偵事務所に行こう。フィリップさんなら、何か知ってるかもしれない。」
「そうだね。行ってみようか」
ドナルドは了承してくれた。学園に無断で外出するのは気が引けるけど、今は緊急事態だ。
僕はロイヤルランナーで、ドナルドは自転車で、鳴海探偵事務所に向かった。
しかし、ドナルドってすごいな。自転車でロイヤルランナーについてこられるんだから。
「ハッハッハッハ☆」
しかもあんなに涼しそうに……っていうかどんな脚力?
そうこうしているうちに、僕達は鳴海探偵事務所にたどり着いた。
僕は事務所のドアを開ける。
「翔太郎さん!」
そのまま中に入る僕。でも僕を迎えたのは、翔太郎さんでも、亜紀子さんでも、フィリップさんでもなかった。
「あれ?光輝くんじゃん。ドナルドくんもいる」
エリザベスさんだ。クイーンさんやウォッチャマンさん、サンタさんもいる。
「エリザベスさん?それにクイーンさん達も…翔太郎さん達は?」
肝心の翔太郎さん達がいない。クイーンさんが答える。
「翔ちゃんならいないわよ。」
「ついでに亜紀子ちゃんとフィリップくんもね。どこ行ったかもわかんないし」
ウォッチャマンさんが補足した。
それは困る。フィリップさんがいないんじゃ、調べてもらえない。
「そうだ、照井さん!」
僕はクロスフォンを取り出して、照井さんに電話をかけた。
でも照井さんは出てくれない。
「じゃあ、ドナルドが超常犯罪捜査課に直接電話してみるよ。」
ドナルドは携帯電話を取り出して超常犯罪捜査課に電話した。
「ドナルドです。照井さんいますか?」
繋がったみたいだ。っていうか、ドナルドよく電話番号知ってたな…。
「……え?……はい……はいわかりました。ありがとうございます」
ドナルドは電話を切ってから、僕に結果を伝えた。
「照井さん行方不明だって。」
「照井さんが!?」
僕は驚いた。翔太郎さん達に続いて照井さんまで行方不明になるなんて、こんな偶然があり得るのか?
完全に手詰まりだな。さてどうしようか………ん?
「そういえばクイーンさんエリザベスさん、何でここに?学校は?」
今日は休みじゃないはずだけど。エリザベスさんが答える。
「今日は振替休日でお休みなんだよ〜ん♪」
「だから来たんだけど、肝心の翔ちゃん達がいないからつまんなくてさ。」
クイーンさんが補足した。
なるほど、振替休日か…。
「そういうあんた達こそ、何でここにいんの?」
クイーンさんに訊かれ、僕は事情を話した。
「それは明らかに事件だね〜。」
サンタさんが間延びした声で言った。今度はウォッチャマンさんが尋ねてくる。
「それって、本当に何の前触れもなく起きたの?」
「はい。僕が学園に着いた時には、もう誰もいなくて…僕より先に来ていたドナルドに訊いても知らないって言ってるし…。」
「ドナルドが来た時には、もうああなってたからね。最初は今日は休みかと思ったけど、光輝君が来てくれたから、そうじゃないってわかったんだよ。」
「ところで、ウォッチャマンさんとサンタさんは、どうしてここに?」
ウォッチャマンさんとサンタさんは答える。
「ちょっと面白い話を聞いたから、翔ちゃんに教えた方がいいかなって思って。」
「僕もだよ。なんかヤバそうなんだよね〜。」
僕はその話が気になったから、聞いてみることにした。
「話って?」
「実は……」
ウォッチャマンさんが言おうとした、その時、
ガチャッ
「すいません。依頼をお願いしたいんですけど……。」
ドアを開けて、一人の女性が入って来た。
えっ、今この人依頼って言った?
どうしよう……。
「あの、申し訳ありませんが、僕達はここの従業員じゃないんです。」
「そうなんですか?じゃあ従業員の方は……。」
「今いないんです。」
「そう、ですか…。」
女性はすごく悲しそうな顔をした。
僕はその顔を見てやりきれなくなり、気付けば、
「よかったら、僕が代わりに引き受けましょうか?」
そう言っていた。
ウォッチャマンさんが耳打ちしてくる。
(ちょっと大丈夫なの光輝くん?君は探偵じゃないんだよ?)
(わかってます。でも困ってる人を見ると、放っておけないんです。もしかしたらなんとかなるかもしれませんし)
「あの…」
女性は不安そうな顔をして僕を見た。
僕は笑顔で返す。
「大丈夫ですよ。まず、お名前を」
「はい…私は神原(かんばら)アリスと申します。」
ウォッチャマンさんが反応する。
「神原って、あの神原アリス!?」
僕も知ってる。すごく有名な俳優さんだ。
「うわ〜感激〜!」
「ウォッチャマンさん。」
僕は暴走するウォッチャマンさんを制して神原さんに尋ねる。
「それで、依頼というのは?」
「はい。捜してほしい人がいるんです」
「捜してほしい人?」
「はい。私の兄と姉を……」
「え……」
僕は絶句した。神原さんのお兄さんとお姉さん、神原信介(かんばらしんすけ)さんと神原雅(かんばらみやび)さんは、この人と同じくらい有名な俳優さんだ。でも………
「そのお二人は、数週間前に亡くなられているはずですけど……。」
そう、二人は数週間前、ロケバスで移動中に交通事故で亡くなったんだ。
「私もそう思っていました。でも私は見たんです!」
そう言って神原さんは今から三日前に起きたという、ある出来事を語り出した。
その日の夜は珍しくフリーで、一人帰路についていたのだが、不意に何かの気配を感じて、その方向を見てみた。
そこには……
死んだはずの兄と姉が立っていたのだ。
二人はニヤリと笑うと、そのままどこかへ行ってしまう。
慌てて追いかけるも、もはや二人は消えたあとだったという……。
「それって『死人還り』じゃない?」
クイーンさんが言った。
「死人還り?一時期流行ってたあれ?」
僕は尋ねた。死人還りは僕も知っている。今から数ヶ月ほど前に、かなり話題になっていた事件だ。
「でも、それってもう解決したんじゃ…」
「あたしもそう思ってたけど、まだ終わってなかったみたいだね。」
すると、
「それだよそれ!」
ウォッチャマンさんが騒ぎ出した。
「それって、何が?」
サンタさんが答える。
「僕達が翔ちゃんに教えようと思ってた話だよ。死人還りがまた起き始めたみたいなんだ、って」
「えっ!?」
僕が驚くと、今度はウォッチャマンさんが言う。
「僕も翔ちゃん達が解決したと思ってたけど、一体どうしたんだろうね〜」
そうか、前の事件は翔太郎さん達が解決したのか…。なら犯人はきっとドーパントだな……。
僕は神原さんに尋ねる。
「それで、僕にその二人を捜してほしい、と?」
「はい。見つけてもらいたいんです。もう一度、お兄ちゃんとお姉ちゃんに会いたいから…」
「その前に一つ訊いておきます。死んだ人が生き返ることは、絶対にない。もしそうだとしても、それはまやかしです。それでも真相を知る覚悟がありますか?」
神原さんは少し黙って考えていた。
そして、
「はい。」
神原さんは答えを出した。
「…わかりました。お引き受けします」
僕は依頼を引き受けた。エリザベスさんが僕に話しかける。
「光輝くん本当に大丈夫なの?」
「正直言って、僕がこの事件を解決できるかどうかはわからない。この人を放ってはおけないんだ。」
「光輝くん…」
「大丈夫。やれるだけのことはやってみるから。ドナルドもいるし。ね、ドナルド?」
「もちろんさぁ♪」
「とりあえず、それっぽい所をあたってみます。」
「あ、ありがとうございます!」
神原さんは頭を下げた。
本当はみんなを捜しに行きたいけど、手がかりがない以上、こっちの方を優先すべきだ。
ごめんね、みんな…僕は心の中で謝った。
僕達は神原さんから、信介さんと雅さんのお墓の場所を聞き出し、そこへ向かった。
たどり着いた場所はヴェルタース教の教会。ここの墓所だった。
ヴェルタース教っていうのは、世界でも最大の規模を誇る宗教団体で、世界中にその教会がある。風都にあるのも、その一つだ。
そして、ここには僕の父さんと母さんのお墓もあった。
ついでにって言ったら悪いけど、僕はドナルドと一緒に、父さんと母さんのお墓の前でも手を合わせた。
こんな風にお墓参りをする日が来るとは、夢にも思わなかったけど。
神父を務める闇道正夫(あんどうまさお)さんが、僕を見て言う。
「今一人暮らしですよね?大変ですね。」
「…ええ、大変です。でも、音をあげてる暇はありませんから…」
「…お強いですね。」
シスターを務める黒夢満(くろゆめみちる)さんが言った。
「いえ、強くなんかありませんよ。少なくとも、父と母よりは……。」
それから僕は、二人に死人還りのことについて訊いてみた。
「死人還り、ですか…そういえば一時期流行ってましたねぇ…。」
「誰だか知りませんが、ひどいことをするものです。死者の魂を冒涜するとは。我らの会長がお知りになられたらどれだけ憤慨なされるか…。」
闇道さんと黒夢さんはそう言った。
「そうですね。地獄行きは確定だと思います」
どうやらここはハズレらしい。
次は神原さんが二人を見たっていう所に行ってみよう。
「行くよドナルド。」
「うーん…」
「どうしたの?」
「…ハッハッハッハ☆何でもないさぁ♪」
「そう?じゃあ行こうか。」
「アクティーブ!」
僕達は教会をあとにした。
光輝達が去った後、黒夢は闇道に尋ねた。
「どうしますか?」
「…バレたら面倒だ。手を打っておけ」
「了解しました。」
黒夢は携帯電話を取り出し、どこかに電話をかける。
「…少し脅して、手を引かせてやるか…」
闇道が不気味な笑みを浮かべた。
僕達は神原さんが信介さんと雅さんを見たっていう所にきた。
「見たところ怪しい点はないな。ここもハズレか……」
さて、手詰まりだ。次はどこを調べようかな?他に死人還りが起きた場所でも調べてみようか……。
僕がそう思っていた時、僕のクロスフォンに電話がかかってきた。
「もしもし、白宮です。」
「私です。」
「神原さん。どうしたんですか?」
「ごめんなさい…依頼を取り消させてくれませんか…」
「えっ!?」
僕は驚いた。
「一体どうして…」
「わけは言えませんが、とにかく依頼を取り消させて下さい。それから、もうこの事件に関わらないで……ありがとうございました…。」
「神原さん!?神原さん!!」
電話は切れてしまった。
「何があったんだ?とにかく一度事務所に戻ろう。行くよドナルド!」
僕はそう言って事務所に戻ろうとする。
でもドナルドは動こうとしない。
「どうしたんだよドナルド?」
僕が声をかけても、ドナルドはどこか一点を見たまま、反応しない。
「一体どこを見て………」
気になってドナルドの視線を追うと、僕は信じられないものを目にした。
信介さんと雅さんが立っていたんだ。
二人はニヤリと笑ってどこかに行こうとする。
「っ!待って下さい!!」
僕は慌てて追いかけた。ドナルドもちゃんとついてくる。
二人は構わず歩いていく。まるで僕達を誘ってるみたいだ。
そうこうしているうちに、僕達は広場のような所に着いた。
「くっ!見失ったか…!」
辺りを見回すけど、二人の姿はどこにもない。
その時、
「ふっふっふっ…」
「くっくっくっ…」
突然、空から二体のドーパントが現れた。
一体は牛骨の面を着け、黒いローブを纏い、鎌を持ったドーパント。
もう一体は魔女の面を着け、白いローブを纏い、ハサミを持ったドーパントだ。
「我が名はティアー。」
「我が名はバイタル。」
「生と死の境界を切り裂き…」
「死者の魂を呼び戻せる…」
「「至高にして絶対の存在なり!」」
ティアー・ドーパントとバイタル・ドーパント、か……なるほどね。前回の死人還りがドーパントの仕業なら、今回もってことか。
「お前達が死人還りを起こしていたんだな!?」
「ふふふ…その通り。」
「素晴らしいだろう?我らの力は!」
ティアーとバイタルは交互に喋る。
「それで、僕達に何の用だ?」
「なぁに、我らの力を信用せん者どもがいると聞いてな。」
「その不届き者どもに罰を与えに来たのだ。」
要するに、僕達を倒したいってことだね?
「面白い。死者が蘇るなんてあり得ないからね、どうせインチキしているんだろ?僕がそのタネを暴いてやる!」
言いながら僕はクロスドライバーを装着し、
〈CROSS!〉
「変身」
〈CROSS!〉
クロスに変身する。
「ならば見せてやろう。」
「我らの力を!」
ティアーは鎌を、バイタルはハサミを、それぞれ持って襲いかかってきた。
ドナルドは僕に言う。
「今日は君がどれくらい強くなったか、見せてもらうね。」
「うん。ドナルドはゆっくり見物してるといいよ」
僕がそう言うと、ドナルドは下がった。
僕は鎌とハサミをかわしながら、ティアーとバイタルにダメージを与えていく。
この二体、見た目と武器の割にはそんなに強くない。むしろ弱い部類に入る。
僕はレクイエムサーベルで鎌とハサミをまとめて受け止めた。
「どうしたの?力を見せるんだろ!?」
そのまま鎌とハサミを弾き上げ、レクイエムサーベルで二体を斬りつけた。
「ぐっ!」
「ごあっ!」
二体はアスファルトを転がり、よろめきながらも立ち上がる。
当然この隙を逃す僕じゃない。
僕はすかさずレクイエムサーベルにレクイエムメモリを装填、
〈REQUIEM! CANTABILE〉
レクイエムサーベルから光線を放った。
「「ぐああああああああああ!!」」
二体は爆煙に包まれる。そして煙が晴れた時、奴らの姿はなかった。
「いない!?逃げ足の速い奴らだ…!」
思わず悪態を突く僕。
でも僕は次の瞬間、見てしまった。
男性と女性が、肩を並べて歩いて来るのを。
それは、僕にとって最も親しい人物だった。
二人は僕を冷たい目で見つめた。
僕は知らないうちに二人を呼んでいた。弱々しい声で。
「父さん……母さん………。」
「お姉様、一つ訊きたいことがありますの。」
園咲家。食事の場で、若菜は冴子に尋ねた。
「何かしら、若菜?」
「…以前解決された死人還りが再び起きているそうですが、何かご存知?」
同時に、さっきから大盛り炒飯を口に掻き込んでいた井坂の手が止まる。
「……知ってますよその事件。確か、死者を蘇らせられるドーパントがいたとか…実に興味深い。前回はチャンスを逃しましたが、まさか再び起こってくれるとは…そのメモリ、ぜひとも手に入れたい…!!」
井坂の目には貪欲な光が宿っていた。
と、
「違うんだよ井坂君。」
琉兵衛が口を挟んだ。
「違うとは?」
尋ねてくる井坂に、琉兵衛は詳しく説明する。
「あれは、死者を蘇らせるドーパントの仕業ではない。変身のドーパントが、死人に化けていただけなんだ。」
「…そうなのですか、冴子君?」
今度は冴子に尋ねる井坂。
「ええ、前回の死人還りの真相は、そういうことなんです。」
「ふむ…だが、強力なメモリであることに違いはない。やはり欲しい…」
井坂の目に再び貪欲な光が宿る。
冴子は若菜の質問に答えた。
「死人還りのことだったわね。もちろん知っているわ」
若菜は身を乗り出す。
「それで、今回の真相は…?」
「どうして…どうして父さんと母さんが!?」
クロスは激しく動揺していた。それはそうだろう。一年前に死んだはずの両親が、こうして目の前に現れたのだから。
対する父、隼人は冷たい視線を送りながら、クロスに言う。
「まだわからないのか?生き返ったんだよ俺達は。」
「嘘だ!死人は絶対に生き返ったりしない。父さんだってそう言ってたじゃないか!」
さらに激しく動揺するクロス。
そんな彼に、母、優子は、やはり冷たい視線を送りながら言う。
「でも、これは事実よ。私達は生き返ったの」
「そんなはずない!そうだ、あいつら……」
クロスは声を張り上げる。
「いるんだろ!?出て来い!!出てきて説明しろ!!どんなペテンを使った!?」
「黙れっ!!!」
「!?」
隼人はクロスを黙らせた。
「そんなことはどうでもいい。俺達はな、お前のことを恨み続けてきたんだからなぁ……。」
「僕を?何で…」
「俺達が死んだ理由をよーく思い出してみろ。俺達がなぜ死んだか、それはお前が弱かったからだ!」
「!!!!!」
クロスは衝撃を受けた。これは彼自身一番気にしていることなのだ。
隼人は続ける。
「おかげで俺達は、一条の光も差さない闇地獄を、一年もさまようはめになったわけだ。」
優子も言う。
「憎かったわ。あなたがずっと憎かった」
再び隼人。
「ああ、憎いよ。俺はお前が憎い!」
「う……あ……」
クロスは何も言い返せず、ただ呻くことしかできない。
「だから、死ね。」
「!?」
父親から発された驚くべき言葉に、クロスは再び衝撃を受ける。
「あなたも、私達と同じ苦しみを味わうのよ。」
「心配するな。すぐに生き返らせてやるから」
言うが早いか、、二人はダブルドライバーの片方しかないような形状をしたドライバー、ロストドライバーを装着し、さらに隼人はFと書かれた黒いメモリを、優子はMと書かれた白いメモリをそれぞれ取り出し、起動させた。
〈FATHER!〉
〈MOTHER!〉
そして、
「「変身」」
二人はロストドライバーのメモリスロットにメモリを挿し込み、開く。
〈FATHER!〉
〈MOTHER!〉
隼人は男性の天使像をかたどったマスクを被った黒い戦士、仮面ライダーファザーに、優子は女性の天使像をかたどったマスクを被った白い戦士、仮面ライダーマザーに変身した。
二人は圧倒的な体術でクロスを追いつめる。
すると、マザーはWのトリガーマグナムそっくりな銃、マザーマグナムを取り出し、ファザーはクロスのレクイエムサーベルそっくりな剣、ファザーサーベルを取り出し、さらにクロスを攻め立てる。
クロスは相手が両親の姿をしていることもあり、反撃できない。
かといって、二人の攻撃が激しすぎて防ぐこともできない。
反撃も防御もできないクロスは、大きく体力を減らされていく。
ついにクロスは膝をついてしまった。
「弱いな光輝。」
「あなた、この一年で何も学ばなかったの?」
「くっ…!」
クロスにかけられる冷たい言葉。クロスはそれでも立ち上がる。
だが、彼はもはや満身創痍。とても戦えない。
「もういい。これで終わらせるぞ」
「そうね。」
ファザーはファザーサーベルのスロットにファザーメモリを装填。
〈FATHER・MAXIMUM DRIVE!〉
「ファザーギルティー」
マザーもマザーマグナムにマザーメモリを装填。
〈MOTHER・MAXIMUM DRIVE!〉
「マザーカプリッチオ」
二人はそれぞれの武器を構え、
「「はーっ!!」」
ファザーはエネルギーの斬撃を、マザーは巨大なエネルギーの弾丸を放った。
「うわああああああああああああ!!!!!」
クロスはこれをまともに食らい、大ダメージを受けて変身が解けてしまった。
だが、絶命には至っていない。
「しぶとい奴だな。今とどめを刺してやる」
光輝にファザーサーベルを突きつける。
しかし次の瞬間、野球ボールが飛んできてファザーの顔面に直撃した。
「ぐあっ!何だ!?」
ファザーが驚いて野球ボールが飛んできた方向を見ると、
「ハッハッハッハ☆光輝君はやらせないよ♪」
ドナルドが歩いて来ていた。
「貴様…俺達の邪魔をするつもりか?」
「もちろんさぁ♪」
「…いいだろう。まず貴様から殺してやる…」
ファザーはファザーサーベルを構えた。
だが、
「待って。」
マザーがそれを阻んだ。
「光輝、今はまだ生かしておいてあげる。けど覚えておいて。この件から手を引かなければ、私達は今度こそあなたを殺す。」
マザーはファザーを連れてその場を去っていく。
「父、さん……母…さん……」
光輝は最後の力を振り絞って二人を呼ぶ。
しかし、返ってきた答えは、無情だった。
「俺達は」
「私達は」
「「もうお前(あなた)の親じゃない。」」
「………」
光輝は何も言えなかった。
(どう……して……)
光輝の意識は、闇に堕ちた…………。
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今回からクロス編です。 駄文ですが、よろしくお願いします。 |
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