ヴァンガード合同誌サンプル |
とある日の騎士団にて
ロイパラほのぼの日常ネタ
「うぅ、いってぇ」
『もう、なにやってんだよ馬鹿っ』
衝撃から立ち直り、二人はのろのろと体を起こす。勢いが強いまま転げたため、全身が痛かった。
「そ、それはそもそもういんがるが……あ」
『? なんだ?』
起き上がり、ういんがるに文句を言おうとしたリューはある一点を見つめて動きを停止させた。その様子にういんがるは首をかしげつつも同じ方向へと目を向けた。
『……あ』
そこには無残にも砕け散ったガラスの破片が散らばっていた。破片の形状からどうやら元は瓶の形をしていたようで、その中央には形の崩れた船の模型があった。どうも二人が倒れた衝撃で近くの棚から落ちたようだった。
『これってたしかボトルシップだっけ。メガラニカの』
ういんがるはガラスの破片に気をつけながら少し模型に近づく。破片の位置を見るに、この模型が瓶の中に入っていたのはたしかだろう。
つまり、この残骸の原型はメガラニカの船乗りの間で作られるボトルシップで間違いないない。
そして、つい最近この手のインテリアを部屋に飾り始めたという騎士がいたことを二人は思い出した。
「なぁ、ここってさ……」
『うん。ブラスター・ブレードの部屋だな』
ういんがるはぐるりと部屋を見渡して言う。
たしかにそこは勇気の剣を受け継いだ、一人の青年騎士の自室だった。
『そう言えばガラハッド様から土産としてもらったって言ってたかなぁ』
「のんきなこと言ってる場合じゃないって! なんでわざわざブラスター・ブレード様の部屋に入ったんだよ!」
『うーんうっかり』
「うっかりじゃすまないって!」
あくまでもマイペースなういんがるに、リューは一人焦る。
尊敬する先輩騎士、それも騎士王の盟友でありこの騎士団でも英雄として一目置かれているブラスター・ブレードの私物を壊してしまったのだ。
かの英雄は温厚で自分のような見習いにも優しい人間ではある。だが仲間思いの彼が貰いものを壊されて無反応でいるともまた思えなかった。
「どうしよう……さすがに怒るよなぁブラスター・ブレード様」
『普段怒らない人ほど怒ると怖いっていうね』
顔を真っ青にしながらおびえるリューに、ういんがるはトドメの一撃をお見舞いする。ブラスター・ブレードが激昂したところなぞ見たことはないが、戦場での彼の活躍を考えるにもし本気に怒られたりしたらただでは済まないだろう。
「う……、というかういんがるなんでこの部屋に入ったんだよ! お前がここに入らなきゃこんなことにならなかっただろ!?」
『なっそれを言うならリューがこんな何もない所ですっ転ばなければ良かったんだよ!』
「なんだとっ!」
リューとういんがるの二人は現状から目をそらすかのように言い争う。このまま原因を相手に押し付けたところで解決したりはしないのだが、それに気づくにはまだまだ二人は精神的に幼かった。
「おい、こんなところで何やってんだお前ら」
そんな二人のむなしく生産性のない口喧嘩を、一人の青年騎士の声が遮った。
サーカス団に気をつけて
オラクル&ペイルムーン。
ペイルががっつり悪の組織してます。
「なんでせっかく取った休暇がガキのお守でつぶれるんだよ……」
メテオブレイク・ウィザードの呻き声じゃ、人並みの中に消えていった。
サーカス団のテント近くではすでに大勢の人が集まり、今か今かと彼らの芸を見るのを楽しみに列をなしている。子連れの家族や恋人同士など、幸せそうな人々の中で、唯一この男魔術師だけはげんなりと空を仰いだ。その際、肩に乗っていたツクヨミがきゃーと声を上げ、メテオブレイクは神鷹一拍子に頭を突かれる。危ない姿勢を取るな、ということか。
魔術師としては筋肉質で力のあるメテオブレイク・ウィザードにとって、ツクヨミを肩に乗せるぐらいは造作もないことだが、気持ちの問題かいつもより疲れを感じる。
「くっそ……ガキの世話なんて押し付けやがって……」
「文句言わない。アマテラス様直々のお願いなんだから」
悪態をつくメテオブレイクの横で、赤く長い髪をポニーテールにした一人の魔女が、彼をたしなめた。
「たくっ……。つか、なんで来たココ。まさかお前もサーカスが見たいーなんて思ってたんじゃないだろうな」
「なっ、そんなわけないでしょ! あなた一人にツクヨミ様をお任せするのが心配だっただけよ!」
メテオブレイクの言葉に、ココと呼ばれた魔女は反論する。
スカーレットウィッチの称号を持つ彼女は、メテオブレイクと同じく有事の時にしか仕事のない戦闘用社員だ。当然メテオブレイクと同じように手の空いている彼女は、自分からツクヨミに同行することを志願したのだった。
「はいはい、そういうことにしといてやるよ。しっかし、いつになった中に入れるんだか」
さすがは惑星一人気のサーカス団。客席に座れるようになるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
「メテオブレイクはサーカス見たことあるのー?」
頭上のツクヨミが覗き込むようにしてメテオブレイクに尋ねる。危ういバランスになる彼女を一拍子が素早く支えた。
「あぁ? あんなもん見たって何になるんだよ。バカバカしい」
メテオブレイクの返答に、ツクヨミは頬を膨らます。
「あんた小さい子にそんなこと言う奴がありますか……」
同僚の言動にココはそっとため息をつく。この男に子供の世話を任せるのがやはり無謀だったのだろう。
「とりあえず、お前はおとなしくしとけよ。じゃねえとサーカス団に攫われてもしらねぇぞ」
「? 攫われるの?」
首をかしげるツクヨミにメテオブレイクは小さく舌打ちをする。その瞬間一拍子にまた頭を突かれた。いつか焼き鳥にしてやろうかこいつ。
「ちょっとした脅し文句みたいなものですよツクヨミ様。悪い子はサーカス団に攫われるぞーっていう」
仕方ないので隣にいるココが補足説明する。ツクヨミはそれを聞いてへぇと感心したように声を出す。
「あ、わかった! 攫われるのがいやだからメテオブレイクはサーカス見に来たことないんだ!」
「あぁ!?」
「ふっ……」
唐突に思い立ったとばかりに叫ぶツクヨミの言葉に、メテオブレイクは眉間に皺寄せ、反対にココは思わず笑ってしまった。
当のツクヨミと言えば一人で納得し、満足気な顔をしている。
「このガキぃ……。女神じゃなかったらホントにサーカス団に売り飛ばすぞ」
「コラ、そんなことを言うもんじゃないよ。……ふっ」
「まだ笑ってんじゃねえ!」
テンポのいい二人の会話にツクヨミはけらけらと彼の頭上で笑い続ける。メテオブレイクはがっくりと肩を落とす。もちろん実際にするとツクヨミが危ないのであくまでも心の中でだが。
(次は絶対引き受けねぇ……!)
メテオブレイクはそう胸に堅く決心する。多分無理だろうと、横にいるココは思っていたが。
「はい、では次の方どうぞー」
三人(と一匹)がそんな漫才を繰り広げいてる間に、列はすでに受付口にまで辿りついていた。
メテオブレイクは肩に乗っていたツクヨミを地面にそっと下ろす。
「こっから先は妙な癇癪起こしたりするんじゃないぞ。いいな」
「むっ。はーい」
彼の言葉にちょっぴり不機嫌になりながらもツクヨミは素直に返事をした。ここで彼の機嫌を損ねてはショーが見られない。
生まれて初めてのサーカスショーにツクヨミは完全に浮かれていた。
戦いの始まり
ロイパラ中心でシャドパラ離反話。
「そうだな、ここは大穴で俺が勝つ、というのはどうだ」
突如、彼らの後ろから話しかけてきた男の声。
「! アルフレッド!?」
「騎士王様!?」
ロイヤルパラディンのトップであり、騎士王の名を抱く男がそこにいた。
盟友であるブラスター・ブレードは目を見開き、ランドルフたちも剣を構えたまま、まじまじと彼の方へと視線を向けた。
「ん? なんだ、始めないのか?」
いたずら小僧、というのが的確な笑みを浮かべ、アルフレッドは問う。片手に自前の剣を持ち、今にも模擬戦に参加せんという状態だ。
「い、いや、騎士王様も参加なされるので?」
頬が引きつった状態でランドルフは尋ねる。いつもは軽薄なゴードンも含め、この状況に戸惑いを隠せない。
もちろん当人であるアルフレッド本人はその様子も含め楽しそうに笑っていた。
圧倒される周囲の中で一人、沈黙の騎士が隣のブラスター・ブレードを片肘で突く。今この場をなんとかできそうな人物は彼をおいて他にない。
「……アルフレッド」
「ん? なんだブラスター・ブレード」
一時の硬直が解けたブラスター・ブレードが、騎士王の名を呼ぶ。普段より少し声が低いのは気のせいではないだろう。
「一刻ほど前にボールス卿からお前の居場所訊かれた気がするのだが、お前はまた仕事をサボって……」
半眼で問い詰める友の姿に、アルフレッドはさっと目をそらした。それこそが一種の証拠となる。
「まぁ気にするほどのことじゃない」
「それですまされる問題か!」
ブラスター・ブレードはアルフレッドを怒鳴りつける。ロイヤルパラディンでも騎士王に向かってそんなことをするのは彼ぐらいなものだが、悲しいことにその程度でアルフレッドが行動を改めることは、ない。
「まぁそう怒ることじゃないだろう。やるべきことはしっかりやっているしな」
至って気楽な本人に、ブラスター・ブレードはため息しか出ない。
「ホントにその通りなら私が苦労することもないんですけどねぇ」
「ボールス卿!」
突如会話に介入した男を見て、ブラスター・ブレードが声を上げる。メガネと片手の本、腰のサーベルが特徴的な彼が、断罪の騎士の名を持つボールスその人だった。
ちなみに彼の現在の役職は仕事を放棄したがるどこぞの騎士王の監視役である。
「お前よくわかったな」
「ギャラティンが知らせてくれたんですよ」
あくまでも余裕な騎士王にボールスは告げる。驚いたのはブラスター・ブレードのほうで、見ればたしかに先ほどとは別の位置にギャラティンがいることが確認できる。二人は話している間に一人黙ってこの場を去り、ボールスを呼んできたということだろう。
「まったく、たまには見逃してくれてもいいだろうに」
「たまに、で済んでないからわざわざ探しに来てるのですが」
騎士団の中でもトップクラスの実力を持つボールスの言葉には、底知れぬ凄みがあった。
アルフレッドはそれを聞き、やれやれと肩をすくめる。
「仕方ないから戻るとするか。参加したかったのにな」
「いいからさっさと行け!」
名残惜しそうにするアルフレッドに、ブラスター・ブレードは叫んだ。その間にボールスがしっかりとアルフレッドを掴んで引っ張って行った。
「相変わらず嵐のような人だよな、騎士王様」
誰かの呟きが、一種の脱力感と共に、その場に流れて行った。
作物たちの朝
ネオネクほのぼのネタ
「リリーナイト!」
「げ……」
ネオネクタールの騎士達が守る、隣国との境界線。そこの場所で一人の男の怒号が迸った。
男の正体は菖蒲の遺伝子を宿したバイオロイドの騎士、アイリスナイト。そして彼から逃げようとしているのが透百合の遺伝子を宿したリリーナイト・オブ・ザ・バレーだ。
コンビの騎士として有名な二人で、リリーナイトを怒鳴りつけるアイリスナイトの図は、ネオネクタールの日常として受け入れられている。
「ア、アイリスそんなに怒ってると血圧上がるぜ?」
「誰のせいだ誰の!! 貴様また一人で敵陣に突っ走っただろう!」
「っていつの話してんだよもう三日も前じゃねえか!?」
般若の形相のアイリスから半ば逃げつつ、リリーナイトは反論した。
アイリスが言っているのは三日前に起きた襲撃事件の話である。その襲撃事件の際、迎撃に出たのは当然のごとくネオネクタールの騎士たちなのだが、その時のリリーナイトの行動がアイリスナイトの逆鱗に触れたのだ。
「それはお前の特攻に付き合って怪我したのが原因だったことを忘れてはいないだろうな」
「……そうだったなすまん」
普段から熱血漢で知られる彼は、今回の襲撃事件の時も一人勇み足で攻撃を開始した。その結果、コンビとしてそれに付き合ったアイリスナイトは重傷とはいかないまでも怪我をし、昨日まで療養していたのだ。
後方支援として高い実力を示すリリーナイトとは違い、アイリスナイトは前衛として活躍する騎士である。必然的に、彼の特攻で被害を被るのはアイリスナイトだけだった。それでも二日の療養で復活できるのはさすがと言うべきだろうか。
「とにかく! お前はまず考えてから行動しろ!」
激しい視線が、リリーナイトに突き刺さる。
「わ、分かったからその顔やめろって。こえーんだよ……」
リリーナイトはその視線に苦笑いを浮かべる。頼りになる相棒だが、この凶暴な顔と口煩さはなんとかならないものだろうか、と彼は思う。
「リリーナイト」
「な、なんだよ! 俺何にも言ってないだろ!?」
唐突に名を呼ばれ、じろりとこちらを見られたリリーナイトは自分の考えがバレたのかと焦る。だが、アイリスナイトはそれに怪訝な顔をした後、すぐに視線を別の場所へと移動させる。
「あれ、ウォータリング・エルフじゃないか?」
「へ?」
そう言われて彼の視線の先を見れば、たしかに魔法の如雨露を持つ少女の姿が見えた。さきほどの視線が何かを攻め立てるためのものではないと気付いて、リリーナイトはほっと胸をなでおろす。
「アイリスさーん! リリーさーん!」
「おーう。どうした嬢ちゃん」
自分たちの名前を呼びながら駆け寄ってくるその少女をリリーナイトは大きく手を振って迎えた。アイリスナイトも先ほどの般若の顔はすでになく、小さく微笑みを浮かべていた。
「おはよう、ウォータリング・エルフ。朝の仕事は終わったのか?」
「おはようございますアイリスさん! ばっちり終わらせてきましたよ!」
アイリスナイトの問いに、少女は元気よく答えた。
「でも珍しいな、こんな時間にここへ来るのは」
リリーナイトがそう言うと、少女ははっとして手に持っていたバスケットを二人に差し出した。
「はい、おばあちゃんから騎士様たちへの差し入れです!」
差し出されたバスケットから立ち上るあまい香りに、リリーナイトは満面の笑みを浮かべた。彼女の祖母の料理はもちろん騎士たちの中でも評判である。
「おぉやった! サンキュー」
「コラ、はしたないぞリリーナイト」
さっそくつまみ食いをしようとする相棒の手を叩き、アイリスナイトは少女からバスケットを受け取る。
そのことで横でリリーナイトが文句を言っているが、今は無視だ。少女のほうも見慣れているのか、にこにこしながらその様子を見守っていた。
「いつもすまないな。貴婦人殿に礼を言っておいてもらえるか。それと……」
アイリスナイトはそこまで言うとバスケットからパイを一つ取り出すと、布でくるみそれを少女に手渡した。
「できればそれをヘイヨー・パイナッポーにも届けてくれるか?」
「ヘイヨーさんに、ですか?」
アイリスナイトの言葉に少女は首をかしげる。リリーナイトのほうも不思議そうな顔をしていた。
「あぁ。非公式とは言え、彼もこの国を守る存在には変わりないからな」
頼めるかとアイリスナイトが尋ねれば、少女は元気よく返事をした。答えはもちろんOKだ。
「じゃあそうと決まれば今すぐ行ってきますね。では、また後で」
それだけ言うと、すぐに少女は自分の荷物を持ってその場から走り去っていった。
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CC大阪89で出すユニット合同誌のサンプルです。 SS4本を載せました。 | ||
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