オトギバナシ『美女と野獣』
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「お前は罪を犯した。だから罰をくれてやる」

 目覚めると、若者は醜い野獣に変えられていた。魔女の怒りを買ったのだ。元に戻る方法はただひとつ。真実の愛。しかし、醜い野獣の姿を見て、誰が愛してくれるというのか。野獣となった若者は己を恥じ、屋敷にずっと閉じこもるのだった。

 

 そんなある日、旅の娘が屋敷に訪れる。彼女は清らかで美しく、意外にも野獣の醜い姿を見ても怯えず、人として接してくれた。野獣にとって正に理想的な女性だった。

 一目惚れした野獣は、美女を盛大にもてなした。美味しいご馳走を振る舞い、花や宝石を贈った。美女は感謝と共に天使のほほえみを返し、野獣の心をとろけさせた。「この人こそ真実の愛を誓える人」と確信した野獣は、美女に求婚する。驚いた美女は、顔を赤らめ戸惑うが「こんな私で良かったら」と快諾してくれた。

 しかしその夜、野獣は美女と結ばれることなく命を落とした。美女の正体は結婚詐欺師だったのだ。野獣の未亡人となり、屋敷と莫大な財産を全て手に入れた美女は、幸せに、とても幸せに暮らすのだった。少なくとも、美女の夢に魔女が現れるまでは…。

 

「お前は罪を犯した。だから罰をくれてやる」

 目覚めると、美女は醜い野獣に変えられていた。魔女の怒りを買ったのだ。元に戻る方法はただひとつ。真実の愛。しかし、醜い野獣の姿を見て、誰が愛してくれるというのか。野獣となった美女は己を恥じ、屋敷にずっと閉じこもるのだった…

 

 

「やれやれ、またしてもミイラ取りがミイラになりおったか。……ま、結婚詐欺師が同業者に何人殺されようが、知ったことではないがの」

 魔女は水晶玉を観ながら嘆き、そして微笑んだ。水晶玉には、若い娘が夢中になりそうな美しい若者が映されていた。野獣となった娘の噂を聞きつけ、その美貌で財産を奪おうと屋敷を目指しているのだ。

 負の連鎖は、今しばらく止まりそうにない。

説明
ディズニーの『美女と野獣』を観ているうちに、ふと思いつきました。(約800文字)
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