【南の島の雪女】琉菓五勇士チンスゴー(1)
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【あらすじ】

 

「必殺技は使えますか?」

俺はヒーローになるための面接を受けていた。

 

琉菓五勇士チンスゴー。

沖縄の平和を守る、五人(五本?)のチンスコウどもだ。

俺はある理由で、このチンスコウどもの新メンバーにならないと

いけないらしい。ふざけた話だ。

俺は「雪女」だ。チンスコウではない。

チンスコウと雪女が協力して、マジムン(魔物)を倒す。

そんなことが本当にできるのか…いや、できないと思う。

俺は今、必殺技を使えないのだから。

 

 

【主な登場人物】

 

・白雪 … 雪女。とある理由で沖縄へ逃げ、風乃と同居している。

      沖縄では雪の術を使えないため、無力。

 

・風乃 … 高校1年生。霊感があり、幽霊と仲良くしている。

      先祖の力を使って、白雪を守ろうとするが、変な先祖ばかりである。

 

・琉菓五勇士チンスゴー … 沖縄の平和を守る5人(5本?)のチンスコウたち。

              体はもろくて崩れやすいが、何度でも再生産できる。

 

・ヤナムン … 悪霊。マジムン(魔物)を操り、人々を苦しめる。

        チンスゴーたちと対立している。

 

 

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【男性用】

 

ある晴れた休日、風乃と白雪は、近所の公園を散歩していた。

 

「風乃、俺、ちょっとトイレに行きたいのだが…」

 

「トイレならあるよ、ほらあそこの男子トイレ」

 

「おお、かたじけないな!

 じゃあ行ってくるぞ!

 …ってオイ! コラァ!」

 

白雪は風乃の胸倉をつかんで、ギロリとにらむ。

 

「俺は女だ!

 俺に、男子トイレをすすめるんじゃない!」

 

「だって、セリフも行動も男っぽいじゃないですか〜

 つい、男子トイレとか男性用下着とかを

 すすめてしまいそうだよ」

 

「これは生まれつきだ!

 俺は、身も心も女だ! お・ん・な!」

 

白雪は、両の拳をにぎりしめて、髪をふりみだし、

大声で熱弁をふるう。

熱き青年男子像そのものだ。

耳をふさいで、うるさい大声をガードする風乃。

 

「そんな大声ではっきり言われても、

 まるで説得力がないよ、白雪…」

 

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【男性用2】

 

「ところで、トイレに行かなくていいの?」

 

「おお、そうだ!

 トイレに行く途中だったな。

 すっかり漏らすところだったぞ!」

 

白雪は、女性用トイレのほうへと走っていった。

 

「はあ…なんで、白雪って男っぽいんだろう。

 あんなにオレオレ言ってたら、いつか本当に

 男になってしまいそう」

 

「う、うわぁぁぁ!?」

 

白雪の悲鳴が、トイレから聞こえてきた。

 

「どうしたの! 白雪!

 誰かいたの!? 変質者!?」

 

風乃は、起きた事件を楽しむように、

笑顔を浮かべながら、トイレに突撃していった。

 

「変質者なら、どんなに良かったことか…」

 

白雪の顔は、たいへん青ざめている。

 

「俺は今、大変信じられない光景を目にしている」

 

「は?」

 

「はえている」

 

「何が?」

 

「だから、はえていると言ってるのだ!」

 

白雪は顔を真っ赤にして叫ぶ。

 

「あ、何がはえているか、わかった!

 おちん…」

 

「チャックをしろ」

 

白雪は、手で風乃の口をおさえつける。

ちなみに、白雪の手はまだ洗っていない。

 

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【真夜中の拾い食い】

 

「これで男になれたじゃない!

 良かったね!」

 

「うるさい! 人の気も知らんで!」

 

「そんなに怒らないでよ〜白雪」

 

「怒ってない!

 …しかし、どう考えてもおかしい。

 なぜ俺の身体に異変が起きた?」

 

「変なものでも食べたんじゃないの?」

 

「変なもの…

 心あたりがあるぞ。

 昨日の夜食べた『ちんすこう』のせいかもしれん」

 

※ちんすこう = 沖縄のお菓子。ビスケットのような焼き菓子。

 

「昨日の夜? ああ、道端に落ちてたあからさまに怪しい

 虹色のちんすこう?」

 

「拾い食いはいけないとわかりつつ、つい食べてしまったのだ。

 道端に落ちているものを食べるなぞ…

 いやしかし!

 腹が減っては戦はできぬ!

 とつい食べてしまったのだ」

 

「どこの戦に出かけるつもりなの、白雪…?」

 

腹が減っては戦はできぬというが、白雪は、別に戦をしているわけではない。

いったい戦とは、何だったのか。

風乃は首をかしげる。

 

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【トイレを我慢】

 

白雪は、女子トイレの方向をじっと見つめている。

 

男性のアレがはえていることに驚き、

途中でトイレを出たせいか、白雪は用を足しきれていない。

 

すごくトイレに入りたそうだ。

 

「トイレ我慢してるの?」

 

「うむ…

 俺に男性のアレがはえていると

 思うと、怖くてトイレに行けないのだ」

 

白雪の肩が少しふるえている。

 

「そうなの…

 じゃあ、私が一緒に行ってあげる。

 じろじろ…じろじろ…えへへ…」

 

風乃は、変質者的いやらしい目つきで笑みをうかべ、白雪の股のあたりを凝視する。

 

「却下する。断じて却下する」

 

何をされるかわからない。

白雪は風乃の提案を、即答で、はっきりすっきり断った。

 

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【とりあえず帰宅】

 

白雪と風乃は、今後のことを落ち着いて考えるべく、

ひとまず帰宅することにした。

 

風乃の部屋。

白雪と風乃はベッドに腰掛けていた。

青い顔の白雪。

 

「くそ、男になってしまうなんて…

 これから俺はどうしたらいいんだ」

 

「白雪、とりあえず、買いに行きましょう」

 

「何をだ」

 

「男性用下着を買いにいきましょう!」

 

「ケンカなら買うぞ」

 

白雪は、ポキポキと腕を鳴らした。

 

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【アレの呼び方】

 

「白雪。白雪の股間についてるアレの呼び方を考えてみたの。

 直接的に言うと、怒られるから」

 

「俺だけじゃなくて、世間のいろんな方面から

 怒られそうな気がするが」

 

「まあまあそう言わず、聞いてみてよ」

 

「…聞きたくないが、聞いてみようか」

 

「えっとね」

 

「言っておくが、

 ソ、ソー、ソーセーz…、とか、

 ヴァヌァーヌァとか、

 安易な呼び方に変えたわけじゃないだろうな?」

 

顔を赤らめ、目をそらす白雪。

恥ずかしい呼称の明言を、微妙なフレーズで避ける。

 

「ちんすこう!

 白雪のお股のちんすこうだよ!」

 

「斬新ではないか!」

 

思わず感心する白雪であった。

 

 

 

次回に続く!

 

 

説明
沖縄県で雪女が活躍するコメディ作品。
南の島の雪女、第6話です。(基本、1話完結ものです)
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タグ
南の島の雪女 沖縄 雪女 妖怪 コメディ 

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