梨穂子のダイエット大作戦
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「よぉし! やるぞぉ〜〜〜!」

 カレンダーに向かって気合を入れる梨穂子に純一は呆れた声を出した。

「また、ダイエットか……これで何回目だ?」

「今回は大丈夫だよぉ! 私が今まで何回、ダイエットに頑張ってると思ってるのよぉ!」

 胸がぷるんっと揺れ、梨穂子はえっへんと笑った。

「……」

 何度もダイエットしてるってことは何度も失敗してるってことだろうと突っ込みたかったが我慢した。

 むしろ、この可愛いバカを応援してやるのも幼馴染兼恋人の義務だろうと純一は妙な使命感を覚えた。

 バシンッとあぐらをかいたひざを叩いた。

「ダイエットに成功したら、僕が焼肉を奢ってやろう!」

「本当ぉ!?」

 目を輝かせる梨穂子に純一はコクリと頷いた。

「約束だ!」

「やったぁ♪ よぉし、やるぞ〜〜〜〜! オォ〜〜〜〜〜!」

 拳を振り上げる梨穂子に純一は本当に大丈夫なのかと怪しくなった。

 

 

 それから、一週間後。

「さぁ、梨穂子! 運命のときだ!」

 バンッと身体測定に使いそうな体重計を見せ、純一はふんっと鼻を鳴らした。

「え……っと」

 目を泳がせる梨穂子に純一は自信満々に叫んだ。

「さぁ! この一週間で何キロ痩せたか僕に見せてくれ! 焼肉の約束があるぞ!」

「うぅ……神様」

 体重計に乗り、梨穂子は目を瞑った。

「……」

「純一?」

 そっと目を開けると純一の顔が真っ赤になった。

「二キロも増えてるじゃねーか!」

「あうぅぅぅぅ……」

 怒鳴られ、梨穂子は小さくなった。

「なんで、ダイエットして、二キロも増えるんだ!? 説明しろ説明!」

 本気で呆れたのか語気を荒げる純一に梨穂子は今にも泣き出しそうな顔で指を胸の前でチョンチョンさせた。

「実はねぇ〜〜……駅前でねぇ〜〜……」

「それ以上言うな……」 

 情けなくなってきた。

 そういえば、今、駅前の甘味屋でセールスをしていることを思い出した。

(なんで、こうも食い物の欲望に弱いんだ……)

「あうぅぅ……焼肉は?」

「なしに決まってるだろう! ダイエットして、逆に太る奴に肉なんか食わせられるか!」

「だってぇ〜〜……」

 涙目になる梨穂子に純一はふんっとした。

「だが、僕も鬼じゃない! チャンスをやる!」

「チャンスゥ?」

「もう一週間、ダイエット期間をくれてやる! 成功したら焼肉からケーキバイキングにランクアップしてやる。もし、失敗したら……ムフフ♪」

 ゾワワと鳥肌が立った。

「や、やるよ! 今度こそ成功する! だ、だからぁ……」

 カァ〜〜と赤くなる梨穂子に純一は自信満々に顔を緩ませた。

「にへへへ……♪」

 涎をすする純一に梨穂子は顔を真っ青にした。

(こ、これは絶対にダイエットを成功させないとぉ!)

 

 

「で……どうしても、ダイエットを成功させたいわけか?」

「そうなの、香苗ちゃぁん〜〜……なにか秘訣とかなぁい?」

「桜井は意志が弱いからねぇ……素直に橘くんに蹂躙されたら!」

「じゅ、蹂躙ってぇ!? そんな、酷いよぉ〜〜……」

「アハハ♪ いいじゃない。案外、癖になるかもよ! なにされるか知らないけど!」

「だから、余計に怖いんだよぉ〜〜」

「まぁ、確かに橘くんじゃ、私達の予想を斜めに超える罰ゲームを用意してるかもね? 例えば、裸で町内一周羞恥マラソンとか?」

「羞恥マラソン……?」

「羞恥マラソン……」

「……」

「……」

 静寂が生まれた。

 先に口を開いたのは梨穂子だった。

「それくらいで済むかな?」

 香苗も頷いた。

「橘くんだからね」

 なにを想像したのか二人はため息を吐いた。

「変態だからね?」

「変態だもんね?」

 橘純一に信頼は無かった。

「なら、取って置きのダイエット法を教えてあげる!」

「とっておき?」

「これは古代ギリシャから伝わる画期的なダイエット法なのよ!」

「古代? 画期的?」

 なにか、言葉に矛盾が生じてきる気がしたが、気のせいだろうと梨穂子は納得した。

「ぼそぼそぼそ〜〜〜〜のぼそぼそ〜〜〜〜〜の」

「え〜〜〜〜〜〜!?」

「これでバッチシよ!」

 グッと親指を立てた。

「あうぅぅぅ……」

 梨穂子は涙目になった。

 

 

 さらに一週間後。

「さぁ、梨穂子! 運命のときだ!」

 デンッと構えられた一週間前よりもさらに立派な体重計を見て、梨穂子はそっと手を上げた。

「それ、どこで手に入れたの?」

「この日のために、貯金をはたいて買った! 梨穂子のためだ! しっかり計れよ!」

「相変わらずだね、純一は?」

 くだらないものに心血を注ぐ癖は昔からだが、たった一回の体重測定に保健室が使ってそうな体重計よりも価値がありそうな体重計を買うなんて世界を探しても彼だけだろう。

「さぁ、乗れ! 乗って、僕の野望の礎となれ!」

「野望の礎って……太ってること確定ぃ?」

「それは見てからのお楽しみだ!」

 ニヘヘと笑う純一に梨穂子は泣き出しそうになった。

「絶対、太ってると思ってる〜〜〜……!」

「なんだ? 涙を流して少しでも減量か?」

「違うよぉ〜〜……!」

「冗談だよ。さぁ、乗れ! 乗って、僕の……ムフフ♪」

「うぅ〜〜……ぜんぜん、信じてない〜〜……」

 本気で泣き出しながら、梨穂子は体重計に足を乗せた。

 ガチガチッと体重計の針が揺れた。

 梨穂子の目が輝いた。

「やった! 体重が二キロも減ってるよ!」

「一週間前に二キロ増えて、今週で二キロ減ったんじゃ、差し引きゼロだけどな」

 ふぅとため息を吐き、純一は腰に手を当てた。

「まぁ、約束は約束だ! ケーキバイキング連れて行ってやるよ!」

「やったぁ〜〜〜〜♪」

 

 

「よく食うな?」

「ほへぇ?」

 口の中に頬張ったシュークリームを飲み込んだ。

「おいしいよ、シュークリーム!」

「そらぁ、僕も食ってるからわかる。それよりも、ダイエットはいいのか、ダイエットは?」

「成功したよ?」

「元に戻っただけだろう……まぁ、二キロ痩せたのはすごいけど」

 今更になって、純一は思った。

「いったい、どんなダイエット法を使ったんだ?」

「えへへ〜〜……実はね、香苗ちゃんに教わったんだぁ! 名づけて「食べたつもりダイエット」!」

「「食べたつもりダイエット」?」

 眉をひそめ、どんなダイエットだと顔をしかめた。

「まず、一週間分、食べる予定のオヤツを用意する!」

「なんで、ダイエットで食べるオヤツを先に買う!?」

「そして、三時のオヤツにオヤツの封を開ける!」

「開けるのかよ!」

「最後に冷蔵庫にしまう!」

「結局、仕舞うのかよ!?」

「それで食べた気になる!」

「食べてないのかよ!?」

 ハァ〜〜とため息を吐き、口の中を絞めるための塩辛を食べた。

「無駄なダイエット法だな。というよりも、食べてないオヤツはどうしてるんだ?」

「後から食べるよ」

「結局、食うのかよ」

 ホトホト呆れる純一に梨穂子は目をパァと輝かせた。

「楽しみだな〜〜……シュークリーム♪」

「うん? シュークリーム?」

「どうしたの?」

「シュークリームを保存してるのか?」

「そうだよ! 香苗ちゃんが用意するのはクリーム系にしろって言われてたから」

 よっぽど楽しみなのかニヘヘと幸せそうに笑う梨穂子に純一は聞いた。

「それを一週間くらい、ほったらかしてあるのか?」

「後で食べるよ」

「いや……大丈夫なのか?」

「大丈夫って、なにが?」

「クリームは生ものだから、封を開けたらすぐ食べないと痛むぞ」

「え……?」

 落としかけたケーキを口に入れた。

「た、食べれないの?」

「食べてもいいが、たぶん、腹を壊すぞ」

「私のシュークリームは?」

「処分することをオススメする」

「……」

 真っ青になる梨穂子に手を合わせた。

「ご愁傷様」

「わたしのおやつぅ〜〜〜……」

説明
久しぶりに小説を更新です。
しかも、二次創作ですからね?
サイトのほうじゃ、周一ペースで更新してますが、こういう投稿系は本当に久しぶりな気がします。
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コメント
確か、そんなダイエットを聞いたことがありますが、思いっきり、身体に悪いらしいですよ。(他にもお腹の中に寄生虫を入れるダイエットなど恐ろしいものが盛りだくさん)(スーサン)
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