泡沫
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緑の濃い臭気が鼻孔を刺激する。

遮断される光は足元に影を残すだけで、僅かな光さえ届かない。

鬱蒼と生い茂る木々が風に梢を揺らされる様は、不気味以外の何者でもない。

ただ踏み固められた土が道と呼べるならば、とうに道は潰・ツイ・えていた。

 リトルガーデン――。

神の恩恵に敬意を表すと共に歴史上から抹消され、献上と言う名目の元に隔離された土地。

その実は、独特な環境に適応し特異な進化や形態を遂げた動植物が生息する、最も危険な区画。

陣地の干渉を拒み続けた代償は時として凶器にもなる。

侵入者に容赦なく牙を剥く聖域は、別名『Cemetery (墓場)』だ。

――気を抜けば死ぬ……か。

ただの脅しだと思ってたが、どうやら事実だったようだな。

脳裏をよぎる不安に気付かないように、俺はただ足を進めた。

捉えられるのは不規則に並列する樹木。

朽ちた木切れの年輪から辛うじて方角を知るのみ。

 

     (中 略)

 

「……幻聴か?」

鮮明とは言いがたいが、風に乗せられた微かな旋律に導かれるように足を進めていた。

近づくにつれ透明度を増す声。

女性特有の高音がかもしだす優しく甘美な響き。

一抹の不安でさえも拭い去る暖かさ。

魔物の罠かもしれないと。

そう思う反面、もしくは――

先行する期待が常識を弊害していた。

いや、だからこそ彼女を見つけられたのかもしれない。

切り抜かれた時間。

触れれば壊れてしまいそうなほど神秘的な光景。

声をかけるのが憚・ハバカラ・れることなど、今まで経験したこともなかった。

一心に空の寵愛を受ける少女の姿。

光の粒子を纏・マト・った翡翠色の髪。

風に踊る髪が悪戯に少女の白い肌を見せ付ける。

視線を逸らすことも叶わず、魅せられる幻惑にとらわれていた。

 

     〜絵師様募集中〜

 

一瞬で心を奪う可憐な姿。

 

その唄声は人々を魅了し、自然界に宿る精霊の力を集約した存在。

 

美しき海の女神――人魚姫。

 

その姿を見たものは富を得、その声を聞いたものは名誉を与えられる。

 

誰もが知る伝承の一説。

 

 

――人魚……姫?

掠れた耳障りな声が不意に脳を刺激する。

それが自分のものだと理解するのに数秒を要した。

途切れた歌。

閉じられていたはずの双眸が俺を映し、一瞬とも永遠ともいえる時間が崩壊した。

 

     〜企画参加者募集中〜

 

畏怖を讃・タタ・えるように珀色の眸は揺れ、色を失った肌は蒼白になっていた。

小刻みに震える体。

「ッあ……」

言葉にならない声が少女から発せられる。

「おぃ、俺は別に……」

「イヤ!!」

 

      (中 略)

    〜一点からの参加もOK〜

 

耳に残る懐かしい余韻を反芻・ハンスウ・しながら、ため息をこぼした。

それ程あの世界に引き込まれていたのか?

あの髪の色、独特な形状をした突起状の耳。

間違えなく彼女は人魚だ。

 

 

 

 

 

いないと思うけど念のため^^

二次流用・転載は禁止ですb

 

参加してもいいという方はこちらに書き込んでください^^

http://blogs.yahoo.co.jp/leelighter/MYBLOG/guest.html

説明
 どこかずれた常識。
 通じることのない思い。
些細な疑問がやがて大きな問題に変わる。
 「嘘だろ?」
 科学技術のみが先行し発展した土地。
 電気をはじめ・ガス・水道すら存在しない。唯一の救いは、辛うじて言葉が通じることだけ。
――どうして俺が…。
 いや、それよりいつから迷い込んだ?
 「あの時か!」
 人魚伝説が残る岬で人魚を――彼女の姿を見たときからすべて始まっていたのかもしれない。


※ 自作ゲームより抜粋
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