仮面ライダークロス 第二十三話 Jの迷宮/本当に必要なもの
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僕は今、鳴海探偵事務所の前にいる。

 

理由は一つ。依頼をするためだ。

 

僕が翔太郎さん達にしたい依頼。それはフェイトさんを捜してもらうこと。

 

一週間前から、突然フェイトさんと連絡が取れなくなった。

なのはさん達に訊いてみたけど、部活にも顔を出していないらしいし、フェイトさんの家にも行ってみたけど、やっぱり一週間前から帰ってきていないって…。

 

 

……これってどう考えても、何かの事件に巻き込まれてるよね?

 

 

まず、翔太郎さん達に会うことが先決。僕は事務所のドアを開けた。

「失礼します。翔太郎さんいますか?」

でも、翔太郎さん達はいなかった。正確に言えば、いなかったのは翔太郎さんと亜樹子さん。「…フィリップさんはいるかな?」

僕はガレージに入る。フィリップさんはいた。

「フィリップさん。」

「…君か…」

どうしたんだろう?ずいぶん元気がなさそうだけど…。

「どうかしたんですか?」

「…いや、何でもない…」

明らかに何でもあるよね…。

まぁいいや。

「翔太郎さんと亜樹子さん、知りませんか?」

「ああ、二人なら…」

フィリップさんの話だと、翔太郎さんと亜樹子さんは今、無実の罪で逮捕された刃野刑事のを釈放するために、ダイヤモンドの女と呼ばれている女性を捜しているらしい。

ダイヤモンドの女とは、少し前から女性の行方不明事件が発生しており、事件現場の近くには、ダイヤを持った女性の姿が見かけられているそうだ。その女性こそが、ダイヤモンドの女らしいんだけど…ん?女性の行方不明事件?

まさか、フェイトさんがそれに巻き込まれた、なんてことはないよね?ね?

「それで翔太郎達は今、ブルートパーズっていうクラブに行っている。そこに何らかの手がかりがあるそうだ」

「じゃあ、今から行ってみます。」

「気を付けて行きたまえ。」

「はい。」

僕は事務所をあとにした。

 

 

 

 

 

その後、僕は、一真と一緒にブルートパーズに行った。どうやら会員制のお店らしく、ガードマンがいる。僕は訊いた。

「すいません。ここに左翔太郎さんって人来ませんでした?探偵の人なんですけど…」

「ああ、それなら今中におられますよ。」

「今すぐ会いたいんですけど、通していただけませんか?」

「申し訳ありません。当店は会員制のため、モデルの方しか入れないんです。」

弱ったな…。

「どうする光輝?」

「…仕方ない。強行手段だ」

僕はガードマンさんの顔に手をかざす。

「左翔太郎さんに会いたいんです。通して下さい」

「…わかりました。」

僕と一真はガードマンさんの許可をもらって、中に入った。

「光輝。何したの?」

「アンリミテッドフォースを使って、あの人に僕達の入店を許可させた。」

「…本当に何でもできるんだな、アンリミテッドフォースって。」

「だから無限の力なんだよ。これくらいできて当然さ」さて、早く翔太郎さんと亜樹子さんを捜さないと…。

 

 

 

 

 

光輝と一真が翔太郎と亜樹子を捜すこと数分。二人は、翔太郎と亜樹子を見つけた。

「翔太郎さん。」

「光輝、一真。お前らどうしてここに?」

「依頼をしたくて…」

「悪いが、あとにしてくれ。今依頼中なんだ」

「じゃあ手伝わせて下さい。いいよね、一真?」

「ああ、俺もそのために来たからね。けど…」

「けど?」

「翔太郎さん。亜樹子さんは何でべそをかいているんですか?」

一真が言った通り、亜樹子はべそをかいている。

「いや、ちょっとわけありでな。まぁ気にしなくていいんだが…」

「あーっ!!」

突然声を張り上げた亜樹子。

「あの女かも。」

言うと、亜樹子は、赤い帽子をかぶってサングラスをしている女性に向かって歩いていった。

「聞きたいことがあるんですけど。」

「…」

無視する女性。

「ちょっと!」

亜樹子は女性を振り向かせようと、女性の肩に手をかけた。

次の瞬間、

 

亜樹子は蹴られた。

「亜樹子!」

驚く三人の目の前で、女性は亜樹子をねじ伏せる。

女性は拳を亜樹子の横顔に突き付けて尋ねた。その指には、ダイヤの指輪がはまっている。

「ダイヤの価値ってわかる?」

「え!?ね、値段…かなぁ…!?」

「美しく、そして傷付かないこと。この私みたいにね!」

そう言うと、女性はハイヒールで亜樹子を踏みつけた。

「ぎゃひぃ〜!!痛たたたたたた!!!」

「やめろ!!」

飛び出す翔太郎。

女性は踏みつけるのをやめて下がった。

「私は美しいものが好き。みんな宝石になって、この私を飾るといい…」

女性はなおも下がり、階段までたどり着く。その時、クラブの明かりが一斉に消えた。悲鳴をあげるモデル達。

「下がってろ亜樹子。」

翔太郎が言った瞬間、女性がいた場所だけ照明が当てられ、全身が宝石でできているような怪人、ジュエル・ドーパントが姿を現した。

「ドーパント!?」

驚く翔太郎と、ジュエルの登場によって悲鳴をあげるモデル達。と、ジュエルは翔太郎に向けて、手からガスを噴射した。慌てよける翔太郎。これによって翔太郎の背後にいたモデル達がガスを浴びるわけだが、信じられない出来事が起こった。

「人間が…ダイヤに!?」

光輝の言った通り、ガスを浴びたモデル達はダイヤに変わったのだ。

ジュエルはなおもガスを噴射し、モデル達をダイヤに変えていく。

「フィリップ、変身だ!!」

 

〈JOKER!〉

 

翔太郎はダブルドライバーを装着して、ジョーカーメモリを起動。

 

 

 

「わかった。」

 

〈CYCLONE!〉

 

フィリップも事務所からサイクロンメモリを起動。

 

 

 

「「変身!」」

 

〈CYCLONE/JOKER!〉

 

翔太郎はWに変身した。ジュエルはその際ガスを噴射したが、変身時に発生した突風に遮られ、攻撃は不発に終わる。

「僕達も行くよ一真!」

 

〈CROSS!〉

 

クロスドライバーを装着して、クロスメモリを起動させる光輝。

「ああ!」

一真もブレイバックルを装着して、チェンジビートルのカードを装填。

「変身」

「変身!」

 

〈CROSS!〉

〈TURN UP〉

 

光輝はクロスに、一真はブレイドに変身した。

「翔太郎くん!光輝くん!一真くん!コテンパンにやっつけちゃって!」

「任せな亜樹子。」

「私は美しいダイヤ。誰にも傷付けることはできない!」

「どうかな?試してみるか!?」

Wはジュエルを殴りつける。しかし、ジュエルの身体は頑丈で、

「ゆ、指が…」

となった。

「なんてな!!」

ウソだった。Wはジュエルを無茶苦茶に殴り、蹴りまで食らわせたが、ジュエルをその場から動かすことすら、できていない。

「何て硬い身体なんだ…!!」

驚くクロス。

『ダイヤモンドは地球上で最も硬い鉱物だ。』

「くっ…これならどうだ!!」

 

〈HEAT!〉

〈METAL!〉

〈HEAT/METAL!〉

 

Wはヒートメタルにハーフチェンジ。メタルシャフトに炎を宿し、ジュエルを打つ。

しかし、これすら跳ね返されてしまう。

『鋼鉄のシャフトでも、傷一つ付かないなんて…』

「ならこれだ!!」

 

〈REQUIEM! TONE〉

 

クロスはレクイエムサーベルの振動剣を発動させ、ジュエルに斬りかかる。

だが、弾かれた。

「そんな!振動剣は分子結合を弱めて相手を切断するのに、通用しないなんて…!!」

「まだ俺がいる!!」

 

〈SLASH,THUNDER〉

〈LIGHTNING SLASH〉

 

ブレイドはジュエルに向けてライトニングスラッシュを放った。

これも効果がない。

「何だと!?」

「言ったでしょ?私は決して傷付かない。」

「…だったらこれでどうだ!!」

 

〈LUNA!〉

〈TRIGGER!〉

〈LUNA/TRIGGER!〉

 

Wはルナトリガーにハーフチェンジ。トリガーマグナムで射撃する。

しかし、突如として壁のようなものが出現し、トリガーマグナムの光弾は、拡散して跳ね返された。これにより、Wのみならずクロス、ブレイドもダメージを受ける。

「光弾が…跳ね返されただと!?」

『ダイヤの微粒子を結晶化させ、ミラー状のシールドを生み出した…すごい…』

「噂の仮面ライダーも、大したことないのね。」

そう言ったジュエルは、去っていってしまった。

 

 

 

 

 

ジュエルを追って外に出る翔太郎達。しかし、ジュエルの姿はどこにもない。

「逃げられた!!」

「くっそ…!!」

悔しがる翔太郎と一真。

「それにしても、あの人一体…」

亜樹子が考える。と、

 

「泪です。城島泪」

 

声がかかった。

「あっ!」

光輝は驚きの声をあげる。なぜならそこにいたのは、人気モデルの上杉誠だったからだ。腕を押さえて、いることから、恐らく騒動に巻き込まれたのだろう。

「上杉さん…どういうことですか?」

翔太郎も驚く。上杉は続けた。

「彼女がああなってしまったのは、僕のせいでもあるんです。僕のせいで…彼女は…」

 

 

 

 

 

その後、夜も遅いということで、翔太郎と亜樹子は光輝と一真を帰らせ、事務所に帰った。

「痛たたたたたた!!」

亜樹子はフィリップから手当てを受けるが、消毒液が染みて痛がり、フィリップの手を払いのけた。

「あの女…風都史上最悪の悪女よ!!フィリップくん検索!!」

「そうだな。あのドーパントの対処法を見つける方が先だ」

「わかった。検索を始めよう」

二人に言われ、フィリップは地球の本棚に入る。

「『硬さ』『結晶化』」

翔太郎はフィリップにキーワードを教えていく。

やがてフィリップの前に、ジュエルについて記述された本が現れた。

「見つけた。」

軽く口笛を吹いて本を取ろうとするフィリップ。

 

その時、横から手が伸びてきて、本を奪い取った。

 

フィリップが驚いて見てみると、空中に若菜が浮いている。

 

「姉さん!!」

「来人。あなたがここに入ると、それを感じるの。」

「もう…本に触れるようになったんだね…」

「ええ♪前来た時のシンクロ率はあなたの50%だった。けど今は…」

言ってフィリップの喉元をなで回す若菜。

「あなたを連れ戻すことだってできるわ。」

フィリップは驚いて地球の本棚から離脱した。

「どうしたフィリップ?」

フィリップの尋常ではない取り乱しように、彼の身を安じる翔太郎。

「また…本棚に姉さんが…すまない翔太郎…今はこのせいで…検索できない…!!」

 

 

 

 

 

「…」

光輝は帰ってきてから、ずっと考え事をしていた。

「光輝?」

そんな光輝に声をかける一真。

「心配しなくても、フェイトさんなら大丈夫!きっと無事だよ。」

「フェイトさんは…あのドーパントにダイヤにされたのかな…」

「だから、大丈夫だって!まだそうと決まったわけじゃない。」

「…僕、やっぱり翔太郎さん達の協力は必要だと思うんだ。」

「じゃあ今の事件を解決させて、早く依頼しなきゃね。」

「うん。」

一真は思う。

(本当に、あの子のことで頭がいっぱいなんだろうなぁ…)

ぜひとも彼には幸せになってもらいたい。一真は、そう願った。

 

 

 

 

 

「若菜が地球の記憶と接触を?」

冴子は加頭の言葉に耳を疑った。加頭は冴子を保護するため、ミュージアムの現状を逐一報告しているのだ。加頭は続ける。

「ええ。無限アーカイブとのコンタクトが可能となった若菜さんは、いずれ精神空間で弟さんと接触できるようになる。」

その言葉が意味すること。冴子なら容易に察しがついた。

「若菜に先を越される……」

「そうなれば、いかにレベル3ナスカの力を得たとはいえあなたの勝率は、限りなく0に近付く。」

「無神経なことをよくもべらべらと…ホントムカつく男ね。」

冴子の発言に、加頭は持っていたスプーンを落とした。加頭は感情表現に乏しい男だが、驚いたりショックを受けた時には、こんな具合に物を落とすようだ。しかし、これが本当に彼にとっての感情表現かどうかは、不明である。

加頭は何事もなかったかのように、再び話し出す。

「ところで、あなたの勝率を高める可能性のあるメモリが存在します。手に入れておけば、反撃の役に立つかと…」

「…教えなさいよ、それ…」

冴子の顔色が変わった。

 

 

 

 

 

真倉は、かき氷を食べながら刃野に尋問していた。いきなりクズになった真倉。

「お前なぁ…そんな事調べてる暇があったら、俺を罠にはめた女を見つけろよ!」

「そんな女、最初からいねーよ!ベロベロベロバー!」

本当にクズな真倉。そこへ、

 

「いいや、いるぜ」

 

翔太郎が現れた。

「翔太郎…」

「ダイヤモンドの女の正体は、城島泪だ。」

「…城島泪…まさか。翔太郎、そりゃありえねぇよ」

「いえ、泪です。僕や智と一緒にいた…」

上杉も来た。腕にギプスをはめ、包帯で首から吊るしている。

「上杉じゃねぇか…」

「お久し振りです、刃野さん。」

「人気モデルの…上杉誠!?知り合い!?」

驚く真倉。

「昔のな。こいつら、街の平和を守るんだ、とか言って、毎日街のあちこちで喧嘩三昧だ。」

「あの頃は楽しかった。みんな青臭くて…」

上杉は真倉にサインをねだられたので、サインを書きつつ話を進める。

刃野は尋ねた。

「けど、何で泪が…」

「…僕のせいなんです。」

上杉は語り出す。

彼は仲間の武田智、城島泪とつるんでいるうちに、智と泪が愛し合っていることに気付いた。上杉は二人の幸せを願って一人抜け、二人から距離を置こうと、その思いを泪に告げた。だが、実は泪が本当に愛していたのは、智ではなく、上杉だったのだ。今の関係を壊したくなかった上杉は、泪の申し出を断った。

「それからなんです。泪がおかしくなったのは」

そこで刃野は、あることに気付く。

「智は?智はどうしたんだよ!?」

「…行方不明です。泪が怪物になった、あの日から…」

 

 

 

 

 

光輝の家。

光輝は閃いた。

「そうだ!僕には地球の本棚がある。それを使えば…!!」

「でも、君はまだ入っただけで、検索はやってないだろ?」

「大体わかる。とにかく、今はこれしかない」

言って地球の本棚に入る光輝。

「検索を始めよう。」

真っ白な空間に、大量の本棚が現れた。

「キーワードは、『フェイトさんの居場所』、『ジュエルメモリ』…」

凄まじい速度で減っていく本棚と本。たった二つのキーワードで、もう本が見つかった。

「この本に…フェイトさんの居場所が…!!」

本を取ろうとする光輝。だが、若菜が現れて本を奪った。

「あなたは…!!」

光輝は驚く。

「あなたがここに入れた理由はわかるわ。でもね、ここに入っていいのは地球に選ばれた者だけ。さっさと出ていきなさい!!」

「…それはあなたの方だ。その本を置いて、ここから出ていけ!!」

怒る光輝は、若菜に手をかざす。

「なっ!?うあ…」

若菜は消えた。

今光輝が何をやったのか。若菜の地球の本棚へのアクセスを強制的に解除したのだ。

「…本当にできるとは思ってなかったけど、やってみるもんだな…」

光輝は残った本を拾い上げ、内容を読む。

「…!!」

そして、書かれていた内容に驚く光輝。

「どうしたんだ!?フェイトさんの居場所はわかったのか!?」

その様子は現実世界にも伝わっており、一真は心配した。光輝は答える。

「…フェイトさんの居場所はわかった。でもこれは…」

その時、クロスフォンに電話がかかってきた。

ひとまず地球の本棚から離脱し、クロスフォンを取る光輝。相手は翔太郎だ。

「もしもし?」

「俺だ。今から泪さんを捜しに行くから、来てくれ」

「…わかりました。」

光輝は電話を切った。

 

 

 

 

 

その後、光輝と一真は翔太郎達と協力し、泪が行きそうな場所を張ることになった。

そして、照井と真倉が、ある喫茶店で泪の行方を調査していると、喫茶店のマスターが、

「その女性なら、いらしてますよ。」

と言った。

「ど、どこに!?」

若干テンパりながら尋ねる真倉。

「今、洗面所に…」

 

 

 

 

 

喫茶店の洗面所。

泪はいた。しかし、そこへ冴子が現れる。

「城島泪。派手に暴れてるそうじゃない」

「…誰?」

「あなたのガイアメモリ、ものすごい防御力だそうね?私に見せてくれないかしら?」

だが泪はそれに答えず、逆に尋ねた。

「ダイヤの価値ってわかる?」

「…何それ?」

答えを聞いた泪は、冴子を掴んで洗面台に叩きつける。

「何するのよ!?」

「美しく、決して傷付かないこと。この私みたいにね!」

そこから始まる女同士の戦い。軍配は、泪に上がった。冴子を踏みつける泪。

そこへ、照井と真倉が来た。

「園咲冴子…!!」

照井は思わぬ先客に驚く。と、それに乗じて逃げる泪。

「あっ!待ちやがれ!!」

真倉は泪を追いかけていった。

二人きりになる照井と冴子。

「ガイアメモリ流通の容疑で逮捕する。」

「…笑わせないで。やれるもんならやってみなさいよ」

 

〈NASCA!〉

 

冴子はナスカに変身した。

 

〈ACCEL!〉

 

「変・身!」

 

〈ACCEL!〉

 

照井もアクセルに変身し、対抗する。

 

 

その頃真倉は、泪を行き止まりまで追い詰めたが、顔面を蹴られてあっさり逃げられてしまった。

 

 

ナスカはアクセルを圧倒する。

「井坂先生の仇、取らせてもらうわ。超加速!!」

超高速移動で、さらにアクセルを追い詰めるナスカ。

 

〈TRIAL!〉

 

「全て…振り切るぜ!!」

 

〈TRIAL!〉

 

アクセルはアクセルトライアルに強化変身。高速の世界に突入した二人の戦士は、戦いを激化させていった。

 

 

 

 

 

その様子を見ていた井坂は呟く。

「言ってしまいたい…私は生きていると言ってしまいたい…」

 

 

 

 

 

とある場所。

真倉から逃げ延びた泪は、堤防から海を眺めていた。

「…どこにでもいるのね。」

泪は現れた翔太郎と亜樹子を見て言う。

「上杉さんから聞きました。」

「…あいつ…余計なことを…」

泪は吐き捨てるように言い、行こうとした。

「待ちなさいよ!上杉さん、友達だったあなたのこと、本気で心配してるのよ!?」

泪は立ち止まる。亜樹子は痛い目に合わされているので身構えた。

「心配?私を?ふっ…」

鼻で笑う泪。

そんな彼女に、翔太郎はある写真を見せる。それは、上杉、智、泪の集合写真。泪の顔色が変わった。

「武田智さん。行方不明ですよね?ひょっとして今頃、宝石なんじゃないかな?」

翔太郎は泪の指輪を見て言う。

「…だったら?」

「許さねぇぜ。」

翔太郎は泪の肩を掴んだ。しかし、泪は体術で翔太郎を圧倒し、踏みつける。そして尋ねた。

「ダイヤの価値ってわかる?」

「ああわかるさ。てめえみたいな女には、似合わねぇってことがな!!」

翔太郎は泪を転ばせる。泪は近くの階段を転げ落ちて、立ち上がった。身構える翔太郎。だが、泪は挑むことなく逃げ出す。

翔太郎と亜樹子が追いかけた先で、泪はジュエルに変身した。

「決まりか…行くぜフィリップ!」

 

 

 

「ああ。」

 

 

 

〈CYCLONE!〉

〈JOKER!〉

 

「「変身!」」

〈CYCLONE/JOKER!〉

 

翔太郎とフィリップはWに変身した。

「何度戦おうと同じこと…」

「どうかな?行くぜ!!」

ぶつかり合うWとジュエル。しかし、例にもよってジュエルにダメージを与えられない。

 

〈XTREAM!〉

 

Wはサイクロンジョーカーエクストリームに強化変身。さらにプリズムソードで斬りかかる。だが、弾かれてしまった。

「プリズムソードでも傷一つ付かない!」

「だったら…!!」

 

〈CYCLONE/HEAT/LUNA/JOKER・MAXIMUM DRIVE!〉

 

「「ビッカーチャージブレイク!!」」

Wはビッカーチャージブレイクを放った。しかし、

「チャージブレイクが効かねぇ!?ぐあっ!!」

ジュエルにはダメージを与えられず、反撃を受ける。

「なら、これだ!!」

 

〈XTREAM・MAXIMUM DRIVE!〉

 

「「ダブルエクストリーム!!」」

 

必殺のダブルエクストリームをぶち当てるW。だが…、

「あはははは!!」

ジュエルはこれすら受け切ってみせた。

 

 

 

 

 

刃野は、泪が言っていたある言葉を思い出す。

 

 

ーー好きになればなるほど、最後には壊したくなるのーー

 

 

「…まさか…もしそうだとしたら…!!」

刃野は格子に飛びついて叫んだ。

「上杉の命が危ねぇ!!翔太郎!!翔太郎ーっ!!!」

 

 

 

 

 

Wを踏みつけるジュエル。だが、Wはそこからどうにか離脱した。

離脱したWに向けてガスを放つジュエルだが、そこに戦いながら乱入したアクセルてナスカによって、Wはガスを浴びずに済んだ。

「もうすぐ最後の仕上げ…それで全て終わる!!」

「何!?」

突然ジュエルの口から飛び出した謎の言葉。

「「ビッカーファイナリュージョン!!」」

Wはそれを阻止するべく、プリズムビッカーから光線を放つ。

しかし、ジュエルは結晶のシールドを出して光線を反射し、W、アクセル、ナスカの全員にダメージを与えてから姿を消した。

変身が解けた三人。そこへ、ようやく光輝と一真が到着する。亜樹子が呼んだのだ。

「遅かったか…」

「翔太郎さん!フィリップさん!照井さん!大丈夫ですか!?」

戦いに参加できなかったことを悔やむ一真と、翔太郎達を心配する光輝。

冴子はそんな彼らを見ながら、

「諦めないわよ…」

と立ち去った。

「翔太郎、聞いたかいさっきの言葉を…」

「ああ、最後の仕上げ…どういう意味だ…?」

 

 

 

 

 

その後、光輝と一真は一旦帰り、翔太郎と亜樹子は刃野の元へ駆けつけた。

「ジンさん!上杉さんの命が危ないって本当か!?」

「ああ、上杉誠、武田智、城島泪。前にも言った通り、こいつらは毎日毎日街のあちこちで喧嘩三昧。当時巡査だった俺は…」

言いながら、喧嘩を止めに入って泪に殴られた過去を思い出す刃野。

「ひでぇ目にあったぜ。でもな…」

さらに、刃野はその後のことを思い出す。

 

 

 

 

 

『刃野。』

言って泪は、刃野に濡れタオルを差し出した。

『私らが喧嘩すんのは、この街が大好きだから。』

 

 

 

 

 

「単なる屁理屈さ。でも俺はその言葉を信じた。けどある時…」

 

 

 

 

 

次に刃野が語ったのは、子供達の作った風車が壊されたという過去。

刃野は泣きじゃくる子供達の横に立ち、上杉達に言う。

『この風車はなぁ、この子達が老人ホームの人達のために作った大切な物なんだぞ!?』

『刃野さん。俺らを疑ってんの?』

『…そうじゃねぇけど…』

上杉に訊かれ、刃野はバツが悪そうに言った。確かに証拠はない。

その時、

 

『私よ。』

 

と泪が言った。

『泪…どうして…お前、この街が好きだって言ってたじゃねぇか!!』

『好きよ。でもね、好きになればなるほど、最後には壊したくなるの。』

 

 

 

 

 

「ただの思い過ごしならいいんだが、どうにも気になってな…」

「いえ、それ、当たってるかもしれません。」

翔太郎の頭には、ジュエル、泪の言った言葉が甦っていた。

最後の仕上げ。もしかしたらそれは…。

 

 

 

 

「ジュエルメモリの情報…」

フィリップは地球の本棚に入り、ジュエルメモリについての情報が書かれた本を手に取ろうとする。

しかし、またしても若菜に妨害された。

「どうしてもこの本が読みたいようね?」

「返してくれ姉さん!」

怒るフィリップ。だが、彼が気付いた時、若菜はもうフィリップの横に移動しており、フィリップの手を掴んで浮き上がる。

「一緒に行くわよ、ミュージアムへ」

 

〈CLAYDOLL!〉

 

若菜は笑いながらクレイドールに変身。フィリップを追い詰めていく。

「この場所とのシンクロ率はすでにお前を超えたわ!来人、もうあなたは私のものよ!!」

重力弾を放つクレイドール。フィリップは地球の本棚から弾き出されてしまった。

 

 

 

 

 

真倉がうるさいので帰ることにした翔太郎と亜樹子。

二人が刃野の入れられている部屋の前から去ったあと、呼ばれていた医者が、その部屋の前に立った。

と、医者はまとめていた髪をほどき、眼鏡を取る。

医者の正体は泪だった。

「私を覚えてる?刃野」

「お前…泪!」

「…刃野」

「待て!お前、何しに来やがった!?そうかわかったぞ!俺を宝石に変えに来たんだな!?おおおい!!誰か!!助けてくれ〜!!!」

叫ぶ刃野。それを聞いて泪は、逃げるようにその場を去った。

 

様子を見に来た真倉が持っていたスイカを、真倉の顔面にぶつけて。

「んぶーっ!!」

 

 

 

 

 

 

翔太郎はすれ違った医者が泪だということに気付き、泪のあとを追った。亜樹子もついてくる。

外はいつしか大降りの雨。

「待て!どうしてジンさんを…」

「…あんな間抜けで騙されやすい男、宝石にする価値もない!」

「それは違うぜ。ジンさんは騙されやすいんじゃない。騙され上手なんだ」

「またそれ?」

亜樹子は前に聞いた話を聞き、呆れる。

「好きになるほど壊したくなる…させるか。俺が守る。ジンさんも、上杉さんもな!」

「黙れ!!黙れ黙れ!!」

泪は突然、凄まじい剣幕で怒鳴りだした。

「お前も同じだ…刃野と同じだ!!ころっと私に騙されてるくせに…偉そうなことを言うな!!」

泪はどしゃ降りにも構わず、走り去った。

「ああ!逃げちゃった…翔太郎くん、どうして追わなかったの?」

「…」

翔太郎は亜樹子の問いに答えず、ずっと黙っていた。

 

 

 

 

 

フィリップは地球の本棚であったことを話す。

「また本棚に、姉さんが現れた。そして今も、加速度的に進化している。ついには本棚の中で、ドーパントに変身した。」

「でもフィリップくんは翔太郎くんと半分こずつだから、変身できないのか…」

フィリップは亜樹子の言葉を聞いて、ピン、ときた。

「半分こ…亜樹ちゃん、やっぱり君は天才かもしれない。早速検証してみよう!」

言ってガレージに入るフィリップ。

「えっ!?あたし、またなんかいいこと言った!?」

そこへ、上杉が来た。

「探偵さん!」

「上杉さん…」

「泪から連絡があったんです。明日、風見埠頭で待ってる。会って二人きりで話がしたい、と。」

「そんな!行っちゃダメですよ上杉さん!あの女、きっと卑劣な罠を仕掛けているに違いな」

「だとしても!!」

上杉は亜樹子を突き飛ばした。

「僕は泪を救いたい。だから、一緒に来ていただけませんか?」

「…はい。わかりました」

「ありがとうございます!!」

上杉は頭を下げた。

 

 

 

 

 

翌日。

風見埠頭にて、上杉は泪の登場を待ち、翔太郎と亜樹子は隠れて見ていた。

そして予定時刻。泪が現れる。

「泪、僕が助けてあげる。」

言って泪に近付いていく上杉。と、泪は脱兎のごとく逃げ出した。

「泪!!」

慌てて追いかける上杉。翔太郎達も続いた。

 

 

 

 

 

地球の本棚に入るフィリップ。

時同じくして園咲家。

フィリップが地球の本棚に入ったことを察知した若菜は、椅子から立ち上がった。

「来人、だね?」

側にいた琉兵衛が尋ねる。

「ええ、また地球の本棚に…今度こそ連れ戻しますわ。」

「そうか…お前と来人が揃えば…」

「最終ステージへの扉が開く、でしょ?お父様」

若菜も地球の本棚に入った。

 

 

 

 

 

地球の本棚。

若菜はジュエルメモリについて書かれた本を持ちながら、ゆっくり降りてくる。

「今日こそ覚悟はいいわね?」

「ならその前に、ジュエルメモリについての情報を教えてくれ!」

「お前が知りたいことはこのページに書いてある。」

若菜は本を開いた。

それを確認したフィリップは、きびすを返して若菜から逃げる。

「往生際の悪い!!」

 

〈CLAYDOLL!〉

 

若菜はクレイドールに変身し、そこからクレイドールエクストリームに強化変身して重力弾を発射した。

フィリップは重力弾をかわし、助走をつけてクレイドールに飛びかかる。

「捕まえた!!」

フィリップに手を伸ばすクレイドール。しかし、その手はフィリップをすり抜けた。

「何!?」

 

 

 

 

 

建物の中。

「何してるの?早く来なさいよ。」

泪はあとずさりしながら、上杉を導く。

「ああ。」

歩いていく上杉。

そこで何かに気付いた翔太郎は、デンデンセンサーを使って周囲を調べた。

「爆弾が仕掛けられてる!!」

「ば、爆弾!?」

翔太郎から知らされた真実に驚く亜樹子。

「ま、まさか僕を!?」

「罠よ!!早く逃げて!!」

亜樹子は上杉の手を引いて逃げる。

「上杉!!」

上杉を追う泪。

「泪!!」

上杉も泪の名を呼ぶ。

そして、

 

「上杉ぃぃーっ!!!」

「泪!!!」

 

爆弾は爆発し、それでも翔太郎達はなんとか逃げ延びた。

「泪は僕と一緒に死のうとして…」

「ミスって、自滅しちゃったってこと…!?」

「元をたどれば僕のせいだ…許してくれ!!泪!!!」

悲しむ上杉。

しかし、翔太郎はそんな上杉を、冷めたような目で見ていた。

 

 

 

 

 

光輝は一真と一緒に、家で待機していた。

「それにしても光輝。あれはありえないよ」

「僕だって信じたくない。でも、地球の本棚の本に書いてあったんだ。」

「それはそうだけど…」

と、光輝のクロスフォンに、翔太郎から電話がかかってきた。

「もしもし。」

「光輝、お前の予想が当たってた。これから報告書のピリオドを打ちに行くんだが、来てくれないか?」

「わかりました。」

光輝は電話を切った。

「光輝…」

「行こう、一真。終わらせに、ね…」

 

 

 

 

 

上杉はフェリーの甲板にいた。

翔太郎はその上杉に声をかける。

「ご旅行、ですか?」

「探偵さん…」

上杉は驚く。いたのは翔太郎だけでなく、亜樹子、光輝、一真も一緒だ。

「どうしたんですか?」

「それがあたしにもさっぱり…」

亜樹子は『事情』を知らないので、そんな返事しかできない。

翔太郎は尋ねた。

 

「上杉さん。あなたがドーパントですね?」

 

「えっ!?何言ってるの!?ドーパントは事故で死んだあの悪女のはずでしょ!?」

「いいや、こいつだ。」

翔太郎は亜樹子の言葉を聞かず、上杉を指差す。

「ありえないわよそんなの!だって、あたし達の前でドーパントに変身したじゃない!!」

「トリックさ。」

そこへフィリップが現れる。

「えっ!?フィリップくんも乗ってたの!?」

「僕らが見たのは、鏡に映った偽者だ。」

「鏡!?」

「正確には、ダイヤの微粒子を結合させて作った結晶のシールド。本物を僕達から見えない死角に立たせ、変身のポーズを取った。」

「待って下さい。どうして僕がそんなこと…」

「それは本人から聞くべきですよ。」

一真が言った。不意に気配を感じた上杉が見てみると、すぐ近くの階段の下に、泪が立っている。

「生きてたのかぁ…」

軽く言う上杉。

「なぜ約束を破ったの!?全部あんたの言う通りにやったし、悪女だって演じてきた!!」

「あれ、演技だったっていうの!?」

亜樹子が驚き、光輝が続く。

「泪さんが悪く見えれば見えるほど、あの人の誠実さが際立ちます。全ては、自分の罪を泪さんに擦り付けるための計画だったんです。」

上杉は入れ違いで階段の下へ降りていった。

「あーあーあーあー…全部バレちまってんのかぁ…」

上杉はその間に包帯とギプスを捨てる。

「だったらもう…芝居する必要もねぇなぁ。」

今度はボイスチェンジャー取り出してを首に当て、上杉は泪の声でしゃべった。ジュエルに変身した時は、これで偽装していたのだ。

泪は上杉に懇願する。

「お願い、智を返して!こいつが宝石に変えたのよ!私達、親友だと思ってたのに…」

泪はボイスチェンジャーを投げ捨てた上杉の右手を指差した。そこには、ダイヤの指輪がはまっている。

しかし、上杉はそんなことなど全く気にせず、泪に訊く。

「君はさぁ、僕のこと好きなんだろ?だから僕が子供達の作った風車壊した時、庇ってくれたんだろ?」

「仲間として好きだった。でも、次第にあんたが怖くなった。好きなもの全てを壊したくなる、あんたのその性格が!!」

「僕はねぇ、完璧主義者なんだよ。愛せば愛すだけ、その不完全さが際立つ。お前のこともそうさ、泪!」

「とんでもねぇやつだな。そろそろ観念しな!」

「その前に、訊きたいことがあります。フェイト・テスタロッサ・ハラオウンという女性を知っていますね?」

光輝は尋ねた。だが、

「…誰だっけ?たくさんの女をダイヤに変えたから、わかんねぇや。」

と、とぼける。仕方ないので、光輝はフェイトの特徴を伝えた。

「金髪で瞳の赤い女子高生です。」

「ああ、今までダイヤに変えた女の中で一番いい感じだったから、ほら!」

上杉は自分の左手を見せる。そこには、ダイヤの指輪がはまっていた。

「やっぱり…フェイトさんを返せ!!」

「智も返して!!」

「…断る。」

上杉は智の方の指輪を抜いて、

「やめて!!」

泪の言葉も聞かず、海に投げ捨てる。

「照井!!」

鋭く叫ぶ翔太郎。

そこにアクセルトライアルが現れ、指輪を掴み取った。

「ナイスキャッチ。」

「竜くん!」

労う翔太郎。喜ぶ亜樹子。

間髪入れず、上杉はフェイトの方の指輪も、海に投げ捨てる。だが、こちらは光輝が念動力を発揮して空中に止めた。そのまま引き寄せてキャッチする。

光輝が指輪を見つめると、ダイヤの中にフェイトの悲しそうな顔が浮かんだ。

「待ってて。すぐ元に戻してあげるから」

光輝が言うと、フェイトは頷く。

「お願いします。」

光輝は指輪を亜樹子に預けた。

アクセルは上杉に言い放つ。

「お前の友人を救うのは二度目だ。」

そう、泪が爆発に巻き込まれる寸前、アクセルが救出していたのだ。

「左達を証人に仕立てあげ、彼女の死で事件を幕引きとしたかったんだろうが、残念だったな。」

「いつから気付いてた?」

上杉の問いに、翔太郎は理由を答える。

「まず、光輝からお前が犯人だと聞いたこと。」

「びっくりしましたよ。フェイトさんの居場所を調べるつもりが、事件の犯人まで知ることになるなんて。」

「次のきっかけは泪さんの言葉だ。」

泪の言葉とは、ころっと私に騙されてるくせに、という言葉である。

「何を騙しているのか。そして、それは確信に変わった。お前が泪さんを殺そうとしたことでな」

実は爆弾の起爆スイッチを押したのは上杉であり、翔太郎はその瞬間を目撃したいたのだ。

「あ〜あ。他の街に行って、また思う存分女どもをダイヤに変えてやろうと思ったのに。」

「何?」

 

〈JEWEL!〉

 

翔太郎は聞き返したが、上杉はジュエルに変身した。

「みんな消えてもらうしかないね。」

「そうはいくか。行くぜ、フィリップ。」

「ああ。」

 

〈CYCLONE!〉

〈JOKER!〉

 

「「変身!」」

 

〈CYCLONE/JOKER!〉

 

翔太郎はWに変身した。

「『さぁ、お前の罪を数えろ!!」』

Wはジュエルに挑んだ。

「行くよ一真!今度こそ勝つ!」

 

〈CROSS!〉

 

「ああ!」

「変身」

「変身!」

 

〈CROSS!〉

〈TURN UP〉

 

「さぁ、暗黒に沈め。」

光輝と一真もクロスとブレイドに変身し、アクセルとともに突撃する。

だが、再びジュエルの頑丈さに苦戦してしまう。

「無駄だよ。僕を倒せるやつなんていないんだからさ」

『…いや、すでに検索は終了している。』

フィリップサイドが言った。

 

 

 

 

 

ライダー達がここに来る前のこと。

フィリップはクレイドールの手をすり抜けた。

「なぜ!?私はもう来人に触れるはずなのに!!」

「逆だよ。僕の方がシンクロ率50%、つまり半分だけの状態でここに入った。僕は本に触れないけど…」

フィリップの手は本をすり抜ける。

「君も僕に触れない。そして…」

フィリップは本に視線を移す。

「閲覧は終了した。」

 

 

 

 

 

エクストリームメモリが飛来し、フィリップの肉体を回収。

 

〈XTREAM!〉

 

Wはサイクロンジョーカーエクストリームに強化変身した。フィリップサイドが手に入れた情報を話す。

「奴は原子核を操作することで、地上最強の硬い身体を手に入れた。でも…」

 

〈PRISM!〉

 

Wはプリズムビッカーにプリズムメモリを装填し、ジュエルの身体をスキャン。

「鉱石には割れやすい特定の方向、石目が存在する。」

Wが見つけたのは、ジュエルの腹部にある、一ヶ所だけひびの入った宝石だ。

「そこを正確に攻撃すれば…」

 

〈CYCLONE/HEAT/LUNA/JOKER・MAXIMUM DRIVE!〉

 

「ジュエルの身体は砕ける。」

「「ビッカーチャージブレイク!!」」

斬りかかろうとするW。

しかし、クロスが止めた。

「僕にやらせて下さい。」

 

〈ETERNAL!〉

〈INFINITY!〉

〈CROSS/ETERNAL/INFINITY!〉

〈UNLIMITED!〉

 

言うが早いかクロスはクロスアンリミテッドに強化変身。

「グランドフィナーレ」

 

〈CROSS/ETERNAL/INFINITY・MAXMUM DRIVE!〉

 

最強の必殺技、エンドレスレジェンドの発動体勢に入る。

「教えてやる。傷付かないものなんて、ないってことを!!」

クロスは高く飛び上がった。

そして、

「エンドレスレジェンド!!」

ジュエルの胸板に両足蹴りを叩き込む。

クロスはジュエルを踏み台に跳躍し、甲板に着地。

「眠れ。深淵の底で」

「ぐああああああああああああ!!!!」

ジュエルは爆発した。

クロスアンリミテッドになったクロスの攻撃は、アンリミテッドフォースを注入することで、いくらでも、無限に強化できる。今放ったエンドレスレジェンドの破壊力は、5000tを軽く上回っており、さすがのジュエルでもそこまでの蹴りは受け切れなかったのだ。

ちなみに、普通そんな攻撃を繰り出せばフェリーが沈没してしまうが、アンリミテッドフォースが強化できるのは自分だけではない。フェリーの強度も上げてあるし、事象干渉能力で絶対に沈まないようにもしてある。抜かりはない。

「傷付かないものなんか存在しない。本当に必要なものは、傷付かないものじゃなくて、傷付くことを恐れない心なんだ。」

光輝が変身を解き、他の者も変身を解いた。

上杉は呻く。

「泪ぃぃ…お前が、あの刑事に手を出さなければ…こんなやつら誘き寄せることなかったのに…なぜ刃野を……」

「…あの人だけは傷付けたくなかった!昔から、どんなウソにもすぐ騙されて……馬鹿な人……」

 

 

 

 

 

それは昔のこと。

『お前、二度と喧嘩しないって約束しただろ?』

『…ダチが人質に取られたんだよ…』

泪は刃野の小言を回避するために、ウソをついた。少し考えればすぐにわかりそうなウソだ。

『…そんなことが…』

しかし、刃野はそれに引っ掛かった。

『よしわかった!けどな、もう二度と喧嘩するんじゃねぇぞ?わかったな?』

 

 

 

 

 

「なんだか、騙されたあいつに付き合わなきゃいけない気がして、本当に、もう二度と喧嘩しなかった。だからあの人は…私の恩人!」

その言葉を聞いて、翔太郎は微笑む。

照井は泪に指輪を渡し、

「智…」

泪は指輪を見て呼び掛けた。

光輝も亜樹子から指輪を受け取り、呼び掛ける。

「フェイトさん…」

上杉はなおも呻く。

「僕の、完璧な計画が…あんな、間抜けで、騙されやすい刑事のために…」

「上杉。一つ言っておくぞ?ジンさんは騙されやすいんじゃない」

翔太郎は上杉に教えた。

「…騙され上手だ。」

 

 

 

 

 

同時刻、刃野はくしゃみをした。

 

 

 

 

 

上杉の手からこぼれ落ち、砕けるジュエルメモリ。そして、ついに上杉は倒れた。

 

泪と智。光輝とフェイト。フェリーの甲板の上で抱き合う、二組のカップル。邪魔はすまいと背を向けて海を見る照井。頷く亜樹子。微笑む翔太郎、フィリップ、一真。

「智…」

「泪…」

「よかった…!」

「ごめんね。フェイトさんがこんなことになってたのに、気付いてあげられなくて…」

「ううん、もういいの。光輝ならきっと来てくれるって信じてたから…」

「フェイトさん…」

「光輝…」

と、亜樹子はこの状況を見て何かを感じた。

そして、

「竜くーん!!」

と照井に抱きつこうとする。だが照井は素早く回避、亜樹子は海に落ちかけた。慌てて救出に入る翔太郎、フィリップ、一真。

こうして今度こそ、事件は終わった。

 

 

 

 

 

「俺様の時代はまだ続くのだ〜!!」

刃野を連れて署内を我が物顔で歩く真倉。しかし、刃野が無実を証明されたため、二人の関係は元に戻った。

「最初から信じていましたよ〜刃野さんの無実を!」

「おめえは調子がよすぎるんだよ!」

刃野は真倉を殴った。

「ジンさん。」

「おお翔太郎。探偵代はツケといてくれよな」

言って行こうとする刃野だが、

「ダメ!!きっちり払ってもらいます!!」

と亜樹子に言われてしまった。

「女は怖いねぇ…」

「女は怖〜い。刃野さん待って〜」

そして、外に出る四人。刃野は伸びをした。

「んん〜いい天気だ。」

「ジンさん。泪さん、お礼言ってましたよ。今度手料理、ご馳走するって」

「手料理?ハッ!どうせウソだな。いいか翔太郎?今回の一件でな、俺は誓いを立てたんだ。もう二度と、騙されねぇってな。」

「ふ〜ん…あっ!雪男!!」

「雪男!?どこ!?雪男どこ!?」

刃野は翔太郎のウソに引っ掛かり、翔太郎が指差した方向へ走っていく。

「刃野さん!どこまでもお供しますよ!」

真倉もついていった。

「早速騙されてんじゃん。」

呆れる亜樹子。

と、突然周囲が寒くなった。翔太郎と亜樹子は気配を感じ、その方向を見た。

そこには奇声をあげてこちらを見る雪男が…。

「「ぎゃあああああああああ!!!」」

翔太郎と亜樹子は気絶した。雪男はそれを確認すると、建物の陰に引っ込む。

そして、

「ふぅ…」

一真は雪男の着ぐるみを脱いだ。アンリミテッドフォースで周囲の気温を下げていた光輝も、気絶した二人を見て、ニヤリと笑う。

「ウソつきはよくありませんよ。」

 

 

 

 

 

 

 

風都タワー。

ここに世界の架け橋が現れ、中から一人の男が出てきた。

男の名は鳴滝。鳴滝は街を見渡して言う。

「仮面ライダークロス…もはやディケイド以上の脅威か…」

今までずっとディケイドを目の敵にしていた鳴滝は、クロスの存在を危惧する。

「…こうなってはクロスと同じイレギュラーに始末させるしかないな…」

そう言うと、鳴滝は再び世界の架け橋を出現させ、この世界から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************************

次回、

仮面ライダークロス!!

 

鳴滝「君に頼みがある。」

光輝「あなたは?」

?「私は神となる者。」

 

第二十四話

神の座を求める者、S/降臨!!片翼の天使

 

これが裁きだ!!

説明
今回でクロスのチートさがよくわかると思います。
ところで、クロスのバトルBGMは
『Pray』

『BRAVE PHOENIX』
どっちがいいと思います?
まぁ、別に何でもいいですけどね。

ではどうぞ。
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