超次元ゲイムネプテューヌ 3dis Creators_012
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第1章 ゲイム・スタート

 

 

 

 

 

C012:最も美しい女神へ

 

 

 

 

 

 

○プラネテューヌ・バーチャフォレスト第1区間末端・昼過ぎ

 

    覆い茂った森を目の前に、緑色のクラシックなライトバンが駐車している。

    その中、中型タブレットを立てかけ、映っている凍りついて起き上れないモコと、それに付き添うネプギア。

    人差し指がタブレットの右端をタッチしウインドウリストをよび出し、ネプテューヌ、コンパ、アイエフが映っている別のカメラにタッチして切り替える。

 

 

リンダ「仲間割れっすかねコレ?」

 

    リンダ、タブレットに繋がれた右耳のイヤホンを手で位置を直し、タブレットに向けて聞く。

 

クランカの声「相変わらずのボケボケぶりでしゅね。そこが良くもあり、筋書き通りにならなくて困るとこでしゅけど」

 

    イヤホンから、8kHz,8ビット(要するに電話音声)音質でクランカの声が聞こえてくる。

 

リンダ「どうしますか先輩?」

 

 

 

○同・バーチャフォレスト第3区間

 

    クランカ、高所にある太い木の枝の上に立ち、木の幹に寄り掛かっている。

 

クランカ「クラは一度((楽屋|ぶたいうら))にいる二人のとこにあいさつに向かうでしゅ」

 

    今度はクランカの右耳のコンパクトイヤホンからリンダの通信が入る。

 

リンダの声「けど、残ってる内の一人はかなり厄介な奴っすよ?」

 

    クランカ、軽くせせら笑いながら。

 

クランカ「問題ないでしゅ。材料ならもう十分そろってるでしゅから。リンダはクラが合図したら、あのモコとかいう困った酔客の所に行って、リアクション芸セットの準備でしゅ」

リンダの声「ういっす!」

クランカ「それじゃあ、クラは開演の準備でしゅ」

 

    そうしてクランカの方からタブレットの通信を切る。

    どこからともなく双眼鏡を取り出し、覗き込む。

    双眼鏡から見えるは、ずかずかと早歩きで進むアイエフとそれを追いかけるネプテューヌとコンパ。

 

 

 

○同・禁制領域タマルバー

 

クランカの声「意図せずまた違う面白さが味わえそうでしゅね」

 

    無意気な態度で歩みを進めるアイエフに呼びかけるネプテューヌ。

 

ネプテューヌ「あいちゃん! あーいーちゃん!!」

 

    アイエフに追いついて、腕をつかむ。

    アイエフ、ようやく止まり、その場に立ち尽くす。

    コンパ、止まって一息つく。

    ネプテューヌ、そっと手を離す。

 

ネプテューヌ「何でそのまま行っちゃうの?」

アイエフ「なにが……?」

 

    アイエフ、ネプテューヌ達に背を向けたまま応える。

 

コンパ「モコちゃん、凍りついたままですよ?」

ネプテューヌ「ネプギアが……多分見てくれてると思うけど、またモンスターに襲われたら!」

 

アイエフ「それならさっさとクエスト済ませて戻ってくればいいでしょ!?」

 

    アイエフ、振り向きざまに怒鳴る。

 

ネプテューヌ「むちゃくちゃだよ! 怒り過ぎだよあいちゃん!」

アイエフ「怒ってないわよ!」

ネプテューヌ「嘘! あれ!? モコがケータイすぐに渡さなかったから!? コンパに怪我させたから!?」

コンパ「わたしもう気にしてないです!」

 

    ネプテューヌ、一息ついて落ち着く。

 

ネプテューヌ「そりゃたしかにモコはちょっとアレな子かもだけど……悪気はないと思うんだよ?」

 

    アイエフ、一間置いて。

 

アイエフ「そういうのが……一番許されないのよ……」

コンパ「え……?」

アイエフ「その気なしに迷惑かけられるのが! 一番ムカつくのよ!!」

ネプテューヌ「だけど! だからってあんな乱暴な事──」

アイエフ「あの子見てると……思い出しそうになるの……」

 

    ネプテューヌの言葉を遮った。

 

ネプテューヌ「え……?」

 

    そのまま踵を返していってしまう。

 

コンパ「あいちゃん!」

 

    追いかけるネプテューヌとコンパ。

 

 

 

 

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○同・タマルバー入口前

 

    凍りついているモコをネプギアがはんだごてで地道に溶かしている。

    モコ、ネプギアのはんだごてをまじまじと見つめる。

 

モコ「お……おぉ……」

 

    当然、なかなか溶けない。

 

ネプギア「ふぅ……」

 

    ネプギア、一息ついてはんだごてを地面に置いてあるホルダーに立てかける。

    モコ、手足を再びわたわたさせる。

    ネプギア、モコに問いかける。

 

ネプギア「モコちゃん……アイエフさんはどうして、あんな風に怒ってどこかへ行っちゃったんだと思う?」

モコ「……わかんない」

 

    伏せていた目を開いてモコに向ける。

 

ネプギア「……あのね。モコちゃんは、お店やってる時、今までお店とか商品とかに、文句言われたことある?」

モコ「……ううん。でも、なんか嫌っぽいことが分かる時あった」

ネプギア「どんな時?」

モコ「なんかねなんかね、ふくろにね、いっぱいネギつめて持ってきたみどり色の女の子がいたの」

ネプギア「緑色の?」

モコ「うん。それでね、『ネギ置いてあるー?』って聞かれたから『あるよー』って答えたの」

ネプギア「うん」

モコ「んで、なんか自分の歌が入ったディスクくれて、むらさき色の真ん丸いネギと交換したの」

ネプギア「む、むらさきいろの……?」

モコ「したらね、その子が帰った後にお店の評価のマイナスがふえたの……なんでだろう?」

 

    ネプギア、一間置いて。

 

ネプギア「それは……たぶんそのネギが気に入らなかったんだと思う」

モコ「ネギが?」

ネプギア「緑色の女の子が持って立っていう袋の中のネギは何色だった?」

 

    モコ、一瞬上目になり、またネプギアの方を向く。

 

モコ「みどり色!」

ネプギア「その子、ひょっとしたらもっともっと緑色で、しゃっきり伸びたネギがほしかったんじゃないかな?」

モコ「……もっと?」

ネプギア「うん」

 

    モコ、ネプギアから視線を外し、もっともっと緑色でしゃっきり伸びたネギををイメージする。

 

 

 

○モコの妄想

 

    もわもわと雲のようなものが晴れて、もっともっと緑色のネギが出てくる。

    ネギがシャキーンと背伸びをするように伸びて少ししなる。

    モコ、もっともっと緑色でしゃっきり伸びたネギを緑色の女の子にあげる。

    緑色の女の子、最高の笑顔。

    モコにだきつく。

    モコの表情のアップ。

 

 

 

○プラネテューヌ・タマルバー入口

 

    以上、モコの妄想。

    頬を少し赤らめ、呆けているような表情のモコ。

 

ネプギアの声「アイエフさんも、もっと別の事をしてほしかったんじゃないかな? 友達として」

 

    再度、ネプギアに首を向ける。

 

モコ「……なんか、なんかぽかぽかしてきた……」

ネプギア「え……?」

モコ「でも……したら、どうすればいーの?」

ネプギア「……これから、少しずつ、『どうしてこうなっちゃったのかな?』っていうことを、考えていけるといいんじゃないかな?」

モコ「む……?」

 

    首をかしげる。

    耳のたぶが氷に当たる。

 

モコ「……ちべたい」

 

    ネプギア、またはんだごてに手を伸ばす。

 

 

    はんだごてに触れようとした時、その手がピタリと止まる。

    辺りを見回しだすネプギア。

 

ネプギア「ッ……」

 

    木々だらけの森に目をやるが、別段変化はない。

    立ち上がり、気を引き締める。

 

ネプギア「……?」

 

    モコのいる方角の木々に視線を変えるが、ざらざらとした音が聞こえるだけ。

    感覚を研ぎ澄ませ、注意ぶかく気配を検索することをやめない。

 

モコ「ぎあちゃん?」

 

    モコの方を振り向いて、黙って人差し指をたて上唇に当てる。

 

モコ「お……」

 

    向き直り、より一層警戒を強める。

    にらみを効かせるように目配せに意識が集う。

 

 

    突如、この近くで駆け回っているかのような草と地面のかすれる音がなる。

    モコのいる方でなり、反射的に振り向くネプギア。

    Nギアを抜刀するように持ち、かまえる。

 

    またしてもかすれる音。

    今度はネプギアから見て右側から。

    ネプギアも右を向くが姿を見せない。

    モコにも気を配りつつ、ゆっくりと音のあった方へと近づいていく。

 

 

    木の陰でタブレットのスクリーンを指でなぞり、赤い背景の中、白い線で魔法陣のような幾何学図形を描いている人影。

 

 

    どこから音が発生したのかを一本の木にまで絞るネプギア。

 

 

    図形を描き切り、スクリーン右上を長くタッチ。

    赤かった背景が青くなる。

    その後、スクリーンに右の手のひらを当て、右手にその図形データを書き込む人影。

 

 

    絞り込んだ一本の木にそっと近づくネプギア。

    音をなるべく立てないように、足にも多くの神経を使う。

    木から半径50センチほどにまで近付いた瞬間走りだす。

 

 

    素早く木の裏の見える位置にまで移動し、Nギアから取り出したビームソードを突き付ける。

 

 

    ネプギアの視界、下に目線を移さなければ、そこにあるあの時のメット戦車が見えなかった。

 

 

ネプギア「……これは?」

 

    ネプギアがメット戦車に唖然とした直後、正反対の位置から草と地面のかすれる音。

 

 

    人影が地面に手のひらを当てる。

 

 

ネプギア「!!」

 

    急いで音のした方向へと走るネプギア。

    氷漬けでわたわたしているモコを通り過ぎ、木々に近づく。

 

 

 

    ネプギアの目の前にある木々の半径1.5メートルほどにまで近づくと、突如ネプギアの足元が光り出す。

    上から見ると、先ほどまで人影が描いていた図形。

    光ってから一瞬にして地面から湧き出るかのようにゼリー状のものが現れ、ネプギアを楽々と包み込む。

 

ネプギア「うあっ!?」

 

    ネプギア、抵抗するもゼリー状の何かから出られない。

 

 

    ゼリー状の何か、スライヌのような形をとる。

    だんだんと身動きが取れなくなってくるネプギア。

 

ネプギア「ひょっとして……チュートリアルの時のあれって……!!」

 

 

 

 

 

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○同・禁制領域タマルバー内部

 

    ネプテューヌ、後ろの二人にぶー垂れる。

 

ネプテューヌ「ねぇー! さっきからおんなじとこぐるぐる回ってばっかな気がするー!!」

 

    コンパ、木に張り付けてある看板を確認する。

    看板には、『きんせいりょういきたまるばー じゅんろ →』と書いてある。

 

コンパ「ちゃんと矢印通りに進んでるですよ?」

 

    アイエフ、看板に指をさす。

 

アイエフ「そもそも禁制領域なんて物騒な名前がついてる場所に、こんな観光地への案内版みたいな矢印があるとかおかしいと思ったわよ!」

ネプテューヌ「じゃあなんで最初に言わないのー!?」

アイエフ「しょうがないじゃない! ケータイのマップなんか使えないし! 下手に歩いてソウナンでもしたら、まぁたそこら辺のNPCにバカにされるじゃない!」

 

    ネプテューヌ、じだんだを踏むように飛び跳ねる。

 

ネプテューヌ「あーーんもう! ナビとかあったらいいのにー!!」

 

    コンパ、稲穂のように頭を垂れ。

 

コンパ「とりあえずはこの看板さんの言うとおりにするしかなさそうです……」

ネプテューヌ、アイエフ「はぁ……」

 

    残る二人も頭を垂れ、とぼとぼと再び歩きだす。

 

 

 

○同・バーチャフォレスト第1区間末端

 

    バンの中でくつろぎつつ、イヤホンを耳に押し付けているようにして通信を聞くリンダ。

 

クランカの声「舞台装置は回収したでしゅ。酔客に恥かかせてやるでしゅ」

リンダ「ういっす!」

 

    ブツッと切れる通信。

    起き上がり、運転席の左にあるボタンを左手で押す。

    ピコピコノイズな音を出しながらかかるバンのエンジン。

    ハンドルを持って前に乗り出すリンダ。

 

リンダ「れっつらごぉー!」

 

    勢いよく走りだすバン。

    若干木にかすりつつ、奥へと進む。

 

 

 

○同・タマルバー内部

 

アイエフ「おかしいわね……さっきから全くと言っていいほどモンスターとあってないわ」

ネプテューヌ「ここいらのモンスターがこんな不親切な場所をいやがってるだけじゃないのー?」

アイエフ「でも一応ここもバーチャフォレストのはずよ?」

ネプテューヌ「相変わらず同じとこまわってる気がしてならないけどね」

 

    コンパ、遠くの方に色の違う葉っぱを持つ木々を見つける。

 

コンパ「二人とも、先が見えてきたです!」

ネプテューヌ「ん? あ! なんか葉っぱの色が違う木!」

 

    走りだすネプテューヌとコンパ。

 

アイエフ「あ、ちょっと二人とも!」

 

    後に遅れて追いかけるアイエフ。

 

 

 

○同・タマルバー最深部

 

ネプテューヌ「うっひょぉー! 生き返るー!!」

コンパ「別にオアシスじゃな──」

 

    元気良く二人が走ってくると、地面に魔法陣の幾何学図形が浮かび上がり、それが光ると同時に二人の動きがぴたりと止まる。

 

ネプテューヌ「ん!? あら!?」

コンパ「え!?」

 

    追いついて、フィールド内に入るアイエフ。

    そのまま静止している二人の元へたどり着く。

 

アイエフ「コンパ! ネプ子!」

ネプテューヌ「どうしよう……ここにきてまた動けなくなっちゃった!」

アイエフ「うそ!? ッ!?」

 

    アイエフ、自分の感覚にただよう違和感に気付く。

    ためしに入ってきた所を出ようとするも、見えない壁のように遮蔽されており出られない。

 

アイエフ「うそ……マジでエンカウントされてる!? でもどこでだれから!?」

 

 

 

 

 

 

クランカの声「All the world's a stage,And all the men and women merely players.(この世界すべては一つの舞台、そして人は男も女もすべてその役者にすぎない)」

 

 

 

 

ネプテューヌ、コンパ、アイエフ「!?」

 

    アイエフの真正面からクランカがなにか口ずさみながら近づいてくる。

 

クランカ「They have their exits and their entrances.(皆、舞台に上がっては消えゆく)」

 

    アイエフにとっての壁をなんなくすり抜けて、アイエフの視線を余所に後ろからネプテューヌとコンパの合間を通り抜ける。

 

クランカ「And one man in his time plays many parts.(そして人はこの合間にそれぞれの様々な役を演じ抜くのだ)」

 

    語り終え、振り返りネプテューヌ達に顔を見せる。

    ネプテューヌ達、クランカのキツいルックスに嫌悪感と冷や汗を味わう。

 

クランカ「((地球次元界|プレイヤーディメンジョン))のシェイクスピアが書いた『お気に召すまま』とかいう喜劇のセリフ、の一部でしゅ。たしか……ジェークイズという人物の」

 

    アイエフ、ネプテューヌとコンパの前に出てカタールを構え、クランカに向ける。

 

アイエフ「その喋り方……アンタがここ最近の奴の黒幕ね」

 

 

クランカ「いかにも。わが名はクランカ、マジ超((端無|ぱねぇ))教団マジェコンヌの教祖でしゅ」

 

 

 

 

 

    一同、唖然。

 

アイエフ「……はい?」

 

 

クランカ「マジウルトラビッグな教団マジェコンヌ教祖でしゅ。別にマジェコンヌの教祖だってことが伝わりゃいいでしゅからそっくり2回も言わないでしゅけど」

 

    ネプテューヌ、動けない身体のまま。

 

ネプテューヌ「マジェコンヌはもうないはずだよ!? わたしたちが懲らしめたもん!」

クランカ「その節はどうもでしゅ。まぁ、そん時ブリックされてたからいなかったでしゅけど」

アイエフ「どういうこと!?」

 

    クランカ、大げさな振りで右手を天に掲げる。

 

クランカ「ステージの上の子供達よ! 今真実を明かそう! でしゅ」

 

    ネプテューヌ達の周囲を回り始める。

 

 

 

 

 

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クランカ「先におみゃー達が捕まえたチーティングのピエロ達。あれは教団の新たな信者でしゅ。クラが作り上げた新しいマジェコンを与えて」

 

アイエフ「やっぱり……」

 

クランカ「知ってるでしゅか? 今じゃゲイムギョウ界のほとんどのコードを解析、改造、そしてコードをぐちゃぐちゃにしエラーを起こさせたり、コードそのものをトラッシュしたり、果てはブリックしたりも可能でしゅよ? そんでクラが逃がすことのできた一人、は無事にミッションを終えた見返りとして彼が望んだ安定と安心を与えたでしゅ。おみゃー達が不当に逮捕したやつらも近々引き取りに行くでしゅ」

 

ネプテューヌ「あれは不当じゃないってば!」

 

クランカ「そんでもってあの事件の後おみゃー達に、今後ろの二人にやったような舞台あいさつして今の状況、本題に入るでしゅ」

 

    クランカ、アイエフに指をさす。

 

アイエフ「?」

クランカ「王子パリスよ」

アイエフ「王子ぃ?」

クランカ「おみゃーにはいま三者三様のアプローチがされてるでしゅ。奴らは、『最も美しい女神へ』と投げ渡された黄金のリンゴをかけ醜い争いの真っ最中でしゅ。そこで判定をおみゃーに委ねることになったのでしゅ」

アイエフ「つまり私がアンタのいう選択肢からルートを選べってわけ?」

クランカ「その通り。まず一つ目、奴がおみゃーに与えるものは……」

 

    クランカ、何らかの力で動けない二人を指さす。

 

クランカ「『富』……でしゅ。奴らを解放して依頼にあったものを取り返すことを許すでしゅ」

アイエフ「ずいぶん上から目線でいってくれるじゃない」

クランカ「二つ目、奴がおみゃーに与えるものは……」

 

    大きなゼリー状のスライヌがこちらへのそのそとやってくる。

    アイエフ、スライヌをみて何かに気付く。

 

アイエフ「……ネプギアっ!!」

ネプギア「……アイエフ、さん……」

 

    ゼリー状のスライヌの中にはネプギアが捕らえられている。

    クランカ、ゼリー状のスライヌの前に立ち、貴族に知人を紹介するように指し示す。

 

クランカ「『名誉』でしゅ。具体的には勝利への名誉。いや、可能性といった方がいいでしゅね」

アイエフ「なんですって……!?」

クランカ「こいつの強さは知らないでもないでしゅ。だからこいつとペアで直接勝負、そっちが勝ったら別にクラをとっ捕まえてもいいでしゅよ?」

 

    クランカ、タブレットを操作しながら更に歩いて三人の真正面に戻る。

 

クランカ「最後の三つめ、奴がおみゃーに与えるものは、『愛』でしゅ」

アイエフ「愛?」

クランカ「ま、それは後でいうでしゅ。さぁ、どいつを選ぶでしゅか?」

 

    クランカ、タッチ&フリックした後再びタブレットを操作し、右手にプログラムを書き込み、書き込まれた物を放出する。

    右手からは座り心地がよさそうな椅子が出現し、地面に着くと同時に安定を求めて足踏みをし、落ち着く。

    その椅子に座り、頬づえをついてアイエフの回答を待つ。

 

コンパ「わたしたちはいいですからギアちゃんを助けてあげてです!」

ネプテューヌ「またとないチャンスだよあいちゃん!」

ネプギア「だめだよ……この人かなり強い……今のままじゃ……」

 

    アイエフ、ネプテューヌ達が騒ぐ中、カタールを構えたまま緊張をほどかずに回り込むかのように移動を始める。

 

アイエフ「愛っていうのが何なのか気になるけど……私がそんなアンフェアな選択肢だされて大人しく従うと思う?」

クランカ「従わなきゃしかるべき対応を取るだけでしゅ」

 

    アイエフ、クランカの真横にまで周回を歩む。

 

アイエフ「……ギャルゲの選択肢っていうのは、ユーザーが主人公に感情移入するためにあんのよっ!!」

 

    言い終わると同時にクランカに突撃をかける。

    余裕そうに座り続けるクランカ。

    カタールがクランカに振り下ろされる。

 

 

    その直前、クランカがタブレットをタッチし、スクリーンをアイエフのカタールを防ぐように向ける。

    アイエフ、そのスクリーンにカタールが向かっており、見えない力に抑えつけられているかのように、それ以上カタールが近づけない。

 

アイエフ「……なんでっ!?」

 

    驚きの声を上げるネプテューヌ達。

 

コンパ「えぇっ!?」

ネプテューヌ「そんなのアリぃ!?」

 

    タブレットを押し上げてアイエフの体勢を崩す。

 

アイエフ「ぐあっ!?」

 

    それと同時に立ち上がり、足元を蹴りで払い、アイエフを転ばせる。

 

アイエフ「ぐぅっ!」

 

    プレス機にかけるかのように、倒れているアイエフを踏みつける。

 

クランカ「反則はそっちでしゅ」

 

    タブレットから通信が入ったことを知らせる通知。

    クランカ、タブレットを操作する。

 

    タブレットを持ちかえて、手裏剣を放つようにスクリーンをフリック、するとウインドウが空中に向かって飛び、クランカに見えるように向き直って投影される。

 

    空中のウインドウにリンダがアナウンサーのような立ち位置で映し出される。

    リンダの背後には、草原の中に不自然に立っている仕切り。

    仕切りは何かを隠すように囲いになっている。

 

リンダ「はいはーい! こちらあなたの愛しの後輩リンダっす!」

 

    アイエフを蹴飛ばし、抑えていた足を離す。

 

アイエフ「がはっ……なっ!? 下っ端!?」

 

    リンダ、下っ端呼ばわりされても余裕そう。

 

リンダ「まぁ今日は下っ端呼ばわりも許してやる」

クランカ「リンダ、準備は終わったでしゅか?」

 

    リンダ、元気よくサムズアップ。

 

リンダ「ばっちりっす!!」

 

    アイエフ、ふらつきつつ立ち上がり。

 

アイエフ「なにをしようっていうの!?」

クランカ「愛についての説明の準備が整ったでしゅ」

アイエフ「そんなもんもういらないわ! 私はそんなの選ぶ気なんかないんだから!」

 

    クランカ、画面の前まで歩み、自信満々でアイエフの方を振り返る。

 

クランカ「そうでしゅか」

 

 

 

 

 

 

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    クランカ、アイエフからも画面からも目をそむけ、「しーらない」といった態度。

 

クランカ「じゃああのモコとかいう奴のことはどうでもいいんでしゅね」

 

ネプテューヌ「えぇっ!?」

コンパ「モコちゃんが!?」

 

 

 

    アイエフ、悔しそうに歯を食いしばる。

 

アイエフ「ッ……ずいぶんと用意周到じゃない」

クランカ「念には念を入れて、おみゃーの携帯を遠隔ハックして飛ぶカメラで追えるようにマーキングしてたでしゅ。おみゃーさんが携帯落としてあの子供が持ってった時はひやひやしたでしゅけど、おかげで気付かれずに済んだようでしゅね」

アイエフ「ッ……!」

 

 

クランカ「さぁ王子パリスよ、どいつを選ぶでしゅか? 三者択一でしゅよ?」

 

 

    拳をつくり、眉間にしわを寄せた表情で俯くアイエフ。

 

ネプテューヌの声「あいちゃん!」

 

    拳に入る力が強くなっていく。

 

コンパの声「あいちゃん!」

 

    声も聞かないままに。

 

ネプテューヌの声「あいちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
ロージュからのメールをほったらかしにしてて1日出すの遅れた。
ごめんよロージュ。
公式サイトで7賢人の濃い面々が紹介されましたが、戦隊の敵幹部のようなネーミングセンスに吹きつつ、
「あぁ、悪役なんだなぁ」と自然に受け止められるネーミングに感心してしまう私。
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コメント
Toツバキさん(おぜうさん、クリケットさんごめんなさい書くのを失念しておりました):「よく言った!やっぱダチは当たって砕けても救いたくなるもんだよな!」クランカ「おみゃーは誰でしゅ。勝手に開演中の舞台に上がり込んで」「おっと今日も時間だ!じゃあまたな!」(柏中ロージュ&ミヤウエ)
クランカ「知ってると思うでしゅけど、この筋書きのモチーフじゃあ一国の命運がこの選択で決まるでしゅ。あくまでモチーフの話でしゅけどね。今はそんなに関係ないでしゅ」(柏中ロージュ&ミヤウエ)
クランカ「クラとしては別にそんな究極の選択みたいに深刻でグロッキーになるような3択じゃあないと思うでしゅけど・・・まぁ見直したとだけ言っておくでしゅ」(柏中ロージュ&ミヤウエ)
アリス「ということで、お二方はどれを選びます?」 フウ「富よりも栄誉よりも、まずは仲間を救うね」 ヴァイス「…で、その後そんなふざけた選択肢を作った野郎をブチ殺す」 フウ「お金なんて後で稼げばいいんだし、ね」 アリス「案外まともですね」(風音ツバキ)
がすと「富ですの。金があれば何だって立て直せる。」フロム「富だな。金がなけりゃ何も始まらん。」アクワイア「んじゃあ名誉で。拍ないと誰もついてこないんだよネ。」ネロ(欲しかねぇなこいつら)(リアルではおぜうタイプ@復帰)
三択かー、お前ならどうする? 氷室「誰かに命令されるのは好かない。そいつを殺して自分に有利な選択肢全てを選ぶ。」 邪道……。もしも絶対に1つしか選べなかったら? 氷室「そのときにならないと分からない。ただ俺は仲間見捨ててまで利益は取らない。」 すっげー久々にまともなこと言いやがった!(クリケット)
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