真・恋姫無双 魏が滅亡した日 Part56 一球入魂 |
〜許都〜
ほんの少し前に華琳が座っていた玉座は秋蘭の物となっていた
肘掛に片肘をついた秋蘭は晋の重鎮を集め軍議を開いていた
「それで」
「はっ、合肥は優勢、長安は奪還に成功致しました。
残る懸念は中軍を撃破した呂布率いる魏蜀連合軍の生き残りのみかと」
別の文官が声をあげた
「魏蜀連合軍は猛将呂布を中心に、裏切り者の青州兵を率い北上しております。侮れませぬ
今すぐ、呉蜀討伐軍から余剰兵力を都の防衛に動かすべきかと」
一同が同調し賛同した
しかし秋蘭はその意見を一蹴
「呉、蜀を侮るな。討伐軍の戦力を割くことは許さぬ」
「ですがそれでは都の防備が・・・・連合軍は少数なれどつわもの揃い」
「案ずるな、今作戦に参加していない北方の兵力を全て都に集結させる」
「なんと」
一同がざわめき始めた
討伐軍の兵力を動かすべきと主張した将が反対の意思を示す
「北方の兵力を全て南下させると仰りますか?五胡が軍の動きを察知すれば、瞬く間にこちちらへ攻め入るは必至!」
軍議に参加する全ての将から反対の意見が噴出した
「静まれ!安心しろ、この司馬仲達に抜かりはないさ」
華琳に続き司馬懿となった秋蘭は自信を見せた
〜長安〜
雲一つない青空がまぶしい
しかしその青空を覆うのは長安から立ち昇る多数の煙
その煙を遠く南方の馬上から眺める詠は
顔も衣服も泥だらけでぼろぼろの状態だった
(こんなはずでは・・・・・)
晋は確かに大軍だった
兵力で劣る蜀軍は詠の指揮の下徹底した篭城作戦を取り、鈴々を中心に鉄壁の防衛体制を敷いた
隙ありと見れば猪々子と斗詩が晋の後方を攪乱し兵站を攻撃した
このまま持久戦になれば晋は必ず撤退する
その隙に蜀の兵力を長安に集中し反撃の時を得る
作戦は全て順調だった
しかし
「あんなのどうしろと言うのよ・・・・・」
順調に見えた防衛戦をひっくり返したのは流琉だ
流琉は鈴々を長時間の一騎打ちで退け、伝磁葉々を使い城門を一撃で破壊
晋の兵が場内になだれ込み蜀の防衛はあっさりと崩されてしまった
詠が驚いたのは流琉の考えられない力で
鈴々は流琉を圧倒していたにも関わらず、後退したのは鈴々だった
「不死身とでも言うの!!」
二人の勝敗を分けたのは強さではない
考えられない流琉のスタミナと回復力
あれではいくら鈴々が強かろうと手に負えない
「くそっ」
詠は悔しげに呟いた
「賈駆様、顔良将軍、文醜将軍より伝令、殿はそろそろ限界とのこと」
「くっ、鈴々は?」
「相変わらず・・・・」
鈴々は崩壊した戦線に復帰すると蜀軍をまとめ撤退の態勢を整えてくれた
今は単身で流琉を食い止めているが、鈴々の負担は大きくなりすぎている
「鈴々がいなければ全滅だったわね」
(撤退できるか分からないけど)
「猪々子も斗詩もよくやってくれているわ、けど・・・・ごめんなさい。2将には何とか敵を食い止めて欲しいと伝えて」
(手の打ち様がないじゃない・・・・・)
詠は南の青空を見つめる
「月・・・・・」
「前方に砂塵!」
兵が叫んだ
「援軍?援軍なの??」
「騎馬が一騎猛然とこちらへ向かっているようです」
(誰、誰が来たのよ)
その騎馬は物凄い速さで詠たちに向かって走ってきた
まるで鬼神のごとく
「うぉおおおおおおおおおおぉぉぉっぉぉぉぉ董卓様のために!!!」
「あ、あれは・・・・・・・・・・・・・華雄将軍!」
「賈駆、後は私に任せろーーーーーーーー!」
華雄は詠たちを猛スピードでとおり抜け殿へと向かっていった
長安の戦いで蜀に降伏した華雄は
月が成都にいると知るや否や成都へ一人で帰ってしまった
月が給仕の仕事をしていると知った華雄は月と共に給仕になると言って聞かなかった
しかし、蜀の戦力を考えれば華雄の戦力は喉から手が出るほど欲しい
桃香と朱理は将への復帰を懇願したが華雄は首を縦に振らなかった
桃香と朱理が散々説得しても聞かなかった華雄であったが
月にお願いされるとあっさり将として現場復帰した
華雄に遅れ、ついに援軍の本隊が見えてくる
その先頭を馬にまたがり走るのは桃香と雛里だった
「間に合ったみたいだね」
「桃香、どうしてこんな前線に来てるのよ」
詠の問いに桃香は少し困惑気味に
「あはは・・・・それがね」
と、桃香が後ろを振り返ると
「猪々子と斗詩は無事なんですの?二人はどこにいますの?」
後ろから出てきた麗羽に胸倉を掴まれ前後にゆすられる詠
「ちょ、ちょっとやめなさいよ」
「麗羽さん落ち着いて」
「これが落ち着いていられますか!二人に合わせなさい。猪々子、斗詩ーーー!」
「あははは・・・・長安が危ないって聞いてからずっとこんな感じで・・・・」
長安から至急援軍をとの急報を受けた蜀は大騒ぎとなった
予定ではもう少し余裕があると考えられていたからだ
そして、最も一人で大騒ぎをしたのは麗羽だった
二人を心配しすぎてオロオロしっぱなしの麗羽が援軍が出立となると前線に行くと言って聞かなくなってしまった
しかし麗羽を連れて行くのはいろいろと問題がある
はっきり言って邪魔になる可能性が高い
麗羽を抑えられるのは桃香だけであると朱里が判断し、二人共にここまで来てしまったのだ
「あわわ、桃香様、撤退していた長安防衛隊との合流完了しました。これより晋を迎撃します」
「うんわかったよ」
桃香が靖王伝家を掲げる
「もう一度がんばろう皆、争いのない大陸を取り戻すために!!」
「「「「「「「「「おおーーーーーーーーー!!!!!」」」」」」」」」
桃香が靖王伝家を掲げ号令を発す
それだけのことで絶望感が漂っていた蜀の士気がこれほどに盛り上がる
詠は桃香の力を改めて実感することとなった
「はぁ〜〜〜もう限界〜〜斗詩〜〜膝枕〜〜」「ちょっと文ちゃん、私だって限界だよ〜〜」
そこへ華雄と交代となった猪々子と斗詩が後退してきた
二人とも精魂尽き果てたようで、身なりは死闘によってぼろぼろ
桃香の姿を確認するとほっとしたのか力が抜けその場にヘタヘタと腰を下ろした
「もう動けな、ってうわぁ!!」「ちょ、え?麗羽様どうしてここに??」
座った二人に飛びついたのは麗羽だった
「・・・・二人とも無事でしたのね・・・・・・・・・・本当に・・・・・本当によかったでずわぁぁぁぁ」
心配で仕方なかった麗羽は二人が無事と分かると
力一杯に二人を抱きしめ人目もはばからず泣きじゃくった
「れ、麗羽様こんなところで」「姫落ち着いて」
恥ずかしそうに嫌がる素振りを見せてはいるものの
猪々子と斗詩は麗羽の胸に心地よさそうに抱かれていた
「ボンドウに・・・・ヨダッダ・・・・・ジュルッ・・・・ヨガッダ・・・・でずわぁ」
「麗羽様、あたいたちがそう簡単に死ぬわけないじゃないっすか、ね」
「麗羽様鼻でちゃってますよ、はい、これでチーンして」
「チーーーーーン」
斗詩から受け取ったハンカチで鼻をかむ麗羽
よく見れば目は真っ赤で、うっすらと目の下にクマが見える
二人が心配で睡眠も取れていなかったようだ
「あ、あれ、麗羽様?」「姫??」「すぅーすぅー」
安心した麗羽は寝てしまった
「まったくこの人は・・・・」「麗羽様らしいと言うか、ね、文ちゃん」
二人はうれしそうに、麗羽を起こさないよう大事に抱え、後方の荷馬車へ運んだ
麗羽を荷馬車に乗せると、二人は桃香と雛里のところへ戻り殿の状況を斗詩が説明する
そして、状況を打開するにはやはり流琉をどうにかしなければならないと結論が出る
どうやって流琉を抑えるか
「鈴々がいくら切ってもピンピンしてんだぜ、あんな化け物どうやって抑えるんだ?」
「う〜ん、いくら華雄さんが強いと言っても、流琉ちゃんには通用しないし」
流琉の恐怖をすぐ近くで感じていた猪々子と斗詩は流琉の不死身の恐怖を味わってきた
思い出すだけでもその恐怖が蘇り、体が震えだしてしまう
「あわわ、大変申し上げにくいのですが・・・・・・・・・流琉ちゃんはお二人で抑えてもらいます」
「「え・・・・・・・・・・・・・・・ええっーーーー!!」」
「ちょっと待てよ雛里!そりゃ無茶だぜ、鈴々でも手に負えないんだぞぉ、あたい達で抑えるなんて」
「そうだよ〜〜〜私達じゃ無理だよぉ〜」
涙目で訴える二人
「あわわ、鈴々ちゃんにはお二人と交代してもらい、疲労が回復次第全軍の指揮をお任せしなければなりません
華雄さんはあえて作戦を与えず好きなように暴れてもらうのが最良
現状、流琉ちゃんに対抗できるのはお二人しかいないのです。それに、鈴々ちゃんと華雄さんがいたとしても
お二人以外に流琉ちゃんを止められる人はいません」
「「??」」
猪々子と斗詩の二人でないと流琉は止められないと雛里は言う
「あわわ、策はあります。お耳をこちらに」
「「策??」」
二人は雛里の指示を耳打ちで理解した
援軍と合流した蜀軍は反撃に出ていた
特に華雄は単騎で晋を蹴散らし、その勢いに乗った蜀側が徐々に押し始めている
しかし押し切れないのは流琉が絶対に下がらないからだ
流琉は鈴々を押さえつけると同時に晋の戦線を保ち続けていた
「いい加減にーーーしろなのだぁー!」
鈴々の一撃が流琉を捉える
しかしその傷は瞬く間に癒えてしまった
鈴々は強くなっている
今や蜀で鈴々と互角に打ち合えるのは恋だけであり
愛紗に「鈴々は私よりも強い」と言わせるほどに成長していた
それほどに強い鈴々がトドメをさせずに逆に追い詰められている
「くぅぅ!」
伝磁葉々を正面から受けてしまった
避ける動作もおぼつかなくなり始めているようだ
「これは困ったのだぁ」
どうすればいいのか考えてみるが答えが見えない
そろそろ限界も見えてきている
「鈴々、交代だ」
「猪々子?」
「ここはあたいに任せて、鈴々は後方で休んでくれ」
「猪々子の腕じゃ無理なのだー!猪々子じゃ簡単にやられちゃうのだーー!」
ガクッと崩れる猪々子
気を取り直し
「そんなこと分かってるよ」
猪々子は鈴々に比べれば数段弱い、それでもなぜか自信を感じさせる
何か策があると感じた鈴々は猪々子を信じることにした
「よく分からないけど、絶対生きて帰ってくるのだ猪々子。帰ったら一緒に肉まん食べにいくのだ」
「嫌な予感のする言葉だけど・・・・その時は鈴々のおごりだかんな!」
鈴々は豚にまたがると後方へ下がって行った
猪々子は流琉と1対1で対峙する
(やべえ、ちびりそう)
かつては季衣と喧嘩をした流琉の背後を取ったこともある
しかしこの二人は成長期真っ只中であり、その力はあの頃と比べ物にならない
さらに不死身であることもあってまともに戦えば勝ち目はない
(やるぞ!)
大きく息を吸い込む
「この・・・・・貧乳ーー!季衣は胸も成長したのに流琉は変わらないよなーー!」
流琉の動きがピタッっと止まる
「身長だけ伸びて胸は成長してないよな、季衣は成長したのにー!この、胸囲72−−−!」
(言ってて自分が悲しくなるぜ・・・・・)
猪々子も貧乳だ
「72固定じゃ天の御遣いってのもかなしむ、うわぁ!!」
流琉の伝磁葉々が物凄い勢いで猪々子を襲う
猪々子は斬山刀で防御を固めなんとかはじき返す
「いってぇーーーー!」
(手がジンジンするぅ〜斗詩助けて〜〜〜)
それでも猪々子は挑発を続けた
「そ、その程度痛くもかゆくもないね。胸と同じで武力も成長してないんじゃないの〜?」
更に強烈な一撃が猪々子を襲うが、猪々子は斬山刀を盾にして耐える
そうして斬山刀で徹底的に防御に徹し、何度も流琉の攻撃に耐えに耐えた
(そろそろ決めないと斬山刀がもたない)
「天の御遣いは巨乳好きらしいぞーーーーーー!!!」
流琉の全ての力が一撃に加えられた
この一撃を食らったらやばい
「今だ斗詩!!」
「来なさい!」
それまでじっと斬山刀で受け流していた猪々子がその身を翻し伝磁葉々をかわす
斬山刀で受けると思っていた流琉は一瞬戸惑いを見せた
そして猪々子の位置の後方には半身で金光鉄槌を左肩に構える斗詩
その構えは、どこぞのイチローだった
「もらったー!」
カキーン
とてつもない力で投げられた伝磁葉々を金光鉄槌の真で捉えた
物凄い金属音と共にあっという間に伝磁葉々はかなたへと消え、その武器を握っていた流琉も共に吹き飛んでいく
高い弾道を描いた流琉の姿が見えなくなりその場から消えた
「やったぜ斗詩、砲無蘭ってやつだ!」
「・・・・・・・・気持ちいい!」
二人は大はしゃぎだった
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茶番やん。(れんれん) 全話読みました!先が気になりますね〜続き期待してます!(もんもん) 待ってますよ・・・(ミクボン) 続き待ってますb(アーモンド) 2つ先の話から一刀側の話が進むつもりです。更新ペース上げていこうと思います(見習いA) いい加減一刀&華琳側を出してくれたらいいですけどね〜###(ファイズ) この小説を書いていてきついのが、一部キャラを操られているとはいえ悪役にしてしまったことです。今後流琉にも必ずいい扱いをしたいと思いますのでファンの方すいません!(見習いA) 流琉……(akieco) |
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