Masked Rider in Nanoha 十五話 輝石が取り持つ出会い
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 焚き火を囲み、向き合う二人の青年。片方はご存知五代雄介。今も焚き火に手を当て、暖かさを感じて笑顔を受かべている。問題は、その向かいの相手だ。

 彼は白い上着を着ており、五代とは違う意味での好青年だった。気を失っていた五代を助けてくれた恩人。彼の名は―――。

 

「光太郎さんも旅をしてるんですか」

 

―――南光太郎。暗黒結社ゴルゴムの世紀王にして黒い太陽の名を与えられた者。兄妹のように育った親友と戦い、家族のようだった親類を失い、それでも平和を守るために拳を振るい続けた男。またの名を、太陽の子。そう、仮面ライダーBLACK RXだ。

 

「ええ。自分の出来る範囲で自然を守っていこうと思って。もっと人間が自然と共存して暮らせるように」

 

「……いいですね、それ」

 

 光太郎の語った言葉は五代にとっては嬉しい言葉だった。冒険家である自身とは違うが、どこかそれは亡くなった父に似た感じがしたのだ。五代の父は戦場カメラマンであった。

 戦争の悲惨さや凄惨さを伝える事でみんながいつか争いを止めてくれるようにと願いながらシャッターを切る反面、たまに大自然を撮影してその写真でみんなが心和ませてくれる事を願っていた事を思い出したのだ。

 

「それにしても、どうして五代さんはあんな処で?」

 

「えっと、何て言ったらいいのか……」

 

「あ、言いにくいならいいんです」

 

「……すいません」

 

 そこで互いに黙ってしまう二人。だが、五代は既にここが海鳴でない事は確認している。そして、どうも自分が元いた世界とも違うようだとも。

 何せ光太郎に何年かを聞いて驚いたのだ。まだ平成になったばかり。それを聞いた瞬間、五代はキョトンとした顔をし光太郎に不思議がられたのだから。

 

 なので、こうして光太郎から五代はやや不思議がられているのだが、それを向こうが追求してこないのにはちゃんとした理由がある。

 五代は冒険家なので久しぶりに日本に帰ってきたと言ったのだ。それに光太郎は納得した。年号が変わった事を知らないのはそのせいかと。

 

 五代はそれもあってすっかり安心していた。だが、光太郎はまだ五代をどこか怪しんでいたのだ。不審人物としてではない。何かある気がする。その勘とも言える部分がそう彼に告げていたのだ。

 だからだろう。光太郎はある事を尋ねてみた。それは、おそらく世界中の人々が知っているであろう出来事。外国でも日本人なら教えられるはずの出来事を。

 

「でも、良かったですね。二年近く前だったらゴルゴムに占拠されてましたし」

 

「え?」

 

「……知らないんですか?」

 

 光太郎の視線がやや鋭さを帯びる。それを感じ取って五代は迷った。光太郎の問いかけはこの世界の物ならば聞いた事ぐらいはあるものだと悟って。そこから派生し、このままでは自分がまた不審人物と思われてしまうと考えたのだ。

 自分の事を話すか否か。それをどうするか考え出す五代だったが、その決断が中々出来ないでいた。アマダムが何故か何も言ってこないため、五代はどうすればいいのか判断がつかなかったのだ。

 

 アマダムが言ったもう一人の王。それがこの世界にいるのは間違いない。その確信が五代にはある。だが、一体どんな相手でどういう姿か分からない以上捜しようがない。それに、光太郎が五代から何か感じ取ったように彼もまた同じように感じ取っていた。光太郎にも何かあると。

 

「えっと、ゴルゴムですか?」

 

「ええ。怪人を使い、この日本を一時期占拠した悪魔の軍団です」

 

「怪人……」

 

「様々な生物の姿と力を備えた怪物です。今は仮面ライダーBLACKがゴルゴムを倒したので存在しませんけど」

 

 光太郎の告げた名前に五代は表情を変えた。それに光太郎も気付いて五代を見つめる。五代は思い出していたのだ。邪眼との会話で翔一が挙げた名前を。そう、BLACKさん。

 そしてキングストーンを持っていたと邪眼が言っていた事も。きっともう一人の王はその人だ。そう思い、五代は光太郎へ尋ねた。仮面ライダーBLACKについて教えて欲しいと。その問いかけに光太郎は驚くも、五代の眼差しに込められた輝きに何かを感じ静かに語り出した。

 

 自分も伝え聞いただけだけど、と前置いて。それは、思わずクウガとして未確認と戦っていた五代でさえ聞き入ってしまう程の物語。いや、クウガとして戦っていたからだろう。自分に置き換えて考えればやるせなさや無力感ばかり感じてしまう内容だったのだ。

 何故伝え聞いただけの光太郎がここまで詳しい話を出来るのかと言う疑問を忘れてしまう程の、悲しく、辛く、そして救いのない物語がそこにはあった。

 

 たった一人、強大な悪へ立ち向かったヒーロー。そう言えば聞こえは良い。しかし、その異形の力と姿はそのゴルゴムによるものだ。それでも、BLACKは自分のような犠牲者を出さないためゴルゴムへ孤独な戦いを挑んだ。

 多くの怪人を倒し、時に傷付きながらも最後まで戦い抜いた仮面ライダー。BLACKは一度は悪の手で死に瀕したものの見事に復活を遂げ、ゴルゴムを倒した後は人知れず姿を消したのだ。

 

「……じゃ、BLACKさんは今……」

 

「今は、BLACK RXと名乗ってます。つい最近までクライシス帝国と戦ってましたね。他の先輩ライダー達と共に」

 

「え? RX? それに先輩ライダーって?」

 

「名前の方は詳しく知らないですけど、姿が変わったから変えたんじゃないでしょうか? おそらくクライシスとの戦いが原因だと思います」

 

 光太郎は疑問符を浮かべる五代に苦笑しつつ、今度はRXと先輩ライダーについて語り出す。先輩ライダーというのは、RXが現れる以前から人知れず世界を守って悪と戦い続けていた仮面ライダー達なのだと。

 クライシスは異世界からやってきた侵略集団。一度はBLACKを負かしたが、RXとなった後その強さに勢いを削がれて最後は町一つを消し飛ばす程の爆弾を内臓した怪人や、幹部を改造した怪人を使って苦しめた。だが、先輩ライダー達や仲間達の協力を得たRXはそれらを全て倒し、クライシスを撃破し無事地球を守り抜いた。

 

 そして、その怪人の爆弾により首都圏は復興の真っ最中で、RXを始めとした仮面ライダー達は世界の各地で現れるかもしれない悪と戦うために散り散りになったらしいと光太郎は締め括った。

 

「そうなんだ……じゃ、翔一君はここの生まれ?」

 

「翔一君?」

 

「あ、知り合いです。仮面ライダーやBLACKさんの事を教えてくれたんですよ」

 

 五代の言葉に引っかかるものを感じ、光太郎は尋ねた。その名前をどうして翔一は知っているのに何故五代はゴルゴムの事を知らないのか。それに五代はやや考えたものの、これはきっと話しても大丈夫だと思って答えた。それがある意味での決定打となると知らずに。

 

「翔一君は、前にBLACKさんと発電所で会った事があるんですよ。だから名前だけは知ってたんです」

 

 そう五代が笑顔と一緒に告げた内容。それに光太郎は驚愕の表情を浮かべた。発電所で出会った彼が知らない名前の相手。それが意味する事は光太郎の中で一つしかなかったからだ。

 あの頃は知らない存在だった一号やV3や未来の仮面ライダーと出会った戦い。しかし、先輩達の名前を知った今、発電所で出会った中で彼が名を知らない相手は一人しかいない。

 だからこそ光太郎は慎重に五代へ尋ねた。翔一は何故五代に仮面ライダーの事を教えたのか。そして何故その存在を五代は信じたのかと。それに五代は困ったような顔をした。さすがに自分もその仮面ライダーとは言えないために。

 

「五代さん、貴方は最近日本へ帰って来たばかりと言ってましたね? なら、いつ翔一さんと言う人から仮面ライダーの話を聞いたんです?」

 

「その……何て言えばいいんだろうな。俺も翔一君と出会ったのは外国みたいな場所だったし」

 

 五代が苦しみながら答え出したその時、光太郎の脳裏にある声がした。

 

”光太郎よ”

 

(キングストーン?)

 

”この者は、我と似た物を持っている……”

 

(何っ!?)

 

 急に表情を変えて黙り込んだ光太郎に気付いた五代は不思議そうな表情でその顔を見つめる。だが、その五代にもある声が聞こえてきた。しかもそれは予想だにしなかった声。

 

<五代さん……>

 

<えっ? 光太郎、さん?>

 

 そう、聞こえてきたのは光太郎の声だった。しかし、目の前の光太郎は口を開いていない。それから導かれる答えは一つだった。そう、光太郎は普通の人間じゃない。そこで五代はある結論へ辿り着く。

 

<まさかRXって……>

 

<はい、俺の事です。でも、教えてください五代さん。何故、貴方にキングストーンと同じような物があるのかを>

 

<……分かりました。俺、アマダムっていう石が体に入ってるんです。それが、どうも邪眼って奴が言うにはキングストーンと同じらしくって>

 

 五代は邪眼の名を出し、それが言っていた事を光太郎へ語った。光太郎は邪眼という名前に驚いたものの、五代と翔一が協力して倒した事を聞いて胸を撫で下ろす。そして、五代からクウガになった時から今までの話を聞き、彼もまた未来の仮面ライダーだったのだと感じていた。

 

 未確認が出現した時は一号達やRXが現れなかった事を聞いた光太郎は不思議に思うも、申し訳なさを感じて拳を握った。それを見た五代は他の国にも同じようなのが出ていたのかもしれないと告げ、光太郎達を擁護した。

 そして最後に五代はアギトの事を話す。その名を聞いた時、光太郎はやはりと頷いた。あの異様な空間。そこで共に悪と戦った仲間。あれ以来出会う事はなかったが自分の事を覚えていてくれた事には光太郎も嬉しさを感じたのだ。

 

 全てを話し終え、五代と光太郎はそれぞれ息を吐いた。五代はアマダムからもう一人の王を捜せと言われた。それを光太郎はシャドームーンがいない事を考え、自分の事だろうと結論付けると同時に思う事があった。

 キングストーンを邪眼が未だに狙っていた。それだけでも驚きなのに、それを違う形で持つ仮面ライダーがいた事にも驚いた。しかもまだ邪眼は完全に倒せていないのだから。それについて光太郎も五代も確信に近いものを抱いているのだ。

 

 だが、そこで問題になったのはどうやって邪眼がいる場所まで行くかだ。おそらく邪眼は魔法世界にいる。だが、そこへ五代達は偶然移動させられた。つまり行き方が分からないのだ。異なる世界。その考え方を聞いて、光太郎にある可能性が浮かんだ。

 

「五代さん、行けるかもしれない!」

 

「えっ?」

 

「俺の仲間に、怪魔界という場所へ行ける力を持つ奴がいるんだ。それを上手く使えば、もしかしたら……」

 

 そう告げる光太郎に五代が力強く頷き、立ち上がると同時にサムズアップ。

 

「大丈夫です! 必ず行けます!」

 

 その言葉と仕草。それに込められたものを感じ取り、光太郎は笑みを浮かべる。やはり、彼もまたライダーなのだとそう思って。希望を与える何か。それを五代から感じたのだ。

 光太郎は五代に続くように立ち上がるとサムズアップを返す。だが、その顔は笑顔ではなく真剣なもの。それに五代はやや驚くが、その次の瞬間、光太郎が笑顔になる。その変化にまた驚く五代だったが、嬉しそうに頷いて笑顔を返す。

 

 こうして五代は光太郎と出会った。そして、それは新たな戦いの幕開けでもある。

 

 五代が光太郎と出会っている頃、科学警察研究所―――通称科警研では一人の来訪者が現れようとしていた。その彼が訪れる事になるのはそこの一室。巨大なクワガタを模したようなオブジェ。それが大きな存在感を出している場所だ。

 そして、それに繋がれた幾多もの配線は全て計測用の機械へと繋がれている。このオブジェのようなものはクウガの頼れる仲間の一人である『ゴウラム』と呼ばれる存在なのだ。

 

 そんなゴウラムを前に一人の女性が首を傾げていた。榎田ひかり。ここで未確認関連の研究をしていた女性だ。彼女は、何やら呟きながらゴウラムを調べている計器へ視線を向ける。そこには何も変化がない。

 それを改めて確認して榎田は頷くとまた視線をゴウラムへ戻す。当然ながらゴウラムにも何の変化もない。それも確認し、榎田は頭を掻き始めた。

 

「……っかしなぁ〜。確かに動いたはずなんだけど」

 

 そう、五代が旅だってからまったく動かなかったゴウラム。それが、つい先程微かだが計器に反応があったのだ。それに偶然気付いた榎田は、こうして久方ぶりの徹夜をしゴウラムに付きっきりとなっている。

 勿論愛する息子にはちゃんと許可を貰っていた。四号に関する事と告げると、息子も納得したように頑張ってと言ってくれたのだ。それもあって必ず何か収穫をと思っていたのだが、このままではそれは難しい。そう判断して榎田がため息を吐いた。

 

「でも、これじゃあね」

 

 無駄骨か。そう思って視線を外した瞬間だった。何かが落下する音がしたのだ。しかもゴウラムの上に。その音に視線を戻す榎田。そこにいたのは―――。

 

「人ぉ?! ……しかも、何もない場所から……? どういう事よ……」

 

 ゴウラムの上に寝そべるように倒れている津上翔一だった。とにかく事情を聞かなくてはと動き出す榎田。翔一の呼吸などを確かめながらもどこかその視線は科学者の目をしているのが彼女らしい。

 

 こうして、人の新たな可能性は戦士の仲間や友と出会う。それは、今は相棒を得ていない戦士を助ける事になる。そして、彼に託される戦士への願いと想い。その全てを戦士に伝える事は、彼にも新しい道を開く事となるだろう……

 

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 ジェイルラボ内にあるナンバーズ調整室。そこに真司はいた。クアットロに来るように呼ばれたのだ。そう、ナンバー7ことセッテが目覚めるとそう言われて。なので喜び勇んで来てみた真司だったが、既にセッテは起動を終えていて全身タイツのようなボディースーツを着ていた。

 それを見て真司はどこか残念がった。そう、目覚める瞬間に立ち会えなかったと妻の出産に間に合わなかった夫のような心境になったのだ。だが、落ち込む彼を見てセッテが告げた一言に真司は驚く事になる。

 

「兄上、そんな落ち込まないでください」

 

「あ、兄上ぇ?!」

 

「何か問題が? 真司兄上と呼ぶと堅苦しいと思われる。そうクワットロ姉上に言われたので兄上だけにしたのですが?」

 

 そう言って不思議そうに小首を傾げるセッテ。その仕草が長身でモデル体型のセッテにはどこか不釣合いだったが、それ故に真司には可愛く見えた。そして、言葉遣いはともかく自分はやはり兄扱いなんだと感じつつ、真司は気を取り直して自己紹介。

 

「ま、それでいいや。俺は、城戸真司。よろしくな、セッテ」

 

「はい、兄上。私はナンバー7、セッテ。ISはスローターアームズ。簡単に言えば、固有武装のブーメランブレードを自在に操る事です。よろしくお願いします」

 

 笑顔の真司に微かな笑みを返すセッテ。それを見てクアットロはうんうんと頷くと、早速とばかりに真司へ告げた。そう、セッテの初訓練をしてやってほしいと。それに真司はやや躊躇う。そもそも戦う事が好きではない真司は、目覚めたばかりの妹分相手に模擬戦をする事へ乗り気になれようがはずがなかった。

 そんな真司を見たセッテが彼の心境を知るはずもない。自分との訓練を嫌がっている。そうとしか捉えられなかったのだから。

 

「あの、兄上は私とでは……不服でしょうか?」

 

「あ、いや、そういう訳じゃないけど……セッテは訓練したいのか?」

 

「はい。早く体を動かしてみたいのです」

 

 セッテが笑みと共に告げた答えに真司が嬉しそうに頷いたのは言うまでもない。早く体を動かしてみたい。その欲求は戦闘機人というよりも人間のそれに思えたからだ。意気揚々とセッテと共に調整室を後にする真司。

 クアットロはそんな二人を見送って小さく笑う。真司が教育を担当する相手はまだ二人いるのだ。オットーとディードの双子コンビ。真司は、オットーとディードが双子と聞いて凄く楽しみだと言っていた。それもあり、クアットロは双子を同時に目覚めさせるべく奮闘中だ。

 

(でもぉ……おそらく起動はオットーよりも先にノーヴェかしらね? ドクターったら、ライダーシステムと並行している割に仕事速いんだから)

 

 そう思ってクアットロはため息を吐く。中々思った通りに事が進まない事への不満を込めて。だが、その割に彼女はどこか楽しそうだった。

 

「さてさて、シンちゃんは驚くでしょうね。何せ、セッテちゃんったら……ふふっ」

 

 目覚めたばかりのセッテだが、その能力は真司が予想するよりも高い。それを知った時真司は果たしてどんな顔をするのだろうか。そう思って笑うクアットロ。その表情はどこか昔の彼女らしさを宿していた。

 

 

 

 訓練場から響く爆音。それは龍騎とセッテが戦っている事によるものだ。セッテはトーレと同じく空戦型。しかも高速戦闘にも対応するという、まさに改良型なのだ。

 加えて彼女の固有武装であるブーメランブレードは材質が改良され、龍騎の使っている金属に近い強度を持っていた。それを自在に操り、セッテは龍騎を相手に優位に立ち続けていた。

 

「兄上、私に気を遣って頂かなくても……」

 

 セッテは先程から龍騎が回避しかしていないのでそう言った。これまでのデータで龍騎の強さを知っているための言葉だが、言われた方はと言えば―――。

 

「そんなつもりないから! セッテが凄いだけだからっ!」

 

 本当に回避で精一杯となっていた。変幻自在に飛び回るブレードをかわし、龍騎はそう大声で叫ぶように返す。実際セッテは見事だった。トーレ達からのデータ共有を受け、龍騎の動きや武器を把握し、そこから予測した事を基にブレードを動かしているのだ。

 龍騎としては何とか避ける事しか出来ないのはそこ。更にガードベントを使って防ごうにも、デッキに手を伸ばす隙を与えないようにセッテやブーメランブレードが強襲してくるのだ。おかげで現在まで龍騎は何もカードを使えていない。

 

(このままじゃ……兄貴分として情けなさ過ぎるだろ!)

 

 そう思って状況の打開策を模索する龍騎。セッテはそんな龍騎を見て既に尊敬の念を抱いていた。

 

(さすが兄上。これだけの攻撃を全てかわし切るとは……)

 

 絶え間なく襲うブーメランブレードを避け、自身の攻撃をもかわし続ける事。それはセッテには十分尊敬に値する事だった。行動予測をされているのにも関わらず回避を成功させているのだからだろう。

 

「それに……兄上は追い詰めてからが恐ろしいとトーレ姉上のデータにある」

 

 そう言いながら視線を龍騎の手に向けるセッテ。龍騎はまだ何かするつもりなのか、デッキに手を回し何かカードを取ろうとしていた。

 

(やはりまだ諦めていないようだ。なら、私も最後まで気を抜けないっ!)

 

 小さく頷きセッテはISでブーメランブレードを操作し龍騎へ攻撃を仕掛ける。そして、自身も速度を上げて龍騎を強襲する。それに対して龍騎が取ったのはやはりベントカードの使用。だが、その手がデッキに伸びた瞬間、一つのブレードがその手を狙う。それを龍騎は―――読んでいたかのようにデッキへ伸ばしていた手で叩き落した。

 

「なっ!?」

 

「今だっ!」

 

 予想外の光景に驚くセッテの見ている前で龍騎はここぞとばかりに素早くカードを引き抜いた。龍騎はセッテがカードを使わせないようにしている事を逆手に取り、敢えてデッキへ自分から手を回す事でブレードを誘導したのだ。

 そして時間差で残りのブレードが襲いくるも、それを蹴り飛ばしながら手にしたカードをドラグバイザーへ差し込む。

 

”SWORD VENT”

 

「っと、まだまだ!」

 

 上空から現れるドラグソードを手にし、龍騎はそれを左手に持ち替えると更にカードを取り出して差し込む。

 

”STRIKE VENT”

 

 そして右手にドラグクローが装備されたのを見て龍騎はセッテに対して身構えた。セッテもブレードを手元に戻し龍騎を見つめていた。やや睨み合うような形になる二人。そんな中、先に動いたのは龍騎だった。

 だが、空中のセッテ目掛けドラグクローを向けると注意を促したのは彼らしい行動と言える。

 

「上手く避けろよ!」

 

 その声と共にドラグクローから勢い良く炎が放射された。ドラグファイヤーと呼ばれるドラグクローによる攻撃方法の一つだ。その超高熱火炎にセッテは慌てて回避する。だが、上空を逃げ回るセッテの視界を遮るように炎が執拗に追い駆けた。

 それを嫌い飛び続けるセッテだったが、その最中にある事へ気付いた。龍騎は炎をセッテへ向けて放っているがその迫る速度は遅い。彼女は炎で視界をやや悪くされているだけ。冷静になればそこまで恐れる攻撃ではないのだ。そう、反撃に出るのは容易い事を悟ったのだ。

 

 そう判断したセッテは素早かった。その手にしたブーメランブレードをもう一度投げ放ち、龍騎の後ろを取ればいいと考えたのだ。しかし、セッテがブーメランブレードを手にした瞬間、下から何かが彼女向かって飛んできた。

 それをセッテは反射的に叩き落す。なんとそれはドラグクローだった。その瞬間セッテの目が見開かれる。ドラグクローに驚いただけではない。その視線の先には有り得ない光景があったのだ。

 

(そんなっ!?)

 

 その叩き落した先に炎を放っているはずの龍騎がいたのだ。龍騎はセッテが自身を見たと同時にドラグセイバーを手にして跳び上がる。それにも関わらず炎は未だにセッテを追い駆けていた。

 どういう事だと混乱しながらセッテは龍騎の攻撃を受け止める。そこへ炎が近付き、セッテは僅かに熱に意識を取られた。そして見たのだ。ドラグレッダーが炎を自分に向けて吐いているのを。そこでセッテは龍騎の策にはまった事に気付いた。

 

「アドベント!?」

 

「あったり!」

 

 セッテの視界をドラグファイヤーで悪くした龍騎は、ドラグセイバーを一旦地面に突き立てアドベントを使った。そして召喚したドラグレッダーに炎を吐かせ、自分が如何にも炎を放射し続けているように偽装したのだ。

 一旦地上へ下り、龍騎は失態を悟り微かに動揺するセッテへ向かって炎を吐くドラグレッダーに視線を送るとカードを手にして差し込んだ。

 

”GUARD VENT”

 

 龍騎の肩に一枚。そして左手に一枚ドラグシールドが出現し、それを装備して龍騎はセッテへ向かって再度跳び上がる。その肩についたドラグシールドをセッテへ向けて。そう、ショルダータックルのような攻撃だ。

 それをセッテは回避をしようとするがそれは出来ない。ドラグレッダーが炎を吐いて退路を絶っているのだ。それが先程の目配せによるものだと理解し、セッテは理解した。もう勝負はついたと。このまま粘ればセッテはおそらく勝てる。だが、それは本当の勝利ではないとセッテは知っているのだから。

 

 その理由。それは今もセッテが何度も攻撃を防いでも龍騎がまだドラグセイバーとドラグシールドだけで戦っている事にある。龍騎には空中にいるトーレさえ倒す攻撃があるのをセッテも知っていた。

 そして、それを使わないのは加減が難しくて怪我をさせてしまう事を龍騎が恐れているからだとも。

 

(やはり優しいのだな、兄上は)

 

 そう思い、セッテはゆっくりと武装解除し両手を上げると降参の意を示して龍騎の前へ下りた。龍騎はそれを受けて首を傾げながらもそれに応じるように変身を解く。

 

「な、どうして降参したんだ? あのまま続ければセッテが勝てたかもしれないのに」

 

「そうだとしても、それは本当の勝ちではありませんので。きっと私はこれからも兄上に勝って兄上に負けると思います」

 

 そう嬉しそうな笑みを浮かべてセッテは告げる。そんな彼女に真司は今一つ言葉の意味を理解出来ないのか疑問符を浮かべていた。

 

 

おまけ

 

 温水洗浄室へ向かって歩いている真司。先程の訓練で汗も掻いたのでさっぱりしたいと思ったのだ。ちなみに、前回のような事を防ぐためにセッテには先に汗を流しに行ってもらい、一時間経過してから行くという徹底振りだ。

 

「さてと、脱衣所には……うん。服とかないな」

 

 確認終了とばかりに頷き、安心して真司は裸になって浴室へ入る。マナーとして前はタオルで隠しているが、それが今回は功を奏す形となる。何故ならそこには―――。

 

「あっ、お待ちしていました、兄上」

 

「えぇぇぇぇぇっ!?」

 

 全裸のセッテがいた。タオルは持っているものの、自分の体を隠す事無くただ手に持っているだけ。それに真司は慌てて視線を外し背中を向けた。それに小首を傾げるセッテ。彼女としては現状に何ら問題はないと考えているためだ。

 

「? 中々来ないので少々待ちくたびれました」

 

「い、いやいや……何でいるのさ? ってか、隠せってセッテ」

 

「一度汗を流したのですが、出た先でセイン姉上に会いまして。起動した妹は兄上の背中を流すものだと教えられました。聞けばセイン姉上達もそうだったとか。それと、隠す必要はありません。相手は兄上ですから」

 

「セインかぁぁぁ! それと! 兄だから裸でいいとかないから! せめて湯船に入れよ!」

 

「何故です? 背中を流すのに浴槽では出来ませんが……?」

 

「そうだけどっ! って、また俺、チンクちゃん達に怒られる〜っ!」

 

 そんな真司の予想通り、いつまで経ってもセッテが訓練から戻ってこないのを不思議に思ったクアットロがまさかと思い温水洗浄室へ現れてこの事が発覚したのだった。

 真司はセッテからの説明もあってか今回はそこまで酷い目には合わなかったものの、それでも結構痛い目に遭わされる事となる。

 ちなみにセッテは服はわざわざ戸棚に隠し、真司が来るまで三十分程ひたすら待ち続けていた。背中を流す事や服を隠す事などセッテへ変な事を吹き込んだセインは、真司とウーノに手酷く怒られた。それと、密かにその日の夕食が質素なものになったとさ。

 

 

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五代と光太郎の出会いと理解。翔一は、まさかの世界。だってクウガだけバイクないですから。

 

真司は、セッテ起床により色々と大変です。セッテの性格はやや古風な感じというか何と言うか。これが機械らしくでないセッテっぽいかなと思いますが、皆さんはどうでしょうか?

説明
新たな出会いを果たす五代。
一方翔一はクウガの力となるべき場所へと飛ばされる。
それぞれが出会う存在が甦る闇を倒す力になると知らずに……
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龍騎 アギト クウガ リリカルなのは 仮面ライダー 正義の系譜 RX 

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