仮面ライダークロス FOREVER AtoZ運命のガイアメモリ パート1 |
光輝とフェイトは腕を組んで街を歩いていた。今二人はデート中である。
なぜか。それは、光輝がもうすぐ消えてしまうからだ。どうせ消えるのなら二人の思い出をたくさん作っておこう、という理由で、本日のデートを敢行したのである。
今日のフェイトは、本当は部活があったのだが、フェイトがなのはを含めた部員達に事情を説明したところ、全員泣きながら許可してくれた。
「ねぇ光輝。今日どこ行く?」
「そうだねぇ…」
二人は歩いていった。
その頃、風都上空。
一機のヘリが、財団X本部へ向かっていた。乗員の田端は、とあるガイアメモリを二十六本収めたトランクを手にしている。今回の彼の任務は、本部にこのメモリを届けることだ。
その田端が乗るヘリに、もう一機別のヘリが接近している。
次の瞬間、そのヘリに乗っていた一人の男性が、財団のヘリに飛び乗った。
男性、大道克己はそのままヘリに乗り込み、田端からトランクを奪い取ると、開けて中を確認。メモリの中から一本、Eと書かれた物を抜き取り、
〈ETERNAL!〉
起動させてから、既に装着済みの自身のロストドライバーへ、装填する。
〈ETERNAL!〉
二度目のガイアウィスパーが響き、克己の姿は、Eの字を横に倒したような触覚を持ち、黒いマントを羽織った白い戦士になっていた。
ヘリのパイロットはその戦士を見て呟く。
「仮面ライダー?」
「くっ…!」
田端はポケットに隠し持っていたスイッチを押す。すると、トランクに仕込まれていた爆弾が爆発し、その爆発にヘリが巻き込まれ、ヘリは爆散した。これではもう誰も生きてはいないだろう。そう思われたが、
ただ一人、
克己が変身した戦士だけは傷一つ負わず、マントをはためかせて風都へ落下していった。
街中に散った他のメモリとともに…。
そこから、今回の事件が始まった。
風都史上最悪の事件が。
雨が降る中、フィリップは珍しく屋外にいた。いつも通り本を読んでいる。と、
「お兄ちゃん、何してるの?」
一人の少年がやって来た。
「ああ、ちょっと本を読んでいるんだ。」
「ふ〜ん…僕はね、ママを捜してるの。」
「そうか…」
ここで、フィリップは少年に訊いてみる。
「君、ママに会いたいのかい?どうして?」
「えっ?ママに会いたいって思うのは当たり前のことでしょ?」
「…」
フィリップは黙った。
彼には幼い頃の記憶がない。それゆえに、家族のことも知らない。全ての記憶を閲覧できる地球の本棚にも、唯一彼の幼少時の記憶だけが残っていないのだ。
と、雨があがり、少年の母が少年を迎えに来た。フィリップは二人を見送ってから考える。
「母親、か…」
その時、突然悲鳴が上がった。フィリップが驚いて見てみると、そこには信じられない光景が…。
「バイオレンス・ドーパントに、アイスエイジ・ドーパント!?倒したはずなのに…!!」
そう。以前Wが倒したはずのドーパント、それも二体が、人々を襲っていたのである。
時同じくして、別の場所ではウェザーとナスカ、また違うドーパントが暴れ回っていた。
「青いナスカに…ウェザー!?亡霊が地獄から迷い出たか!!」
〈ACCEL!〉
「変・身!」
〈ACCEL!〉
駆けつけた照井はアクセルに変身し、攻勢に出る。
それを影から見ていた井坂は一言。
「私はまだ死んでいないんですがねぇ…」
同時刻。
光輝とフェイトの前には、パペティアーとイエスタディの二体のドーパントが現れ、混乱を巻き起こしていた。
「フェイトさん!フェイトさんはみんなを避難させて!ドーパントは僕が倒す!!」
「わかった!」
光輝に従うフェイト。フェイトはこっそり、
「せっかくのデートが…」
と嘆いていた。
で、ダンテとバージルもやはりドーパントの襲撃を受けそうになったのだが、いつものごとく現れたベルセルクがドーパント…バードを瞬殺し、二人は代わりにベルセルクと対峙することとなった。
「まーたお前か。いい加減、勘弁してほしいもんだな。」
「言っている場合か。さっさと終わらせるぞ」
〈SLASH!〉
〈BLAST!〉
「「変身」」
〈SLASH/BLAST!〉
二人はソウガに変身。群雲を抜く。
「あんな雑魚が相手じゃ、逆につまんねぇだろ?」
ベルセルクもアームズベルセルク ソードモードの切っ先をソウガに向ける。
「…それもそうか。」
ダンテが言い、両者はぶつかった。
バイオレンスとアイスエイジの襲撃から逃げ遅れたさっきの親子。翔太郎に連絡を入れたフィリップは、親子を逃がすためにドーパント達の前に立つ。
「早く逃げて!」
「は、はい!」
母親は少年を抱えて逃げる。フィリップに迫るバイオレンスとアイスエイジ。
その時、二体のドーパントに銃弾が直撃した。
発砲したのは、サングラスをかけた女性。銃撃しながら、女性はバイオレンスとアイスエイジに迫る。と、女性は不意にサングラスを外した。
「!?」
フィリップは素顔を見せた女性に、何かを覚える。
(あの人は、一体…)
そこへ、ハードボイルダーに乗った翔太郎が到着した。
「待たせたな、フィリップ!」
「遅いよ翔太郎!早くあの人を…」
女性から一瞬目を離し、視線を戻すフィリップ。だが、もう女性はいなかった。
「どうしたフィリップ?」
「…いや、なんでもない。それより…!」
「ああ、行くぜ相棒!」
〈JOKER!〉
〈CYCLONE!〉
「「変身!」」
〈CYCLONE/JOKER!〉
翔太郎はWに変身し、バイオレンスとアイスエイジに挑む。
まずサイクロンジョーカーのスピードと技を生かした戦いで、バイオレンスを圧倒する。次に、
〈HEAT!〉
〈HEAT/JOKER!〉
ヒートジョーカーにハーフチェンジ。炎の拳を叩き込んで、炎を弱点とするアイスエイジに大ダメージを与えた。
〈LUNA!〉
〈LUNA/JOKER!〉
続いてルナジョーカーにハーフチェンジするW。
「一気に終わらせてやるぜ!!」
〈JOKER・MAXIMUM DRIVE!〉
Wはジョーカーメモリを右腰のマキシマムスロットに装填し、軽く叩いた。
すると、Wがセントラルパーティーションから真っ二つに分離し、ルナのソウルサイドが五つに分身。
「『ジョーカーストレンジ!!』」
一斉に腕を伸ばしてバイオレンスとアイスエイジを一ヵ所に集め、最後にジョーカーのボディサイドが手刀を食らわせる。
「「グアアアアアアアアアア!!!」」
二体は爆発した。
エンジンブレードで斬り込むアクセル。ウェザーもナスカも強力なドーパントではあるはずだが、なぜか今アクセルが戦っている両者は、さほど強敵ではない。
アクセルは二体を一ヵ所に集め、アクセルドライバーからアクセルメモリを抜いて、代わりにエンジンメモリを装填。
〈ENGINE・MAXIMUM DRIVE!〉
バイクモードに変形して突撃し、
「絶望がお前達のゴールだ。」
「「ガアアアアアアアアアアアアア!!!」
ウェザーとナスカは爆発した。
クロスはパペティアーとイエスタディを相手に対決。
「光輝!」
そこへブレイドが登場。
「一真!」
「これって一体…」
「話はあとだ!」
〈REQUIEM・MAXIMUM DRIVE!〉
「まずこいつらを!!」
「わかった!!」
〈SLASH,THUNDER〉
〈LIGHTNING SLASH〉
「デスティニーグレイブ!!」
まずデスティニーグレイブを放つクロス。
「ラァァァァイッ!!」
続いてブレイドが電撃を宿したブレイラウザーでドーパント達を斬りつけ、
「「ギャアアアアアアアアアア!!!」」
倒した。
〈BURNING・MAXIMUM DRIVE!〉
〈DREAD・MAXIMUM DRIVE!〉
「バーニングエリミネート!!」
「ドレッドバースト!!」
「ジャックポット!!」
アームズベルセルク ライフルモードから、ドレッドマグナムから、それぞれ光線が発射され、ぶつかり合う。
そして大爆発。目をこらして結果を伺うベルセルクだが、ソウガはそれを待たずに突撃し、ベルセルクにヴァリアブルスラッシュを決めた。
「ぐおあっ!!」
ベルセルクは地を転がり、またいつものごとくスタングレネードを使って逃げてしまう。
「まーた逃げやがった。さっさと俺らに倒されてくれりゃあいいものを…」
ダンテは変身を解除してぼやいた。と、バージルがあることに気付き、そこへ行く。そこには、ベルセルクが瞬殺したドーパントのメモリ、バードメモリが落ちていたのだ。バージルが訊く。
「ダンテ。先ほどのドーパント…奴は…」
「ベルセルクのマキシマム食らってメモリブレイクされたやつか?お前も見てたろ。」
「そうだ。奴は確かにマキシマムを受けていた…」
ダンテとバージル。二人の目の前で、ベルセルクはストームマーダーエッジを発動し、バードを倒した。事実、バードに変身していた男性は倒れている。
しかし、
「だがこれはどういうことだ?」
バージルには気になって仕方ないことがあった。
それは、
バードメモリがブレイクされていなかったことだ。
「ウォッチャマン!それにサンタちゃんも!?」
変身を解除した翔太郎は、バイオレンスとアイスエイジに変身していた者の正体を知って驚く。
「一体何があったんだよ!?」
尋ねる翔太郎。二人は答える。
「わかんないよ。ただ、偶然そこらに落ちてたこのメモリを拾ったら…」
「勝手に身体の中に入ってっちゃって…」
二人が見せたバイオレンスメモリとアイスエイジメモリ。これも、ブレイクされていなかった。
フィリップは考える。
「妙だな…メモリはコネクタ手術をしないと使えないはず…」
その時、近くにあった建物の下に、先ほど避難した親子がいたのだが、突然建物が崩れ、瓦礫が親子に向かって落ちてきた。
「危ない!!」
叫ぶフィリップ。
しかし、瓦礫が親子の上に落ちることはなかった。
小さな竜巻が現れて、瓦礫を吹き飛ばしたからだ。
竜巻が消えると、そこにいたのは緑色のドーパント。
「…」
ドーパントは数秒フィリップを見つめ、竜巻に身を包んでから消えた。
「今のドーパントは!?」
フィリップは慌てて辺りを捜すが、ドーパントはどこにもいなかった。
「やはり井坂ではなかったか…」
照井はウェザーとナスカに変身していた男性達を見ながら呟いた。と、
「!?」
照井は視線を感じて振り返る。だが、誰もいない。
「今井坂がいたような気がしたが…いや、そんなはずはない。奴はあの時確かに…」
そこで、照井もブレイクされていないウェザーメモリとナスカメモリを発見。フィリップに検索を依頼するために、回収した。
光輝と一真も、パペティアーメモリとイエスタディメモリを見つける。やはり、こちらもブレイクされていなかった。一真はメモリを見ながら言う。
「このメモリ…ブレイクされてない…」
「それだけじゃないよ一真。このメモリの形…」
光輝はメモリの形状に違和感を覚えた。今二人の目の前にあるメモリは、今まで戦ったドーパントが持っていた市販メモリの形状ではなく、クロスやW、アクセルやソウガ、ベルセルクが使うものと同じ純正型の形状をしていたのである。
「しかも、端子の色が青だ。普通のガイアメモリじゃない…」
そこへ、フェイトが来た。
「光輝、一真。大丈夫?」
「僕は大丈夫。」
「俺も平気だよ。」
「よかった…」
光輝はフェイトに言う。
「フェイトさん。悪いけど、デートは中止だ。鳴海探偵事務所に行って、情報を集めないと。何か嫌な予感がする」
「なら私も行く。私にも手伝いをさせて」
「俺も行く!」
「わかった。じゃあ行こう!」
三人は鳴海探偵事務所に向かった。
井坂は息切れしていた。
「やれやれ、もう少しで見つかるところでした。」
照井に発見されそうになった井坂は、全速力で逃げてきたのである。
「しかし、あれは確かT2ガイアメモリ…本来ならここにあるはずはないのですが…」
少し前、ある科学者に命を救われ、その科学者の下で財団Xのデータを入手することに成功した井坂は、そのデータの一部に記されていた情報を口にした。
「…どうやら、この街を離れた方がよさそうです。一応私のウェザーメモリには、『あのメモリ』に対抗できるようスカリエッティ博士が処理を施してくださっていますが、必要なメモリが揃いきっていない今、面倒事はごめんですからね。」
井坂は歩き出す。
「二〜三日経てば解決しているでしょう。頼みましたよ、仮面ライダー諸君」
鳴海探偵事務所に着いた三人。その入り口で、三人はダンテとバージルに会った。どうやら、考えていることは同じらしい。というわけで中に入る一同。
事務所の中には、いつものメンバーに、一人来客が加えられていた。
「おお、お前らも来たか。」
「はい。ところで翔太郎さん。そちらの方は?」
光輝は翔太郎に、来客である女性のことを尋ねる。女性は名乗った。
「私はマリア・S・クランベリー。今日はある事件のことで、依頼をしに来たの。」
マリアと名乗った女性は、依頼について話す。
彼女から告げられた依頼はこうだった。
この風都に大道克己という男を主犯とするテロリスト集団が侵入し、その結果、AからZまで存在する計二十六本の次世代型ガイアメモリが、街中にばらまかれてしまったらしい。
フェイトが訊く。
「次世代型ガイアメモリ?」
「タイプ2ガイアメモリ…通称T2ガイアメモリよ。」
マリアはT2ガイアメモリについての説明も行う。T2ガイアメモリはコネクタ手術を必要とせずに使用可能で、変身したドーパントを倒してもメモリブレイクができないのだという。
「コネクタを必要とせず倒してもメモリがブレイクできない…」
「それがこれか…」
「…見たところ普通のガイアメモリだけどなぁ…」
照井、バージル、ダンテの順番で言った。
「それで、依頼っていうのは?」
翔太郎が尋ねる。
「向こうもこれを狙っている。あなた達には大道克己より先に、街中に散らばったT2メモリを全て回収してもらいたいの。」
それを聞いて、一真は翔太郎に言う。
「当然引き受けますよね?こんな物がテロリストなんかの手に渡ったりしたら大変だし…」
「僕も賛成です。」
光輝も賛成する。
「わかりました。その依頼、引き受けます。」
翔太郎はマリアに言った。
「…」
フィリップは話をしているマリアを、じっと見つめている。亜樹子はそんなフィリップに話しかけた。
「どうしたのフィリップくん?」
「…実は、あの人がシュラウドの正体、僕の母なんじゃないかって…」
フィリップは家族についての記憶を消され、同時に自分の母たるシュラウドの素顔も忘れている。フィリップはマリアにそれらしきものを感じ、彼女こそシュラウドの正体ではないかと思っているのだ。
「うーん…それはどうかなぁ…」
しかし、亜樹子は半信半疑だった。
とある国に、とあるビルが建っていた。
ここは財団Xに匹敵するほどの巨大企業、ウロボロス社の本部である。
このウロボロス社。表向きは大手企業会社だが、それは本当に、本当に表向きの話。実際には、悪魔の研究を行っているのだ。
そのウロボロス社の社長室。
ウロボロス社のCEO、アリウスは、大道克己と連絡を取っていた。
「首尾はどうだ?」
「順調だよ。今のところはな」
「最後まで順調でなくては困る。結果は出してくれたまえよ?そのためにセクレタリー三百体と、上級悪魔数体を提供したのだからな。」
「…また連絡する」
二人は通信を終える。
「…財団Xの投資対象から外れた死者蘇生兵士、NEVER。それを私が拾ってやったわけだが、まさかここまでの出資をするとは…ただでさえ木林影斗から依頼を受けて、新型のガイアメモリを製作中だというのに…」
アリウスはぼやいた。
「クロスインプレッション!!」
「ギャアアアアアアアアアア!!!」
ドーパントを倒し、T2メモリを回収していくクロス。
「この分だと、思ったより早く終わりそうだな。」
クロスは変身を解除し、事務所を出る前にフェイトから言われたことを思い出した。
『ねぇ光輝。』
『なに、フェイトさん?』
『…もうすぐ花火大会があるんだけど…事件が解決したら、一緒に行かない?』
『…うん、いいよ。』
『本当!?』
『今日のデートも台無しになっちゃったし、その日にデートをやり直そう。ね?』
『うん!』
あの時のフェイトの笑顔が、光輝の脳裏に鮮明に蘇る。
その時、光輝の頬をナイフがかすめた。
「!?」
慌ててクロスドライバーを出す光輝。だが、次に投擲されたナイフによってドライバーが弾かれ、また次に投擲されたナイフに貫かれ、ドライバーは壊れてしまった。
そんな光輝の前に、仮面を着けた何者かが現れる。
女性であることはすぐにわかった。ボディーラインが女性のものだったからだ。
現れた女性は一人だけではない。何人もだ。同じ仮面を着け、同じ服装をした女性が、何人も現れたのだ。
「何だお前達は!?」
女性達は答えず、各々が両手にナイフを装備して、光輝に襲いかかる。それをかわす光輝。だが、手数が多すぎる。
そして、
凶刃が光輝を襲った。
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大体五〜六話程度でやろうと思っています。それとキラーさんすいません。ブロッサム達の登場は、もう少し先になりそうです。
説明 | ||
今回からついにAtoZ編がスタートします。かなりうろ覚えですので、台詞やシーンが違うかもしれませんが、何とぞご容赦を。 | ||
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