いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第六話 止めてっ。誰か止めてーっ!
前回、キャラに似合わず熱血展開した俺。今日はクールに決めていく。
秋の終わりかけを告げる冷たい風。いつもなら送迎バスの窓を閉じてその冷たい風を遮ろうとする 俺も、今日は窓を開けてその季節感を味わっていたい。
柔らかい日差しが舞い降りてくる青い空。
少し肌寒いけど心地の良い風が吹いてくる青い海。
皆さんも感じてみてはどうだろうか…。
高志の…。車窓から…。
さて、現実逃避はこれぐらいにするか。
え?これはふりですよ。ふり。本題はこれから。というか、すぐ傍。
ただし、今まで言ったことは本当です。ただ一つだけ足りない。
青い空も青い海も見える。そして、
「…うう」
青い顔のアリシア。
昨日、夜更かしをして漫画を徹夜してみていたせいか送迎バスに乗って数分もしないうちに車酔いを起こして窓際の席に行き窓を開けて風をあびている。
ほらほら、あまり身を乗り出さない。
「…お兄ちゃん」
お、こちらの方に顔を向けた。もう車酔いは良いのか?
なんて思っていたら…。
「………吐いていい?」
俺に向かって?
「止めてっ。誰か(特にバスを)止めてーっ!俺の為に!」
「…うっ」
アリシアさん。
GE・N・KA・I突破。五秒前。
十分後。
「ふんふふ、ふふん。ふんふんふん〜〜♪」
どうにかこうにか耐えたアリシアさん。
とは言ってもバスの運ちゃんに無理を言ってアリシアと俺を道路に降ろしてもらい、そこでアリシアが回復するまで背中をさする俺。
『美少女のプライドにかけて!』
と、自負するアリシア。幼稚園でもかなりの男の子に告白されたらしい。その全てを断ったらしい。
それからだろうか。俺を見る幼稚園の先生方と幼稚園生男子の目が何だか怪しい。
…アリシア。何を言った?
車酔いで嘔吐とはなにがなんでも嫌だったらしい。特に俺の傍ではもっと…。
だったら俺に向かってあんなことを言うな!あの時は本気で戦慄したわ!
「もう元気なら歩いて行けよ」
「いやー♪」
回復したアリシアはバスから俺の背中に乗りかえて幼稚園に向かっている。
ここから子供の脚だと十五分ぐらいの距離に幼稚園はある。
「…まったく」
本来なら鼻歌を歌い始めた時点で叩き落すところだが、転生する前にも自分の弟たちをこうして運んでいた頃があったので、ついつい甘やかしてしまう。それがアリシアの甘えん坊に拍車をかけるとわかっていながらも…。これが妹力という奴か?
可愛いと思うが性欲は湧かん。湧いたら湧いたで大変だが…。
てか、プレシアのギガデインは確実だ。
「…湧いてもいいよ?」
「あと二十年経ってから言え幼女」
「むー、私の体をスリスリスリスリ触って気持ちよくさせたくせにー」
「どうして俺を追い込む発言ばかりするんだっ、お前は!?」
…プレシア、お前。
アリシアにどういう教育してんだよ。
バスの中でこのようなやりとりが無くてよかった。早朝とはいえ、かなりの人がいたからな。このような場面を見られたら…。おお、怖い怖い。
それから、アリシアの発言に時々恐怖を覚えながらもプレシアに携帯電話のメールでこのやりとりの逐一連絡を取った。
後日談ではあるが。この日の夕方、アリシアは大事にしていた少女マンガ。R15指定の奴をプレシアに取り上げられて、泣き寝入った。
ところで、どこでどうやって手に入れたんだ?新品だったよ、あれ。
興味本位で少女漫画と馬鹿にしながらも俺も少しだけ見てみると。
・・・めっちゃ深かったです。
女の子の方が性に関しては詳しいという理由が少しわかった。
さて、アリシアを幼稚園に送りつけて。また、歩くこと二十分。
俺が通う小学校についた。
二回目の小学生生活。
今日も存分に楽しませてもらう。
「担任教師の田村先生(二十四歳。独身。知的な可愛いお姉さん系)のスカートをめくらせてもうことでな!」
ふと、中の人か?とかいったのは誰だ?
「…高志君。声に出ていますよ。反省文三枚提出」
…OH。今日はあなたが門限係だったんですか、マイティーチャー。
たとえ、この人じゃなくても校門前でこんなことを口に出していたら遅かれ早かれこうなっていただろう。
宿直室で反省文を五(・)枚書かされた。
建前で反省文を三枚書いている途中で、
「本当に反省しているの?」
と、尋ねられたので正直に答えたよ。
「はい。でも、後悔はしていない」
「・・・追加。二枚」
「・・・はい」
正直に答え過ぎたよ。
あー、疲れた。
朝っぱらから体と頭を使ったから朝のショートホームルーム前だというのに腹が減ったよ。今日は午前中に体育の授業が無いから助かったー。
「…う。て、…い」
あー、周りのみんな。おはようさん。
俺はクラスの皆にひらひらと手を振って挨拶をする。
何を言っているかは分からないけど、先生が来たら起こして。俺はその間寝ているから…。
「…う。て、…」
あー、あー。何やらアリシアとは違う金髪が何か言っているけど聞こえない。聞きたくない。聞けばそいつを意識して、俺の欲求が増大する。
「っ、てっ、…でしょ!」
アリシアもそうだが、この世界の金髪はこんなにも元気なのか?俺は今日疲れているんだよ、寝かせてくれよ。
「おはようって言ってんでしょ!返事しなさい!」
「うるさいんだよ!味サバ!塩を体に塗(まぶ)して焼いてから出直せ!お前を見ていると腹が減る!今日は特に!」
眠気を吹き飛ばされた俺は目の前の金髪と怒鳴り合う。
なぜか、こいつとは転校初日からウマが合わない。転校した初日にそんなに俺がぺらぺらと質問攻めの受け答えが出来たのがしゃくだったのか?
「味サバじゃないわよ!アリサよ!ア・リ・サ!」
「疲れてんだよニンニク!ギョーザに混ぜて食ってやろうか!」
その名字からは似つかない程の良い匂いを髪から漂わせているくせに!…あ、また眠くなってきた。
「バニングスよ!バ・ニ・ン・グ・ス!どうして、あんたは器用に人の名前を間違えるの!」
アリサ・バニングス。
アジサバ。ニンニク。
なんか、似ているよね。響きが…。
「趣味!」
「威張るな!」
「お前を見ていると三大欲求の二つが増大すんだよ!寝かせろ!もしくは(何か)食わせろ!」
「〜〜〜〜っ、この変態!」
耳年増な金髪は顔を真っ赤にして渾身の右ストレートで俺を貫いた。
その威力は気持ちよく俺を夢の世界に誘ってくれた。
三年B組。
金八先生―っ。でなく、アリシアでもない金髪少女が仕切るクラスが俺のクラス。
そして、未来のエースオブエースと呼ばれる高町なのはが在籍しているクラスであることを俺は知らなかった。
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第六話 止めてっ。誰か止めてーっ! | ||
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