黄泉路への案内人 第一話
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第一話

 

「エクスとルミルの視線が近いと思ったら私が縮んでいるようですね」

 

 転生後、葵の身長はおよそ9歳の平均身長より少し高いぐらいにまで縮んでいた。容姿なども子供化していたが性別を言われるまで恐らく誰もが女というほどの顔立ちに変化していた。

 その直後エクスとルミルにもみくちゃにされたのは別の話。

 その後、エクスとルミルから解放された葵たちはある一軒家の前に立っていた。

 

「ここですか」

 

 目の前にあるのは二階建ての一軒家。表札には神無月と書かれていた。

 

「ただいま。でいいのでしょうか?」

 

「さぁ? でもお邪魔しますではないかと思いますよ」

 

「そうだな。とりあえずお帰り。マスター」

 

「えぇ。こういうのもいいですね」

 

中に入ると整理されているのか家具全般を始め電化製品など一通りそろえられている。だが、一つだけ問題があった。

 

――数分後

 

「それに戸籍まである。準備が良いですね」

 当然ルミルとエクスにも同じ物が与えられている。内容は両親が不慮の事故により他界。今は親戚の叔父の家に居候さしてもらっているという感じだ。

さらに、銀行口座にも信じられない額のお金が入っていた。

 

「単位が違いすぎますよ! マスター!?」

 

 

「億。しかも軽く兆のギリギリ前。これだけあれば普通に遊んで暮らせるな」

 

「とりあえず荷ほどきをしましょう」

 

 葵の言葉と同時に荷ほどきが開始された。荷物といっても生前にあった衣類や食器や包丁、なべといった調理器具のみだ。

 

「ふぅ。ん? マスターこれはマスターの荷物か?」

 

「どれ? いえ、私の荷物ではありませんね。ですが宛名は私ですね。衣類の類ですね。開けてみましょう」

 

 そういってガムテープを外し段ボールを開けるとそこにあったのは新品のどこかの学校の制服と、

 

「猫?」

 

「猫ですね?」

 

「か、かわいい!」

 

「ま、マスター?」

 

「ヤバい。エクス、マスターの悪い癖が発動した」

 

「あぁ、あれですか・・・」

 

 すると、猫はゆっくりとその眠りから目を覚ますと、

 

「むぎゅ!?」

 

 その瞬間、葵が猫を抱き抱えモフモフし始めた。

 

「はぁ、最高の毛並みですね。これはなかなか。少し肌が荒れてますね、シャンプー買ってくるべきでしょうか?(だが、何かが違う。魔力? 使い魔の類か?)」

 

 葵は葵で冷静さと猫の毛並みと抱きごこちを堪能していた。

すると、猫の方も急なことであわてたが、すぐに冷静さを保ちつつ、

 

「あ、あなた達は誰ですか!?」

 

 と人語を話した。

 

「しゃ、しゃべった!?」

 

「化けネコか!?」

 

 エクスはすぐに砲撃体制に入り、ルミルは両翼を構えた。

 

「やはり。あなたは誰かの使い魔ですか?」

 

「ご、御存じなのですか!?」

 

「えぇ。まぁ、そっち側の者ですから」

 

 すると、猫は光り輝き、一人の女性が現れた。

 

「私の名はリニス。ある方に仕えていたのですが、突然契約を打ち切られどこかの世界においやられてしまったんです」

 

「猫が人にー!」

 

「マスター下がってください! すぐに」

 

「はぁ。少し待ってください」

 

 そういって葵は調理場に行き、ある物を持って帰って来た。

 

「ふ、フライパンなんかを持ってどうするのですか?」

 

「決まっているでしょ?」

 

 にっこりと眩しい笑顔をリニスに見せながら葵は二人に近づき、そして、

 

「ふん!」

 

 ガン! ガン!

 

「「きゅ〜〜〜」」

 

 フライパンをエクスとルミルの頭にちゅうちょなく殴りつけ、二人は目を回しながら気絶した。

 

「・・・・だ、大丈夫なんですか、あれ?」

 

 リニスは床で大の字になっている神姫たちを指差す。

 

「大丈夫です。他の神姫よりも頑丈ですから。で、あなたの主人はなんでお前を追いやったんですか?」

 

 すると、彼女は顔を俯きながら、

 

「分かりません。突然逃げなさいといったと思ったら、足元に転移魔法が展開されて、後は・・・」

 

「なるほど(これがイレギュラーか? まぁいい。情報は得られた)。となると住むところとかありませんね?」

 

「え、えぇ」

 

「ならウチに泊りませんか? 幸いなことに部屋も余っていますし」

 

「え?」

 

「それに私もそのイレギュラーを討つように依頼されていますから」

 

「信じてもらえるんですか?」

 

「えぇ。事前に情報があったのでおそらく」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 そういって彼女は深々と頭を下げた。

 

「自己紹介がまだでしたね。私の名前は神無月葵です。そしてあそこの金髪の子がエクス、

青髪の子がルミルです」

 

 その後学校の制服をみるとここから見てバスで数分した場所にある私立聖祥大附属小学校のものと判明。

 

「学力もそれなりにありますが、小学校って・・・・」

 

「神無月様は小学生ではないのですか?」

 

「いえ、私はある世界から流れ着いた者、こっちではなんというか分かりませんが、私たちは『漂着者』といいます。あと神無月はそこの子たちもそうですから葵で。様付けも不要です」

 

 すると、リニアは少し考え、

 

「分かりました、か、いえ。葵さんはおそらく時限漂流者ですね」

 

「漂流者という意味では変わりありませんね。意味も大体同じでしょう。時限のはざまにはじき出され漂流、その後ここに到着。こんな意味じゃないでしょうか?」

 

「大体同じですね。あと、一つお尋ねしますがここと、あなたがもといた世界は違うのですか?」

 

「えぇ。ここは魔法文化が無い。私がもといた世界は同じ地球でも魔法が確立された世界でしたから。世界人口のおよそ98%の人間が魔法を使えますからね」

 

「98%も!?」

 

「えぇ。『生まれながらにして素質がある』というのが一般的でしたからね。ただ一概に魔法といってもファンタジーのような魔法もあれば検索魔法に特化した者、代用品がすでにある魔法とさまざまなので我々は魔法使いとは言わず『ウィザード』と呼んでいますがね」

 

 すると、リニスはなにやらモニターを出し何かを調べ始めた。

 

「どこかに通報しますか?」

 

「ち、違います!! 命の恩人に仇を返すわけありません!! ただ、あなたから魔力が感じ取

れ・・・あれ?」

 

「どうかしましたか?」

 

「リンカーコが無い・・・・」

 

「なんですかそれ?」

 

リニスの説明によると、リンカーコアとは魔道師が持つ魔力の源で、大気中の魔力を体内に取り込んで蓄積することと体内の魔力を外部に放出するのに必要な機関で、魔力資質にも影響するものらしいです。

 

「なるほど。こちらではない者ですね。我々は体に流れる気みたいなものですかね。それを魔法に変換し放出する場合の自立型。自然から得られるエネルギーを魔力に変換し放出する自然型、そしてその二つを併せ持つ共同型の三つに分かれます」

 

「なるほど。では彼女たちは?」

 

 リニスは再びエクスとリニスの方を見る。

 

 彼女達はすでに気絶から立ち直り再び作業に取り掛かっていた。

 

「彼女達は、あまりこういう言い方は嫌いなのですが武器であり防具ですね」

 

「デヴァイスみたいなものですね」

 

「まぁ、そうなりますね。さてっと。とりあえず片づいたので夕飯にしましょう。エクス、

ルミル何かリクエストはありますか?」

 

「はい! ハンバーグ!」

 

「私も、それで」

 

 嬉しそうに挙手して答えるエクスに、少し恥ずかしそうに答えるルミル。

 

「その前に食材の買い出しに行かなきゃ。悪いのですがリニス。エクスとルミルを見ていてもらえませんか?」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

「お願いします。エクスとルミルは申し訳ありませんがこの世界の情報整理をお願いします」

 

「了解だ、マスター」

 

「はい。分かりました」

 

そういって葵はMy買い物袋とお財布(3万ほど)を入れて出かける。葵は意外と倹約かで口癖は「贅沢は弾にするから贅沢なんです」だそうです。

 

「(なにやら今変な電波が? まぁ気にしちゃダメですね)では行ってきます」

 

 そういって家を後にした。そのご葵は激安スーパーでこの海鳴市全域を検索し一番近場のスーパーで買い物を済ました(キャットフードを買おうか買わないかで数分悩んだのは別の話)。

 

「結局買ってしまった・・・・。でもリニスは人型にもなれるし、どうなんでしょう?」

 

 荷物は人目がない場所で転送魔法で家に転送した。荷物は少ないに越したことはない。また、ちょっとした買いだめをしたため子供が持てる量じゃなくなった。買い物は計画的に。神無月家に新たな教訓が加わった!

 

(最近疲れているのかな? 変な電波が・・・)

 

そして帰り道の公園で一人の少女が泣いていた。

 

「どうかいたしましたか?」

 

「ふぇ?」

 

 これが葵となのはとの出会いだった。

 

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