転生? ま、死なない程度に頑張ろう
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プロローグ

 

気が付くと、まったく見覚えのない場所にいた。

何を言ってるのかって? そのままの意味だ。

 

「ここどこ?」

 

周りは真っ白で何の景色もない。

 

「あ、やっと気が付いたんだ」

 

突然声が聞こえたので、俺は声の聞こえた方向を向いた。

するとそこには、

 

「ん? どうかした?」

 

とてつもなく可愛い女の子がいた。

肩にかかるくらいに伸びた髪に、どことなく幼さを残した顔立ち。背は俺の肩ぐらいまであり、胸もそこそこある。見た感じでは俺と同い年くらいか? はっきり言ってめっちゃ好みだ。

 

「そ、そこまで言われると恥かしいな///」

 

顔を真っ赤にして照れてるところもまた可愛い……って俺、今声に出したか?

 

「声に出さなくても、ここじゃあなたの考えてることは全て私に伝わるの///」

 

未だに顔を赤くしながらも俺に説明してくれる。

 

「え? それじゃあさっきまでの全部聞こえてたってことか!?」

「う、うん///」

 

気まずい沈黙。

やっちまった。可愛いとか好みとか全部聞こえちまってるなんて。この際、何でそんなことができるのかとかは二の次だ。今はこの状況を何とかしないと。

 

「えっと、あれは…だな。なんて言うか……ごめんなさい」

「あ、謝らなくていいよ。その……可愛いって言ってもらえて嬉しかったし///」

「そ、そうか」

 

その照れながらも嬉しそうにする表情も可愛いな…ってまたやっちまった。

 

「///////」

 

女の子なんかもうオーバーヒートしちゃってるし。

こ、こうなったら何も考えるな無心になるんだ!

 

「って、ちょっと! 何で地面に頭をぶつけたりしてるの!?」

 

ガンガンガンガン! と俺はひたすら頭を打ち続ける。無心だ。余計なことは考えるな。

 

「止まって。死んじゃう! もう既に死んでるけど死んじゃうよ!」

 

何か今とてつもなく凄いことを言ってた気がするけど、今の俺にそんなことを気にする余裕は無かった。

 

 

**********

 

十分ほど経ち、ようやく俺は冷静になった。

 

「大丈夫?」

 

女の子は俺を心配そうに見てくる。

俺は頭を打ち続けた結果、一つの結論にたどり着いた。

 

「ああ、大丈夫。君は優しいな。しかも可愛い」

 

それはズバリ自分の気持ちに素直になることだ。どうせ考えてることは全てばれるんだし、いっそ思ったことは全て口に出すことにした。

 

「あぅ/// ありがとう///」

「マジ可愛過ぎる。俺と付き合ってください!」

 

……うん。ちょっと素直になり過ぎたよね。

 

「え、ええ!? えっと、いきなり言われても。それに今からやらなくちゃいけないこともあるし」

「やらなくちゃいけないことって?」

「あなたは今の状況を理解してる?」

 

今の状況? この子に夢中ですっかり忘れていたけど。そういえばここってどこ?

 

「色々と大事な話をしなくちゃいけないの」

 

女の子は真面目な表情をしてそう言った。

 

「あなたは死んでしまったの」

「死んだ?」

「うん。本来はまだ死ぬはずじゃなかったのに、こっちの手違いのせいで」

「う〜んと、色々聞きたいことだらけだけど、まず君は何なの?」

「私の名前は((有希|ゆき))。職業は天使です」

 

天使って職業なの!? 種族とかじゃなくて!?

 

「あなたはまだ死ぬはずじゃなかった。だからあなたにはもう一度、新しい人生を送ってもらうためにここに来てもらったの」

 

つまり転生? なにこの二次創作にありがちな展開?

 

「魔法少女リリカルなのはの世界に行ってもらうんだけど分かる?」

 

なんて言うか、テンプレだなぁ。

 

「この流れ的に、チート能力とかも貰えたりすんの?」

「うん。私のできる範囲でなら」

「できないこととかもあるんだ?」

「私は天使だからね。神様ならどんな願いでも叶えられるんだけど」

「へぇ。神様とかもいるんだ」

「まあね。神様のほかに悪魔もいるけど」

 

つまり神様と天使、それと悪魔がいるってことか。

 

「神様ならどんなことでもできるんだけど。天使や悪魔には叶えられるものと、叶えられない者があるの」

「例えば?」

「うーんとね。分かりやすく言えば、天使は回復や防御と言った補助系の魔法が得意で、悪魔は攻撃的な魔法が得意みたいな感じ。これで分かる?」

「うん。まぁ何となく。つまり、どんな病気や怪我を治せる力が欲しい場合。天使ならできるけど、悪魔はできないってことだよね?」

「そうそう、そんな感じ」

 

なるほどな。

 

「それじゃあ、どんな能力が欲しい?」

 

……どうしたものか。とりあえず最低でも自分の身は守れる程度の力は欲しいところだけど。

中々いいのが思いつかなくて悩んでいると、有希が、

 

「ごめんね。あなたを転生させるのが私なんかで。あなただって、どんなことでもかなえられる神様とかのほうが良かったよね」

 

なんて言いだした。

 

「何言ってんだよ。むしろ逆だ。転生させるのが神様じゃなくて、有希で良かったよ」

 

これは俺の本心だ。まぁ、理由としちゃ有希に惚れたってのもあるが、こんないい子に会えて本当によかったと思ってる。

 

「…ぐすっ」

 

すると、いきなり有希が泣き出した。

 

「ええ!? ど、どうした? 俺何か悪いこと言った?」

「う、ううん。違うのこれは嬉し泣き。実は前にね転生させた人がいるんだけど…」

 

へぇ。やっぱ他にも転生とかしてる人っているんだ。

 

「その人に、『俺の願いを叶えることできないとか、どんだけダメなんだよ。このクソが!』って言われたことがあってね」

 

…………殴りたい。一発でいいから殴りたい。

 

「ついカッとなって転生特典とか何もあげないで転生させちゃったの」

 

その人はきっとただただ平凡な人生を送るのだろう。

 

「それから私はダメな子なんだってずっと思ってた。でも、今あなたに転生させるのが私で良かったって言われて、それが凄く嬉しくて……」

「……だめな子なんかじゃないよ。俺が保証してやる。それに有希と比べたら俺の方がダメダメだ。もし、有希をダメな子扱いする奴がいたら、俺がぶっ飛ばしてやる。そんで、俺に勝てないくせに有希をバカにすんな! って言ってやる」

「……ありがとう」

 

言ってて少し恥ずかしかってけど、この有希の魅力的な笑顔が見れたので良しとしよう。

 

「えっと、それで能力のことなんだけど」

 

照れくさくなった俺は、話しを戻すことにした。

それなりに強くなりそうな能力を一つ思いついたので、可能かどうか有希に聞いてみる。

 

「相手の能力や武器を解析とかってできる?」

「できるよ」

「じゃあ相手の力をコピーとか」

「それはやったことないだけど、それもできるはず」

「なら、能力が決まったぞ」

 

俺は思いついた能力を有希に頼む。

 

「相手の能力や武器を解析して、それら全ての力を倍にしてコピーできる能力をくれ」

 

例えば相手の魔力がSランクなら、俺はSSランクになる。相手の持ってる能力や使える魔法の力を倍にして俺も使えるようになる。それに相手の持っている武器と同じものを作り出すこともできる。もちろん性能は倍で。

 

「できるよ。できるけど、なんかずるくない?」

「何が?」

「だってそれじゃあ、相手は絶対にあなたに勝てないよ。自分の持ってる能力と同じのを、しかも力は倍になって使われちゃうんだから」

「そうとは限らないだろう。同じ能力を持っていても、それを扱う人間によって強さは変わるぞ」

「そうだけど、う〜ん。まあ、いいや」

 

なんだかんだで能力が決まったな。

 

「今決めた能力に関しては、転生後に使えるようになってるはずだから」

「了解」

 

ついに転生か。……そういえば。

 

「なぁ、俺の死因って何だったんだ?」

「え?」

「俺が死んだ原因だよ。元の世界では俺はどうやって死んだんだ?」

 

俺はそう聞くと、有希は気まずそうに眼を逸らした。

 

「聞きたいの?」

「聞きたい。…何でそんな言いずらそうにしてるんだよ? もしかして惨い死に方でもしたのか?」

 

何故か俺はさっきから自分がどうやって死んだのかが思い出せないでいた。そのせいでものすごく気になっている。

 

「あなたが死んだ原因はね、その」

「俺が死んだ原因は?」

「タンスの角に小指をぶつけて、心臓停止」

「…………は?」

「だから、タンスの角に小指をぶつけて死んだの」

「待て待て待て待て!? タンスの角に小指ぶつけたら確かに痛いけど! でも、それで死ぬとかおかしくね!?」

「それはほら、こっちの手違いで死んじゃっただけだから。本来ならそんなことで死ぬことは無かったんだよ?」

「だけどさ!? せめて車に轢かれるとかそういうのにしろよ!? タンスの角に小指をぶつけて死ぬとか絶対に俺が人類初だろ!?」

「でもあなたは実はラッキーなんだよ?」

「どこが!? タンスの角に小指をぶつけて死ぬと言う、かっこわるいにもほどがある死に方してんだぞ!? 俺の家族とか悲しむに悲しめないだろ!? 葬式中絶対誰か笑うに決まってる!」

「実はね、本当はあなたは次の日に死ぬ予定だったの」

「…………は?」

「こっちの手違いで一日早く死んじゃっただけなの。つまり、本来ならあなたは明日に死んでそれでおしまいだった。だけどあなたは予定より一日早く死んでしまった。たった一日と思うかもしれないけど、これはとても大変なことなんだ」

「つまり、普通に明日死んでいたら俺は転生をすることもできていなかったと」

「そういうこと」

「なるほどな。確かに俺はラッキーだ」

 

明日に死んでいたら有希にも会えなかっただろうしな。

 

「そ、そういこと言われると恥かしいんだけど///」

 

何故か有希は顔を赤くして…ってそういえば有希には俺の考えてることが全部筒抜けなんだっけ。

それじゃもう俺が有希に惚れてることもばれてんだろこれ。

 

「//////」

 

顔を真っ赤にした有希を見ながら、有希にもう一つ尋ねてみた。

 

「なぁ有希」

「ひ、ひゃい!?」

 

いきなり声をかけられたことに驚いて有希が可愛らしい声を上げた。

 

「それなら俺は本来だったらどんな死に方だったんだ?」

「えっと?」

「だからさ、俺は有希たちの手違いのせいでタンスの角に小指をぶつけて死ぬなんてことになったんだろ? でも、もし手違いがなく次の日まで生きてたら俺どんな死に方になってたのかなぁと思って」

「知りたいの?」

「まあな」

「じゃあ教えてあげる。あなたは本来なら、外出中に道路にボールを追いかけて飛び出した子供を見つけるの。そこに車が来ちゃって。それで……」

「それで、その子を助けて代わりに俺が死ぬわけか」

 

タンスの角に小指をぶつけて死ぬのに比べたら、ずいぶんマシな死に方だなぁ。

 

「違う違う。助けようと道路に飛び出すんだけど、違う人が助けるの。でもそれに気づいた時にはもう車はすぐそこで。それで轢かれて死亡」

「無駄死にじゃねぇか!?」

「そう無駄死に。しかもその後、その出来事をニュースで報道されるんだけど、あなたは自ら車に引かれようと道路に飛び出した自殺願望者として紹介されるの」

「最悪だ!?」

 

確かに俺はラッキーだったわ。死に方はちょっとあれだけど、転生できるし、有希に会えたし。

 

「…さて、そろそろ転生してもらうよ」

「ん、もうか…」

 

もう少し有希と話していたかったな。

 

「なぁ、ここに残ることとかできないの?」

「無理だね」

「じゃあ、転生後にこっちと連絡とったりすることは?」

「それはできるけど、ダメ」

「何で?」

「ここは普通、別世界の人とは関わっちゃいけないの。それが許されるのは、今回みたいな問題があって誰かを転生させる時だけ。だから転生させた後こっちは無干渉じゃなきゃいけないの」

 

もう有希と会うことは愚か、会話すらもできないのか。

会ってまだちょっとなのに、もう失恋かよ。

…いや、まてよ。まだ返事は聞いてない。さっき勢いで付き合ってくださいとか言ったけど、はいともいいえとも言われてはいない。せめて返事だけでも。

 

「なぁ、せめてさっきの告白の「じゃあ、行ってらっしゃい!」」

 

返事をくれ、と言おうとした瞬間、言葉をかぶせられ俺が立っていたところに急に穴が開き、

 

「はぁあああああああああああああ!?」

 

俺はそのまま落ちていった。

こうして俺、((山月翔也|やまづきしょうや))は新しい人生を送ることになった。

 

 

 

説明
残念な死に方をした俺は気が付くとわけの分からない場所に。そこで天使と名乗る美少女と出会う。え、転生? 場所は魔法少女リリカルなのはの世界!? ……ま、何とかなるよね?
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コメント
tububu12さん>自分としては有希に昔嫌なことを言う人がいて、そのせいで有希が自分に自信が持てなくなった。という風にするため適当に考えて出したキャラだったんですけど、tububu12さんに言われて読み返してみると確かにスライムに転生させられた人が悲惨すぎますね。作品を客観的に見るのも大事なんですね。勉強になりました。 それでこのままだと有希と主人公が悪役っぽくなってしましそうなので少し編集しときます。(大空)
客観的に見てスライムに転生させられた奴が悲惨すぎる。手違いで殺されて、殺した奴(と思われる)が目の前にいて、しかも願いは叶えてもらえない。そんな状況で罵倒ひとつならむしろ優しいだろそいつ。人の命弄んでる有希やそいつの境遇聞いて「ざまぁ」とか言っちゃう主人公のほうが最悪じゃん。(tububu12)
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