BIOHAZARDirregular PURSUIT OF DEATH余章 |
余章『邂逅、そして』
「……た、起き………」
「パパ…きて」
「起きて…てば」
『せーの!』
掛け声と共に自分の頭を襲った衝撃で、スミスは目を覚ました。
「やっと起きた〜」
「パパ、おそ〜い」
「おはよう、ムサシ、アニー」
この間10歳の誕生日を迎えた双子である息子と娘にあいさつしながら、スミスはベッドから起き上がる。
「おはよう、ユメ」
「はいはい、主賓が遅刻してたら面目立たないでしょう。早く準備してください」
寝ぼけ眼で妻にあいさつしつつ、スミスは顔を洗おうと洗面所に向かう途中で、何気に飾ってある写真に目を止めた。
それは、あの最後の戦いの前日にSTARS全員で取った物だった。
それを手に取って見ると、両脇をミリィとシェリーに挟まれ、少し憮然とした顔のレンとそれを茶化している自分とカルロスの姿が映っている。
「早いもんだな………あれからもう15年も経ったんだよな…………」
かつて、ラクーンシティという町が有った場所に、大勢の人間が集まっていた。
ほとんどは世界中の警察や軍の関係者で、全員が引き締まった顔で整列している。
『第15回アンブレラ事件戦没者慰霊祭』と書かれた横断幕が風になびき、その下で壇上に立ったクリスが演説を行っていた。
「今、我々がこの場にいられるのも、全ては、ここに眠っている者達の命を賭してまでの協力が有ったからだ。彼らなくして、今までの、そしてこれからの我らは在り得ない。そして、我々は決してその事を忘れてはいけない。なぜなら、彼らこそが真の英雄といえる者達だからだ。法と、正義と、平和のために散りし英雄達に!」
クリスの敬礼に、その場にいる全員が一斉に続く。
その最前列、旧STARSメンバー達の一番端、警察の礼服に身を包んだスミスも神妙な顔で敬礼していた。
ラクーンシティ死者慰霊碑の隣に、幾つもの墓標が並んでいた。
最初が洋館事件で死んだSTARS隊員の物から始まり、STARSの一員となって戦って散った者達の名前が続いている。
その一番最後の墓標の前にスミスは立っていた。
「悪いな、たまにしか来れなくて………」
「兄さんなら気にしないわよ、そんな事」
スミスの隣にいたユメがその墓標に花を捧げる。
その墓標にはこう刻まれていた。
“STARS最強にして最後の戦死者、ニホンから来たサムライここに眠る”
「世の中馬鹿とテロリストばっかでな。モビルポリスの休まる暇が無いんだよ。それなのに、カルロスの野郎は部隊増やすからこっち来て隊長やれなんて言いやがるし」
苦笑しつつ、スミスは買ってきたウィスキーの封を開けて、墓標に注いでいく。
「あとな、さっきクリスが言ってたの聞いてたか?法と正義と平和のために散った英雄だってよ」
スミスはボトルの中身を一口口に含み、ゆっくりと嚥下する。
「お前はそんなののために戦ったんじゃないのにな」
スミスは再度苦笑して、また墓標に注ぐ。
「サムライが戦う理由はただ一つ、己自身の心意気のためだけだ」
半分くらいまで減ったボトルに封をすると、スミスはそれを墓標に捧げる。
「残りはそっちでオヤジと分けてくれ。そぞろ差っ引かれた小遣い分位にはなったろうしな」
ふと、背後に気配を感じたスミスが振り返る。
そこに、すでにいないはずの友人の姿を見たスミスだったが、それはすぐに十代半ばくらいの鳶色の瞳と髪をした少年の姿に変わる。
「よお、…。遅かったな」
「お久振りです、スミスさん。飛行機がちょっと遅れましてね」
少年は墓標の前へと進むと、そこに持ってきた線香に火をつけて捧げる。
「ミリィは?」
「母さんなら抜けられない学会が有るっていうんで。それに日本にもお墓はありますから」
墓標に向けて手を合わせ、少年は黙祷を捧げる。
「ふうん、で、修行は順調か?…」
「まだまだ師匠からは未熟者扱いされてますよ。マスターはまだ先の話になりそうで」
苦笑しつつ、少年は立ち上がる。
その横顔に懐かしい顔が重なり、スミスはしばしそれを見つめていた。
「家に寄ってって。ムサシがまた剣術を教えてもらうんだって言い張って困ってるの」
「いいですよ、ただしまた泣かないようにしてもらえれば」
「本格的にやらせるつもりは無いさ。ま、ムサシが本気でサムライになりたいって言うなら話は別だがな」
「本気というと?」
「命を賭けられるくらいに、さ。お前の父親のようにな。Jr」
「ええ………」
父と同じ名を持つ少年、レンは荒野に吹く風を感じながら、静かに墓標を見つめていた……………………
終
説明 | ||
※注意 本作はSWORD REQUIEMの正式続編です。SWORD REQUIEMを読まれてからの方がより一層楽しめるかと思います。 ラクーンシティを襲ったバイオハザードから五年。 成長したレンは、五年前の真実を知るべく、一人調査を開始する。 それは、新たなる激戦への幕開けだった………… |
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