fate imaginary unit 第五話
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「少しいいですか?神父?」

 

遠坂幹継は静かに聖堂教会の扉をノックした。

 

家主は少しだけ扉を開け訪問者を疑いの眼で覗く。

 

「いいんですかな?もうそろそろ聖杯戦争が始まるというのに中立的立場である監督役の下に訪れて」

 

今回聖堂教会に派遣された神父、言峰璃正はそう厳かに言う。

 

その言葉に微塵も狼狽える様子も見せずむしろ得意げな笑みを浮かべている。

 

「別に知り合いの所に訪れて何が悪いのだろうか?」

 

そう言うと、幹継は持ってきた自前のワインを璃正に向かって見せる。

 

その酒を見て、璃正はならば仕方がないな。と幹継を教会の中に招いた。

 

「他のマスターの情報はどうなっている?」

 

部屋に入って開口一番幹継はいきなり核心を尋ねた。

 

ふむ。璃正はこめかみ辺りをコンコンと叩く。

 

「今、申告されているマスターは二人。アメジスト・メイルと、権藤統二だけです。権藤という男は確か魔術師ではな

いと言っていました」

 

璃正の言葉に幹継が噴き出す。

 

「まさか、この誉高き聖杯戦争という場において魔術師にもなれない一般人がいるとはな。どうやら聖杯は遂にこの遠

坂に跪く気になったらしいな」

 

これは傑作だ。

 

幹継は上機嫌にワインを飲み干す。

 

「私には魔術のことについて明るくはないので、理解しかねますが。この権藤統二という人間ですが……」

 

そこで璃正は言い籠った。

 

「どうかしたのか璃正?その権藤という人間は何かあるのか?」

 

「いえ……ただ、魔術の素養もなく、師事したこともない人間という申告でしたのでその通りに書き記しておきましたが、素人考えでも少し疑問点があります」

 

「どういうことだ?」

 

「はい。考えてもみて下さい。聖杯が何も魔を操る術を持たぬ人間を選ぶのでしょうか?」

 

「ふむ……」

 

幹継は少し考えるような素振りを見せていたが、やがて考えるのを止めた。

 

「例えどのような人間でもこの遠坂の敵ではないさ」

 

そう言うと両手を大仰に開く。

 

その余裕こそが遠坂家の家訓であるらしい。しかし、その余裕が足を引っ張らなければいいのだが……。

 

璃正とてやはり知り合いに聖杯を勝ち取って欲しいという思いはあるのだ。

 

余裕は油断に直結しないとも言い切れない。

 

「時に、璃正。霊器盤に何か反応は無いのか?」

 

霊器盤とは専任司祭に与えられる英霊のクラスを判別する測定器のようなものである。

 

これにかかれば、マスターは判別出来ずとも既に現界しているサーヴァントは分かるはずである。

 

「そうですね……今現界しているのは……」

 

そこで璃正の言葉が止まる。

 

それを不審に思ったのか幹継も霊器盤を覗いてみた。

 

すると、二つの光が重なっている様子が見えている。

 

「これはどういうことだ…璃正?」

 

「どうやら…器械の故障かもしれません。しかし、この反応はバーサーカーで間違いないかと……」

 

璃正にしては珍しく歯切れの悪い回答だ。幹継は旧友の珍しい反応に目を丸くしていた。

 

「しかし…バーサーカーか」

 

どの程度の英霊を狂化させたかによるが分からないが、マスター次第では非常に厄介だ。

 

「まぁ、全てはこの遠坂の前に跪くのだからな」

 

教会の中に幹継の笑い声が響いていた。

説明
聖杯戦争にはルールがある。 その一つに監督者がいるということが挙げられる。
その役割の性質上戦いに臨む特定のマスターに対して懇意にするのは好ましくないのは自明の理だ。
しかし、誰かの味方をしてしまうのもまた自明の理である。

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二次創作 第三次聖杯戦争 Fate 

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