幻想郷帰宅日記 間章(9-10)
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間章「お風呂!背中!?地霊殿!」

 

 

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あれから宴会場を抜けて風呂場に向かった俺と、小脇に抱えた桶の娘。

 

光助「・・・・ここ?」

キスメ「ここ」

 

廊下を静かに擦り足で歩き、そのまん前に来た。

その部屋の入口の暖簾(のれん)の上には板が飾られており、大仰な墨字で「大浴場」と書いてあった。

なんとも立派である。

 

と・・・・しかしここでストップ。

何か足りない気がする。

 

光助「それで、これってどっちが男湯とか無いの?」

 

普通だったら道が二手に分かれている筈なんだけど。

どうも一方通行に見える。

 

キスメ「あ?」

光助「いや、普通二手に別れてるでしょ?男湯、女湯って」

キスメ「そんな事あるのか?」

光助「えぇ?」

 

桶娘がそんな事を言う。

 

光助「いやだってさ・・・・あぁ」

 

そうか

彼ら妖怪は性別なんて関係ないのかな。

・・・・そうだったとはどうも思えないが、容姿からして。

 

光助「だって、普通にキスメは女の子でしょ・・・」

キスメ「そんなの俗世を捨てた妖怪に関係あると思ってるのか」

言い切る前にスパッと切られてしまった。

何とも妖怪的な発言である。

 

光助「そ、そうなのか?」

またしてもこんな反応しか返せない。

妖怪は妖怪、人間は人間なのだ。

 

それもそうだな

 

そう考えながら入り口の暖簾(のれん)を腕で上げながら脱衣所に入る。

檜の香りがする縦長の脱衣所から、適当にロッカーを選んで開ける。

 

キスメ「そう考えてるのは生身の身体を持つ人間くらいだろう」

その横で何とも哲学的に答える桶妖怪。

 

光助「まぁそういうもんなのか〜・・・って」

 

シャツのボタンを外している途中で桶の娘がこちらをジーッっと見ている視線に気付いた。

 

光助「・・・・あ、あのさ」

キスメ「何だ、早く脱げ」

こちらを見つめる桶娘、いや妖怪。

脱げ、だなんて・・・

さっきの論は何となく解ったが、それを俗世を捨ててない人間の前で実践するとは。

恐るべし妖怪。

 

光助「いや、俺は人間だからやっぱその、恥ずかしいんだよな」

キスメ「妖怪の私には関係ないだろ?」

光助「そうは言っても・・・」

 

と、ここでうろうろしてても始まらないので、素早くズボン&下着を

 

・・・・脱ぐッ!

更にロッカーの中にあった布を巻いた!

 

この間約2秒。

 

これは昔、プールの授業で腰に巻く布を忘れた際に身に着けた技・・・・その名もッ

"早剥き"ッ!

ふふふ、とドヤ顔をせんばかりにキスメに向き直る。

 

キスメ「そんな事恥ずかしがるなんて若いな」

光助「・・・・ッ」

 

なんとこの技を一言で片付けられてしまった。

羞恥を乗り越えて編み出されたこの技がこのような一言で崩れ去るとは何たる・・・

 

光助「わ、若者の羞恥なんて分かりっこないでしょ・・・もう」

もう投げやりである。

だって若者だもの、恥ずかしがったっていいじゃない。

 

光助「あ、そういえば着替えた俺はともかくキスメはそのまま入るの?」

キスメ「この桶で済ました、行くぞ」

光助「便利なんだな・・・え・・・あ、俺が抱えていくのか」

キスメ「当たり前だろ」

 

そして再度脇に妖怪を抱え、浴室の扉であろう曇りガラスを開ける。

カラカラと音を立てて開いたガラス扉の先は・・・

 

 

光助「これはまた広いお風呂だな・・・」

 

 

目の前にはどこぞやのリゾートの様に広々とした浴場が広がっていた。

池の様な風呂に唖然とする。

そして、上に天上のない露天風呂なので外の風景も見える。

もう外は明るくなっており、霧が少し出ていた。

 

光助「地底でも朝っぽい感じはあるんだな・・・・昼だけど」

地下に居るというのに、何だか地上に居る気分だ。

 

洗い場や風呂までの下へ降りる階段があったので降りると、

もうさっきまでの広大な風景は見えず、足元しか確認できなかった。

湯気と霧で視界はあまり良くないのだ。

 

キスメ「おい、この辺で下ろせ」

傍らの桶が言う。

 

光助「へ?桶なんだし一緒に洗い場まで・・・あ」

ここまで言いかけて止めた。

何だか再度ドリフされそうな気がして。

 

光助「いや何でもないすよ」

キスメ「そうか」

そう言って下に降ろすと、桶入り娘はカランコロンと音を立てて飛び跳ね去っていった。

 

光助「あぁいう風に移動するのか」

 

キスメがどういう風に移動して、どんな感じで傍に来るのか気にはなっていたのだがまさかそんな風に来るとは思わなかった。

 

光助「ん?でもカランカランなんて音立ててたかな」

確かジャストライクスネーク(静かという意)でこっち来てたと思う。

もしかして桶のつるを利用して空中移動とかかな。

 

・・・まぁそれはさておき(正直結構気になるが)、洗い場へと向かい手早く体を洗う。

そしてキスメではない桶で体を流し、風呂へと向かった。

 

 

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カコーン・・・・と桶を湯船の端に置き、お湯の中に入る。

 

光助「よっ・・・熱っ、っと・・・・〜〜〜っはぁ〜」

 

足先からゆっくりとお湯の中に入れる。

だいぶ熱いが、こうして息を吐きながらゆっくり入れば何て事はない。

後は温まるだけである。

 

光助「いやぁ〜生き返るな〜・・・死んでないけど」

 

湯船に浸かり、大きく息を吐く。

この幻想郷に来て初めての風呂である。

 

光助「この非常事態にこんな出来事があるなんて・・・大分恵まれてるよなぁ」

 

そんな事を思いながら、この温もり(結構熱い)を噛み締める。

そういや紅魔館で咲夜さんに洗って貰ったんだかなんだかとかあった気がするけど、

覚えていないからノーカンだろう。

 

光助「しかしまぁ広いお風呂だなぁ」

 

入口で確認した限りではプール程泳いでも奥に行くのは遠いだろうな。

子供の頃に行った健康センターを思い出す。

 

光助「・・・・奥ってどうなっとるんかね」

 

素朴な疑問が浮かんだ。

これ程広大ならば、泳いだりも出来るだろうかとか、滝とかあだろうかとか。

 

光助「ちょっと行ってみるか」

 

まだ体が熱さに慣れていないので、軽く足で移動してみる。

水を?き、立ち込める湯けむりを払いながら奥へと進む。

それ程深さは無く、水位は太股辺りだ。

 

ふと、水面を見る。

 

光助「うん?・・・えぇ!?あ、赤い!?」

 

湯煙りで気付かなかったが、その"先"だけお湯がとても赤い事に気が付いた。

そう・・・こう、血の池地獄・・・あぁ地獄だもんなぁ。

さっき俺が居たこっち側は緑色で、そっから先が赤色とは。

どうなっているんだ。

 

光助「・・・・こんな色してるし、何か別々の効能でもあるんかな」

 

はははと軽く笑い、匂いを嗅いでみる。

今更何が起きようとあまり驚かないので、普通に風呂に関係ありそうな疑問を持つ。

末期かな、という言葉は最早野暮であろう。

 

光助「フンフン・・・・〜〜うーん、檜風呂の香り?バスロマン?」

 

見た所と嗅いだ所によれば、硫黄っぽい匂いはしない。

入った時の脱衣所に入った時と同じ檜の香りがするので、もしかしたら結構普通のお湯かも。

 

光助「お?」

ふと、移動途中に桶が浮いていた。

 

光助「何だ、誰かが入れたのかな?・・・・ハッ」

待てよ。

これ、キスメか普通の桶か分からんな。

 

瞬時に頭に乗せたタオルを装備状態にしておく。

湯船の中でタオルを巻くなんてのは通常ではマナー違反だが。

若者の・・・・最後の悪あがきという事で

 

準備完了!

股間の防護布セット完了!

若者の羞恥への執着心・・・見せて進ぜよう!!

 

さぁッ!出てこいやぁ!(総統風味)

 

光助「おい、キスm・・・・ありゃ」

 

万全の戦闘準備(!?)を完了した俺は桶を確認するが・・・

中身は空である。

 

光助「なんだ、ただの桶か」

ほっとして布を緩めるが

 

 

キスメ「それは私専用の桶だ」

光助「ほ、ホイヤァアアア!?」

 

 

突然聞こえた声に瞬時に布を再装着する。

横目に見ると、キスメが人間状態(?)のまま湯船に浸かって座っていた。

 

キスメ「若いな」

それを見て呟いく。

 

光助「人間ですから!男の子ですから!」

俺は振り返る事もせずに、その場を去ろうとする。

平泳ぎ開始・・・・

 

キスメ「おい、背中を流せ」

光助「pardon?」

 

平泳ぎに入る体制のままその場に固まってしまう。

 

キスメ「場所教えてやったんだ、当然だろ」

それにな・・・とキスメが続ける。

 

ザバァー

 

お湯から上がる音が聞こえた。

こいつはまずい。

 

キスメ「フレンドリーなんだろ?それ位聞けよ」

光助「え!うわ!」

 

思わず目を手の平で覆う!

正面に向き直ると目の前に幼女・・・型妖怪。

 

指の間から少し見るッ(最低)・・・・が!

 

 

・・・・更衣室での発言はどこへやら、ちゃんと胸から膝までを布で隠している。

隠してはいるが、そういう問題じゃない気がする。

基本的に。

 

は、恥ずかしい///

だって男の子だもん(アタックゥ

 

そんな事を思っていたのもつかの間。

 

光助「え?!ちょっ・・・・!!」

キスメ「こっちだ」

 

さっき自分が入る前に洗った場所とは反対側の洗い台に、

腰の布(!?)を引っ張られて連れて行かれた。

 

 

キスメ「やれ」

光助「う・・・・」

 

 

そこには一糸纏わぬ少女の背中・・・・

別にそっちの趣味がある訳じゃないが、何だか普通に話していた仲だけあって恥ずかしい。

 

光助「(え、ええい!子供の背中を流すと思えばいいんだ!)」

葛藤から己を奮い立たせてその背中に挑む事にする。

目を背けながら石鹸を布に付け、その背中を優しく擦った。

 

ゴシゴシゴシ・・・と

 

光助「い、痛くない?」

恐る恐る目の前の少女・・・に聞く。

キスメ「あぁ、少し強くしろ」

光助「へ、へぇい」

 

少し力を入れて擦る。

その間、キスメは足や手を別の布で擦っていた。

 

・・・まだ慣れないが、こうしていれば普通になれるんじゃないか?

暫くの我慢だ、終わったら即効で着替えてしまおう。

うんうん、と自分に言い聞かせていたが

 

 

 

ガヤガヤガヤ・・・・

 

 

遠くの入り口から音が聞こえた。

 

光助「ゲッ!?やばっ!」

キスメ「お?」

 

聞き覚えがある人たちの声が聞こえてくる。

あれは・・・・

 

ヤマメ「あの二人は何処へ行ったのかねぇ」

勇儀「さっき脱衣所であいつの服っぽいの見ただろ?先に入ってるんじゃないかね」

パルスィ「人間風情がここの風呂に入るなんて・・・・」

萃香「細かいこというなよなぁ〜・・・おーい!こうすけぇー!」

 

例の御三方・・・・と萃香さんだ!

 

非常にまずい。

何かこう、昔見た漫画では"キャー変態!"とか言われながら、

あらん限りの力で石鹸やら桶やらを投げつけられる図があったな。

と、そんな事思ってる場合じゃない!

 

光助「は、はやく隠れなきゃ!」

そして早く出なければ。

しかし、ここには隠れられる場所といえば湯船の中ぐらいしかない。

 

光助「えぇい!ままよ!!」

 

ザパン!

タタタタ・・・・・

ザパァン!!

 

俺はキスメの背中に仕上げのお湯をかけ、湯船に飛び込み、息を潜めた。

そして階段を降りてくる妖怪たちに水中から目を見張った。

 

 

キスメ「・・・・」

 

 

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あれから何秒か。

湯船の中から遠くを伺うが、皆は何か話しているようだ。

 

こちらに気付く様子がないので、このまま洗い場の方に行ってくれれば、

湯気に紛れて逃げ出せるかもしれない。

 

俺はそう算段を踏んだが。

 

 

光助「(もう・・・・無理ぽ・・・・?!)」

 

 

さすがにもう無理である。

その僅か一分であるが、訓練していない人間には耐え切れない。

水泳でも息継ぎはあるが、これでは潜水と同じである。

 

 

そんな限界に近付く俺の目の前に

 

 

 

なんと、物凄い顔で息を止める萃香さん(逆さ)の顔があったのだ。

 

 

ザバァアアアアア!!

 

光助「ぶぶふぇおれぁああああァアア〜!!?」

声にならない悲鳴(謎)と共に、湯船から顔を突き出した。

 

萃香「ぎゃはははは!光助、そこに居たか〜・・・・何やってんだ?」

 

湯船から頭を上げる小さな鬼娘。

その姿はまさにすっぱだか。

 

光助「う、うわぁ!お、俺もう出ますよ!」

 

向こうの方には皆が見える。

この調子なら全員裸だろうか。

 

それはまずい

なんかまずい

 

特に社会的にも俺の布に隠れたリトル(ry

と、とにかく早く出なければッ・・・・

遠くから"おぅ光助おはよ〜さん"とか聞こえるが、今はそんな場合ではない。

 

 

萃香「おい待てや」

光助「もろんぼッ!」

 

 

足早に出口へ急ごうとした俺の足首が掴まれ、俺は無様にタイルに頭を打ち付けた。

そこへ、一糸纏わぬ鬼の娘が近寄る。

 

萃香「あれだけ昨日語ってた仲だろ〜?今更恥ずかしがるなってぇ〜」

腕を組み、仁王立ちになる萃香さん。

 

い、一体何の話をッ・・・・?!

語るといっても旅館き行くまでの会話しか覚えていないし、そもそもそんなに自身の事は語っていない気がする。

目を伏せながら考えるが・・・

 

ヤマメ「あぁ・・・そうそう、あれよりはマシじゃないかね?」

パルスィ「本っ当に人間は無粋なのよねぇ・・・クスよ」

勇儀「まぁまぁ、若い奴にはよくある事さ、そう言ってくれるな」

キスメ「・・・・・」

 

口々に皆様から語られる"俺"の事。

まさか、あの飲み会で何かやらかしてしまったのかッ!?

アレってなんだ、超気になる。

 

光助「い、一体俺は何を・・・・?」

ヤマメ「覚えてないのかい?」

光助「え、えぇ・・・慣れないお酒を飲んだせいか・・・」

 

どうしても気になるので、各個に聞くことにした(勿論目は伏せたまま)。

そうして口々に出る感想タイム。

 

萃香「まぁ〜・・・・"あんな事"されたのは初めてだからねぇ〜」

 

なんと意外にも萃香から口が開かれた。

あ、あんなこと!?

 

ヤマメ「そうだねぇ、ちょっと驚いたけどね」

驚いた!?

 

パルスィ「最低よね」

さ、最低!?

 

勇儀「まぁよく考えると・・・・そう、だねぇ」

 

 

 

最後の鬼姉さんの一言で俺は瞬間的に土下座した。

 

 

 

光助「すんません、教えて下さい」

キスメ「あぁ」

 

 

隣の桶娘が答えた。

 

 

 

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説明中・・・・

 

 

 

光助「あぁああああああああああぃぇええええ!!?」

 

とても後悔した。

もろ手を頭に乗せ、大きく叫ぶ。

 

残念ながら、ここでは語れない。

それ程非常識で危険でアカンな"出来事"であるのだから。

今の命があるだけマシに思えた。

 

光助「すいませんでしたッッッ!」

そして、四人の目の前(桶娘は横)で全力で土下座をした。

これが人生初の五体倒地となる。

 

 

同時に開始される対人間会議。

 

 

勇儀「そうだねぇ・・・・どうする、萃香?」

萃香「あたしゃあんま気にしてないけど・・・どうしてもって言うなら"アレ"でいいんじゃねぇか?」

ヤマメ「あぁ、アレね・・・・まぁ異論は無いよ、良い事だ」

パルスィ「ちょっと、超軽すぎるような気がするけど」

キスメ「私はもう終わったぞ」

勇儀「よし、じゃあそれで・・・・」

 

四人がひそひそと何か話す。

 

俺はもうどんな罰則にも耐える準備が出来ていた。

今はもう帰るよりも、そっちの罪を償わなければならないと踏んだからだ。

死、という言葉も身近に感じる。

 

 

萃香「じゃ、背中流しで」

光助「島流しっすか・・・・・はい?」

 

会議の末、四人が下した答えはそれだった。

なんだそれ、背中流し?

 

勇儀「まぁそれくらいでもいいだろうな」

パルスィ「まぁ人間にそれはクソ甘いと思ったけれどね・・・・勇儀が言うなら仕方ないわ」

ヤマメ「それで宴会の失態を挽回出来る訳さね、安いもんだ」

 

光助「いや本当にそんな事で・・・・・」

ヤマメ「それとな、光助」

何だか逆に焦ってしまった俺にヤマメさんが続ける。

 

ヤマメ「地獄じゃ、ここで背中を流すってのが友情の証みたいなもんなんだ」

そんなどこぞやの野球部のような文化があるのか。

 

あ、成程。

だからさっきのキスメも背中流せーって言ってきたのか。

友達って認めてくれたのかな。

 

キスメ「パシっただけだ」

 

こちらの目線と気持ちを汲み取ったのか、

既に洗い終わって湯船に浮かぶキスメが言う。

 

ヤマメ「皆と友達になれば、その宴会での事も少し軽くなるかもね?」

にぃ、とヤマメさんが笑う。

 

・・・・そんな事でチャラになるような出来事ではないのだと思ったが。

そう言われれば仕方無し。

 

光助「じゃ、じゃあ端からいきますよ・・・・」

そうは言うが、やはり見た目は女子軍団。

必死に目線を逸らしながら尋ねる。

もう恥ずかしがる必要なんて無いとか考えたが。

 

 

やっぱ無理!

目の前に居るのは妖怪じゃなくて女の子よ!!

 

 

それを見てか、ひそひそと聞こえる"若い"という声。

言われるのも何度目となる事か。

悪かったですね!

でもねぇ、とても恥かしいんです!

 

なんだかんだ思いながら腹を括り、背中流しを開始する。

まずヤマメさんから。

 

 

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ゴシゴシガシ・・・

 

光助「どうすか?」

ヤマメ「んん〜いい感じだね」

光助「そうっすか」

ヤマメ「うまいね、慣れてるのかい?」

光助「そういう訳じゃないんですが・・・・」

 

そんな会話を繰り広げていると、隣で頭を洗う方々が何やら話していた。

 

勇儀「そういや萃香、あんたが最後までここに居るなんて珍しいねぇ

   いつもならすぐ地上に帰っちゃうのに」

 

そうだった。

ここで呑気に背中流しに興じている場合ではなかったのだ。

唯一、俺と同時に地底に来た萃香さんならば、出口も知っている筈である。

あわよくば連れて行ってくれるかも・・・・

 

いや。

ここまで来たのだ。

あわよくば、ではなく出られなくては困る。

が・・・・

 

 

萃香「その穴なんだけど、開いてなかったぞ〜?」

頭を洗いながら答える萃香さん。

マジっすか!?

 

萃香「まぁ〜いつもだったら飲み終わったから地上に帰るんだけどねぇ・・・・・

   おかしなことに、帰ろうと思ったらその穴が閉じちまってたんだよ」

 

光助「な、なんと・・・・」

 

最後の頼みの綱までが切れてしまった。

まさか、これも紫さんの言う"結界が崩れた"時の現象なのだろうか。

 

 

それよりも・・・・

 

 

どうしようか、このまま地底に閉じ込められたら。

やっぱ太鼓で生計を立てるとかそういう方向になるんだろうかね・・・・

そして毎日お酒をかっ食らい、ゲラゲラ笑いながら生きていく。

 

いや、こりゃ駄目だ。

 

俺の中で"そっちでもええんとちゃうのん"とかいう声も

聞こえたり聞こえなかったりなんやかんやであるが。

 

確かに、ここは割りと友好的な妖怪達が集まる場所なのかもしれない。

しかし昨日の状態と今朝の惨状を目にした所だと・・・・・まずい気がする。

真面目(もう無理か)の俺にはどうしても耐えられなさそうだ。

 

何とかして出なければ。

 

 

考えながらパルスィさんの背中に移る。

何やら"ちゃんとやりなさいよ"だの"人間風情がありがたがれ"など聞こえた気がするが、

はいはい、と生返事で返した(危ない)。

 

と、ここで隣の角の御二方が何やら話している。

 

勇儀「成程ね・・・・・だからさっきの"地霊殿"だったのかい」

ヤマメ「まぁ、街道のの穴が使えないならそっちに行こうと思ってたからねぇ」

 

地霊殿?

何処かで聞いたことがある気がするが・・・・

 

 

光助「え・・・・?それって何処にあるんですか?」

ヤマメさん達に聞こうと尋ねると

 

パルスィ「この街道の先よ」

 

と、ここで背中を"ありがたく流させて頂いている"パルスィさんが、外から見える景色を指差した。

珍しく協力的である。

 

その指は丁度風呂場の入り口とは反対側を指している。

細目で見ると、確かに意識しないと見えないが、赤い入り口の様な穴が見えた。

 

ヤマメ「最後の出口ねぇ・・・・人間が近付いて大丈夫なのかね」

パルスィ「まぁ・・・・有害よね」

 

ニヤニヤしながらこちらを見やるパルスィさん。

やっぱ、この人(妖怪?)はこういう人だった。

 

有害?無害?

もう紅魔館、地獄街道を乗り越えた俺にとっては、

どんな害な場所でも乗り切る覚悟が出来たつもりだ(つもりだけであるが)。

なので・・・・

 

光助「ここまで来たんですし、行かない訳には行きませんよ」

と言い切った。

 

萃香「お、なかなか勇ましい〜・・・・いいね若者」

ヤマメ「会った時とは別人みたいだねぇ」

光助「そ、そうですかねぇ?」

 

ここで、石鹸を探していたヤマメさんに投げて渡した萃香さんが突っかかる。

 

萃香「へぇ〜・・・・どんなんだったかい?」

光助「い、いや普通でしたよ、はい」

 

何となく嘘をついてしまう。

いや、別に見栄を張りたい訳ではないんだけど。

 

キスメ「最初は超びびってたぞ、犬みたいに」

光助「よ、余計な事言わなくていいよ!!」

萃香「にゃはははは!」

 

桶モードになって湯船に浮かんでいたキスメに突っ込みを入れる。

しかし、それが事実であるが。

だってリアル妖怪だよ・・・・・

 

ははは、と笑いあう妖怪達を尻目に俺は遠くに見える地霊殿なる入り口を見つめていた。

 

 

 

光助「地霊殿か・・・・・ちゃんと地上に出れるのかなぁ」

 

 

 

最後の鬼(勇儀さんの方)の背中を流しながら呟く俺であった。

 

 

 

-続く!-

 

説明
帰宅日記ウフフ回です(嘘
これを書いている途中で何を書いているか分かったり分からなくなちゃったりなんやかんやしましたが、こうして白日の下に曝け出せると思うと嬉しく思います
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