タイムトラベルママ01/カンバックママ 序 |
トラベラーって言葉がある。二十一世紀初頭の辞書を開けば、「旅行者」と説明されている言葉だ。
だけど、今は違う。
今現在、辞書でトラベラーを引いてみると、旅行者って意味の上に「A」と書いてあるのが、誰でも確認できるはずだ。
そう、旅行者なんて、二番目の意味に過ぎない。
いの一番に書いてあるトラベラーの意味は、「時間跳躍者」。
タイムトンネルの存在が確認され、タイムトラベルが現実のものとなって幾星霜。普通じゃ機械装置を駆使して初めて可能になる時間跳躍を、その身一つでやってのける存在。それがつまりトラベラー。
トラベラーは希少な存在で、トラベラーだというだけで、食べていくには一生困らない。
時間跳躍は過去の改ざんに繋がるので違法行為になっているのだけど、官公庁なんかでは特別権限で時間遡行が必要になるので、トラベラーは世界中どこをとっても引く手数多だからだ。
トラベラーでなければ時間遡行できないというわけではもちろん無いのだけど、トラベルマシン(タイムマシンのことをこうやって呼ぶことは、誰だって知ってるよね?)を使わなければ過去に戻れず、また異時間に耐性の無い普通人よりも、トラベラーは利便性がずっと高いのである。
普通人が異時間に長く触れていると、すぐに分解症(致死率100%なんだって)になっちゃうからね。
そういうワケで、生まれながらに就職先が決定し、しかもお金のたくさんもらえるトラベラーは、全人類の尊敬の対象だ。
だからって私は、あんまりそういう気持ちになれないけど。
だって、身近にいるトラベラーが、あんまりだらしないのだもの。
私の名前は伊原紗枝。
十四歳の中学生で、近所では評判の「よく出来た子」だ。
だけど母親がどうにも不出来で……。
そう、あんまりだらしのない身近なトラベラーってのは、私のママ、井原葵のことだ。
これはそんなママの、タイムトラベルの話。
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タイムトラベルSF小説 ノーテンキなママが出てきます 原稿用紙で78枚とちょっと長いので、12分割でお届け〜の(1/12) |
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