タイムトラベルママ01/カンバックママ 01
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 ドンドンドン。

 ドアをノックする音がする。

 

 僕はそれを無視する。

 今日も、僕は無視をする。

 

 締め切られたカーテンの隙間から覗いた光は純潔な朝陽で、暖かなそれは、外へ外へと、僕をいざなう。

ドアをノックするその人も、僕を外へと、連れ出そうとしている。

 

 

 でも僕はその全てを塞いで、狭い狭い部屋の中、一人きりでひざを抱える。

たった一人、狭い部屋の中でひざを抱える。

 

 

 僕は……それでよかった。

 それでよかったと……思っていた。

 

 月日は過ぎ去り、やがて僕は思い知る。

 

 

 本当は何一つ、よくなんてなかったことを。

 

 それは遅すぎた覚醒で……。

 だからって僕は、諦めることなど、出来なかった。

 

 

 暗闇の中。

 

 手探りで、手探りで、少しずつ進む。

 光が見えるまでにかかった時間は……。

 

 

 

 あまりにも長い時間で、そして、一瞬だった。

 

 

 

 

 

 春

 夏

 秋

 冬

 

 季節が次々と変わっていく。

 

 世界はちっぽけな人間一人が立ち止まっていたって、お構いなしに回る。

 

 僕はそんな置いてけぼりの、ちっぽけな人間の中の一人だった。

 

 何で、こんなことになったのか。

 

 誰か説明してくれる人がいるのなら、僕は聞きたい。

 

 あいつらは、何で僕を標的にしたんだ?

 

 中学校に入学して、間もないときのこと。

 兵藤と中川という、体のでかい二人のタチの悪い生徒が居た。そいつらはずぅっと昔から不良だったらしく、中学入学と同時に二人つるみだし、そして毎日獲物を探していた。

 僕はやつらに捕まった。

 何でなのか、まったくわからない。

 ただクラスが同じで、僕は男子の中で一番小柄で、すこし無口な生徒で……。

 

 たったそれだけで、やつらにしてみれば格好の餌食だったのかもしれない。

 

 弱そうなやつだから、小突き回してやろうと、ただそれだけだったのかもしれない。

 

 そしてひょっとして、もっと大きな理由があったかも知れず……。もしかしたらもっと単純に、ただ目に付いただけだったのかも知れず……。

 

 暗転。

 

 僕の人生は地に落ちた。

 

 はるか上空とも思える高所から二人は僕を見下ろし、冷笑を浴びせかけた。

 殴られることや蹴られることなんかは日常茶飯事だった。

 

 毎日毎日、僕は兵藤と中川という、二人の不良の餌食だったのだ。

 

 クラスの中で、僕を含めた三人は「透明な存在」になっていた。

 手助けが来ることなぞまったく期待できず、誰もが目を逸らすどころか、最初からこちらを見てやしない。

 教師だって、僕のことを見捨てていた。

 一度だけ注意したことがあったけど、なんと言ったかといえば、朝のHRで

 

「いじめはやめましょう」

 

 なんて小声で言っただけだ。

 

 そんなことでいじめが止まるなら、毎年のように聞くいじめ自殺や報復殺人なんか、人類史上に存在しなかっただろう。

 おびえきった教師の一言は火に油。

 クラス内で唯一の「大人」すら手出しできないと知り、やつらは増長し、僕は体中にあざを作ることになった。

 

 入学から4ヶ月。

 中学校生活初めての夏休みに入り……。

 

 

 僕にはそこから先の、学校生活の思い出がない。

 

 

 中学校。

 高等学校。

 大学。

 

 華々しさに満ちたスクールライフは、僕には来なかったんだ。

 

 青春?

 辞書の意味のところに、一つ書き添えてくれればいい。

 

 結城重幸には来なかった、と。

 

 

 

説明
タイムトラベルSF小説

ノーテンキなママが出てきます




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