タイムトラベルママ01/カンバックママ 01 |
◆
ドンドンドン。
ドアをノックする音がする。
僕はそれを無視する。
今日も、僕は無視をする。
締め切られたカーテンの隙間から覗いた光は純潔な朝陽で、暖かなそれは、外へ外へと、僕をいざなう。
ドアをノックするその人も、僕を外へと、連れ出そうとしている。
でも僕はその全てを塞いで、狭い狭い部屋の中、一人きりでひざを抱える。
たった一人、狭い部屋の中でひざを抱える。
僕は……それでよかった。
それでよかったと……思っていた。
月日は過ぎ去り、やがて僕は思い知る。
本当は何一つ、よくなんてなかったことを。
それは遅すぎた覚醒で……。
だからって僕は、諦めることなど、出来なかった。
暗闇の中。
手探りで、手探りで、少しずつ進む。
光が見えるまでにかかった時間は……。
あまりにも長い時間で、そして、一瞬だった。
1
春
夏
秋
冬
季節が次々と変わっていく。
世界はちっぽけな人間一人が立ち止まっていたって、お構いなしに回る。
僕はそんな置いてけぼりの、ちっぽけな人間の中の一人だった。
何で、こんなことになったのか。
誰か説明してくれる人がいるのなら、僕は聞きたい。
あいつらは、何で僕を標的にしたんだ?
中学校に入学して、間もないときのこと。
兵藤と中川という、体のでかい二人のタチの悪い生徒が居た。そいつらはずぅっと昔から不良だったらしく、中学入学と同時に二人つるみだし、そして毎日獲物を探していた。
僕はやつらに捕まった。
何でなのか、まったくわからない。
ただクラスが同じで、僕は男子の中で一番小柄で、すこし無口な生徒で……。
たったそれだけで、やつらにしてみれば格好の餌食だったのかもしれない。
弱そうなやつだから、小突き回してやろうと、ただそれだけだったのかもしれない。
そしてひょっとして、もっと大きな理由があったかも知れず……。もしかしたらもっと単純に、ただ目に付いただけだったのかも知れず……。
暗転。
僕の人生は地に落ちた。
はるか上空とも思える高所から二人は僕を見下ろし、冷笑を浴びせかけた。
殴られることや蹴られることなんかは日常茶飯事だった。
毎日毎日、僕は兵藤と中川という、二人の不良の餌食だったのだ。
クラスの中で、僕を含めた三人は「透明な存在」になっていた。
手助けが来ることなぞまったく期待できず、誰もが目を逸らすどころか、最初からこちらを見てやしない。
教師だって、僕のことを見捨てていた。
一度だけ注意したことがあったけど、なんと言ったかといえば、朝のHRで
「いじめはやめましょう」
なんて小声で言っただけだ。
そんなことでいじめが止まるなら、毎年のように聞くいじめ自殺や報復殺人なんか、人類史上に存在しなかっただろう。
おびえきった教師の一言は火に油。
クラス内で唯一の「大人」すら手出しできないと知り、やつらは増長し、僕は体中にあざを作ることになった。
入学から4ヶ月。
中学校生活初めての夏休みに入り……。
僕にはそこから先の、学校生活の思い出がない。
中学校。
高等学校。
大学。
華々しさに満ちたスクールライフは、僕には来なかったんだ。
青春?
辞書の意味のところに、一つ書き添えてくれればいい。
結城重幸には来なかった、と。
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タイムトラベルSF小説 ノーテンキなママが出てきます 原稿用紙で78枚とちょっと長いので、12分割でお届け〜の(2/12) |
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