東方西行寺兄録 其の一『西行妖』 |
とある年の春の日。白玉楼の主である西行寺幽々子は白玉楼の廊下に1人座って1つの書物を読んでいた。その書物とは少し前に幽々子が復活を試みた『西行妖』の記録が書かれた書物である。結局は西行妖の復活は出来ずに終わってしまったが幽々子は復活とは別の意味でその書物に目を通している。それは幽々子が今日見た夢に理由がある。
毎日のように普通に眠りにつき夢へと入った幽々子だったがその夢の中で見た光景は自分の中には1つもと言って良い程に記憶に無かった光景でその光景とは満開に咲く西行妖の前に1人の人物が居てもう1人の誰かに何かを呼び掛けていると言う感じの物だった。そして呼び掛けられている人物を確認しようとした場面で幽々子は目を覚ました。
そしてもう1人の人物がきががりでこうして幽々子は書物に目を通している。
「あの西行妖の前に居た人は、きっとこの真実を知っている筈だわ。その人物の事さえ分かれば」
しかし1つもその人物の記録は書かれて無かった。
「やっぱり唯の夢だったのかしら」
書物を持って立ち上がり部屋へと戻ろうとしたらしいが少し待つ事にした幽々子。再び座り暫くしたら来るであろう庭師の魂魄妖夢に相談しようとする為に。
白玉楼の廊下を1人歩く妖夢は幽々子のおやつである餅の乗った皿とお茶を乗せたおぼんを持って何時も座っているだろう幽々子の居る所へと歩いている。きっと今にも来るのを待っているのだろうと思い少し早めに昼食の後始末を終えて準備をした妖夢。
それとは別に気がかりな事が1つあったなと思う妖夢。それは今朝の幽々子の何時もとは違った様子の事だ。何時もなら未だ食べていただろう朝食を早くに切り上げ直ぐに自分の部屋へと入って行き昼食まで一度も部屋から出てきてない。その後も直ぐに部屋に戻って行ってしまった。
「幽々子さま何か悪い物でも食べたのかな?」
他に何かあったかと考える妖夢だが思いつく事と言ったらこの前の人間達による西行妖の復活の阻止の事しか思いつかない。その後に幽々子はその件は諦めたと言っているので妖夢はそれは無いと考えている。
「…妖夢」
突然後ろから幽々子が現れた。驚いておぼんから手を離してしまった妖夢だったがそれを上手い事幽々子がキャッチしたので床にひっくり返る心配はなかった。
思わず床に座ってしまった妖夢は直ぐに立ち上がった。驚かされた事について言おうとしたらしいが何時もの様子に戻った幽々子を見て安心したのかその事は言わなかった。
「幽々子さま、今日は何時もと違う様に見えたので心配していたんですよ」
「私は何時もと変わらないわよ。それより早くおやつにしましょう」
先程幽々子が座っていた場所に戻る。妖夢もその後に着いて行く形で歩く。
二人は座って幽々子が直ぐにおやつの餅を頂いてる。妖夢は未だ食べたばかりなので手をつけなかった。ふと妖夢は幽々子の座る隣に置いてある書物に目線が行く。
「幽々子さま、それ西行妖の書物ですよね」
「そうよ。それより妖夢は食べないの?」
「私は未だお腹の方が空いてません。私の分も良いですよ」
だが皿を見るともう既に餅は無かった。幽々子はお茶の方に手を持って行きお茶を頂いてる。そしてお茶を自分の前に置く様に持ち変え妖夢に話しかける。
「妖夢、流石私と一緒に居るだけの事はあるわね。…貴方の言う通り私は今、悩まされてる事があるの」
「一体、何を悩んでいるのですか?」
「今日の私の夢の事。あの西行妖にはある人が関係してるんじゃないかと思って」
「あの、つまり幽々子さまは西行妖の所に誰かが居る夢を見たと言う事ですか」
幽々子は頷く。そして持っているお茶をおぼんに置き書物を取って妖夢に渡す。
「でも書物にはそんな記録は一切載ってなかったの。恐らくは私の夢の中の出来事でそんな人物は存在してないのかも知れないわね」
「本当にそうなんでしょうか?」
妖夢は隈無く書物を見ている。しかし1つもその様な事は載ってない。
「妖夢、私はお腹が空いたから夕食の用意を頼むわね」
先程の餅はなんだったのだろうか。妖夢は幽々子に書物を渡しそれを受けとる幽々子。その時、手を滑らせてしまい書物が床に落ちてしまった。ふと書物の中から一枚の人の絵が描かれた写真程の大きさの紙が出てきた。
妖夢が急いで書物を整理してる。そして幽々子は書物から出てきた紙を取りそれを見る。
それを見た時、幽々子の表情が変わった。その紙に描かれて居る人物は幽々子が正に夢で見たのと同じ人物だからだ。妖夢も隣からその紙を見る。そして幽々子の方へと向きこの紙について聞く。
「幽々子さま。まさか夢で出てきた人とはこの人の事ですか?」
「妖夢、私に頼まれてほしい事があるのだけど言っても良い?」
「何を言うのか分かっています。この人物を捜すんですね」
「どれだけの時が経っても良いわ。必ず捜しだしてくれる」
「分かりました」
幽々子は妖夢に紙を渡した。その紙に描かれて居る人物が幽々子の生前の記憶を呼び覚ます事になる者とは今の幽々子には分からないであろう。そして兄である事も。
◆
広大な山々に囲まれた所に在る1つの神社。その神社とは博麗の巫女、博麗霊夢が管理する博麗神社。その場所には今日も何時もの様に廊下に座り昼の一息をいれている霊夢の姿が見える。
「今日も良い天気だわ」
雲1つとも見えない青い空を眺めて霊夢は一言呟く。もう少ししたら友人である普通の魔法使い、霧雨魔理沙がこの神社に訪れて来る頃だろうと思い霊夢は直ぐに魔理沙のお茶を準備する。
その時、霊夢は誰かが居る事に気付きそちらの方を向く。そこに立っていたのは銀色の髪に不思議なマークの入った帽子を被る1人の男性だった。
「あのー私は幽希(ゆうき)と言うのですが。ちょっとお聞きしたい事がありまして」
「私の知っている事でしたら教えられますよ」
「もう1000年程前になるんですが幽々子と言う名を聞いた事はありますか?」
「幽々子って名前は冥界に居る西行寺幽々子の事しか分からないわね?」
「‥‥‥ありがとうございます」
その男は去って行った。そして去った後に何か落としていったのに気付き霊夢はその落とした物を手に取る。写真程の紙だ。そして名前が書いてあるのを霊夢が読む。
「幽希ってさっきの人の名前よね。でも何で西行寺なのかしら?裏にも何かあるわね」
裏を見る霊夢。それを見て霊夢は驚いた。絵には幽々子本人が描かれているからだ。霊夢は直ぐに男性の後を追いかけるが何処にも男性の姿は無かった。霊夢はその写真を大事そうにしまいポケットに入れた。又会えるか分からないが会った時に返す為に。
「まさか幽々子にお兄さんがいたなんて」
空から急行着陸した魔理沙は何時もの様に霊夢の居る場所へと歩いていく。見た所、周りは綺麗に掃除をされているのを見ると霊夢は直ぐ近くに居るなと考える魔理沙。
調度向こうの方に霊夢が座っているのが見える。霊夢に元気な声で話しかける。
「よう!霊夢。ん?何かしまわなかったか」
「ちょっとさっきの参拝客の忘れ物なの」
「どんな物なんだ?」
「幽々子のお兄さんの忘れ物で幽々子が描かれた紙よ」
「あいつにお兄さんなんていたのか?」
霊夢が写真を魔理沙に見せる。
「又来たときに返すつもりなの」
「それなら直接行って幽々子に渡した方が早いぜ」
「じゃあ魔理沙に任せるわね」
魔理沙は写真を受け取り冥界の方へ一直線に飛んで行った。そして姿は見えなくなった。
説明 | ||
このお話は西行寺幽々子に兄がいると言う物語です。生前の記憶を忘れた幽々子の事を知らない兄は1000年と言う時が過ぎた先に幽々子と再会しどのように感じどのような物語を繰り広げるのか。 兄と妹、決して再会する筈のなかった二人の物語はここからスタートする。 |
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