外史テイルズオブエクシリア 闇の魂を持つ者の旅路の記録 第33話
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第33話  親へ

 

 

 

 

 

秋山に連れられて、今度はシャン・ドゥにやってきた。

アルヴィンは寄りたいところがあるとして、あるところに立ち寄る。

そこは……。

 

「ここは、お前の母親の家だったな」

 

そう、アルヴィンの母、レティシャがいた家であった。

 

「…………ああ」

「アル……!?」

 

そこにはイスラもやって来る。

 

「よう、イスラ。手紙が届いたんだよ。母さん……死んだんだってな」

 

イスラはうつむく。

ミラと秋山以外の面々は驚いた。

 

「アルヴィンさんのお母様が……」

「お亡くなりに……」

「…………」

 

そしてアルヴィン達は家の中に入る。

そこにはレティシャの姿はなく、空いたベッドがあった。

 

「……もう埋葬しちまったか」

「え、ええ……。

ごめんなさい。私が来た時にはもう息を引き取っていて……」

「母さん……バカだな……」

「アルヴィン……」

 

アルヴィンの顔は本当につらそうであった。

 

「大丈夫だよ。むしろこうなって、ちょっとほっとしてる自分がいる…………な〜んて言ったら、優等生は怒るよな?」

 

ジュードはそう言われて、何も言えなかった。

 

「人一人の人生は重い。お前が母の分まで背負っていたならそう感じるのも無理はない」

「まさか、おたくに慰められるとはね。

そーゆーわけだからさ。正直に言ってくれよ、イスラ先生」

 

アルヴィンがイスラを見て言った。

 

「なにを? 死因なら、急な発作で……」

「……薬だろ?

母さん、気付いてたぜ、お前が食事に毒薬を混ぜていたこと」

「なんと!?」

「毒って……!?」

「本当なんですか? イスラさん……」

 

レイアがイスラに聞く。

 

「母さん、時々正気に戻ることがあったろ。その時、手紙で知らせてきたんだ」

「嘘よ! 気付いていたら、なんで食べ……」

 

イスラは誘導尋問にひっかかったような反応をする。

 

「無理するなって。お前、嘘つくの下手なんだよ」

「お前が言うと、妙に説得力あるな」

「うるせえ」

 

秋山の言葉に怒るアルヴィン。

そして口を大きく開けて、驚いているイスラ。

 

「あんたが……あんたたちが、私を縛りつけるから悪いのよっ!」

「いいや、悪いのは悪行に手を染めてた手前だ。

そんなことしなかったら、アルクノアに目をつけられることはなかった」

「!!」

 

イスラは家を飛び出していく。

 

「おい、待て!」

「大丈夫だ。すぐに追える」

 

そして一同はイスラを追い、リーベリー岩孔に着いた。

リーベリー岩孔の橋の上にイスラはいた。

 

「イスラさん……なんでアルヴィンのお母さんを!?」

「…………」

「邪魔だったんだよな。ユルゲンスと幸せになるために」

「そうよ! 裏の世界と関わるのは、もうたくさん!

私は普通に幸せになりたいだけなのに! そのために必死に努力しているのに!」

「けど、そのためにアルヴィンのお母さんを殺すなんて間違ってるよ、イスラさん!」

「……お袋は苦しんだのか?」

 

アルヴィンの質問にイスラは首を横に振った。

 

「……ならいい。それだけが心配だったんだ」

「こいつを許すのか?」

「お母さんが殺されたんですよ!」

 

アルヴィンは静かに語る。

 

「母さんはわかってたんだ。自分がもう長くないことを。

最後の手紙でも言ってた。自分が死んだら、イスラを自由にしてやってくれってな」

「そんな……レティシャさんは全部わかって……」

「……死んだんだ。

あんなに帰りたがってた故郷に戻れないまま……な」

「……エレンピオス、ですね」

「ああ」

「し、信じないわよ……。どうせ、後でゆするんでしょ!?」

「手前な……」

「証拠を全部消さなきゃ……。昔の私を消さなくちゃ……。

私は幸せになれないのおぉぉっ!」

 

イスラの顔は狂気に満ちているといっても過言ではなかった。

 

「待て! 落ち着け、イスラ!」

 

その時、イスラは足を滑らせてしまう。

 

「あ……ああっ!?」

「イスラさん!」

 

イスラは橋から落ちてしまう。

 

「ちぃ!」

 

秋山が高速移動で、イスラが落ちる前にイスラを捕まえ、着地する。

 

「秋山さん!」

「大丈夫だ。まあ気は失ってるけどな」

「よかった〜」

 

思わず腰が抜けるレイア。

 

「大丈夫ですか、レイア」

「ありがとう、エリーゼ」

「とにかく、連れて帰ろう」

「ああ」

 

秋山達は気を失ったイスラを連れて、シャン・ドゥに戻った。

そしてユルゲンスを呼び、イスラをレティシャの家のベッドに寝かせる。

 

「イスラの容態はどうだ?」

「大丈夫だよ。イスラを助けてくれて、ありがとう」

「いやいや」

「しかし、イスラがそんなことをしていたなんて……」

「軽蔑したか?」

「いえ。私の知るイスラはそんなことをしていない。

優しい女性です。仮にそんな過去を持っていても、彼女はその過去と決別し、多くの人を助けている。それは変わりません」

「……そうか」

 

秋山が笑顔を見せる。

 

「う……うん」

「目が覚めたかい? イスラ」

「ユルゲンス……はっ!」

 

イスラはこのままでは昔の自分の悪行がばれてしまうと思った。

 

「イスラ、もうユルゲンスはお前の過去を知ったぞ」

「え?」

「お前は寝言でも色々言ってたからな。

母親に捨てられたこととかもな……。

だが、それでもユルゲンスはいてやると言ってるんだ」

「嘘!?」

「本当だ」

「アルヴィンさん、本当にこの部屋を使っていいのかい?」

「構わないよ。この部屋なら、奴らに知られてないしな」

「そんじゃ後は、二人だけで話し合いな……。行くぞ」

 

秋山達はすぐに家から出て行った。

 

「本当にこれでよかったんですか?」

「それを決めるのはあの二人だ。俺たちじゃない」

 

秋山はさっさと歩く。

一同がエレベーターで下に降りると、エリーゼはあることを言いだす。

 

「あ、あの……」

「どうしたの、エリーゼ?」

「もう一度増霊極(ブースター)研究所の跡に行ってみませんか……?」

「リーベリー岩孔に? どうしたの、また?」

「そっか! エリーゼが育った場所なら昔のこと思い出せるかもしれないもんね」

「ごめんなさい。そんな時じゃないってわかってるけど……」

「謝ることないよ。大事なこと思い出せたら、もっと頑張れるはずだもんね!」

「うん、僕もそう思う。リーベリー岩孔に行ってみようか」

「行くなら、俺が瞬間移動で連れて行こうか?」

「いいの?」

「構わんさ」

 

秋山の瞬間移動で再びリーベリー岩孔へと向かった。

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そして再びリーベリー岩孔についた。

エリーゼが一人前に出て、岩孔の中心を見る。

 

「ここに、エリーゼが育った研究所があったんだよね」

「家族のこと、何か思い出せるといいんだけど」

 

ジュードにそう言われても何も思い出せないようで、首を横に振ってジュード達の元に戻って来る。

 

「……わかんないです。ティポとの思い出は、いっぱいあるけど……」

「ごめんね、無駄足だったー」

「ほっほ、無駄足だなんてとんでもない」

 

ローエンが笑いながら答える。

 

「そうよ、エリー。すぐに思い出せないだけでいつかは思い出すわよ」

「それに、ヒゲをなでる風が、こんなに心地いいじゃないですか」

「そういえばエリーゼ、前にローエンのヒゲ触って、お父さんのこと思い出したよね」

 

それはちょうど、ジュード、ローエン、エリーゼ、ドロッセルで行動してたことなので、ミラ、アルヴィン、レイア、秋山は知らない。

 

「へぇ、エリーゼのお父さんも、ヒゲをはやしてたのかな。どんなヒゲだったか覚えてる?」

「エリー、昔、ここでお父さんに肩を乗せてもらわなかったー?」

 

ティポがそんなことを言いだす。

 

「そうです! 長いヒゲが風にゆれてた。お父さんは、すごくおっきな人でした」

「うん?」

 

秋山の頭になにかが引っかかった。

 

「それで、鳥の羽の付いた帽子とフワフワのコートを着てて……」

「ちょい待ち」

「それは……ジャオではないのか?」

 

秋山が指摘しようとしたことをミラに指摘された。

 

「…………」

 

ミラに指摘されて、ようやく気付いたエリーゼ。

 

「……です。ヒゲを生やしてたのは、お父さんじゃなくて、おっきいおじさんでした。

おじさんは、わたしを肩に乗せて本当のことを話してくれた……」

 

エリーゼの声は涙声になりかけていた。

 

「わたしのお父さんとお母さんは遠いところに行っちゃった……って。

何度も謝りながら、教えてくれたんです。でも、わたし、意味がわからなくて。

おじさんのヒゲに涙が落ちるのをぼーっと見てた……」

「無理ねえな」

「もういいよ。やめて、エリーゼ」

 

エリーゼが泣きそうなので、話をやめさせようとするレイア。

 

「わたし、覚えてないんだ……お父さんやお母さんのこと何も……」

「ごめん。昔を思い出すの、いいことだって思ってた。

思い出さない方がいいことだってあるはずなのに。ごめんね、エリーゼ……」

「……となると、一番いいのはジャオにまた聞いてみることだが……」

「ガイアスと戦うことを考えると、気軽には聞けんな」

 

そこに……。

 

「ここにおったか」

 

なんと噂のジャオがやって来た。

 

「ジャオさん!」

「何しに来た? ガイアスの命か?」

 

ミラが剣を構えようとする。

 

「そのつもりはない。怪我もまだ完全に治ったわけじゃないからの」

 

ジャオは敵対する意思がないことを見せる。

 

「それじゃあ、なんでここに来たんだ?」

「娘っ子に用があって来たんじゃ」

「わたしに……ですか?」

「娘っ子、以前に自分の住んでいたところを知りたいと言っておっただろ?」

「そう言えば、前にお前はエリーゼの住んでいた場所を知っていると言っていたな」

 

ミラは随分前のことを思い出す。

 

「ああ、それで連れて行こうと思ってな」

「それどこなんですか?」

「モン高原を北に行ったところだ」

「あの、ジャオさん。僕たちも一緒に行っていいですか?」

「構わんぞ」

「ありがとうございます」

「それじゃあ行くか」

「……モン高原となるとまた寒い思いをするのか?」

「今度はきちんと着こめよな」

 

秋山に言われるミラ。

そしてジャオに連れられて、モン高原の北を目指した。

それから洞窟をくぐった先にエリーゼの住んでいた場所にたどり着いた。

 

「何にもない……」

 

そこはただの雪景色が広がる平原しかなかった。

 

「すまぬ、こうなっていたのはわしも知らなかった」

「十年も前だ。すでに朽ち果ててしまったのかもしれないな」

「ジャオさん、本当にここなの?」

「ああ……」

「おじさんの言う通りです。私の家があったのはここです」

 

エリーゼが走り出す。

 

「エリーゼ?」

 

エリーゼの向かった先には同じ花がいくつか咲いていた。

 

「エリーゼの花ー!」

「この花が、お庭にあったこと……思い出しました」

「じゃあ、やっぱり家はもう……」

「いいんです」

 

屈んでいたエリーゼは立ち上がり、皆の方に振り向く。

 

「おじさん、みんな、ありがとう。おかげですっきりしました」

「これはエリーゼの花というのか?」

「いや、それはさすがに……」

「ジュード、本当の名前は? この辺りに分布する花か?」

「えっと、プリンセシアだよ。

普通は、もう少し暖かい霊勢で繁殖するはずだけど……。

そっか、エリーゼの両親が植えたんだ!」

「そして、花には花言葉というものがあるのだろう?」

「プリンセシアの花言葉は、確か……」

「『かけがえのない宝物』『幾々年(いくいくとし)も健やかに』」

「そんな花をエリーゼの花と覚えていた。きっとお前の両親が、そう呼んだのだろう」

「つまり、そういうことだよ」

 

エリーゼはその場に跪き、泣き崩れる。

 

「お父さん……お母さん……」

「娘っ子、本当に済まぬ……」

 

ジャオも涙を流していた。

 

「…………」

「それにしてもミラ、よく気付いたね」

「人がそういうものだと、教えてくれたのはお前たちじゃないか」

「そうだな……」

 

しばらくして、エリーゼは泣きやんだ。

 

「お前たちはこれからどうするのだ?」

「ガイアスと決着をつける」

「あんたはどうするんだ? ジャオさん、よ」

「わしは陛下の帰りを待つとしよう。それがどんな結果になろうとな……」

「そうですか」

「それじゃあな」

「うむ」

 

そしてジャオと別れるのだった。

説明
この作品は別の人の影響で作った作品であり、作者(BLACK)のオリジナルキャラ「秋山総司郎」を第3主人公として、テイルズオブエクシリアの世界に来たらで書かれました。

秋山総司郎が今まで出てきた作品一覧(作品検索)。

http://www.tinami.com/search/list?keyword=%E7%A7%8B%E5%B1%B1%E7%B7%8F%E5%8F%B8%E9%83%8E&genrekey=1

秋山総司郎の時系列

この世界を訪れる前の話

「そらのおとしものf 番外編 『カオスのとある日常(いちにち)  里帰り編』」


http://www.tinami.com/view/225368


この世界を訪れた後の話


「そらのおとしもの  外伝  もしもイカロスの次に地上に来たのがカオスでその次に来たのがニンフだったら…。(アニメ仕様)」


http://www.tinami.com/view/257088


となっております。
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ユルゲンス…あんたは男だよ!好きになった女性の全てを受け入れるとか…器が大きいぜ!(レイフォン)
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