英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 外伝〜山猫号奪還作戦〜中篇
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〜霧降り峡谷・王国軍飛行訓練場・守備隊長の部屋〜

 

「ここは……俺らが使っていた部屋だな。」

「へえ……通信器なんか設置したのか。」

「誰もいない……。ちょっと不用心だね。」

ドルン達は守備隊長の部屋を珍しそうに見まわしていた。

「どうやらここが守備隊長の部屋みたいだ。ここで待ち構えていれば……「……戻ってきた。入ってきた所を叩くよ」

「え……」

何かに気付き、双剣を構えたヨシュアを見て、ジョゼットが驚いたその時、守備隊長が2人の兵士を引き連れて部屋に入って来た。

「な……」

「え……」

「……遅い……ハッ!」

ヨシュア達に驚いている守備隊長達にヨシュアは信じられないスピードで3人を一瞬で攻撃した!

「グワッ!?」

「「ガッ!?」」

ヨシュアの先制攻撃に守備隊長達はのけ反った!

「オラアッ!!」

「そらっ!」

「ガッ!………」

そこにドルン、キールはそれぞれの武器で攻撃して、守備隊長と兵士を気絶させ

「これでもくらえっ!アンカーフレイル!」

「グアッ!………」

ジョゼットは鋼鉄製の”いかり”を投げ、敵を気絶させるクラフト――アンカーフレイルを放って、最後に残っていた兵士を気絶させた!

 

「あった……これだ。」

気絶した守備隊長の懐を探っていたヨシュアは山猫号の起動キーを見つけた。

「おお、呆気なく見つかったな!」

「さ、さすがに冷や汗をかかされたけどな……」

起動キーがあっさり見つかった事にドルンは驚き、キールはヨシュアの行動を思い出して、冷や汗をかいていた。

「……ねえ、ヨシュア。前にボクたちと戦った時、あんた、手加減していたわけ?」

そこにジョゼットがかつてエステル達と戦った事を思い出して、ヨシュアに尋ねた。

「?どういう意味だい?」

尋ねられたヨシュアは何の事かわからず、尋ね返した。

「だってあんた、メチャクチャ強いじゃん。正直、あの時とは比べ物にならないくらいにさ」

「別に手加減はしていない。“スイッチ”が入っていなかったくらいさ。」

「スイッチ?」

「詳しい説明は省くけど……そのスイッチが入ると僕は極限まで目的合理的な思考・行動をすることができる。ただ、それだけの違いなんだ。」

「う、うーん……。判ったような、判らないような。」

ヨシュアの説明にジョゼットは唸りながら首を捻っていた。

「使える力は同じ……。ただ、その力をケタ違いに有効活用できるってわけか。」

「そう思ってくれて構わない。」

キールの推測にヨシュアは頷いた。

「ヘッ、大したもんだぜ。今のお前なら、あの特務兵の隊長ともやり合えるんじゃねぇか?」

「『結社』の手先だったっていうロランス少尉のことだな。」

「いや……それはありえない。」

ドルンとキールの予想にヨシュアは首を横に振って否定した。

 

「僕の能力は隠密活動と対集団戦に特化されている。一対一の戦いで『剣帝』に敵うはずがない。彼と対等、もしくは対等以上に戦えるのはそれこそ”大陸最強”と名高いメンフィルの”剣皇”やその娘の”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”、もしくは有名な武将ぐらいだ。」

「『剣帝』……?」

「それってあの少尉のこと?」

ヨシュアから出たある言葉にドルンは首を傾げ、ジョゼットは尋ねた。

「ああ……。彼がいる限り、僕は決して正面から『結社』に挑めない。『漆黒の牙』の名の通り……暗闇から牙を突き立てるだけさ。」

「……あ…………」

「おめぇ……」

「何と言うか……ずいぶんハードな話だな。」

ヨシュアの話にドルン達は目を伏せた。

「……つまらない話をした。時間がない、先を急ごう。」

そしてヨシュア達は先を進んだ。

 

〜地下2階・兵士の詰所〜

 

ドルン達と共に先を進んでいたヨシュアは複数の人の気配を感じ、気配を感じたドアを少しだけ開けて、様子をうかがった。

「さてと……。そろそろ交替の時間かねぇ。」

「ぼちぼち出かけるとするか。」

ヨシュアが様子を窺うと数名の兵士達が部屋を出ようとしていた。

(おい……どうだ?)

(まずいな……。キールさん、僕が渡したS2弾を1つくれないか?)

(お、おお……)

ドルンの問いに答えたヨシュアはキールから爆弾のような物を受け取った。そしてヨシュアはそれを部屋の中へと投げた。

「んっ?」

「な、なんだ?」

何かが投げ込まれた事に気付いた兵士達が首を傾げた時、爆弾のような物から白い煙が部屋中を満たした。

「う、うおっ!?」

「うわっ……」

「だめだ…………気が遠く…………」

そして兵士達はその場で倒れて、眠り始めた。

「す、すごい威力……」

「S2弾……睡眠ガス弾かよ。」

「普通に出回っているものよりかなり即効性が強いみたいだな。中身は独自にブレンドしてるだろ?」

兵士達が眠った事を確認しヨシュアと共に部屋に入って来たジョゼットとドルンは驚き、キールは興味深そうな表情で尋ねた。

「……まあね。調合法は企業秘密だけど。」

「ケチ。」

「まあいい。とっとと先に行こうぜ。」

そしてヨシュア達はさらに先を進んだ。そして進んだ先の途中の部屋で人の気配がしたので、ヨシュアはドアを少しだけ開けて、中にいる人物達の状況を確認した。

 

〜地下1階・一室〜

 

「は〜、こんなご馳走が取材で食べられるなんて〜。ドロシー、めちゃ感激です〜♪」

ヨシュアが部屋の状況を見ると、ミュラーとドロシーが食事をしていた。

「へへ、そう言ってくれると腕を振るった甲斐があるぜ。エレボニアの旦那はどうだい?」

ドロシーの感想に胸を張った兵士はミュラーに尋ねた。

「ああ……文句なく美味い。帝国軍で出る食事と比べたら天地の差と言えるだろうな。」

「ほう、そうなのか。エレボニア軍ってのはどんなモンが出るんだい?」

「そうだな……。塩辛いだけのコンビーフ。煮崩れした味気のない豆。カビの生えかかった黒パン。この3つは必ず出でくるといってもいい。」

「うへぇ……」

ミュラーの話を聞いた兵士は出て来る料理を想像して、顔を顰めた。

「うわ〜、可哀想ですね〜。そんな料理ばっか食べてるから戦争したくなっちゃうんですか?」

「む……」

「わはは。嬢ちゃん何気にキツイなぁ。」

ドロシーの際どい質問にミュラーは言葉を詰まらせ、兵士はドロシーの発言に笑っていた。

「まあ、さすがにそれはないと信じたいところだが。ただ、巨大な兵力を維持するために糧食の質を必要最低限に抑える……そういう発想は確かにあるだろう。」

「は〜、厳しいんですね〜……」

「あんたらも苦労してんだねぇ。」

ミュラーの説明にドロシーは驚き、兵士は哀れんでいた。

「………………………………」

(???ねえ、どうしたの?)

(ああ……どうやら食事中みたいだ。しばらく動かないだろうし、このまま通り過ぎよう。)

(うん、わかったよ。)

(とっとと先に進むか。)

そしてヨシュア達はさらに先に進んだ。しばらく進むとついに山猫号を見つけた。

 

〜地上〜

 

「おお……!愛しの『山猫号』……ホント会いたかったぜ〜!」

「見た感じ、ちゃんとメンテナンスされてるね!」

「へへ、さすがリベール軍。飛行船の扱い方が判ってるな。」

「嬉しいのは分かるけど、あまり時間がないからね。起動キーも手に入れたし発進準備をしてくれないかな。」

『山猫号』を見つけ感動しているドルン達にヨシュアは釘をさした。

「はいはい、分かってるって。」

「ったく……。少しくらい浸らせろよ。」

「それじゃあ中に入ろっか。」

ヨシュアの注意にキール達は文句を言いつつも飛行船の中に入ろうとしたその時

「……いたぞ!」

王国軍の兵士達が武器を構えて、ヨシュア達に追いついて来た。

「げげっ……!」

「チッ、気付かれたか!」

兵士達の登場にドルンは驚き、キールは舌打ちをした。

「空賊ども!?」

「い、いつの間に……」

「こいつらが隊長たちを気絶させたのか!?」

「仕方ない……」

「おねんねしてなよ!」

そしてヨシュア達は兵士達との戦闘を開始した!

 

「おぉぉぉ!」

「「「「う……あ……身体が……!」」」」

戦闘開始早々ヨシュアが放ったクラフト――魔眼で兵士達の動きを鈍らせ

「オラアッ!!」

「「「「グアッ!?」」」」

ドルンが導力砲を放ってダメージを与え

「おらよっ!」

「「「「ギャアッ!?」」」」

キールが爆弾を兵士達の中心地に投げて爆発させて、さらにダメージを与え

「岩よ、落ちよ!ストーンインパクト!!」

「「「「ガッ!?………………」」」」」

止めに放ったジョゼットのアーツが命中した兵士達は悲鳴を上げた後、地面に倒れて気絶した。

 

「ふう、一丁あがりだね。」

「すぐに後続が来るはずだ。ここで食い止めるから貴方たちは発進準備を頼む。」

「おお!」

「任せときな!」

ヨシュアの指示に頷いたドルンとキールは飛行船に乗り込んだ。

「ジョゼット……君は行かないのか?」

「『山猫号』の発進なら兄貴たちがいればできるさ。ボクはここでアンタのサポートをしてやるよ。」

ヨシュアの疑問にジョゼットは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「だが……」

「へへっ……。クールに振る舞ってるけどアンタ、やっぱり甘いよね。」

「え……」

ジョゼットの言葉を聞いたヨシュアは驚いた。

「今までも、何だかんだでボクたちを助けてくれたし……。ここでアンタを見捨てて逃げるとか思わなかったわけ?」

「……これでも人を見る目はあるつもりだよ。特に、君たちみたいなお人好しの人間に関してはね。」

「お、お人好しはアンタだろっ。」

「やれやれ……。騒がしいので来てみれば。」

ヨシュア達が会話をしていたその時、ヨシュア達以外の男性の声が聞こえて来た。

「え………」

声に気付いたヨシュアとジョゼットが振り向くと声の主―――ミュラーがヨシュア達に近付いて来た。

「『カプア空賊団』……。このタイミングで現れたか。しかも君が同行していたとはな。」

ミュラーはジョゼットを見て冷静に言った後、ヨシュアを見た。

「……覚えていましたか。」

「こ、こんな所にエレボニアの軍人が!?あんたの知り合いなの!?」

ミュラーと知り合いかのように話すヨシュアにミュラーの登場にジョゼットは焦りながら尋ねた。

 

「……顔見知り程度だよ。多分、不戦条約の前に船を引き取りに来たのだろう。」

「お察しの通りだ。その船を奪われようが我々としても痛くもないが……。こうして居合わせた以上、見過ごすわけにもいかない。」

そしてミュラーは大剣を引き抜いた!

「改めて名乗らせてもらおう。帝国軍第7機甲師団所属―――ミュラー・ヴァンダール少佐だ。」

「くっ……!」

「気を付けて……一筋縄じゃいかなさそうだ。」

ミュラーが出す迫力にジョゼットは呻き、ヨシュアは忠告した。

「君ほどではないと思うがな。行くぞ!」

 

そしてヨシュアとジョゼットはミュラーとの戦闘を開始した………!

 

 

 

 

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