英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 289 |
〜グロリアス・甲板〜
「………………………………」
「……まったく。どういうつもりなんだ。」
呆けた表情で自分を見ているエステルに猟兵は呆れた口調で言った後、仮面をとった!すると、猟兵は黒髪と琥珀の瞳を持つ少年――ヨシュアだった!
「正遊撃士になったのに相変わらず無鉄砲とはね……。あの場で意地を張るメリットが一体どこにあるっていうんだ。」
「……あ…………。あはは……ヨシュアだ……。えっと……夢じゃないよね?」
呆れた様子で語るヨシュアにエステルは信じられない表情で乾いた笑いをしながら尋ねた。
((………………………))
「…………エステルにあれだけの事をして、よくもまあ、自分からエステルやニル達の前におめおめとその姿を現したわね……………」
「あ、あわわ!み、みなさん、怖いですよ!そ、その〜………せっかく探していたヨシュアさんに会えたんですから、喜んだ方が………」
一方パズモ、サエラブは怒りの表情でヨシュアを睨み、ニルも怒りの表情でヨシュアを睨みながら呟き、それを見たテトリは慌てた後、遠慮気味に言った。
「夢だったらどんなに気楽でいいだろうけどね……。……どうやらそんなに都合よくは行かないみたいだ。」
「え……」
一方パズモ達の睨みに気にせず言ったヨシュアの言葉にエステルが驚いたその時
「フフ……ようやく姿を現したか。」
なんと、エステル達が出た所からレーヴェが現れた!
「……久しぶり、レーヴェ。僕が潜入していたことを予想していたみたいだね。」
「お前の能力を考えれば充分ありえる話だからな。一体、どんな手段を使った?」
「この船が来る直前に航路確保の偵察艇を狙った。”執行者”もいなかったからわりと簡単に潜入できたよ。」
レーヴェの疑問にヨシュアは静かに答えた。
「……教授が方舟を呼び寄せることまで読んだか。”執行者”としてのカンは完全に取り戻せたようだな。」
「おかげさまでね。いつレーヴェたちに発見されるかヒヤヒヤさせられたけど。」
「フッ、お前の隠形を見破れる者はそうはいない。だが、隠形というものは一度認識されたら終わりだ。」
ヨシュアの話を聞いたレーヴェは不敵な笑みを浮かべた後、剣を構えた!
「お前は最大の武器を失った。この”剣帝”相手にいったい何をするつもりだ?」
「………………………………」
「ちょ、ちょっと……!念のために言っておくけどあたし達だって動けるんだから!いくらあなたが強くったってそう簡単には……」
レーヴェの問いかけにヨシュアは黙り、エステルは棒を構えて、レーヴェを睨んで言ったが
「……下がって、エステル。レーヴェは強い。僕と君達を合わせたよりも。」
「う……」
ヨシュアの警告に黙ってしまった。
「それが分かっていながらお前はこの場に現れたわけだ。別にその事を甘いと言うつもりはないが……。ならば、どうしてお前はその娘の前から姿を消した?」
「………っ…………」
「あ……」
((………………………))
「…………………………」
「………ヨシュアさん……………」
レーヴェの言葉を聞いたヨシュアはわずかに顔をしかめ、エステルは空中庭園の件を思い出し、パズモ、サエラブ、ニルは真剣な表情で、テトリは不安そうな表情で見ていた。
「守るなら守る。切り捨てるなら切り捨てる。そう徹底しろと俺はお前に教えたはずだな?」
「うん……そうだね。教授の調整が終わった直後……初めての訓練で教えてくれた。」
レーヴェの指摘にヨシュアは静かに頷いた。
「本当にその娘が大事なら、お前は消えるべきではなかった。罪悪感に苛(さいな)まれながらもそばに居続けるべきだった。お前がそうしなかったのはただの逃避―――欺瞞にすぎん。」
「分かってる……。レーヴェに言われなくてもそんなの分かっているさ……」
「……………………」
「…………ヨシュア……」
レーヴェの言葉にヨシュアは皮肉気に笑って答え、ヨシュアの答えを聞いたレーヴェは静かにヨシュアを見つめ、エステルは心配そうな表情でヨシュアを見ていた。
「ヨシュアさん…………」
(わかっているのなら、何故エステルから離れて姿を消したのよ!?)
(……フン。皮肉な事にあの”剣帝”とか言う男の言う通りだな………)
「…………そうね。」
一方テトリは心配そうな表情でヨシュアを見つめ、パズモは怒りの表情でヨシュアを睨み、サエラブは鼻を鳴らして呟き、サエラブの念話にニルは静かに頷いた。
「でも……だったらレーヴェはどうなの……?本当なら、僕だけが払うべき代償だったはず……。なのに”結社”に入って”剣帝”なんて呼ばれて……。どうして今も教授なんかに協力しているのさ……!」
そしてレーヴェに言い返すかのようにヨシュアは辛そうな表情でレーヴェを見て叫んだ。
「………………………………。俺が教授に協力するのはお前の件とは一切関係ない。あくまで俺自身の望みのためだ。」
「レーヴェの望み……。それってやっぱりカリン姉さんの……?」
レーヴェの言葉を聞いたヨシュアは静かに尋ねた。
「復讐してもカリンが戻ってくるわけではない。だから俺は……この世を試すことにした。それが教授に協力する理由だ。」
「この世を試す……」
「さて……お喋りはここまでだ。お前の選択肢は3つある。娘と共に投降するか。娘を守ってここで果てるか。娘を見捨てて一人逃れるか。さあ―――選ぶがいい。」
そしてレーヴェは剣の切っ先をヨシュアに向けた!
(……私達がいる事を忘れないでもらいたいわね………)
(………フン………以前戦った”痩せ狼”とは比較にならないくらいの強さを持つようだが……それだけで我等に勝てると思うなよ?)
「エステルさん!ヨシュアさん!私達もいます!援護はお任せ下さい!」
「……………正直、今の貴方に協力するべきか疑問に思う所だけど……エステルが貴方を思う気持ちに免じて、ニル達も一緒に戦うわ。」
(クー!)
(グルルルルル…………)
レーヴェの言葉を聞いたパズモはレーヴェを睨み、サエラブは鼻を鳴らし、テトリとニルは武器を構え、エステルの体の中にいるクーは戦う意志ががあるかのように鳴き、またエステルの腕輪の中にいるカファルーはいつでも呼ばれてもいいように、唸っていた。
「………………………………。君達の言葉は心強いけど、4つ目の選択肢を選ばせてもらうよ。」
「なに……」
ヨシュアの答えを聞いてレーヴェが驚いたその時、突然、”グロリアス”が大きく揺れた!
「なっ!?」
「これは……」
突然の事にエステルは驚き、レーヴェは驚きながら呟いた。
「……導力機関に細工させてもらった。放っておいたらこの船は海の藻屑と化すだろうね。」
「あ、あんですって〜!?」
「……やってくれたな。まさか認証が必要な機関部に侵入するとは……」
ヨシュアの説明を聞いたエステルは驚いた声を出し、レーヴェはヨシュアを睨んだ。
「22基のエンジン全てに異なる仕掛けを施している……。教授達がいない今、解除できるのはレーヴェだけだ。」
「計画を阻止するための最後の切り札というわけか……。それをこのタイミングで切ってしまうという意味……。その欺瞞からいつまで逃げるつもりだ?」
「………っ…………」
「フフ、今度会う時までに答えを用意しておくがいい。楽しみにしているぞ。」
そしてレーヴェはエステル達に背を向けて、去って行った。
「………………………………」
「あの、ヨシュア……。あたし……あたし……」
「……話は後だ。脱出用の飛行艇を一隻確保しておいた。この先の階段を降りて船倉の格納庫を目指そう。」
「あ……。うん……分かった。みんな、ご苦労様。一端戻って。」
ヨシュアに言われたエステルは戸惑いながら頷いた後、パズモ達を見て言った。
(……わかったわ。)
「はい。……………えっと、ヨシュアさん。今度はエステルさんの傍を離れないで下さいね?」
(………言っておくが、まだ我等は貴様を許してはいないからな。)
「……ここはエステルに免じて退いてあげるけど………今度また、エステルに同じ事をするのなら、その時は覚悟しておきなさい。」
パズモは納得していない様子で頷き、テトリは心配そうな表情でヨシュアを見て言い、サエラブとニルはヨシュアを睨んで念話や言葉を言ってから、エステルの体の中に戻った。
そして予想外の場所でヨシュアと再会したエステルはヨシュアと共に脱出用の飛行艇がある格納庫に向かった…………
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第289話 | ||
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