Sonic・the・hedgehog 【Running out of control ――― EMERALD】(3) |
ソニック達がエッグマンの基地から出ると同時にソニックはテイルスを振り返る。
「で、何処へ行けばいいんだ?」
「えっとね……」
ピッ!
テイルスはレーダーを起動させる。
ピピピピピピピピピピ!
「……レーダーによるとここから北に約100km位行った所だけど……ソニックなら大した事無い距離だね!」
「Of course!」
ソニックは余裕たっぷりに告げる。
「グズグズしている時間は無い。さっさと行くぞ。」
シャドウは冷静に言った。
「OK。皆遅れるなよ!READY……………GO!!」
ダッ!!
四人は走り出す。
大分走ったが、渓谷に着くと四人は足を止める。
「後どの位だ?テイルス。」
ナックルズが尋ねる。
「レーダーによるとこの辺りなんだけど……」
その言葉に反応してナックルズは周りを見渡す。
「……お、おい!あれ!」
ナックルズはまっすぐ先を指差した。
少し離れた場所にマスターエメラルドがあった。
「あ!あったぁ!」
テイルスも嬉しそうに叫ぶ。
ダッ!
ナックルズはマスターエメラルドに向かって駆け出した。
「良かった〜!これでカオスエメラルドを止められるね!」
テイルスが笑顔でソニックを振り返った。
「ああ!もうダークの好きにはさせないぜ!」
ソニックも微笑みながら答えた。
その時だった―――――
ガンッ!!!!!
「「!?」」
いきなりガラスに物が当たったような鈍い音がしてソニックとテイルスは音がする方を見た。
「ゴ………ゴゴゴ……」
そこでナックルズが何も無さそうな所でまるで壁に猛スピードで激突したようなポーズをとっていた。
ズルズルズル……
ポテッ
そしてそのまま力なく地に崩れ落ちた。
「……お、おいナックルズ!大丈夫か?」
一瞬呆気に取られていたソニックはナックルズに声をかけた。
「…ッテテテ」
ナックルズは鼻を押さえながら顔を上げた。
「な、何だこれ?」
ナックルズは透明な壁らしき物に手を当てる。
「なんだろう……?透明なバリヤーかな?」
テイルスも同じようにそれに触りながら首を傾げる。
「どうやら、マスターエメラルド全体を囲っているみたいだぜ!」
いつの間にか向こう側へ回っていたソニックが言った。
「……壁があるなら壊せばいい。」
シャドウが口を開き、ゆっくりとマスターエメラルドに近づく。
「お、おい……」
テイルスとナックルズは少し後ろに下がった。
スッ―――――
そしてゆっくりと片腕をもう片方の腕の方に伸ばす。
――ババババババババババッ!!!
そしてその腕に黄色い光が集まる。
「カオススピア!!」
バッ!
シャドウが腕を振ると黄色い光の矢が数本マスターエメラルドに向かって飛んでいく。
ドガァ―――――ン!!
そしてそのまま爆発を起こす。
シュウウゥゥゥ―――
マスターエメラルドが余すところなく灰色の煙に包まれた。
煙が徐々に引いていくが――
「…………」
シャドウは腕を組み何も言わずにその光景を見ていた。
中からはさっきと変わらず美しい光を放ちながら輝くマスターエメラルドが姿を現した。
しかしナックルズがそれに近づこうとするも、やはりまだ壁が存在していた。
「……駄目か。」
シャドウは舌打ちをした。
「……クックック」
「「「「!!?」」」」
その瞬間、不気味な笑い声が響いた。全員が咄嗟に構える。
「その声……ダークか!?」
シャドウは叫ぶ。
シュウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!!!
その瞬間、マスターエメラルドの上空に禍々しい闇色の煙が集まる。
そしてそのまま煙は奴の―――「ダーク」の姿となった。
「……その通りだシャドウ。マスターエメラルドを手に入れるために必死のようだな。」
ダークはシャドウを見下ろしながら静かに告げる。
「失せろ!カオススピア!!」
ババッ!!
シャドウはダークめがけて再び光の矢を放つ。
ドガァン!!
「チッ!」
しかし、透明な壁が邪魔をしてダークに当たらない。
「ククク、まぁそう焦るな。これから貴様達に最高のショーを見せてやろうと思ってな。」
「あいにく、お前の暗いショーなんか見たくないんでね!」
ダークの言葉にソニックが言い返す。
「……まぁそういうな。まずは客席に座ってもらわないとな。」
スッ―――
ダークが手を天に向ける。
―――スゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
するとその掌に黒い光が集まる。
「ハァッ!!」
ドンッ!!
ダークが叫ぶと共に、掌から複数の黒い物体が飛び出す。
ギュゥゥッ!!
「なッ!?」
その黒い物体はソニック、シャドウ、テイルス、ナックルズのそれぞれに向かって飛んで行き、ロープ状になってソニック達に巻きつく。
「し、しまった!」
ギギギギギギギギッ!!
ソニックは必死に振り解こうとするが、物凄い力で巻きついてくるこの黒い物体を外すことが出来なかった。
「くッ!」
「んくく!!」
ソニックだけでなく、テイルス、ナックルズ、シャドウも同じ状態だった。
「ち、ちっくしょう!!やっぱりマスターエメラルドを盗んだのはてめぇだったんだな!!!!」
ナックルズはダークに向かって怒鳴る。
「……ああ。あそこで言ったらつまらないと思ってな。」
クックックと笑いながらダークは答える。
フッ――――
ダークはゆっくりとマスターエメラルドの上に舞い降りる。
「……さぁ、ショーの始まりだ。」
そしてゆっくりと告げる。
「なッ!?マスターエメラルドをどうする気だ!!!!?」
ナックルズは叫ぶことしか出来ない。
「……言っただろ?『見つけ次第排除する』ってな……」
「!!!!」
ナックルズは息を呑む。
スッ――――
ダークはゆっくりと片手を振り上げる。
「やめろおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!」
喉が潰れんばかりにナックルズは叫ぶ。
パキーーーーン!!!
ダークが腕を振り下ろすと同時にマスターエメラルドは砕け散った。
「!!!!!!!くッそおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
ナックルズの表情は悔しげに歪んだ。
(目の前に―――目の前に守るべき物があったのに――――守れなかった―――!)
そんな心情が彼の胸を痛みつける。
「―――待てよナックルズ。まだ手が残されている。」
「―――――!?」
ソニックの言葉にナックルズは一瞬考え込む。
「――――そうか、そうだったな。すまんソニック。少し取り乱したようだ。」
「Don’t worry!」
ソニックはウィンクした。
「クックック――――」
そんな二人の会話を聞き、ダークは静かに笑う。
「―――――欠片を探しても無駄だぞ。」
「「!?」」
二人はダークを振り返る。
「――――マスターエメラルドは壊れても欠片を集めれば元に戻る。それを俺が知らないとでも思ってたのか?」
ダークは不敵に笑う。
「何で欠片を探しても無駄なんだ?」
ソニックが尋ねる。
その刹那、ダークが両手を広げる。
――――フォォォォォォォッ!
そして、ダークの体に闇色のオーラがまとわりつく。
「ハァッ!!」
バババババッ!!
ダークが叫ぶと共にダークの体から再び複数の黒い物体が飛び出し、それぞれ別方向に飛び去っていった。
「……?」
ナックルズは何が起こったかよく分からない顔をしている。
「……今、欠片が飛び散ったところに俺が生み出した欠片の守護者を送った。欠片に近づく者全てを排除する危険な存在を、な。」
「なッ!」
「……まぁ、今からここで消滅する貴様達にとっては意味の無い話だがな……」
「何だって!?」
テイルスが叫ぶ。
スッ――――
ダークが徐に手を天に向ける。
「「「「―――?」」」」
ソニック達は天を見上げた。
「なッ!?」
「そんな!?」
ソニック達は愕然とする。
「クックック……これが何だか分かるよな?」
「カオスエメラルド!?」
そう、ダークの手に舞い降りたのは――――異様な光を発する七つのカオスエメラルド。
「くそっ!てめぇ卑怯だぞ!!」
ナックルズはロープ上の黒い物体を振り解こうともがく。
「おのれ………ッ!」
シャドウも同じようにもがく。
ソニックとテイルスも同じ状態だった。
「貴様らまとめて消えるがいい!!」
ダークがゆっくり手を動かすと、カオスエメラルドが凝結していく。
バッ!!
ギュオオオッ!!
ダークが腕を振り下ろすと同時に凝結したカオスエメラルドが身動きの出来ないソニック達に襲いかかる。
(やっ、ヤバい!!)
ソニックは必死にもがく。
カオスエメラルドはもうソニックの目前にまで来ていた。
その時だった――――
コオオォォォォッ!
カオスエメラルドが青白い光を放ちながら動きを止めた。
「なにぃッ!?」
ダークは目を疑う。
「久しぶりだな!ダーク!」
空から声が聞こえ、ダークは空を見上げる。
そこに居たのは―――――
「シルバー!?」
ソニックは驚いて声を上げた。
そこに居たのは浮遊しながらカオスエメラルドに向かって両手を伸ばしている銀色のハリネズミ――――シルバー・ザ・ヘッジホッグだった。
「お前ら、久しぶりだな!」
シルバーは微かにソニック達に笑みを浮かべる。
「チィ、小癪な!」
グググググ……!!
ダークは腕に力を入れる。
シルバーはダークの方に顔を向ける。
「いくら力をいれても無駄だぜ!俺の超能力を舐めるなって言ったのを忘れたのか?」
シルバーは余裕たっぷりに言う。
「……おのれ……!!」
ダークは怒りに顔を歪める。
「どうしたダーク?お前の力はそんな程度なのか?」
シルバーは叫んだ。
――――――ニィッ!
しかしダークは表情を一変させ不気味な笑顔を浮かべる。
バッ!
そして跳躍し一気にシルバーに肉薄する。
「なッ!?」
「調子に乗るな。」
バキィッ!!!
「うあッ!!」
ダークは目にもとまらぬスピードで腕を頭の後ろに組みシルバーを地へと叩き落とす。
ヒュウゥゥゥゥゥ―――――………
ドガ―――――ン!!!!
物凄い勢いでシルバーは地へ落下する。
「シルバー!!」
ソニックは叫ぶ。
シルバーの落下したところに大きな穴が開き、中がどうなっているか分からない。
ダークは上空からその様子を何も言わずに見ている。
スッ―――――
そして彼の周りに再びカオスエメラルドが集まる。
「雑魚が……」
そして冷徹に言う。
その時だった―――――
フッ―――――
「「「「!?」」」」
突如ソニック達は体が軽くなるのを感じた。
「何ッ!?」
ダークは驚愕した
「あれ?僕たち動けるよ!」
テイルスは嬉しそうに飛び跳ねる。
ソニック達に巻き付いていたあの頑丈な黒い物体が青白く光り浮遊していく。
「……まだ終わっちゃいないさ。」
シルバーが片手を上げながら穴の中から上昇してくる。
そして青白く光る黒い物体がシルバーの周りに集まる。
「喰らえ!!」
ブンッ!
シルバーが腕を振ると同時に黒い物体が一斉にダークに向かって飛んでいく。
「……愚かな。」
しかしダークは動じなかった。
――――フシュンッ!!
「なッ!?」
黒い物体がダークに当たる瞬間、黒い物体が消えた。
「……こいつは元々俺の体から作った物体。返してくれて感謝するぜ。」
ダークはクックックと笑いながらソニック達を見下ろす。
「くッ!」
シルバーはゆっくりと降下し、着地する。
「くそっ、どこまでも卑劣な奴め!」
ナックルズが叫ぶ。
「……卑劣?こっちは一人なのに仲間と組んででかかってくる貴様らの方が卑劣ではないか?」
「……ッ!!」
悔しそうにナックルズは歯軋りをする。
「仲間と組んだこともないお前に何が分かるんだ!」
ソニックが叫んだ。
「………?」
ダークはゆっくりと視線をソニックに向ける。
「仲間がいるから毎日違った景色が見れるんだ!一人でいても同じ景色しか見れない。そんなの最初は良くてもだんだん飽きてくるさ!そんなのまっぴらゴメンだね!!」
ソニックはダークに言い放つ。
ダークは何も言わず鼻を鳴らす。
「答えろ!貴様は一体何者だ!?貴様の狙いは何だ!?」
ずっと黙っていたシャドウが口を開く。
「……それを聞いてどうする?」
ザワッ―――――
ダークの翼が動く。
「――――今から消える貴様達に教えて何になる!!!」
ドンッ!
ダークがソニック達に向かって猛スピードで飛来する。
ソニック達は咄嗟に構える。
「シャドウ―――!!!」
ダークが叫びながらシャドウに向かって飛来してくる。
「ハァッ!」
シャドウもダークに向かって跳躍する。
―――――シュンッ!
二人がぶつかる直前、姿が消える。
「消えた!?」
テイルスは驚嘆した。
「違う、見えないんだ!」
シルバーが答える。
―――――ドンッ!!
「わあッ!?」
突如空間に衝撃が奔り、テイルスが驚いて飛び上がる。
ドドガンッドドドドドガンッドドドドドドドドドッ!!!!
それぞれ別の場所で何度も大きな衝撃が走る。
「シャドウ!」
ソニックは周りを見渡しシャドウを探す。
「―――――ぐぁッ―――」
「!?」
一瞬シャドウの叫び声が聞こえソニックは声のした方を見る。
「シャドウ!?」
ソニックの目には吹っ飛ばされているシャドウの姿が見えた。
「ハッ!」
そこにダークが突っ込んできている。
「今行くぞシャドウ!」
ダッ!
ソニックは走り出す。
「ソニック!?」
テイルスは叫ぶ。
「ぐッ!」
シャドウは吹っ飛ばされながらもダークを睨む。
「シャドウ――!」
ダークがシャドウに向かって飛来しながら片手を向ける。
「ハアァッ!!」
バキィッ!!
「ガッ!!」
ドガ――――ン!!
突如現れた青い影に蹴り飛ばされダークは地面に叩きつけられる。
「シャドウ!」
正体は言うまでもなくソニックだった。
「……何をしに来た?」
シャドウは冷たくそう言い放つ。
「まぁそう言うなって。」
ソニックは呑気に言う。
シャドウは鼻を鳴らす。
ギュォォッ!
ダークが体勢を整え、ソニック達を睨みつける。
「邪魔なハリネズミめ―――」
ダークはギリギリと歯軋りをする。
「へッ!行くぜシャドウ!」
ソニックはそう言うとダークに向かって跳躍する。
「フン。」
シャドウも同じようにダークに向かっていく。
「二人まとめて潰してくれる!」
ダークも二人に向かって跳躍する。
「二人共どこ行っちゃったんだろう……?」
テイルスは不安そうな顔をしながら呟く。
「ダークの姿も見えないぜ!」
ナックルズも周りを見回しながら叫ぶ。
さっきから分かることと言えば様々な場所で大きな衝撃が走っていることくらいだった。
ドッドッドッドッドドド!!!!ドガンッ!!ドドドドドドドドドドッ!!!!
「お、おい!さっきより音が早くなってないか!?」
シルバーの言うとおり空間に走る衝撃音が先程より早くなっている。
その時だった―――――――
バババッ!
「あッ!」
ソニックとシャドウとダークの姿が見えるようになった時、テイルスは感嘆の声を上げる。
「ソニック!シャドウ!」
シルバーも彼らの名を呼ぶ。
スタッ!
ソニックとシャドウ、ダークの三人は互いに距離を取る。
ヒュウウゥゥゥゥゥゥ―――――
三者の間に静かに風が吹く――
「……クックック………ハ――――ッハッハッハッハ!!!!!!!」
ダークは突如狂ったように笑い出す。
「HEY!何がおかしいんだ!?」
ソニックは思わず尋ねる。
「―――貴様達は仲間と組んでも本当にこの程度なのか?」
ダークの不気味な視線にも動じず、シャドウはダークを睨み続ける。
「へッ!俺達はまだ全然本気なんか出しちゃいないぜ!?」
ソニックはダークに人差し指を立てる。
「戯言を……このまま貴様達を消すのは簡単だが……楽しみは取っておこう。
―――――1ヶ月後に俺はさらに力を付け――――――人類を滅亡させる。」
「何だって!?」
テイルスが聞き返す。
「―――それまでにもし貴様達が俺と戦う気があるのなら来るがいい。まぁどうせ無駄だろうがな……」
そう告げるダークの周りに黒い煙が集まる。
「ダーク!僕の問いに答えろ!」
シャドウはダークに尋ねる。
ダークは答える代わりにクックックと不気味な笑いを響かせる。
「―――――楽しみにしているぞ………『兄弟』」
「何ッ!?」
言の端が気にかかりシャドウは聞き返す。
「ダーク!『兄弟』とはどういう意味だ!?」
「フッフッフッフ―――――」
シャドウの声に動じることなく不気味な笑いを浮かべながら、ダークは闇へと消えた。
「――――で、貴様達は一人加勢したにもかかわらず結局マスターエメラルドを守れなかった訳じゃな?」
司令室の大きなモニターの下でエッグマンは背を向け尋ねる。
ソニック達はあの後再びエッグマンの基地を訪れていた。
「……ああ。」
ナックルズが力無く答える。
「……このぉ!この前のワシの苦労は何だったんじゃ!」
エッグマンは振り返ると顔を真っ赤にし叫ぶ。
「まぁそう言うなってエッグマン。しょ〜がないじゃん、今回は相手が強いんだからさ〜。」
ソニックはぶっきらぼうに答える。
「しょうがないじゃと!?貴様らが潜入してきたおかげで後始末が大変だったんじゃぞ!山の様にあるロボットの残骸の処理をせにゃあならんわ、手伝いロボットは役に立たないわ、あのレーダーを作ったせいで材料が足りなくなって優秀な手伝いロボットも開発できんわ……」
(――――殆どロボット面の問題じゃないか……。)
シルバーは呆れた面持ちになりため息をつく。
「で、今回もまた貴様らがワシの所へ来る時に多量のロボットをぶっ壊したせいでまたワシは六時間も
かけて掃除せにゃならんのじゃぞ!!」
エッグマンはカンカンになっていた。
「だって襲いかかって来んだもん。壊すしかねぇじゃん?」
「何を?!」
エッグマンは地団駄を踏む。
「ねぇ、今は喧嘩してないで早くマスターエメラルドを元に戻すための方法を考えようよ。」
テイルスが二人の間に割って入る。
「……む、そうじゃった。」
顔を真っ赤にして怒っていたエッグマンはふと我に帰り、モニターに身を向ける。
「さて、どうするものか……」
エッグマンは何も映っていないモニターを見上げる。
「もう一回レーダーで探すってわけにはいかないのか?」
ソニックは腕を組み尋ねる。
「―――――前回レーダーを使ったのはマスターエメラルドが大きなエネルギー反応を持っていたからじゃ。じゃが、その大きなエネルギーが小さくバラバラになってしまった訳じゃ。欠片のエネルギーの大きさが分からぬ限り、レーダーで探すのは不可能に近い。」
エッグマンは背を向けながら答える。
「よ〜するに欠片が一つでもあればレーダーは作れるってことだな?」
ソニックは大きく伸びをする。
「そういうことじゃが、貴様のことだ。探しに行くとでも言うんじゃろう?」
「ここでジッとしてるのも退屈だからな。ちょっと欠片を探すついでにひとっ走りでもしてくるぜ。お前もどうだシャドウ?」
ソニックはそう言いながら部屋の隅で目を瞑りながら腕を組み壁に寄りかかっているシャドウに尋ねる。
「………断る。」
シャドウは目を開けることなく答える。
「……hum。じゃあ、行ってくるぜ!」
ヒュッ!
ソニックはそう告げると部屋から走り出ていった。
「……ったく、呑気な奴だぜ。」
ナックルズは肩をすくめる。
「あいつも変わらないな。」
シルバーは少し微笑む。
「でも、ソニックだけで平気かな?ダークの生み出した怪物って危ないと思うんだけど……」
テイルスが不安そうに言う。
「あいつなら大丈夫さ。」
ナックルズはテイルスの方を向き直し答える。
そんな一同の傍らでエッグマンはため息をついた。
――――ゼェ―――――――ゼェ―――――
薄暗い森の中を誰かの荒い呼吸が響く。
「―(ゼェ)――ち――(ゼェ)――くしょ――(ゼェ)―う――――」
「彼」は大木の下に寄りかかり、そのまま力無くドッと音を立てて座り込む。
ズキンッ!
「うぐっ!!」
左腕に激痛が奔り、「彼」は思わずもう片方の手でおさえる。
―――――……一体どこまで来たんだ?
やっとの思いであの草原を出てからこの森の中に入り、「彼」は一人森の中をさまよっていた。
傷ついた体も癒える間がなかった。
それどころかますます悪化しているような気さえする。
――――コツッ
「………?」
腕をおさえると指先に何か硬い物が当たる。
「………くっ!」
伸ばすと激痛が奔る腕を必死に伸ばし、当たったものを掴む。
「………銃?」
「彼」は霞む目で必死にそれを見る。
(―――何でこんな物が――――?)
ズキンッ!!
そう思うと同時に頭に激痛が奔る。
「ガ!!………う………う……あ……!!」
あまりの激痛に「彼」は思わず銃を落とし頭をおさえる。
(……な…何だ……この感じ……?)
激痛が奔る中、「彼」は感じた。
――――な―――懐か――――しい――――?
「……そうだ……これは俺の銃だ……」
ガバッ!!
そう感じた瞬間――
「ソニック〜〜?」
突然ピンク色の体のハリネズミの少女が現れ、抱きつかれる。
「ぐぁッ!?」
その衝撃で体に激痛が奔る。
「もぉ〜、こんなところに居たのね〜!この森薄気味悪いから探すのを止めようと思ったんだけど、やっぱ探してよかった〜!」
だが、嬉々とした少女の声は悲鳴にかき消される。
「ぐ…が…!!どいてくれ!」
「彼」は切実に叫んだ。
「嫌よ、折角会えたのに!あ、分かった!いきなり抱きつかれたから恥ずかしいんでしょ?もぉ〜ソニックったらシャイなんだから〜!」
少女が相変わらず抱きついてきながらグリグリ頭を寄せて言う。
(――――誰だよソニックって!!)
「……どいてくれって言ってるだろ!!」
「彼」が叫ぶと同時に少女の体がビクッとなった。
ズキンッ!!
「彼」は叫んだ後再び体全体に激痛を感じうずくまる。
「……ソニック……?」
少女がそっと「彼」から離れる。
「……ソニックって誰のことだ……?」
「彼」は痛みにうずくまりながら必死に言う。
「……ソニックじゃない!?しかもあなた怪我してるの!?」
少女は叫ぶと同時に「彼」に近づく。
「……こんぐらい……大丈……グァッ!!」
立ち上がろうとするが、再び激痛が奔り膝をつく。
「……ゼェ………ゼェ……」
「彼」は苦しげな表情を浮かべて荒呼吸をする。
「大丈夫じゃないじゃない!待っててね!今誰か呼んでくるから!」
少女は振り返り、走り出そうとするもその足が止まる。
「えっ……!?」
「彼」も思わず顔を上げる。
「なッ……!?」
二人は驚愕する。
「グオオオオオオオオォォォォォォォォッ!!!!!!!」
二人の目の前には漆黒の巨大なライオンのような姿をし、背中に悪魔のような大きな翼を生やし、全身から牙のような鋭い刺を出し、その上頭からさらに手を二本生やしているまさに化け物と呼ぶにふさわしい生物――――――「ダーク・ザ・ガーズ」が立ちはだかっていた。ガーズは獰猛そうな目で二人にを睨みつけている。
背筋が寒くなるほどの鋭い敵意が感じられた。
「な、何なのこいつ!邪魔しないで!!」
少女はどこからか巨大なピコピコハンマーを取り出し構える。
「く……!」
(――――そんなもので戦おうなんて無茶だ!)
そう思い、必死に体を動かそうとするもなかなか言うことを聞かない。
「ヤアアアアアアアッ!!」
少女がピコピコハンマーを振り上げながらガーズに走りこむ。
「……よ、よせ!危険だ!」
「彼」は叫ぶ。
ドォォォン!!
ピコピコハンマーが勢い良く振り下ろされた。
「あら?」
しかしその姿は無い。
少女は周りを見渡す。
―――――キッ!
「彼」は遠くの木の上を睨む。
そう、「彼」には見えていたのだ。
ハンマーが振り下ろされる直前、ガーズが目にも見えぬ早さで遠くの木の上に跳躍したのを。
「グウウゥゥゥゥゥ……!!!」
ガーズが少女に殺意を向けているのが分かる。
「くっ……!!」
(――――彼女が危ない!!)
ググググググググ――――!!
「く………くく……!!」
そう思い、激痛の奔る腕を必死に動かし銃を掴む。
「グオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
バッ!!
ガーズは木の上から少女に向かって勢いよく飛来する。
「えっ?」
少女が振り向くと同時に悲鳴をあげる。
(動け――――――!!!!!!!!)
ドォンッ!!!!
「グギャアアアァッ!!」
ガーズは少女に襲いかかる寸前に吹っ飛ばされる。
ドザァァァァッ!!
そのまま地に叩きつけられた。
(――――ハッ!?)
一瞬何が起こったか理解できなかった。
ただ分かるのは自分が銃をあの怪物に向けており、その銃口から煙が出ていることくらいである。
「――――えっ!?」
少女は目に涙を浮かべ、小さく震えながらこっちを振り返る。
相当怖かったのだろう。
「―――ゼェ――――ゼェ――――」
「彼」の息は荒い。
「――――グウウウゥゥゥゥ……!!」
ガーズがよろよろ立ち上がりながらこちらに殺意を向けてくる。
「………ぐっ……」
(――――こりゃ……死ぬかもしれないな。)
「彼」は覚悟を決める。
「……ゥグッ!!!!!」
「彼」は痛みを強引に押しのけて立ち上がる。
ガクガクガクガクガクガク!!!!
「彼」の足が痛みで震える。
チャキッ!
そして片腕を腰のベルトに伸ばし、もう一丁銃を取り出す。
―――――そうだ―――俺はこうやって戦ってきた……!
「彼」は構えた。
「グウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………グオオオオオォォォォォォ!!!!!!」
ガーズもこちらめがけて咆哮をあげる。
「もう止めて!!」
少女が涙を流しながら叫ぶ。
「………?」
「彼」は目の前がぼやけてよく見えなかったが視線を少女に向ける。
「うっ……そんなことをしてたら……そんなひどい怪我を負ってるのにそんなことしたら……本当に死んじゃうじゃない!!」
少女は必死に叫び続けた。
「―――――気にすんな。ここは俺に任せるんだ。ぐっ!……お前は早く逃げろ。」
「彼」は必死に声を振り絞り、苦痛に顔をしかめながらもぎこちない笑顔を作った。
「でも……!!」
「―――――早く行けぇッ!!!!!」
「彼」は叫んだ。
「………」
ダッ!!
少女はうつむき、「彼」に背を向け走り出した。
「……グオオオオオォォォォォッ!!!」
バッ!!
ガーズは少女に顔を向け、襲いかかる。
ドォンッ!!ドォンッ!!!
バチッ!!!
「ガァァァァァァッ!!!!」
ガーズは足を撃たれ、体勢を崩す。
「ウグッ!!!」
銃を撃った反動で「彼」の体にも激痛が奔る。
ガクッ!
それと同時に膝が曲がる。
ガクガクガク―――!!!
「グウウウウ!!!」
ガーズも体勢を整えてこちらを睨みつける。
「ガアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」
ガーズは耳が張り裂けそうな声を上げて咆哮する。
(――――負けて――――たまるかぁっ!!)
スウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!
「彼」は天を見上げ大きく息を吸う。
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「彼」は叫んだ。
天を見上げ心の奥から叫んだ。
ザワッ!!
周りの草木が大きく揺れる。
「ガァッ!!」
ガーズが鋭い爪を持つ腕を振り上げながら飛来してくる。
「ハッ!」
「彼」も大きく跳躍する。
バスッ!!
ガーズが腕を振り下ろすと同時に鈍い音を立て地面に大きな爪跡をつくる。
「グウゥゥゥゥゥ……!!」
そこに「彼」の姿が無いことに気づくと、ガーズはその姿をを探しだした。
「ここだ!」
上空から声が聞こえガーズは空を見上げる。
ギュルルルルルル!!!
そこに猛スピードで回転している朱色の姿。
―――――ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
「彼」は旋回しながら二丁の銃でガーズに弾丸を放つ。
バスッ!!バスッ!!
鈍い音を立て弾丸はガーズに命中する。
「ガァッ!!」
バッ!!
しかし弾丸を物ともせずにガーズは「彼」に向かって跳躍する。
「なッ!?」
「彼」はその光景を見て絶句する。
「ガアァッ!!!」
ガーズが「彼」の頭上で太い腕を振り上げる。
「くッ!」
ジャキッ!
「彼」は銃を素早く弄った。
ブンッ!!
ガーズの腕が振り下ろされる。
「くっ……!!」
(間に合ってくれ!)
ババッ!!
「彼」は銃を突き出す。
バチィッ!!!
火花が飛び散ると共にガーズの腕が止まる。
「ガッ!?」
「……何とか間に合ったか。」
ふぅ、と「彼」は小さく息を吐く。
銃口から出た小さなレーザーが剣となりガーズの腕を受け止めていた。
だが、そう安心していられなかった。
「ギギギッ……!!」
ガーズは腕に力を入れる。
「ぐぐぐっ……!!!」
「彼」も力を入れるが、ただでさえ瀕死の状態である上に力の差は歴然だった。
「ガァッ!!」
ドガァッ!!
「ぐがッ!」
あっけなく「彼」は地に叩き落される。
ドサッ!!
「グハッ!」
「彼」は勢いよく地に叩きつけられた。
「――――クッ――――」
「彼」は地に臥したまま顔を上げる。
「!!」
そして驚愕する。
「ガァァッ!!」
そこにガーズがドカドカと音をたてて突進してきているのが見えた。
ドガァッ!!!
「!!!」
大きく吹っ飛ばされると同時にあまりの苦痛に「彼」の意識も飛ぶ。
―――――俺は今―――――どうなっている―――――?
――――ワカラナイ―――――
―――――俺は――――誰だ――――?
――――ワカラナイ――――
――――――ドクン!
背中が熱い。
―――――――――?
「彼」は腕を伸ばし背中の「ある物」を取り出す。
―――――コレハ―――――?
手に取った物は鈍く金色に光っている黒い物体。
―――――ソウダ――――コレハ―――――――
「彼」は目覚める。
「ハッ!!?」
「彼」は我に帰った。
今分かるのは自分が今吹っ飛ばされていること。
自分が手に拳銃ではなく広い銃口と大きな形のレーザー銃らしきものを持っていること。
そして――――――
「グォォォォォォ!!!」
奴が―――――ガーズがこっちに向かって猛進していること。
「――――これで決める!」
ババッ!
「彼」は吹っ飛ばされながら体勢を整え銃口をガーズに向ける。
―――――シュウウウゥゥゥゥゥゥ!!
銃口に光が集まる。
「グオオオオォォォォォ!!!」
ガーズはこちらに向かって荒っぽく肉薄しながら吠える。
「―――――貫けぇ!!『グレネードフラッシュ』!!!」
ドォンッ!!!
ガーズに向かって光のビームが放たれる。
「ガッ!?」
キキキキィ――――!!
ガーズは止まろうとするが間に合わない。
ズガァァッ!!!
ガーズは光線をモロに喰らった。
「ガアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!」
その刹那ガーズの体が眩く光り、傍目からは何が起きたか判断できない。
シュウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――――
ドザァッ!!
光が消えると、ガーズはその場に崩れ落ちた。
ドカァッ!!
吹っ飛ばされていた「彼」の体がそのまま大木に直撃する。
「ぐぁッ!!」
ドサッ!
「彼」は地に落下する。
「―――――へ、へ―――――やっ――――た――――ぜ――――」
少しだけ笑顔を浮かべ、「彼」は意識を失った。
そのまま数分が経った。
――――――ギッ
その姿は動き出す。
「―――――グググ―――――!!」
よろよろ立ち上がり、周りを見渡す。
「!」
そして、遠くに倒れている朱色のハリネズミの姿を見つける。
「グウウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
ガーズは唸り声を上げながら「彼」に近づく。
―――――――その時だった。
シュンッ!!
ドガァッ!!!
「ガァッ!!!?」
突然青い影が現れ、ガーズの腹部に突撃し体を貫いた。
―――――――トッ
その青い影―――――いや、その「青いハリネズミ」は木の幹に降り立つ。
「――――へへっ!」
ハリネズミ―――――ソニックはガーズに人差し指を立てる。
「――――――くっ」
意識が戻り、「彼」は静かに目を開ける。
(――――天井?)
森で倒れたはずなのに―――――黒い天井をぼんやりと見ながら疑問を感じる。
今分かるのは自分が森でなくどこかの建物内の一室でベッドに横たわっていること。
自分の体の至る所に包帯が巻かれていること。そして傷の痛みが大分和らいでいること。
そして静かに周りを見回す。
――――――チャプチャプ……
すぐ傍で水の音が聞こえる。
「彼」はゆっくりと音のする方に視線を向ける。
「フンフンフ〜ン♪」
ピンク色の姿が向こうを向いて座り、鼻歌を歌いながら何かをやっている。
「ん………?」
(この子―――――もしかして――――)
「彼」はゆっくり体を起こす。
「え?」
その物音に気づいたらしくピンク色の姿がこちらを向く。
「あ……えと……」
言葉が見つからず、「彼」は口ごもる。
「起きたのね!おはよう♪」
少女は笑顔を浮かべ躊躇無く言った。
「あ……おはよう……」
「彼」もとりあえず挨拶をした。
「……もしかして君はあの時の……?」
「彼」は少女に尋ねる。
「あたしはエミー・ローズ。あの時は助けてくれてありがとう♪」
少女――――エミーは立ち上がりこちらを向きながら言う。
(やっぱり……!)
「けど、何で君がここに?っていうかここはどこだ?」
「彼」が尋ねた瞬間―――――
プシュ―――!
「Good morning!具合はどうだ?」
突如ドアが開き青いハリネズミと黄色い子ギツネが部屋に入ってくる。
「あ〜!ソニック〜!」
ガバッ!
するとエミーが突如ソニックに近寄り思いっ切り抱きつく。
「おわっ!?ちょ、エミー!?」
「ハハ…ごめんね。気にしないで。」
抱きつくエミーに抵抗するハリネズミの代わりに子ギツネが少し困った表情を浮かべて言う。
「あんたらは?」
少し怪訝そうな面持ちで「彼」は尋ねる。
「俺はソニック。ソニック・ザ・ヘッジホッグだ!」
「僕はマイルス・パウアー。皆からはテイルスって呼ばれてるよ。」
ソニックとテイルスは簡単に挨拶をする。
「ここはDr.エッグマンの基地の中だよ。」
テイルスがあどけない笑みを浮かべる。
「Dr.エッグマン?」
「まんまるっこいヒゲのオッサンさ。お前の名前は?」
ソニックが尋ねる。
「…………」
しかし「彼」は何も言わず表情を曇らせた。
「?」
ソニックは首を傾げる。
「――――――分からないんだ。」
そして弱々しく言う。
「………どういうことだ?」
ソニックは腕を組み尋ねる。
「―――――分からない。俺が誰なのかも……今分かるのは、この銃が俺の物であるということだけだ。」
そう言いつつ、「彼」は座った状態で腰に手を伸ばす。
「――――!?」
しかし、そこには何も無い。
無いのは銃だけではなく、体に巻いていたベルトが二本とも無くなっている。
「な……俺の銃は!?」
「彼」は慌てて周りを見回す。
「ここにあるよ。」
テイルスが二本ベルトを取り出した。
「彼」はホッとし、再びゆっくりと体を倒す。
テイルスはベルトを近くのテーブルの上に置いた。
「……それにしても一体どうなってるんだ?俺は森で倒れたはずなのに……」
「彼」はソニック達に顔を向けて尋ねる。
「あたしがあの後森を出たら偶然ソニックに会ったの。それで二人で一緒にあなたを助けに行ったのよ。ね、ソニック。」
「まぁ〜そんなとこかな〜。」
得意げな笑顔で言うエミーにソニックは呑気に答える。
「あの化け物はやっつけたぜ!」
ソニックは親指を立てる。
「……あの時まだ倒せてなかったのか……」
「彼」は少し驚いたように視線をソニックに向ける。
「けど、あいつは殆ど動けない状態だった。あいつを倒したのは俺じゃない、お前さ!『ハイク』!」
「『ハイク』?」
笑顔で言ったソニックの言葉の端が気になり、尋ね返す。
「名前が無いってのもなんだからな。名前が思い出せるまで『ハイク』って名前はどうだ?悪くない名前だろ?」
「『ハイク』か……悪くない名前だな。」
『彼』――――いや、ハイクは笑顔を浮かべる。
「んでもって奴からマスターエメラルドの欠片もGET出来たし、後はハイクが元気になるのを待つだけだな。」
「マスターエメラルド?」
ソニックは今までの経緯をハイクに話した。
――――「カオスエメラルド」という不思議な力を持つ宝石のこと
――――「ダーク」の存在のこと
―――――カオスエメラルドがそのダークに操られていること
―――――カオスエメラルドを止めるために必要な「マスターエメラルド」が盗まれてしまったこと
「……なんか色々と大変そうだな。」
ハイクは話を聞き終えると複雑そうな顔をする。
「ああ。早くマスターエメラルドを復活させてダークを倒さなきゃな。そのためにはエッグマンが早くレーダーを作ってくんないとな。」
「ちょっと様子を見に行ってみようか?もしかしたら僕に手伝えることがあるかもしれないし。」
しばし黙っていたテイルスが口を開きソニックの方に向き直る。
「そうだな。ちょっと行ってみるか。エミー、ハイクを頼むぜ。」
プシュ―――!
そう言うと二人は部屋を出ていった。
プシュ―――――!
自動ドアが開く。
「エッグマン、調子はどうだ?」
部屋に入ると同時にソニックは部屋の奥の作業台でガチャガチャと音を立てて何かを作っているエッグマンに声をかける。
「たった今五つ目が完成したところじゃ。」
「五つ目!?」
テイルスは目を見開いた。
「あと一つじゃ。」
「いや、そういう問題じゃなくて……何で六つも作ってるの?」
テイルスは少し呆れて尋ねる。
「……ダークは言っていたんじゃろう?『一ヶ月後に人類を滅亡させる』と。あまり時間がない状況で一々あっち行ったりこっち行ったりしていては間に合わん。手分けして集めた方が早いというわけじゃ。」
エッグマンは背を向けたまま言う。
「なるほどねぇ。流石に考えてるんだなエッグマン。」
ソニックは呑気に言う。
「ふん。貴様らとはここが違うんじゃ。こ・こ・が!」
エッグマンは自分の頭を指さしながら憎たらしく言う。
「エッグマン、僕に何か手伝えることはあるかな?」
テイルスが尋ねる。
「無い。もう少しで完成じゃ。司令室で待っとれ。」
エッグマンは相変わらず背を向けたまま言う。
ソニックとテイルスは顔を見合わせると踵を返した。
プシュ―――!
ソニック達が司令室に入るとナックルズ、シャドウ、シルバーがそれぞれ離れて座っていた。
「な……何か重々しい空気だね……。」
テイルスは苦笑いをする。
「……どうだったんだ?あいつの様子は?」
ナックルズは顔も上げずにソニックに尋ねる。
「ハイクか?問題無いぜ!」
ソニックは親指を立てる。
「ハイク……?それがあいつの名前か?」
シルバーが尋ね返す。
「いや、記憶を失ってたから俺が名付けたのさ!」
「名付けたって……お前なぁ……」
ナックルズは溜め息をつく。
プシュ―――――!!
ソニック達が話しているとエッグマンが司令室に入ってきた。
「完成じゃ。」
そして手に持っていた少し大きめの箱をドサッと音を立てて床に置いた。
「ずいぶん遅かったな。」
そう言いつつ、座っていた三人が立ち上がる。
そしてエッグマンが箱の中から一つ小さなレーダーを取り出す。
「これがマスターエメラルドの欠片のエネルギー反応を探知するレーダーじゃ。それぞれ一つずつしかレーダーに映らんが、それさえ注意して使えば問題無いじゃろう。」
「All right!」
「欠片は全部であと六つか。」
ソニックとナックルズが続けざまに言う。
「……ちょっと待ってくれ。一人足りなくないか?」
シルバーが周りのメンバーを見る。
「……俺にテイルス、ナックルズ、シャドウ、シルバー……確かに一人足りないな……」
ソニックがメンバーを数えて言った。
(ジ―――……)
全員の視線がエッグマンに集中する。
「……のわっ!?何じゃ!」
視線に気づいたエッグマンは思わず後ずさる。
「……皆、足りない分はエッグマンでいいよな?」
ソニックが静かに周りのメンバーに同意を求める。
案の定全員が頷く。
「な、な、な、なんじゃ貴様ら!?何で全員目を光らせてこちらに歩み寄ってくるのじゃ!?と言うかソニック!その笑みは何じゃ!?」
エッグマンが冷や汗を垂らし後ずさっていると――
「じゃあ俺が行こう。」
突如ドアの方から声が聞こえ、全員が振り返る。
「ハイク!?」
正体は頭から大きな毛の生えた朱色のハリネズミ――――ハイク。
「時間が無いんだろ?俺も行くさ。」
ハイクは装着した二本のベルトの片方腰のベルトから拳銃を取り出す。
「けど、君は……!!」
「怪我なら治った。もう動けるさ。」
テイルスの言葉を遮り、ハイクが言う。
「そ、そうじゃ!奴に行ってもらうんじゃ!」
エッグマンはホッと胸をなでおろした。
「……チッ」
「誰じゃ!?今舌打ちしたのは!?」
「All right!ハイク、ついてきな!」
そう言うとソニックは一人部屋を後にする。
「?」
疑問に思いながらもハイクはソニックの後を追った。
ソニックの後を追ってハイクがやってきたのは基地内の大きな広場のような所だった。
「よ〜し、ここら辺でいいだろう。」
ソニックは周りを見回す。
「一体何をするんだ?」
ハイクはずっと気になっていたことを尋ねる。
「戦う前には準備運動も必要だろ?」
そう言いながらソニックは屈伸する。
「……?」
ハイクは複雑そうな面持ちで首を傾げる。
「奴等と戦いに行く前に、まずお前の身体能力を見せてもらいたい。……この俺を捕まえてみな!」
ビュンッ!
そう言うとソニックは広場を音速で走り回る。
「え?」
ハイクは訳が分からないと言いたげな面持ちで周りを見回す。
ソニックは大きく跳躍したりしながら走り回る。
「どうした?早く来いよ!」
ソニックの声は聞こえるが、姿が見えない。
「……よし、捕まえてやる!」
ビュンッ!!
笑みを浮かべたハイクはそう言うと猛スピードで走り出した。
「おっ!?」
ソニックは乾いた口笛を吹く。
「行くぜ――――!」
「Come on!!」
ハイクは朱色の光、ソニックは青い光になって広場を走り回る。
ガバッ!
「おわっ!」
数分後、ソニックは足を取られ転倒した。
「捕まえたぜ、ソニック!」
ハイクも同じように転びながら笑顔を浮かべる。
「へへっ!なかなかやるじゃないか!」
二人は立ち上がる。
「二人とも何やってるの?」
テイルス達が建物の中から出てきた。
「まぁちょっとな。けど、これなら心配なさそうだ!」
ソニックはハイクに笑顔を浮かべ親指を立てる。
「勿論だ!」
同じようにハイクも笑顔を浮かべ親指を立てる。
「……?」
テイルスは一人首を傾げる。
「じゃあ、ここで一旦別行動だね。」
基地を出るとテイルスが無邪気に微笑んで言う。
「ああ、早くマスターエメラルドを復活させてやろうぜ!」
「フン、相手にとって不足はない。」
「そして必ずダークを倒そうぜ。」
ナックルズ、シャドウ、シルバーが続く。
「じゃあ、また後でな!」
ハイクも笑顔を浮かべる。
「Let’s move on!!」
ダッ!!
ソニックの掛け声と共に、六人はレーダーを持って別々の方向に走り出した。
説明 | ||
いつものようにソニックとエッグマンは戦っていた。ソニックが七つのカオスエメラルドを使いスーパーソニックへ変身し、誰もが勝負はついたと確信した… しかし、異変は起こった。 突然暴れ出し、ソニック達を攻撃するカオスエメラルド。一体カオスエメラルドになにが起こったのか? そして、禍々しい暗黒色のハリネズミ――「ダーク・ザ・ヘッジホッグ」。彼の目的は?そしてその正体は? ソニック達の新たな冒険が始まる!――― どうも、こたです。別のサイトで書いていたので知っている方は知っていると思われる作品を読みやすくリメイクしたものです。現在執筆中の『超次元ゲイム ネプテューヌmk2 〜Blue wind〜』の方もよろしくお願いします! |
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