IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第14話 |
二人の転校生がやってきた。
片方はドイツから、もう片方がフランスから、二人ともそれぞれの国の代表候補生であるのだが、問題はフランスから来た転校生なのだが。
「うそ……男?」
「綺麗な髪……」
「美形……」
フランスから来た転校生が着ている制服は一夏と同じ男子用の制服だった。
「シャルル・デュノアです、フランスから来ました。みなさん、どうぞよろしくお願いします」
見た目は女顔のブロンド髪を後ろで縛った美形男子。
背はそんなに高くはないので、女子から見れば守ってあげたくなるタイプの男の娘である。
「きゃあああああ!! 男の子よ! 男の子!!」
「しかも! 織斑君やキラ先生、シン先生とは別の守ってあげたくなる系!!」
「えっと……こちらに僕と同じ境遇の方が三人いると聞いたんですけど……」
誰も聞いていない。寧ろ男にしては妙に高い声が更に歓声を呼んでしまう結果になってしまった。
だが、ドイツから来た転校生は無言であった。
「…………」
「ラウラ、挨拶しろ」
「はい、教官……ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
千冬に言われて漸く自己紹介をしたが、非常に簡素であった。
以前、一夏はキラ達に千冬が一年かドイツで教官を務めていた事を話していた。
キラ達はドイツの転校生は千冬の教え子なのだろうと感じていた。
「以上……ですか?」
「以上だ」
取り付く島も無い位の反応に女子は如何反応して良いのか分からない様子であった。
だが、キラとシンはラウラから自分達と同じ軍人の匂いを感じていた。
ラウラは突如一夏の前まで歩み寄り、質問した。
「織斑……一夏だな?」
その質問に戸惑いながらも一夏は答える。
「ああ、そうだけど……」
その瞬間、ラウラは手を左へやり振りぬこうとした。
突然の事に反応できない一夏、だが、ラウラの手は振り抜かれる事は無かった。
「!?」
一夏の頬が後、数センチで当たるところだった。
強い力で腕を掴まれている事にラウラは気づいた。
渾身の力で振り解こうにも解けなかった。
「初対面の奴に頬を殴るのがお前の挨拶なのか?」
止めに入ったのはシンであった。
「離せ」
だが、シンは離さず、ラウラの手を強引に一夏から離した。
そして、一夏からある程度離れた時、力を緩めた、その瞬間、ラウラは手は振り解き後ろに下がった。
「暴力で訴えては駄目だ、其処からは何も生まれはしない」
シンはそう言うと教卓に向かおうとした。
「貴様に何が解る? 力が無ければ物事は解決しない」
ラウラの言葉にシンは背中を向けながら答えた。
「心の無い力は唯の暴力だ、力は強い信念で制御して初めて本来の成す、お前からは信念が感じられない、お前の言う力は中身の無い空っぽの力だ」
暫く教室は重い空気が支配していた、だが、千冬の一喝で収まった。
「次の授業は実習だ、全員着替えてグラウンドに集合しろ! 遅刻した者はグラウンド10周だ!」
そう言い残して真耶とキラ達と共に教室を出て行った千冬。
残された生徒達は皆一様に急いで着替える準備に入った。
「君が織斑君、初めまして、僕は」
「ああ、今はいいから、とにかく移動が先だ、女子達が着替え始めるから」
一夏はシャルルを連れて急ぎ足で教室を出た。
このまま更衣室に無事に辿り着くかに見えたが、シャルルの存在をどこで聞きつけたのか他のクラスの女子生徒が廊下に出てきて二人を見つけると大騒ぎし始めた。
「見て! 織斑君よ!!」
「転校生の男の子もいるわ!!」
「きゃぁあああ!! こうして二人並ぶと絵になる〜!!!」
女子生徒全員、一夏とシャルルを追いかけてきた。
流石に相手をしていると遅刻してしまうので、別の道から逃げる為に一夏はシャルルの手を取りスピードを上げる。
「あ、ああああの!? い、一夏!?」
「ごめんな、でも急がないと遅刻するから」
結局、シャルルは更衣室に着くまで一夏に手を握られていた。
シャルルの頬は薄く赤くなっていた。
そこで一夏とシャルルは簡単に自己紹介を済ませると、一夏は自分のロッカーを開け、制服の上着を脱いで着替えを始めた。
シャルルも着替えを始めようとしたのだが、上半身裸の一夏の姿が目に入り、顔全体を真っ赤に染めた。
「どうしたんだ、シャルル?」
「え!? い、いや! 何でも!?」
シャルルのたどたどしい態度に首を傾げる一夏、だが、気にしていては遅刻するので一夏はシャルルから目を離し、ISスーツに着替える。
「って、シャルル早えぇ! もう着替えちまったのか!?」
一夏が上を脱いだときにはまだ制服を着ていた筈のシャルルが、もう一度目を向けるとISスーツに着替え終わっていた。
「う、うん、まぁね……」
「早いな、まるで制服の下にISスーツを予め着込んでいたみたいだな」
「っ! ま、まさかぁ! あ、あははは……」
「まあ、兎に角急ごうぜ? もうすぐ授業開始時間だ、遅刻したら洒落にならん」
「う、うん!」
二人とも駆け足でグラウンドに向い、何とか授業には間に合う事が出来たのだった。
グラウンドには合同授業の為、1組と2組の生徒が集まって整列していた。
「よし、今日は実際にISに乗ってもらう事にする! その前にISの実戦演習をしてもらう」
生徒達の前に立ち、千冬が本日の実習内容を述べていた。
その後ろにはキラ、シン、ルナマリアが居たが、真耶の姿は見当たらなかった。
「あの織斑先生……実戦演習って言っても相手は誰が?」
「鳳か、それなら既に用意してある、実戦演習の相手を務めるのは……」
千冬がそこまで言った所で空からISの駆動音が聞こえてきた。
同時に、女性と思しき悲鳴も聞こえてきた。
「きゃあああああ!? どいてくださ〜い!!」
生徒達が声のする方向を見ると、そこにはラファール・リヴァイヴに乗った真耶が回転しながら落ちてきていた。
それも生徒達が密集している中に向っていた。
生徒達が慌てて離れていく中、キラとシンは咄嗟にISを起動して飛び上がると回転しているラファール・リヴァイヴの腕を掴む。
慣性によって少しキラとシンも回転してしまったが、キラとシンは冷静に制御しながら着地した。
「あ、ありがとうございます、ヤマト先生、アスカ先生」
「いえ、山田先生は大丈夫ですか?」
「あ、はい! それは勿論!」
「それは良かったです……」
キラとシンはISを解除して元の位置に戻るのであった。
「すまんなヤマト先生、アスカ先生、それで、実戦演習の相手は山田先生が務める……鳳、オルコット、二人で相手をしろ」
「わ、わたくしたち二人でですの!?」
「いやぁ、いくらなんでも2対1じゃ、ねぇ?」
「安心しろ……今のお前たちならすぐ負ける」
不敵な笑みを浮かべながらした千冬の宣言、それが二人のプライドに火を点けた。
セシリアも鈴もそれぞれのISを起動させると若干の怒りを滲ませた表情で戦う意欲を見せ、それを見た千冬が薄らとだが黒い笑みを浮かべた。
「そこまで言われるのでしたら仕方ありませんわ!」
「言っておくけど、手加減なんてしないからね!」
「お手柔らかにお願いしますね?」
千冬の合図と共に空へ飛び上がった三人を生徒達全員が眺めていた。
「デュノア、山田先生が使っているISについて説明してみろ」
「は、はい! えっと、山田先生のISはデュノア社製ラファール・リヴァイヴです、第二世代開発最後機ですが、そのスペックは初代第三世代にも劣らないものです、現在配備されてる量産ISの中では最後発でありながら世界第三位のシェアを持ち、装備によって格闘、射撃、防御といった全タイプに変更可能です」
流石はデュノア社社長の息子、自分の父親の会社が作ったISの事はよく知っている。
丁度シャルルが説明を終えた時、上空では決着が着いたのか、一際大きな煙の中からブルーティアーズと甲龍が纏めて落ちてきた。
「ま、まさかこのわたくしが……」
「あ、あんたねぇ! なに面白いように回避先読まれてるのよ!」
「鈴さんこそ! 無駄にバカスカ撃つからいけないのですわ!!」
ISを纏ったまま手足が絡まっている二人は中々動く事が出来ないみたいだが、解除すれば簡単なのだが、今の二人にそこまで考える余裕はなかった。
「これで諸君にも、教員の実力は理解出来ただろう、以後は敬意を持って接する様に、次に、グループになって実習を行う。リーダーは専用機持ちがやる事、では分かれろ!」
専用機持ちはセシリア、鈴、シャルル、ラウラ、一夏の5人だ。
一夏のグループには箒を含めた女子数人、シャルルにも同じ位で、セシリア、鈴が少しすくない位、ラウラのグループには誰も来なかった。
「馬鹿者、それぞれのグループから何人かボーデヴィッヒのグループに移動しろ」
渋々だが女子の何人かがラウラのグループに移動して、それぞれのグループに学園の量産機が渡される。
一夏、鈴、ラウラの所は純日本製の打鉄、セシリア、シャルルのグループにはフランスのデュノア社製ラファール・リヴァイヴが渡された。
「それじゃあ、先ずは実際に装着してみようか……順番は出席番号順で」
この後、授業は特に問題なく進み、一夏も珍しく授業中だというのに千冬に怒られる事はなかった。
だが、キラが担当したグループである生徒が訓練機でしゃがまずに降りてしまった。
その為、コックピットに届かない事態になってしまった。
キラはISを起動させ次の生徒をお姫様抱っこで運んだのだが、その生徒は鼻血を出しながら気絶してしまった。
鼻血で気絶した生徒の表情は幸せに満ちていたのは言うまでもない。
説明 | ||
第14話です。 プロローグ http://www.tinami.com/view/463196 設定集(ネタバレあり) http://www.tinami.com/view/502954 |
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コメント | ||
ある作品と同じような文章が…(ティース) 最後のシーンはキラじゃなく、一夏ですね(kaji) |
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