英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 337 |
〜アクシスピラー第四層・外〜
「フフ……なるほど。これならば……上に進む資格があるかもしれないわね。」
戦闘不能になり、地面に跪いたルシオラは立ち上って、口元に笑みを浮かべて言った。
「……姉さん。ひとつだけ訂正させて。あたしは姉さんを恨むことなんてできないわ。あたしの元を去ったことも、座長を殺めてしまったことも。ただ……どうしようもなく哀しいだけよ。」
「シェラ姉……」
「シェラザードさん………」
シェラザードの答えを聞いたエステルとペテレーネは心配そうな表情で見つめた。
「………シェラザード……」
一方ルシオラもシェラザードを見つめた。
「それに、やっぱり信じられない。姉さんがそんな理由で座長を殺めてしまっただなんて……。あたしたちのことを思って辛い選択をした座長のことを……」
「………………………………。……ふふ……さすがに誤魔化せなかったか。」
シェラザードの話を聞いたルシオラは皮肉気に笑って言った。
「え……」
「さっきの話にはね……続きがあるの。あの人を説得しようとしてそれでも決意が固いと知った時……私は、ずっと秘めてきた想いをあの人に打ち明けてしまっていた。」
「!!!姉さんが……座長のことを……。……そう……だったんだ……」
ルシオラの話を聞いたシェラザードは信じられない表情をした後、頷いた。
「ふふ、親子ほども離れていたから想像できなかったでしょうね。そして……それはあの人にとっても同じだった。娘のように大切に思っているけど想いに応えることなど考えられない。一時の感情に流されず、相応しい相手を見つけるといい……。……そう、諭すように拒まれたわ。」
「………………………………」
「拒まれたこともショックだったけど、私はそれ以上に怖くなってしまった。私を惑わせないように……相応しい相手を見つけられるように。あの人が、本当の意味で私から離れていってしまう可能性が。」
「あ……」
「……そう悟った瞬間、私の奥底で何かが弾けていた。……離れていかないように……永遠に私のものにするために……。その囁きに従って……あの人をこの手にかけていた。」
「……ルシオラ……姉さん……」
ルシオラの真実を聞いたシェラザードは悲痛そうな表情でルシオラを見つめた。
「自分の中に潜んでいた闇に気付いたのはその時からよ。私は、その闇に導かれるように”身喰らう蛇”の誘いに応じて……いつの間にか……こんな所にまで流れてきてしまった。フフ、そろそろ潮時かもしれないわね。」
「え……」
ルシオラの言葉を聞いたシェラザードが驚いたその時、ルシオラはシェラザード達の方に身体を向けたまま、飛び降りた!
「姉さん、だめええっ!」
ルシオラが落ちる瞬間、シェラザードは鞭を振るって、ルシオラの片手に鞭を巻き付けた!
「くっ……」
しかし、重みに耐えられず、シェラザードも塔から落ちそうになった!
「ふふ……なかなか鞭さばきも上達したじゃない。最初の頃はあんなに不器用だったのにね。」
一方ルシオラは片手に鞭を巻き付けられた状態で感心していた。
「シェラ姉!」
そしてエステル達もシェラザードに急いで近寄った。
「エステル、ヨシュア……。少しの間でいいから……このままこの娘と話をさせて。」
「で、でも……!」
「ルシオラ……貴女は……」
「は、話なんかしてる場合じゃないでしょう!?引っ張り上げるから掴まってて!」
ルシオラの頼みにエステルは戸惑い、ヨシュアは静かに呟き、シェラザードは血相を変えて言った。
「ねえ、シェラザード……。あの人を手にかけた事は今でも後悔していないけれど……唯一、気がかりだったのが貴女の元を去ったことだった。貴女がどうしているか、それだけが私の心残りだった。でも、私がいなくても貴女はしっかりと成長してくれた。自分の道を自分で見つけていた。」
「姉さん……お願いだから……」
ルシオラの言葉にシェラザードは返さず、悲痛そうな表情をしていた。
「それが確かめられただけでもリベールに来た甲斐があったわ。本当は貴女に私のことを裁いてほしかったのだけど……。さすがにそれは……虫が良すぎる話だったわね……」
「……お願いだからちゃんと掴まっていてよおっ!」
自嘲気に笑っているルシオラにシェラザードは悲痛そうな表情で叫んだ。
「……”闇の聖女”。」
「………何でしょうか?」
「シェラザードに色々教えてくれて、ありがとう………これからもシェラザードのお世話………お願いね。」
「シェラザードさんは私にとっても大切な弟子。その願い………承りました。」
ルシオラの頼みにペテレーネは静かに答えた。
「フフ、それを聞いて安心したわ………良き師達に出会えてよかったわね………………さようなら……私のシェラザード。」
そしてルシオラは鉄扇を取り出して、シェラザードの鞭を切って、落下して行った!
「ルシオラ姉さあああんっ!」
リーン………
シェラザードが叫んだ時、鈴の音が寂しげに響いた。
「……………………………………」
そしてシェラザードはしばらくルシオラが落下した場所を見つめていた。
「シェ、シェラ姉……」
「シェラさん……」
「…………大丈夫………………。……あの姉さんが落ちたくらいで死ぬはずない。いつの日かきっと……きっと……また会えるわ。」
心配そうな表情で見つめているエステル達にシェラザードは静かに答えた。
「う、うん……きっとそうよ!だって、あんな凄い式神とか転位術とか使える人なんだもん!絶対に…………絶対に大丈夫だってば!」
「ふふ……そうね……。………………………………」
エステルの言葉にシェラザードは寂しげに笑った。
「シェラザード、無理はするな。一旦、アルセイユに戻った方がいいぞ。」
そしてジンは真剣な表情で言った。
「ううん……その必要はないわ。……ここでへこたれてたら姉さんに笑われてしまうから……。だから、今は先に進みましょう。」
「シェラ姉……。うん……分かった。」
「それじゃあ……端末を解除しましょう。」
そしてエステル達はゲートのロックを解除した後、一端態勢を整える為にアルセイユに戻って、エステル、ヨシュア、ティータ、レン、シェラのメンバーで先を進み、また同じようにゲートが先を阻んでいたので、外に出て端末を探すと今度はノバルティス博士がパテル=マテルと共に待ち構えていた。
〜アクシスピラー第五層・外〜
「ふむ、やはり来たか。」
「あ………!」
声が聞こえた方向に向かうとノバルティスとパテル=マテルが端末の前にいた。
「博士………貴方か。」
ヨシュアは武器を構えてノバルティスを睨んだ。
「ふむ、あの3人を退けて来るとは。フフ、パテル=マテルのいい”実験”になりそうだ!」
「ふんだ!今度こそ、その人形兵器をブッ壊して、あんたを捕まえてあげるわ!」
ノバルティスの言葉にエステルは鼻を鳴らし後、ノバルティスを睨んだ。
(……あれが、”パテル=マテル”ね。……ティータ、シェラ将軍さん、さっきの打ち合わせ通り……頼んだわよ。)
(ハッ。)
(う、うん………けど本当にやるの?自分の神経と”パテル=マテル”の神経を繋いで、制御するなんて……)
小声のレンの言葉にシェラは頷き、ティータは不安そうな表情でレンを見つめた。
「うふふ、ティータは心配性ね。心配してくれてありがと。でも、大丈夫よ。………それになんだか”パテル=マテル”はレンにとってなくてはならない存在に感じるのよね……」
「レンちゃん………うん、わかった!」
レンの言葉にティータは力強く頷いた。
「カファルー!」
「グオオオオオオ―――――ッ!!」
一方エステルはカファルーを召喚した!
「パテル=マテル!現段階で出せる最高の出力で敵対象を殲滅しろ!」
「…………………!」
それを見たノバルティスは何かの装置らしきものを操作して、パテル=マテルを起動させた!
そしてエステル達はパテル=マテルとの戦闘を開始した…………!
説明 | ||
第337話 | ||
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