IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第四十六話 〜動き出す戦士達〜
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〜花月荘〜

 

「何でだよ、何でクロウを探しに行っちゃいけないんだ!?」

 

「落ち着け織斑、待機していろと言ったはずだ」

 

場所は花月荘の作戦会議室。一夏を含めて専用機持ちは全員が揃っていてその部屋で一夏が千冬に食ってかかっている。他の生徒達は顔を俯かせるばかりで声を出そうともしない。そんな中で再び一夏が大声を上げる。

 

「クロウより作戦が大事なのかよ!!千冬姉はクロウを探しに行っちゃいけないって言うのか!?」

 

「一夏……」

 

鈴が悲しそうな表情で声を漏らす。鈴が知っている限り、一夏がこんな風に声を荒げて千冬に食ってかかるなんて初めてのことだった。

 

「何度も言わせるな。専用機持ちは自室で別命あるまで待機、さっさと行け」

 

「千冬姉!!!」

 

「一夏、行きましょう……」

 

「離せよ鈴!クロウは俺を庇ってくれたんだ!!だったら早く行かなきゃいけないだろ!!」

 

「一夏さん、落ち着いてください。クロウさんのISは解除されていなかったと聞きましたわ。元々ISは宇宙空間での活動を想定して作られたもの、空気が無い場所でもISが展開状態であれば生きられます」

 

セシリアも加勢して一夏を落ち着かせる。しかしセシリアの言葉も届かず、一夏は更に暴走しだした。

 

「でもそれはエネルギーが続く限りだろ!?だったらすぐに行かないとダメじゃないか!!」

 

「何度も言っている。福音は既に当該空域から移動しているがジャミングでも掛かっているのか、ブルーストのISの反応がキャッチ出来ない。お前もさっさと部屋に戻れ」

 

「行こうよ、一夏」

 

「行くぞ、一夏」

 

「……くっそぉぉ!!!」

 

千冬が一夏を冷たく突き放す。シャルロットとラウラも一夏に部屋から出ていく様に促す。一夏もこれ以上何を言っても無駄だと悟ったのか、大声を上げながら物凄い勢いで部屋から出ていった。

 

「箒、行くわよ」

 

茫然自失となっている箒の腕を掴んで部屋から出ていく鈴。最後にセシリア、ラウラ、シャルロットの三人が千冬に一礼しながら部屋を去った。最後に残ったのは千冬ただ一人。

 

「……」

 

部屋に残った千冬はしばらくは黙っているだけだったが、唐突に拳を振り上げ目の前の机に振り下ろした。体全体を震わせながら、嗚咽の声を漏らす。

 

「何故だ、何故お前はあんな行動をした。お前らしくないぞ、帰ってきたら思いっきり引っぱたいてやる。だから──」

 

そこまで言うと言葉が途切れ、急に力が抜けたかの如くぺたんと畳に座り込んでしまう。口を開けば出てくるのは嗚咽の言葉ばかりだった。

 

「早く、戻ってきてくれ。頼むから……クロウ……」

 

座り込んでいる千冬の頬にはゆっくりと一筋の涙が流れていた。

 

 

 

 

 

 

〜海岸〜

 

(私のせいだ。私のせいで一夏とクロウを危険に晒し、あまつさえクロウは行方不明……)

 

花月荘に程近い海岸、箒はそこを一人でとぼとぼと歩いていた。既に時刻は夕方となっていて夕日が箒の顔を優しく照らしているが、その足取りは何処か頼りなく、覚束無い。

 

(一夏の言った通りだった。私は力を手に入れて浮ついていたんだ。私がしっかりしていればあんな事には……)

 

箒は先の戦闘を再び思い返す。

 

 

 

 

 

≪作戦中止!各員は撤退しろ!!≫

 

「千冬姉、クロウはどうすんだよ!!」

 

「あ……ああ……」

 

クロウが海に落下した後、千冬の怒号が通信で届く。その命令に異議を唱える一夏だが、箒は呆然としているだけだった。福音も何故か攻撃をしてこないで空中で静止している。

 

≪お前達だけでも撤退しろ!何の為にブルーストがお前達を守ったのか考えてみろ!!≫

 

「くっ、箒!!」

 

一夏が箒を促すが、箒はあまりのショックに放心状態となっていた。一夏は急いで箒の腕を掴んで空中を駆ける。福音は二人が去っていくのを見つめると明後日の方向に飛んでいってしまった。

 

 

 

 

(私が不甲斐なかったから、一夏を危険に晒し、クロウを死なせてしまった……)

 

一夏と千冬はあの場でははっきりとクロウが死んでいるとは言わなかったが、箒はもう既にクロウは生きてはいないだろうと思っていた。その思いが自責の念に拍車をかける。そのまま数分歩いていると唐突に声がかかった。

 

「こんな所にいたのか、探したぜ」

 

「一夏……」

 

いつの間にか一夏が目の前にいた、しかし特に話そうともせずに脇を抜けていこうとする箒の腕を一夏が掴んで引き止める。

 

「待てよ、こんな所で何やってんだよ」

 

「……どうでもいいだろう、放っておいてくれ」

 

「クロウの事はどうすんだ?」

 

その名前を聞いた途端、箒の体がビクッと震える。箒の反応に構わず一夏は続けた。

 

「俺は行く、一人でもな」

 

「わ、私は……もう……戦いたくない、ISを……使わない」

 

「箒はそれでいいのか?クロウがここにいたらこう言うと思うぜ?“一回の失敗くらい気にすんな”ってな」

 

「だが、だが!!クロウは私のせいで!!」

 

「そう思うなら、何で戦わないんだ?」

 

頬を叩かれたかの様に箒の表情が一変する。怒るわけでも、詰るわけでもなく一夏は言葉を続けた。

 

「俺は戦う。クロウは無事だって信じてるし、何より俺がそうしたいって思うから」

 

「私は……私は……」

 

「もう一度聞く、本心を言ってくれ。箒はどうしたいんだ?」

 

うつむいていた箒の顔がゆっくりと上がる。その瞳には決意の色が浮かび上がっていた。

 

「こんな私でも、もう一度チャンスが与えられるなら、私も、戦いたい!!」

 

「じゃあ一緒に行こうぜ、箒」

 

そこまで言うと一夏がニカッと笑う。そして箒の手を握って旅館への道を歩き始めた。箒も一夏の隣に並んで歩く。

 

「なあ一夏、一つ聞いてもいいか?」

 

「ん?何だ、箒」

 

「何故お前はそこまで自分の意思を貫けるのだ?」

 

「俺はただ信じているだけだよ。クロウがあの位で死ぬなんて思ってないし、何より」

 

そこで一夏は隣にいる箒の方を見る。その顔からは確信と闘志が見て取れた。

 

「“兄”をやられて黙ってる“弟”はいないだろ?」

 

「……お前はいつも私を救ってくれるのだな」

 

 

「箒、何か言ったか?」

 

「いや、何も言っていない」

 

「??」

 

そのままゆっくりと歩いていく二人。箒の顔にはいつの間にか先程まであった迷いが綺麗さっぱり消えて、代わりに一夏と同じような新たな決意が見て取れた。

 

 

〜花月荘・男子部屋〜

 

「皆、箒連れてきたぜ」

 

「遅いわよ、一夏」

 

扉を開けると、広い部屋にセシリア、鈴、シャルロット、ラウラがノート型の電子端末を囲んで座っていた。一夏と箒もその輪に加わって話が再開される。

 

「さて、一夏と箒も帰ってきた事だ。作戦を説明する」

 

そう言ってラウラが端末を操作する。すると画面が変わり、周辺の海域の様子が映し出された。ラウラは表示された地図の一点を指差して説明を始める。

 

「情報によれば福音はここ、一夏達と交戦した場所から3km程離れた高度200m地点で静止している。これは私の部隊が自国の衛星を使って調べた確かな情報だ」

 

「でも、何で福音は動かないのかな?暴走してるんだったら今頃日本の上空くらいにいてもおかしくないと思うけど」

 

「それは分からん。クロウが出撃前に言っていたがやはりこの事態は何者かが引き起こしていると見るのが妥当かもしれん。説明を続けるぞ」

 

シャルロットからの質問に答えて説明を続けるラウラ。今度は作戦の説明に入った。

 

「我々だけで行うこの作戦の目的は福音を無力化した後、クロウを探し出す事だ。教官達がクロウの救出に動こうとしないのも恐らく福音が健在だからだろう」

 

「……そう考えると俺、千冬姉にひどい事言っちゃったな」

 

「アンタは後で謝っておいた方がいいと思うわよ。それよりラウラ、アンタもいいの?」

 

「ん?何がだ?」

 

「アンタの尊敬する千冬さんの命令を無視してこんな事して、正直言ってアンタがここまで積極的にやるなんて思ってなかったんだけど」

 

若干含みを持たせる様な言い方で鈴がラウラに問いかける。当のラウラは「何だ、そんな事か」と鼻で笑うと答えを返した。

 

「もちろん今でも織斑教官は尊敬している。しかしクロウから教えてもらったのだ、私は私になればいいと。ならば私は自分の意思に従うまでだ」

 

「そう、悪かったわね。試すような言い方して」

 

「いや、構わん。確かに転入してきた時の私は間違った見方で教官を尊敬していたからな。話を続けるぞ」

 

再びラウラが端末を操作する。今度は一夏達六人のISのスペックデータが映し出された。

 

「このデータは一夏と箒を除いてパッケージをインストールした状態の物だ。何かおかしな所があれば言ってくれ」

 

ラウラが三人に目を向けるが三人とも首を振って否定の意を示す。それを見てラウラは話を続けた。

 

「それでは続けるぞ。まず私とセシリアが後衛、一夏と箒が前衛、鈴とシャルロットが遊撃となるがシャルロットは後衛寄りの、鈴は前衛寄りの遊撃というのを覚えておいてくれ」

 

そこで鈴とシャルロットから同時に手が上がる。二人は顔を見合わせてシャルロットが目で促すと、鈴が発言した。

 

「それって私達の武装を考えた上で?」

 

「そうだ、データによれば鈴のパッケージは高機動戦闘、シャルロットのパッケージは防御力が上昇するもの。だとすれば鈴は主に前衛に参加しつつ龍砲による射撃を。シャルロットは中距離で射撃をしながらセシリアを敵の攻撃から守って欲しい。セシリアのパッケージは攻撃力の上昇と共に機動力も上がるが防御がおざなりだ、私はパッケージによってシールドが追加されているので問題は無いだろう」

 

「分かったわ。シャルロット、アンタは?」

 

「僕もいいよ、聞きたかった事は鈴が聞いてくれたし」

 

二人が納得した事で次にセシリアが手を上げた。

 

「私が守ってもらう必要性をあまり感じないのですが、シャルロットさんの防御は必要なのですか?私を守ってもらうより、攻撃に参加してもらった方が良い気がするのですが?」

 

「この作戦のもう一つの目的は“全員が無事に戻る”という所にある。確かにセシリアのISは機動性能と一点突破の攻撃力に優れているが、反面防御が削られている。そのための処置だ」

 

「分かりましたわ。シャルロットさん、お願いしますね」

 

「うん、任せてよ!!」

 

「さて、次にフォーメーションの確認と流れを説明するぞ」

 

端末を操作するラウラ。こうして六人は千冬の預かり知らぬ所でクロウ救出と打倒福音の為に動き出すのであった。

 

説明
第四十六話です。
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コメント
一夏認め発言かぁ、早くも難関突破?www(氷狼)
>何故だ、何故お前はあんな行動をした。お前らしくないぞ、  確かに、クロウに援護防御覚えさせるのはスキル枠的に勿体ないからなあ。 そんなメタなこと抜きにしてもあの場での最善は庇うことよりも福音に突撃することだったろうに、何を思っていたのやら。(senri)
スパロボにおけるブリーフィング的な回。なんかクロウさんは一夏からも慕われてて、お義兄さんとなる道を無自覚で進んでいる気がwww にじファンの頃にリ・ブラスタはRとBの両方使えると言ってましたので初登場がどっちになるのかも楽しみです(フジ)
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IS インフィニット・ストラトス SF 恋愛 クロウ・ブルースト スーパーロボット大戦 ちょっと原作ブレイク 主人公が若干チート ハーレム だけどヒロインは千冬 

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