夏の日−My far first love−
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それはもう、追いかけても追い付けないほど

遠い遠いひとつのモノガタリでした。

 

誰も居ない、ただ静かな部屋の真ん中では

ひとりの老人が眠っておりました。

眠りながらある夏を思い出しておりました。

 

ゆびきりげんまんと約束した少女には

あれから一度も会えなかった。

 

まるでウソのような

まるでヒカリのような

まるでユメのような

約束した少女には、どんなに願っても一度も会えなかった。

 

あの日最後に頬を撫でてくれた母親に、

すべてがそっくりだったあの少女。

恨んでいるんじゃなくて、

悲しいわけでもなくて、

ただもう一度ふれていたい、小さなモノガタリ。

 

さようなら

 

そっと閉じた目蓋の縁からは、暖かいしずくが流れたのでした。

いつの日にも流せなかったしずくが、その日

すべての記憶をいとおしむように

すべての記憶をなつかしむように

しわをつたって、

ゆっくりと流れてゆくのでありました。

 

「やっとあえたね」

 

 

ひとりの老人が眠っておりました。

通り過ぎたすべての日々を追いかけるように、

ひとりの老人は次の時に別れを告げ、眠っていくのでありました。

 

「やっとあえた」

涙が落ちた枕もとから、

花びらが落ちたような声が聞こえたような気がしました。

 

ちりんとひとつ、

貰った風鈴が鳴りました。

 

 

説明
夏の日3部作最終部です。女の子と出会ってから数十年後、遠い未来の最期の時にふたりが再び出会います。 この3部作にお付き合い下さった方、本当にありがとうございました!
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夏の日3部作 初恋 ほんわか 不思議  童話 再会 

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