IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第四十八話 〜舞い踊る雪〜
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「ここ、どこだよ?」

 

いつの間にか一夏は海岸をあてもなく歩いていた。先程自分はISを纏って福音と戦っていたはずなのに気づいたらここにいて、しかもいつもつけていた白式の待機状態である((腕輪|ガントレット))も消えている。歩みを止める事もなく歩いているとふと歌声が聞こえた。

 

「ラ、ラ〜♪ラララ〜♪」

 

「!誰かいるのか!!」

 

その歌声を聞いて歩く速度を早める一夏。しばらく歩くと波打ち際で歌っている少女の姿が見えてきた。

 

「ララ〜♪ラ〜ララ〜♪」

 

その白いワンピースを着た少女は砂浜に腰を下ろしながら歌っていた。両足は打ち寄せてくる海水にぱしゃぱしゃと打ち付けながら誰に聴かせるわけでも無く歌っている。

 

(綺麗だな……)

 

声をかける事も忘れ、しばしその声に聞き入る一夏。そこには波打ち際に佇む一人の少年と、砂浜に座り込む一人の少女しかいなかった。どれくらいの時間が経ったのか、いつの間にか歌うのを終えた少女はゆっくりと立ち上がる。それを見て一夏も慌てて声をかけた。

 

「お、おい君。ここって──」

 

「ねえ、あなたは何を望むの?」

 

話も聞かず急に一夏の方を振り向いて微笑みと共にそんな言葉を一夏に投げかける少女、不意を突かれた一夏はどもってしまう。

 

「え?お、俺はその……。そうじゃなくて、俺が聞きたいのは──」

 

「聞かせてください、貴方の望みを」

 

「っ!?」

 

急に背後から聞こえてきた声に反応して振り向くと、そこには白い甲冑を身に纏った人物が立っていた。顔は甲冑に包まれていて分からないが、声色から女性だと分かる。

 

「おいあんた!ここどこだよ!!」

 

「安心してください。ここは隔離された私達だけの場所。ここで悠久の時を過ごそうとも、現実では一瞬です」

 

正直言って彼女の言っている事があまり理解出来ないが、取り敢えず納得した一夏。元々他人を疑うのは得意ではないのでその言葉をあっさり信用する。

 

「そ、そうなのか。それであんたは?誰なんだ?」

 

「私の質問に答えてください、織斑 一夏」

 

(この声どっかで聞いた気がするんだよなあ、どこだっけ?)

 

一夏が首を捻っているにも関わらず、甲冑の女性はお構いなしにしゃべり続ける。しかし一夏の疑問についてはあっさりと答えが導き出された。

 

「聞かせてください、貴方の望みを」

 

「あ、あーっ!!あんた、あの時の声!!」

 

そう、一夏が気を失う瞬間に聞いた今のセリフと一字一句同じ言葉を喋ったあの声。その声と今目の前にいる女性の声が同じなのだ。しかし女性はそんな大きな声を上げている一夏には構わず、まるで壊れたゲームの((NPC|ノン・プレーヤー・キャラクター))の様に同じ言葉を繰り返す。

 

「聞かせてください、貴方の望みを」

 

「え?俺の望み、俺の望み……まあ強くなりたい、かな」

 

「何故、何のために貴方は力を欲しますか?」

 

一夏が答えを言うとすぐさま次の質問が一夏に投げかけられる。一夏はその質問に疑問を感じる事もなく答える。

 

「守りたい仲間がいるから、一緒に戦いたい人がいるから、かな」

 

「一緒に戦いたい人、ですか」

 

甲冑の騎士が一夏の言葉を反芻する。

 

「凄く強い人がいるんだよ、俺なんか足元にも及ばない位に。今はその人に守られてばっかりだけどいつかは一緒に戦いたいんだ、そんで仲間もその人も守れるように強くなりたい。その人の背中を預けてもらえる位に心も体も強くなりたい」

 

「なるほど。それが貴方の望みですか」

 

女性が言葉と共に柔らかく笑う。顔は隠されているが、言葉からして女性は確かに笑っていた。その笑いは侮蔑や嘲笑ではなく、優しさや慈しみの感情を秘めている物だった。

 

「ああ」

 

全てを話した一夏はどこか晴れ晴れとしていた。すると今まで黙っていた一夏の背後にいるワンピースの少女が唐突に言葉を発する。

 

「じゃあ、行かなきゃね」

 

「え?」

 

「それでは、貴方に幸福があらん事を」

 

その言葉を最後に甲冑の騎士は煙が消えた様にいなくなってしまった。海岸に佇んでいるのは最初と同じ、二人だけ。

 

「さあ、行きましょう。私と一緒に」

 

そう言って片手を一夏に伸ばしてくる少女。疑いもなく一夏はその手を取った。

 

「なあ教えてくれ、君の名前は──」

 

その瞬間、目の前が薄れていく。今度は目の前が真っ白になりながら一夏の意識が飛んでいった。

 

「ええ、いいわよ。私の名前は──」

 

一夏が最後に見たのは、恐らく一夏の質問に答えて自分の名前を喋っている、少女の唇だった。

 

 

 

 

 

 

 

「──はっ!!」

 

「一夏ぁ!!!」

 

一夏が意識を取り戻して一番に聞こえたのは、自分の身を心配する幼馴染みの言葉だった。

 

「箒っ!!」

 

「いい加減に離れろっ!!!」

 

一夏に当たらない様に側面から雨月での突きを放つ。放たれたレーザーが福音を襲うも、福音は直前に一夏との鍔迫り合いを止め、空高く舞い上がっていた。

 

「一夏、大丈夫か!!」

 

「ああ!!」

 

すぐさま箒が一夏に近づく。距離を取った福音は何故か攻撃をしてこないで宙に浮いているだけだった。

 

「どうする!?このままでは──」

 

「大丈夫だ、箒。俺を信じてくれ」

 

「……一夏?」

 

その言葉に何処か既視感を覚える箒。一夏は福音を仰ぎ見ながらゆっくりとしゃべり続けた。

 

「大丈夫、やってやるさ。俺はこんな所で立ち止まっていられないんだ。いつかクロウと一緒に、皆を守りたい。皆と一緒に戦っていきたいから」

 

「一夏……」

 

一夏の言葉は出鱈目に口にした言葉ではなかった。その言葉には確かな確信が宿っていて、その意味は次の瞬間明らかになる。

 

「だから頼む!俺に力を貸してくれ!!白式!!!」

 

一夏が白式の名を叫んだ瞬間、一夏の体を中心に白く輝く球状のフィールドが形成された。近くにいた箒はそのフィールドに押し出される形で一夏と距離を取る。上空にいる福音はその様子をじっと見ているだけだった。

 

「い、一夏……」

 

「うぉぉぉぉおおおお!!!!」

 

球体から聞こえてくるのは一夏の叫び声だけ。そしてその球体がいきなり動き始めた。福音へと向かいながらぼろぼろとフィールドが自壊を始める。フィールドは福音と切り結ぶタイミングで完全に壊れ、その中から出てきたのは──

 

「これ以上、俺の仲間は誰一人やらせねえ!!!」

 

刀と羽で鍔迫り合いを繰り広げている新たな力を纏った、織斑一夏だった。両手で雪片を握り締めながら、四基に増えたスラスターの出力を利用してそのまま押し切ろうとする。

 

「おらあっ!!!」

 

鍔迫り合いに堪えきれなくなったのか、福音が弾き飛ばされる。空中で姿勢を整えると頭から生えている羽から光弾が絶え間なく一夏に襲いかかった。

 

「それはもうくらわねえ!!」

 

そう言って一夏は左腕を掲げる。

 

≪雪羅・シールドモード、展開≫

 

一夏の頭の中で音声が流れると左腕に装着されている新たな武装が動き出す。それは大きな光の膜を形成すると、光弾を受け止める。しかし薄い膜では到底受けきれないはずの弾丸を受け止めているのを見て、箒は目を丸くしていた。

 

「やられてばっかじゃねえ!!来い、粉雪!!!」

 

一夏が何かの名前を叫ぶと、一夏の周囲に四つの物体が出現する。その外見は丸っきり小さい雪片弐型だった。

 

「あれは……」

 

「切り裂け、粉雪!!」

 

一夏が指示を下すと、その兵器らしき物は刀身をスライドさせてエネルギーの刃を出す。そして空中を物凄い勢いで飛ぶと、上下左右から福音を攻撃し始めた。

 

「まだまだ!!」

 

一夏もシールドモードを格納して今度は雪羅を大型の爪のような形で展開させた。するとそれぞれの爪の先端から雪片と同じようなエネルギーの刃が現れる。右手に雪片、左手にクローモードの雪羅を構えて一夏は福音に突撃した。

 

「うおおおお!!!」

 

四基の粉雪、そして一夏も攻撃に参加した事で福音は防戦一方だった。羽から光弾を放つために動きを止めれば粉雪に襲われ、回避行動中に一夏へ向けて光弾を放つも進化した白式には当たらない。結果として逃げる福音、追う一夏の構図が出来た。しかしその状態がいつまでも続くはずがなく……、

 

「くそっ!!」

 

数分後、一夏が悪態をつくと同時に、粉雪が光の粒子となって消える。エネルギーの残りを考慮した結果、一夏が自分の意思で粉雪の使用を止めたのだった。

 

(どうする?このままじゃ……)

 

雪羅のシールドモードでは、相手のエネルギー攻撃を自分のエネルギーに転用できるのだが、それもずっと続く訳ではない。防戦に回ったが最後、攻め切られて劣勢に追い込まれるのは一夏の方だろう。何せ相手は軍用ISである、いくら第二次形態移行を果たした白式とはいえ、元々の設計思想からして異なっているのだ、いつまでも一夏に分があるとは限らない。

 

(どうする?どうすれば……)

 

 

 

 

 

そんな一夏と福音の戦闘を箒は歯がゆい思いをしながら見ていた。

 

(私は何をしているのだ?何のためにこの力を手に入れた?一夏と共に戦うためだろう!!)

 

頭をよぎる考えは自分があの場に立てていない悔しさと、力を欲する願いだった。

 

「頼む、紅椿!私の願いに答えてくれ、私に一夏の背中を守る力を!!!」

 

すると紅椿が箒の言葉に反応した。展開装甲が音を立てて展開されると、そこから黄金色の粒子が溢れ出る。その様子を驚きの目で見つめていた箒だが、ふと目の前のモニターの文字に視線を向ける。

 

『絢爛舞踏:発動』

 

そこに書かれていたのは新たな((単一仕様能力|ワンオフアビリティー))、箒に与えられた一夏の隣に並び立つ為の更なる力だった。

 

「感謝する、紅椿。共に行くぞ!!」

 

その言葉と共に、空を飛ぶ紅椿。目指すは隣にいたいと願う人間の元だった。

 

 

 

「一夏っ!!」

 

「箒!!」

 

雪羅のクローモードで福音を追いかけていると、箒から声がかかって上空で停止する。箒は片手を伸ばしながら一夏にゆっくりと近づいていった。

 

「受け取れ!!!」

 

一夏がその手を握ると一瞬、一夏の視界が黄金色に染まった。すると今まで虫の息だった白式から吹き出る余剰エネルギーが復活する。

 

「エ、エネルギーが回復した!?箒、これ──」

 

「細かい話は後だ!とにかく行け!!」

 

「お、おう!!」

 

エネルギーの心配が無くなった一夏は再び粉雪を展開、福音へ攻撃させると同時に今度は雪羅をブレードモードで展開。二刀流の構えを取って突撃した。箒も機体を金色に染めながら、二本の刀を構えて飛び出した。

 

「うおおおおっ!!」

 

「はああああっ!!」

 

「La♪」

 

 

 

説明
第四十八話です。
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コメント
というか、まだ箒が完全に反省していませんね……一夏と戦う、その気持ちが今回の事を引き起こしたのですが…まぁそれれが箒の一途な所であり、いい所で、そして悪い所でもあるんですがね。続き待ってます、頑張ってください^^(氷狼)
文章の最後のがブツ切りになってる気がするんですが気のせいだろうか?この作品だと一夏はクロウの影響で第2形態の武装が豊かになったなぁ……粉雪はブラスタのSpigotを意識してるんすかね。しっかり一夏も活躍していて何よりです。このまま決着しそうではあるがクロウが復帰してないしまだ一波乱あるんでしょうか?続きが楽しみです(フジ)
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IS インフィニット・ストラトス SF 恋愛 クロウ・ブルースト スーパーロボット大戦 ちょっと原作ブレイク 主人公が若干チート ハーレム だけどヒロインは千冬 

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