ViVidに転生した。うん、そのはず………。 その8
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 数日後、今度はエリオとの模擬戦だった。

 

「たぁああああ!」

 

「っく……!」

 

 

 エリオが振り下ろしてきたストラーダを、魔力付与した両手でどうにか((真剣白羽取り|エッジ・キャッチング))。 手を叩く高い音が響く。

 

「…………え?」

 

 防御ではなく掴んで止めるという俺の予想外の行動にエリオが戸惑っている間に、俺は蹴りを叩き込む。

 

 反応したエリオは柄を楯にして防ぐが吹っ飛ばされた。

 

(体勢を立て直す前に………!)

 

 攻撃を仕掛けようとするが、それを見越していたのか吹き飛ばされながら迎撃態勢を既にエリオはとっていた。

 

「ストラーダ、((第二形態|フォルムツヴァイ))!」

 

『Dusenform!』

 

 デューゼン……ベルカ語で『飛翔』を意味する。

 

 その名の通りエリオは一直線にすっ飛んでくる。ベルカ式特有の三角形の魔法陣を展開し、ストラーダに付いたブースターがさらに咆哮する。

 

(勢いでぶち抜く気か……なら!)

 

 魔力を右腕に集める。右手を手刀の形にして、周りに凄まじい魔力を込めた魔力刃を展開。狙うは相手と同じ一点集中突破。

 

 

 

「ディバイン……」

 

「スピーア……」

 

 

 

 魔力刃と、ストラーダの尖端部が衝突する。

 

 

 

「セイバァアアアアーーーー!」

 

「アングリフ!」

 

 

 

 俺の右手に形成していた魔力刃が砕け、指向性の魔力爆発が起きてエリオを飲み込むのと、

 

 ストラーダの尖端部が俺の魔力刃を突き破って俺に直撃するのは、ほぼ同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「試合終了、エリオの勝ち!」

 

「ま、今回も紙一重だったけどな」

 

 

 

 

 

 気絶後、今回はすぐに回復した。なのはさんとヴィータさんによる指摘が加えられるのだが……

 

「おいレーヴェ」

 

「何ですか?」

 

 ヴィータさんの指摘は鋭かった。

 

「最後の技、まだ未完成だろ」

 

「……流石です。よく分かりましたね」

 

 俺は素直に認める。

 

「スバルのディバインバスターと同じ零距離攻撃………魔力刃を砕かせ、その破片を爆発させる。……確かにカウンターとしちゃ悪くないがまだ甘いだろ。決め技としてもいまいちだ。あれじゃ魔力の爆発の衝撃が他に逃げちまう」

 

 お察しの通りで。そう思いつつ言い訳をしてみる。

 

「一応、完成形については考えているんですよ。ただ制御がまだ不安定なんで……」

 

「暇な時には面倒見てやるよ。教え子の訓練に協力してもらったしな」

 

「ありがとうございます!」

 

 おお、ラッキー!

 

 

 さらに嬉しい知らせがあった。

 

 

「そういえばレーヴェ、お前の魔力光から察するに、炎熱変換は得意だと思うのだが」

 

「へ?ああ、シグナムさん。先天資質は持ち合わせていませんから、普通の魔力制御ばっか覚えてますけど」

 

「ふむ、なら私がそっちを見よう。なに、気晴らし代わりだ」

 

 というわけで最近ではいろいろ機動六課ではお世話になっている。いいのかこれ。

 

 

 

 

 で、昼食へと向かう時。

 

「あ、そうだ、シグナムさん、ヴィータさん。代わりと言うかお願いと言うか……」

 

 もういいや、開き直っちゃえ。とことん頼ろう。

 

「「ん、なんだ?」」

 

 二人は同時に振り返った。

 

「デバイス見せてくれませんか? 古代ベルカ式のデバイスってのに興味がありまして……というか作りたいな、と思ってるんですけど……。勿論整備もします」

 

「ああ、そういやお前、デバイスマイスターなんだっけか」

 

 俺の言葉にヴィータさんは納得していたが、シグナムさんは疑問を浮かべた顔のままだった。

 

「しかし、興味がある……というのは分かるが、『作りたい』とはどういうことだ? お前は古代ベルカ式を使わないのだし、使用者は局でも希少だ。作ってもあまり意味が無いと思うのだが」

 

 

 

 ……………あー。気づかれた。

 

 

 

「………友達に一人いるんですよ、((真正古代|エンシェント))ベルカ式の使い手が。クラスメイトでよく話もするんです」

 

 勿論アインハルトのことである。

 

「へえ、そりゃ珍しいな!」

 

 ヴィータさんが驚いてる横で、シグナムさんが納得していた。

 

「なるほど、それでか………」

 

「はい。使い手が少ない以上、作り手も少ないので……。そいつデバイス持ってないんですよ。だから出来れば俺がいいものを作ってやりたいな……なんて。資料だけだと限界があるし、実機見られると嬉しいな、と思いまして」

 

「……ずいぶんと友達思いじゃねえか」

 

「そういうことなら私達も喜んで協力しよう。主はやてや、シャマルにも頼んでみるといい。事情を知れば協力してくれるはずだ」

 

 

 

 ………いいことって続くもんだなー!

 

 

 

 俺がほくほく顔で昼ご飯を食っている時のことだ。

 

 俺が副隊長二人と話している間に発せられたという、ヴィヴィオの「なのはママとフェイトママどっちがつよいの?」

 

 という言葉がきっかけで、フォワード陣は激論を交わしていた。

 

「やっぱなのはさんじゃない? 航空戦技教導隊の教導官で、負傷ブランクがあったとはいえ10年飛び続けた歴戦の勇士なんだし。エースオブエースは伊達じゃないだろうしね」

 

「でもフェイトさんだって事件の現場に向かい続けて、手荒な現場でも陣頭に立って解決してきた一線級の魔導師ですよ!」

 

「空戦ランクはなのはさんもフェイトさんも同じS+ですし」

 

 ああ、漫画の話でこういうのあったな。最終的な「答え」とかも知ってたりする。

 

 と、対岸の火事のごとく思ってたらとばっちりが来た。

 

 

 

「………アンタはどうなのよ?」

 

 

 

「へ?」

 

 

 

「なのはさんとフェイトさん、どっちが強いと思う? あたし達はほら、色眼鏡で見てるかもしれないし」

 

 ここで答えを教えるべきか、否か。……やめとこ。こういうのってもっとちゃんと自分で考えなきゃいけないことだろうし。

 

「そうですね……彼女達が働き始めたの俺が生まれるより前ですし、実際『どっちが強い』って断言できるほど二人の戦闘を見てないのではっきりとは言えないんですけど」

 

「「「「『けど』?」」」」

 

「個人的には、フェイトさんの方に強くあってほしいですね。同じバトルスタイルですから」

 

「あくまで願望なんだ……」

 

「っていうか強いって言ったら副隊長達だっていますから、誰が強いかなんて分かんないんじゃないですか? みんな戦い方違いますし」

 

 

「「「………あ」」」

 

 

 本来ティアナさんが言うはずだった台詞を口にしながら俺がオレンジジュースの入ったコップを傾けたとき、ティアナさん以外の三人が口を開けていた。

 

 

 で、俺の言葉が引き金になって駐機場……ヘリとかが停めてあって、整備するための場所……でスバルさんとアルトさんが司会になってフィワードとメカニック陣で『第一回機動六課で最強の魔導師は誰だか想像してみよう大会』が勃発した。というか二回目あるのか?

 

 皆で調べてみようということになり、何となくスバルさんについていってみた。暇だったし。

 

 端末を使って調べることに没頭しているスバルさんををぼうっと眺めていると、

 

 

 

「レェーヴェ君ッ!」

 

 

 

 後ろ、耳元から声をかけられた。

 

 

 

 

「ひぎゃああああああああああ!」

 

「な、なにっ! 何があったの、ってひゃあああああああああ! ななななのはさんっ!」

 

 

 

 

 飛び上がって驚いた。俺の叫び声にスバルさんがびくっと反応して振り向いた。で、俺と同じ反応だった。

 

「そ、そんなに驚くことは無いんじゃないかな? レーヴェ君もスバルも……」

 

 なのはさんはちょっと傷ついてるっぽかった。が、すぐ気を取り直したようだ。

 

「それで二人とも、グリフィス君に聞いたんだけど、隊長達で誰が一番強いかに興味があるんだって?」

 

「はぁ、俺はそんなでもないんですが……」

 

「すみません、その……休み時間中のちょっとした雑談で……」

 

 俺達はなんとなくお茶を濁す感じだったのだが、なのはさんはにっこり笑って言った。

 

 

「いいよ別に。よく聞かれることだしね。ね、スバル、レーヴェ君。こんな問題聞いたことない?」

 

 

「「はい?」」

 

 続けて出た問題にスバルさんは首をひねることになる。俺? 原作知ってるから大丈夫だ。

 

 

 

「『自分より強い相手に勝つためには、自分の方が相手より強くないといけない』」

 

 

 

「あ、えと……聞いたことないです」

 

「シスターシャッハ達との訓練の時に近いことは聞いてます。言葉が若干違いますけど」

 

 俺達がそれぞれ答えると、

 

「じゃあレーヴェ君は先に答えあわせね」

 

 

(念話でお願いね)

 

 

 なのはさんの声が頭の中で響く。

 

(はい。総合力で勝る敵を倒すためには、自分の特化して強い部分を用いなければならない……すなわち、どんな時も相手の短所、弱点を最大限に利用して、かつ、自分の長所を生かそうとしなければならない。だから、自分にとっての得意部分を誰にも負けないというくらいの自信を持てるくらい磨き上げることを忘れてはダメだ。……って感じなんですけど)

 

(……うん、いい感じ。あ、それ教えないでね。ヒントくらいならあげてもいいけど)

 

(わかりました)

 

「うん、レーヴェ君は合格」

 

「えぇっ!」

 

「いや、以前聞いたことがあるだけですってば」

 

 驚いた声を上げるスバルさんに一応言い訳をしてみる。

 

「じゃあスバル、フォワード陣の皆で相談して、『この言葉の矛盾と意味をよく考えて答えなさい』。答えが出たら訓練の時にでも教えてもらうから。あ、レーヴェ君が出すのはヒントまでだよ」

 

「はーい」

 

「そんなぁ………」

 

 スバルさんの情けない声が部屋の中で響いた。

 

 

 

 

「((スバル|自分))より強い((なのはさん|相手))に勝つためには、((なのはさん|相手))より((スバル|自分))の方が強くないといけない………?」

 

 

 ティアナさんが呻いている。ヒントはまだ教えていない。年下に最初から教えられるのは「なんかプライドが許さない」そうだ。

 

「えええ? ただの言葉遊びじゃないのよね?」

 

「ええまあ」

 

「っていうかティア? なんか大それたこと考えてない?」

 

 ティアナさんの苦悶の声に俺があっさりと頷くとティアナさんはますます頭を抱えた。スバルさんの苦笑しながらの声も聞いてない。

 と、そこでエリオがしゅたっ、と手を挙げた。

 

「あ、僕わかりました! 強い相手に勝つためには、訓練重ねて相手より強くなればいいんです!」

 

「ハイ外れ。それだと倒してるのは自分よりも弱い相手になるし、そう簡単に強くなれたら苦労しない」

 

「うう………」

 

 俺は容赦なく否定。エリオも頭を抱える組に入った。

 

 そこにヴィータさんが通りがかる。

 

「おお、お前ら。108行きだがちと先行しててくれ。訓練開始時間にはあたしも入ってるからな」

 

「「「「はいっ」」」」

 

 了解の意を示し、行こうとするフォワード陣を俺は少しだけ呼び止めた。

 

 

「ヒントです。その……訓練とかじゃなくて、純粋な模擬戦でスバルさんがなのはさんに勝ちたいとき、ティアナさんがシグナムさんに勝ちたい時、どうやって戦うか考えてみてください」

 

「……わかったわ。考えてみるわね」

 

「ありがとね、レーヴェ!」

 

「はい! 訓練頑張ってきてください!」

 

 ぶっきらぼうなティアナさんと優しいスバルさんの声に俺は元気よく返事をした。

 

 

 

 

 

 

 ヴィヴィオと一緒に夕方まで遊んでから、俺は帰った。そうそう、はやてさんとシャマル先生のデバイスも見せてもらえることになった。

 

 ………さて、フォワード陣はちゃんと答えを見つけられたかな?

 

 

 

Side スバル・ナカジマ

 

 

 ガジェットが出てきたので訓練が中止になり、状況確認とガジェットの撃破が終わってから帰ってきた後。

 

「…………と、そんな感じなんですが」

 

 あたしは目の前のなのはさんに向かって答えを告げた。

 

 ……ギン姉の考えを聞いてから、レーヴェのヒントをちゃんと考えた結果だ。

 

「………ふーん。ちなみにレーヴェ君はどんなヒントを出したの?」

 

「えっと、『あたしがなのはさんと、ティアがシグナムさんと模擬戦をする時、どういう風に戦おうと考えるか』………って」

 

 そのあたしの一言に、なのはさんはにこりと微笑んだ。

 

「……そっか。じゃあそれが正解かどうか、これから実地で確かめていかなきゃね」

 

 …………え?

 

「なななのはさんっ!? 正解は教えてくれないんですかッ!?」

 

「明日の朝練で多分わかるよ」

 

「えええぇぇぇ!」

 

 後日、レーヴェにも聞いてみたけど、「俺が教えるのはヒントだけですから」と、やっぱり教えてもらえなかった。………うぅ。

 

説明
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魔法少女リリカルなのはシリーズ ヤンデレ バトル 

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