キリトSide

騎士団本部に着いた俺達はすぐさまヒースクリフの元へと通された。

そこで俺達を待っていたヒースクリフから驚きの報告を聞いた。

「偵察部隊が全滅っ！？」

「っ！？」

アスナが驚愕の声を上げ、俺は思わず絶句してしまった。

「ああ。迷宮のマッピング自体は一人の犠牲者も出さずに完了したのだが、

　ボス部屋に入った偵察部隊と連絡が取れなくなり、

　他の部隊がボス部屋の様子を見にいったのだが、

　プレイヤーどころかボスの姿も見当たらなかったらしい。

　『生命の碑』からは偵察部隊の者達の名が消失していたよ」

つまりは見えない敵なのか。だが、おかしい。

一人がやられればせめて他の者達は転移結晶で逃げられるはずだが……まさか！

「『結晶無効化空間』なのか…。ボス部屋は…」

「おそらくは…。74層のボス部屋もそうだったと聞く。

　もしかしたらこの先の層の全てがそうなのかもしれない…」

「そんな……」

俺の呟きにヒースクリフが応じ、アスナは顔色を青くしている。

これは生存率を大幅に下げる事態だ。だが、戦わなければクリアはできない。

「実は、既に複数のギルドが合同でボス攻略を行う事が決まったのだ。

　できれば君達にも参加して貰いたい。どうだろうか？」

ヒースクリフの物言いからして、どうやら参加の是非は俺達次第という事のようだ。

けれど、最初から悩むつもりなどない。

「分かった、参加させてもらう」

「わたしも参加します…」

俺もアスナもほぼ、即答で答えた。俺達が生き抜くならばこれしかないからな。

「ありがとう。ボス攻略戦は三時間後に広場に集合となっている。準備を怠らないように頼む」

「「ああ(はい)」」

話し合いが終わり、俺とアスナは騎士団本部から外にでた。

「アスナ…、君は俺が絶対に守る」

「キリトくん…？」

「正直に言うと…。ここに来た時から嫌な予感がしているんだ。いつもの感じの奴が…。

　一緒に行くなとは言わない……。でも、アスナは絶対に守ってみせる」

俺の嫌な予感は本当に良く当たる。自分でも嫌になるくらいに。

でも、今回はそれを覆してみせる。生きるために…。

「わたしも……キリトくんを守るよ。絶対に…」

「ああ……」

俺達はお互いに手を握る。俺はそれで少しは心が落ち着いたが、アスナは震えていた。

「アスナ？」

「あのね、キリトくん…。前に一定時間だけ公式に電源を落とされたことがあったのを覚えてる？」

「覚えてるさ。恐らくあの時、俺達の体は病院や施設に移されたはずだ」

「キリトくんもそう思うんだ…。わたしもね、そう考えたの。

　普通の家で眠ったままの人を看護できるはずないから。それと同時にわたし思ったの。

　わたし達の体が病院に移されて、眠ったままっていうことは……」

アスナは言い終わる前に言葉を詰まらせてしまった。代わりに俺がその言葉を紡ぐ。

「俺達の体は点滴などの栄養でなんとか維持されている。

　だが、いくら元が健康体でもそれには限度があって、限界がある……か？」

アスナは頷いた。つまりこの世界で生きるにしろ、元の世界の体に限界がくれば、どのみち死んでしまう。

タイムリミットがあるのだ。俺達の体には……。

「そんな風に終わらせはしないさ…。俺自身も終わるつもりなんてない。だからアスナ…今は戦おう…」

「……うん」

俺とアスナはひとまず休憩をとってから、アイテムや装備を整えて75層の迷宮前の広場へと向かった。

キリトSide Out

To be continued……