魔法世界に降り立つ聖剣の主 (改訂版) |
5:親の凄さと自分の小ささは二、三十代過ぎて初めて分かる
開戦直後、戦場となった国境には轟音と悲鳴が木霊していた。
その中心にいるのは言うまでも無くあの四人だった。
混沌とした戦場に於いてもそのデカ過ぎる存在感と人間大災害ヨロシクの人外戦闘能力を余すことなくぶちまけて、文字通りに敵兵団を吹き飛ばして行く。
そりゃぁもうどっかの某大佐のセリフの如くゴミのように蹴散らされてるよ。
その災害地にはやっぱりあの四人がいて、本陣から見て一番近い位置にいたカイさんが素手で敵軍を圧倒していた。
「これしきの戦力で攻め切れるなどと……舐めるなよヒヨッコ共が!!」
カイさんが魔力を込めた右ストレートを繰り出し、腕が振り絞られると同時に圧縮した膨大なエネルギーを解放する。
「喰らえい!“ジェェットマグナァァァァム”!!!」
身体強化と魔力放出の同時使用による竜巻のような衝撃波が生み出され、眼前の敵兵はミキサーに掻き混ぜられる食品の如くきりもみ回転しながら跡形も無くなって行く。
続いて地面を蹴って数メートル上空に跳び上がると、右脚を突き出して落下する。
「“蹴極!ゲシュペンストキィィック”!!!」
単純な重力による落下運動に魔力を放出しての強力なブーストで砲弾級の速度と破壊力を有した某お面バイク乗りみたいな蹴りが敵中のド真ん中に炸裂し、その周囲が大きく爆ぜた。
恐らく足先に魔力を込めていたんだろう。それを落下と同時に開放することで蹴りの威力を増大させた……まぁそれにしても規格外な破壊力だが。
カイさんの戦闘スタイルは基魔術で強化した四肢による格闘戦が主流であり、身体の一部分に蓄積した魔力を打撃と一緒に叩き込む攻撃を得意とする。
文字通りの“魔力拳”と呼ばれるこの技は、拡散させれば見ての通り衝撃波を生み、収束させれば対象は一人になるものの、打撃による衝撃と共に体内に侵入させた魔力の爆弾みたいなモノで内外から圧殺するというエグい技だ。
それらを極限まで極めたカイさんだからこそ、あんな風に踵落としで地割れを起こし、地面に叩きつけた拳でクレーターを作るなんて真似が出来るんだ。
一方カイさんがいる地点から離れた場所では、3mはあろうかという嘘みたいにデカい剣を振り回す赤い服を纏った人物がいた。
言うまでもなく俺の剣の師匠であるゼンガー・ゾンボルトさんだ。
「眼前の敵は全て打ち砕くのみ!覚悟せよ!」
気合の入った宣言と共に大きく後ろに引いた刀身を真一文字に右へと振り払うと、魔力など一切帯びていない純粋な突風…否、爆風が吹き荒れ、ゼンガーさんの前方180度圏内にいた人間が漏れ無く吹き飛ばされる。
更に頭上に高々と剣を掲げ、一拍置いて力を込めてから純粋な剣による一撃を放つ。
「この一刀、受け切れるか!?“斬艦刀・疾風怒濤”!!!」
地平線の彼方まで響きそうな雄叫びと共にゼンガーさんは刀身を地面に叩きつける。
地面が大きく抉れ裂けると同時に巨大な剣風が前方を這うように突き進み、進路上にいた兵士達は一切の例外なく真っ二つになって行った。
全くこの人は、長さも横幅も分厚さも普通の剣の5倍以上はあるんじゃないかっていう得物を軽々と扱う所を見てると本当に人外なんだなって思うよマジで。
知ってる人にはお馴染みの大剣「参式・斬艦刀」をぶん回して人間台風としか形容出来な暴れっぷり。これが一切魔法に頼ってない素の強さだって言うんだからもう嫌になる。
だって俺が最大出力で身体強化+魔力放出+光速攻撃で繰り出した一撃でもあんなにはならないよ流石に。
相変わらずの化物自染みた力量に戦慄していると、再び爆音が響く。
二人とは違う地点で起きたそれは、緑色の鎧を纏った大柄の男によって何度も何度も繰り返される。
「どうした!連邦の者には弱卒しかおらんのか!?次々とかかって来るがいい!このシュバル・レプテールが一兵たりとも残さず屠ってくれるわ!!」
相手方の返答を待つまでもなく両手に携えた一対の太刀「二天」を振るいながらシュバルさんが突進する。
普通の日本刀に比べれば明らかに巨大なそれを片手で扱う膂力もそうだが、力任せに振り回してる訳じゃないってのがまたタチが悪い。
「受けよ!我が“二天一閃”を!!」
右の袈裟斬りを繰り出した後の左の切り上げ、そして左脚を軸にしての横一回転してからの振り下ろしによる三連撃が立て続けに見舞われ、一振り一振りが数十人規模で敵の命を刈り取っていく。
更にこの場でシュバルさんは別の獲物に持ち帰る。
とは言っても、シュバルさんは一見、二天しか携えていないように見えるが、実際はそうではない。
突然二天が光を放ち、その形状を別のモノに変貌させていく。
それは幅の広い緑色の刀身を持った巨大な二振りの槍「双角」だった。
シュバルさん含め、この場で戦っている人達は皆「デバイス」という魔法使いの杖みたいな物を持っており、それによって魔力の制御や増幅を行っている。
皆が使ってるのは正確には「アームドデバイス」って名前なんだがまぁそこはどうでもいい。
デバイスは魔力の制御云々として以前に単純な武器としての使用も可能で、予めインプットされていたパターンに形状や機能を変化させられるのだと言う。
シュバルさんが見せたのもこの機構だ。
「雑兵ばかりでは話にならぬ!所詮この程度の烏合の衆と言うならばご当主の御手を煩わせるでないわ!この未熟者共がぁ!!」
鬼のような形相で言い放つシュバルさん。っていうかあれは既に鬼だったな。
恐れおののく敵の眼前で、二つの双角の石打を繋ぎ合わせて一つの大槍とすると、それを頭上で回転させ始める。
直後に、双角の刀身が左右に展開し、先端部から魔力で形作られた刃が伸びる。
それらは回転するごとに更に巨大になって行き、やがて広範囲に広がって次々と敵軍を切り裂いていく。
そして一頻り敵を掃討した後、シュバルさんは双角を地面に突き立てて再び吠えた。
「これしきの雑兵でこの東の地を抜こうなどとは片腹痛し!少なくともこの十倍は連れて来なければ相手にすらならんわ!!」
いやいや十倍ってあなた…流石にそんな数は相手に出来ないでしょう現実的に……出来ないよね?
何だかこの三人見てると本当に十倍来ても事足りそうだから怖いよホント。
「でも一番凄えのはやっぱり…」
視線を敵陣の奥に向ける。
閃光と硝煙で遮られたその場所にあっても尚、その姿を簡単に四人できてしまうほどの圧倒的な姿に、俺はただ無言で視線を送り続けるしかなかった。
巨大な突撃槍を片手に敵陣を縦横無尽に駆け回り、連携も陣形も木の葉を吹き散らすような容易さで打ち崩していく父の姿は、いつにも増して雄々しく見えた。
槍を突き出して目にも留まらぬ速さで突撃し、進路上の敵を貫いていく。
だが、鋒に触れた敵はそのあまりの速度と破壊力に貫かれるのではなく“捻じ切られ”ていくのだ。
音速並の速度と人外の身体能力に膨大な魔力、更には愛槍「星槍ディアムド」の破壊力の前に人間の身体など掠っただけでも挽肉になってしまう。
現に親父が通った道を一拍遅れて突風が吹き荒れ、それはソニックブームのように進路外にいた連中に叩きつけられる。
さながら不可視のハンマーのような風の壁は敵兵を容赦なく薙ぎ倒していく。
更に一度敵中から離脱した時点で元来た進路を睨み付け、大きく槍を引いて力を溜め、しかる後再び突撃する。それも先程とは比べ物にならないような凶悪な破壊力を持ってだ。
その疾走はただ突き進むだけで大地を抉り大気に悲鳴を上げさせる。
既に陣形をズタズタにされていた連邦軍はそのほとんどの戦闘力を奪われ地に伏すか跡形も無くなっていた。
たった四人の男によって蹂躙される光景を見て俺はただ一つの感情に打ち震えていた。
それは戦いの恐ろしさでもなければ人が死んでいくことへの嫌悪感でもない。
正確に言えばそう言った感情も確かに抱いてはいるのだ。ただそれ以上にいますね湧き上がってくる熱い思いが大き過ぎるだけのこと。
「あれが“騎士”って奴なのか……」
高見で踏ん反り返ってる訳でも無く、遠くからチマチマ戦う訳でもなく、自ら敵陣に切り込んで武勇を示す。
その恐ろしくも凛々しい姿に、俺は展望の眼差しを送るばかりであった。
今まで何で気付かなかったんだろうか?俺はこんなにも凄い人達に師事していて、それ以上に凄い男の息子だったことに。
そこで俺は今朝聞いた言葉をふと思い出す。
「力の意味、強者の義務…か。」
国や民の為に先人に立ち、人々を守る。恐れることなく突き進むその真っ直ぐな意志はとても尊くて気高い。
自分にもああなれるだけの力と術があるのかと思うと心が踊った。
勝鬨を上げる騎士達の中心で槍を天に掲げる親父の姿を見て、俺は確信した。
親父のように気高く雄々しく勇猛に生きることこそが俺の行くべき道であることを。
あとがき
前のがあまりに酷かったんで修正しました。
まぁ暗に挫折フラグは立てたままですが……
とにかくこんな酷い事態には今後ならないように頑張ります
あとアンケートの解答もお願いします。(詳細は1ページ前で)
説明 | ||
相変わらず投稿ペース遅いですね〜すいませんm(_ _)m あとアンケートの答えも待ってます |
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次回も楽しみにしてます!(ryuujin5648) | ||
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