ソードアート・オンライン(アニメ版)の第14話を完全な物語の終わりとして他作品(そらのおとしもの)の劇でやってみた |
この世界はネット世界。けれどただのネット世界ではない。
脳をネットに直接つなげられる世界である。
だが、あるゲームがある人物によりゲームでの死が現実の死に繋がるものへと変貌した。
あるゲームの名は『ソードオブ・ワールド』。そしてそれを死のゲームにした人物の名は秋山総司郎。
これはその死のゲームに挑む多くのプレイヤーの一人である、桜井智樹(プレイヤー名トモキ)と風音日和(プレイヤー名ヒヨリ)の物語である。
ソードオブ・ワールド
最終章 終わる世界
ソードオブ・ワールドは全部で100階あり、その75階でボスを倒したもののまた多くのプレイヤーが死んでいった。
「今回で何人死んだんだ?」
智樹が攻略メンバーの一人に聞く。
「15人……」
「50人中、15人だと……」
「攻略メンバー200人中、15人……」
「これからボスが強くなるってのに、これでゲームクリアできるのかよ……」
攻略メンバーに不安がよぎる。
そんな中、トモキは一人の男を見る。
その男の名はフラスト。茶色の短髪に黒銀の鎧を着た青年。
攻略ギルドに所属しない、完全ソロのプレイヤー。
しかしその実力は攻略メンバーの中でも最強とされている存在だった。
現に今の戦いでも唯一、HPが半分以下にもなっていない。
だが、そんなフラストにトモキはある疑念を抱いていた。
(いくらなんでもHPが減ってなさすぎる)
トモキは少し前にフラストと一騎打ちを行っており、結果はトモキの敗北。
トモキはその敗北した一騎打ちの時にある違和感を感じていた。
(あいつの戦闘スタイルは剣と盾の一般的なもの。
けど、あの時、あいつは明らかに俺以上のスピードを出していた)
トモキの戦闘スタイルは特殊なスキルで生まれた二刀流。
二刀流が相手では盾持ちはどうあがいてもスピードでは劣るのだ。
それなのにもかかわらず、フラストがトモキに決め手を入れた時にトモキの速度を超えていた。
(まさか……)
トモキはまさかと思いながらもあることを実行しようとしていた。
それはなんと、トモキがフラストに斬りかかるという行為だった。
「トモキ君!?」
このゲームの世界でトモキと知り合い、恋人になった少女ヒヨリがトモキの行動に驚きを隠せない。
ヒヨリだけでなく、その場にいた全員である。
しかしもっと驚くべきことがあった。
それはフラストがトモキの攻撃を防いだのだ。
それだけならまだ普通なのだが、防いだ方法が普通ではなかった。
なんとフラストの顔面に透明の壁が現れ、それがトモキの剣を防いでいるのだ。
しかもその壁にはこんな文字が書かれていた。
『破壊不可能』
それはその場にいる全プレイヤーを驚かせるには十分なもの。
「これってどういう……」
「RPGにおいて、ただ他人のを見ているだけじゃつまらない。
そうだろ、秋山総司郎!」
「秋山総司郎?」
秋山総司郎。このゲームの製作者であると同時に、このゲームをクリアまで脱出不可能、ゲームでの死は現実での死と直結させた元凶の名前である。
「ふふふ、ははははは!」
フラストは大いに笑う。
「よくわかったな」
するとフラストの姿が乱れ、髪は腰の長さまで伸び、白髪と化し、黒銀の鎧はなくなり、黒いマントへと変わった。
この姿は最初に全ユーザーに姿を見せた時の秋山総司郎のものであった。
「いつ気付いた?」
「おかしいと思ったのは、お前と戦った時だ。
あの時、お前の反応速度が明らかに速くなり過ぎていた」
「あの時はお前のスピードに釣られて、ついつい、システムの力で加速したが……、失敗だったか」
それでも秋山は笑う。
「貴様ーーーーー!!」
プレイヤーの一人が秋山に斬りかかろうとした時であった。
秋山がモニターに手をやっているのか、ボタンを一つ押すような動作をすると、そのプレイヤーは突然倒れる。
「な……なんだこれ…………」
そのプレイヤーがアイコンを見ると見たことないアイコンが出ていた。
「それは超特殊麻痺だ。俺が任意で解かない限り、解けない」
秋山はまたボタンを押す動作をする。
するとトモキ以外のプレイヤー全員が倒れだす。
トモキ以外の全員が同じ超特殊麻痺になったのだ。
「トモキ……君」
「ヒヨリ! てめえ! この場で皆殺す気か!?」
「そのつもりはない。それだったら一気に消去しているさ」
秋山の言う通りである。
秋山は言うなればこのゲームの創造主。その気になれば、全プレイヤーを消すのもたやすいことである。
「本来なら最上階の数階手前で俺は正体をばらすつもりだった。
……だが予定を前倒しだ。俺の正体を見破った褒美だ。
トモキ、お前が俺に勝てばゲームクリアとして、全員このゲームから解放してやる。
そのためにお前だけ超特殊麻痺は与えてない。どうする? 乗るか?
乗らなかったら、俺は最上階で待つだけだ。まあ、その前にお前を含めてプレイヤーが皆死ぬ可能性はないとは否めないがな……」
「……っ」
これは秋山が戦えと言っているに等しい。
「安心しろ。さっきの絶対防御は解除した。
お前のHPに合わせて、俺のHPも減らした。
つまり一撃が命取りだ。どちらにもな」
「そうか……」
トモキは剣を構える。
「戦う前に一つ約束してくれ」
「何だ?」
「俺がもしここで死んでも……」
トモキは倒れているヒヨリの方を見る。
「ヒヨリが自殺出来ないようにしてくれ」
「トモキ君!?」
「いいだろう」
秋山はそのような操作をする。
「そうそう。俺の戦闘スタイルだが……」
秋山は剣と盾を投げ捨てる。
「お前に合わせて……」
秋山は再びボタンを押す動作をする。
すると秋山の両手から日本の刀が出てくる。
「二刀流だ。しかも二刀の名に違わぬように刀だ」
「上等だ……」
トモキはこのゲームで体験した今までのことを思い出す。
がむしゃらに戦い、経験値を上げた。
最初の階で最初のリーダーと呼べる男にゲームクリアを託された。
一時入ったギルドのメンバーを皆死なせたこともある。
少女の手助けをしたこともある。
剣の素材を取りに行くために職人の少女と一緒に出掛けたこともある。
ヒヨリと出会い、ヒヨリと仲良くなり、そしてヒヨリと恋人になり、ゲームをクリアしたら現実でも会い、恋人になろうと約束した。
それから二人の子供として一緒にいた子供がシステムの一部で、また出会えることを夢見た。
今まで死んだ人達のため、自分の為に死んでいった人達のため、この場に倒れている人達のため、この場にいないプレイヤーの人達のため、そしてヒヨリとヒヨリとの約束のためにも、トモキは負けらない。
「はあああああ!!」
トモキと秋山は同時に駆け出した。
「ふん!」
トモキの顔に秋山の刀がかする。
まだかすった程度では致命的なダメージにならない。
だがトモキは焦っていた。
(こいつはこのゲームを作った奴だ。スキルを知り尽くしている。
こいつの前にスキルは使えねえ。だったらあいつの知らない俺独自の動作で倒すしかねえ!)
トモキと秋山の剣と刀がぶつかる。
何度も何度も互いの武器がぶつかる。
しかし徐々に秋山が押し出しており、トモキは攻撃をかすり続けていく。
(くそ! こうなったら一か八かだ!!)
トモキは隙をついて、スキルを使おうとした。
秋山が右手の刀で智樹の左手の剣を叩き斬った時である。
(今だ!)
トモキは自分の最大のスキルを使って、右手の剣で秋山を斬ろうとした。
だが……。
「甘いぞ!」
秋山はその攻撃を紙一重でかわした。
「なっ!」
「お前ががむしゃらな攻撃の中で俺の隙を突いてこれを使うことは読めていた!
これで終わりだ!」
秋山の左手の刀が上からトモキに斬りかかろうとした時であった。
「だめーーーーーーー!!」
なんと超特殊麻痺で動けない筈のヒヨリがトモキの前に出ていき、秋山の攻撃を受けた。
「ヒヨリ!?」
「何!?」
これにはトモキだけでなく、秋山も驚いた。
「ヒヨリ!!」
「ト…モ…キ……く…………」
ヒヨリは砕け、消滅した。
「ヒヨ……」
トモキがヒヨリの名前を呼ぼうとした瞬間、秋山の右手の刀が智樹の腹部を刺した。
「今のは俺も驚いた。だが今の俺の隙を突かなかったのはお前のミスだな。
俺の勝ちだ」
刺している間、トモキのHPが減っていく。
(ここで死ぬんだな。俺……。
それもいっか。ヒヨリも死んじまったし……)
トモキが死を受け入れようとした時であった。
突如とトモキの意識が白い空間に飛んだ。
(なんだこれ?)
トモキの目の前に広がる空間に何にもなかった。
いや、そこに一人の影が現れた。
それはなんと消滅したばかりのヒヨリの姿だった。
「トモキ君」
「ヒヨリ、俺……」
「トモキ君はまだ死んでないよ」
「え?」
「トモキ君、勝って」
そしてトモキの目の前の空間が消え、元のゲームの世界の視点に戻る。
「(俺は……ヒヨリのためにも…………生きてやる!!)うおおおおおおおおおお!!」
トモキは剣を落とし、右手で刺さっている秋山の刀を掴む。
「貴様……まだ……!?」
「秋山総司郎ーーーー!!」
秋山が左手の刀でトモキを斬ろうとしたが、トモキは叩き折れた左手の剣を秋山の額に突き刺した。
「き………さ…………ま…………ま……さ………」
秋山は倒れ、消滅。
「………」
そしてトモキも倒れ、消滅した。
トモキが目を開けるとそこには夕焼け空が広がっていた。
「俺……死んだのか?」
「トモキ君」
自分を呼ぶ声がしたので、トモキは起き上がる。
するとその横にはヒヨリがいた。
「ヒヨリ」
「トモキ君!」
ヒヨリがトモキに抱きついた。
そして二人は迷うことなくキスをする。
トモキがヒヨリの唇から離れる。
「ヒヨリ、ここどこ?」
「わからない。でもあれ見て」
ヒヨリがトモキにある物を見せる。
それは自分達が先ほどまでいた巨大なタワーが崩れていく様子であった。
「タワーが崩れていく」
「クリアしたんだね」
「けど、俺とお前は……」
「お前達は死んでないさ」
「「!!」」
そして隣にはいつの間にか秋山総司郎が立っていて、トモキ達と同じようにタワーの崩壊を眺めていた。
「秋山総司郎」
「もう俺はどうすることも出来ないさ。
それと……」
秋山は何かモニターを動かす。
「お前達以外のプレイヤーは現実に戻ったようだ」
「私達が死んでないってどういうことですか?」
「言葉の通り、お前達は死んでない」
「けど、ヒヨリは消滅した……」
「消滅はした。だが、30秒以内なら問題ない」
「30秒?」
「知らなかったか? 消滅してから30秒以内だと隠しアイテムにしてある蘇生アイテムで蘇生出来るんだ。
そしてお前はその女の子が消えてから30秒以内に俺を倒した。
つまりは死なずに済んだということだ。お前もな……」
「けど、ここはどこだ?」
「俺がお前達を呼ぶために急遽作った空間だ。
しかし、俺の姿がないからって見せつけてくれるね。むず痒いぞ」
秋山は笑う。つまりは先ほどのキスを見られていたということだ。
「趣味悪いぜ」
「俺もそう思う」
「けど、どうしてあなたはこんなことを……」
「こんなことって?」
「このゲームを死のゲームにしたことです」
「簡単なことだ。……死にたかったんだよ。俺は」
「え?」
「退屈なんだよ。何をやっても……。
死にたければ一人で死ねって言うけどな、俺はすごい寂しがり屋なんだ。
昔っから一人で行動してた。このゲームを作ったのもほとんど俺一人だった。
そこでまきぞいになる形でデスゲームとした。
悪いとは思っているが後悔はしていない。俺はこうやってようやく死ねるんだからな」
「……………」
「さてと、俺もそろそろ地獄に逝って罰でも受けるとするか。
今までの悪行、どう考えても地獄行きだな」
「……………」
秋山がトモキ達に背中を見せる。
「ああ、言い忘れたことがいくつかある。
まさかお前達が『心象システム』を使うとは思ってなかったぞ」
「心象システム?」
「強い思いで動くことが出来るシステムだ。
だが簡単には動かない。%で言うと1000%以上の思いじゃないと発動しない裏技だ。
ヒヨリの場合はトモキを守りたいという強い思いから、超特殊麻痺でありながらも動いた。
そしてトモキ、お前はHPが0になりながらも俺に勝ち、そして生きたいという強い思いが心象システムを発動させ、俺に打ち勝った」
「お前は使わなかったのかよ? そのシステム」
「ああ、使わなかった。慢心もしてたしな」
「なんだか、戦ってた時と雰囲気違いますね」
「ラスボス的な雰囲気を出すべきだろ。それにやはり戦闘中は興奮するだろ?
だからああなってた。
それと最後に……。ゲームクリアおめでとう」
秋山は穏やかな声でそう言った。
「そして、二人に祝福を……。そして幸せにな……」
秋山は最後に二人に笑顔を見せ、砂のように消えていった。
「ねえ、最後に名前、教えてくれない? 現実での本当の名前」
「俺の名前か? 俺は桜井智樹。今年で14だな」
「同い年なんだ。私は風音日和」
「そっか……日和」
「智樹君」
二人は再びキスをする。
そしてそれと同時に二人も消滅し、世界全てが消滅した。
「…………」
現実の智樹が目を覚ますとそこは病院の天井だった。
「帰ってきたんだな」
智樹はゲームに接続していたメットを外す。
そして自分の体を見る。その体はとても痩せこけていた。
「……日和」
智樹は体についている医療器具などを外し、廊下に出る。
「……日和、……日和」
智樹は廊下をふらふら歩く。
そして歩いた先に一つの病室を見つける。
その病室の入院患者の名前に「風音日和」の名前があった。
「日和」
智樹が日和がいるとされる病室の扉を空ける。
智樹が部屋に入るとそこにはちょうど起き上がったばかりの現実の日和がいた。
「日和」
「智樹君」
二人は涙を流す。
少年と少女は現実で出会った。
完
『かんぱーーーーーい!!』
劇を終えた智樹達が部室で打ち上げをしていた。
「いやー、すごい大反響でしたね。師匠」
アストレアが美香子に言う。
「やったかいがあったわね。でも会長が武器屋ってのはあんまり納得できないわー」
「そう言うなよ。守形だって序盤でいなくなってるんだし……」
「俺ももう少し出番が欲しかったのだがな……」
美香子の出番が智樹と一緒に武器の素材を取りに行く鍛冶屋の役、守形は序盤で智樹にゲームクリアを託す役だったので、秋山に抗議する。
「私はマスターのトラウマ役でした」
「いやー、なんとなくピッタリな気がしたんだがな、イカロス」
「アルファーはまだいいわよ。私とそはらなんか本当にモブキャラだったのよ。
カオスもいいわよね。トモキとヒヨリの子供役で」
「うん♪」
「ニンフ先輩、私は?」
ニンフは軽くアストレアを無視。
「だってさー、キスシーン的にはキスしたことある日和の方がよかったろ」
「え? 智ちゃん、日和ちゃんとキスしたの?」
突如とそはらに黒い影が現れる。
「あの〜、そはらさん」
「イカロスともキスしたよな。お前」
「えーーーー!?」
「イカロス先輩、智樹としたんですか?」
「う、うん……」
「なんでそんなこと知ってるんだよ!? ニンフならともかく……」
「世界の記憶を見れる、俺の力をなめるなよ」
「智ちゃん……」
そはらの黒い影はますます濃くなり、そはらは既にチョップ体勢に入っていた。
「お、落ち着こうそはらさん」
「智ちゃんのバカーーーーー―!」
「へぶっ!」
こうして新大陸発見部の部室でいつも聞くような智樹の断末魔が響くのだった。
終わり
おまけ
作者「予告通り書いたぞ」
智樹「いや、予告したのって別作品のだろ」
作者「まあ恋姫とそらおとじゃ読んでるユーザー層全然違うからな。宣伝になってるようでなっていない。
しかしその宣伝をした恋姫、コメントは多いが、予想外のばかりだった」
智樹「なんだよ一体?」
作者「ここで語っても意味はないな。
とりあえずこんな感じでそらおとはなんやかんやでネタを作ったりする。
今回ここで書くネタが思いつかないな。
それでは!」
説明 | ||
今回の話はアニメ版「ソードアート・オンライン」第14話を見て、完全な終わり方をやってみたいと思って、「そらのおとしもの」の劇ものとして書いたものです。 また作者の分身となるオリジナルキャラ(秋山総司郎)も出てくることをご了承ください。 |
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