魔法使いの大家族 第6話:まさかの遭遇
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秋は奈々のあとを追うようにして自分の教室についた

席はそれほど大きくもなければ小さくもなくごく普通の平均的などこの高校にでもあるような

茶褐色の漆で塗られコーティングされていた机だった

秋は自分の席に深く腰掛けた

奈々が来るまで張り詰めた空間にいた秋は汗をグッショリとかいていたが

もうその汗は十分に引いていた

「そういえば今からホームルームだったな

まだ先生は来てないみたいだし少し寝るとしようと思ったけど・・・

そういえば桜と待ち合わせの約束があったな面倒だけれどしかたないか」

秋がそんなことを考えているうちにクラスの担任になったかと思われる大柄の男が教卓の前に立った

一度咳払いをすると大柄の男が話を始めた

「えぇっと皆さん国立魔法院大学附属中高一貫高等学校略して国魔高校にようこそ

それか進級おめでとうと言うべきかなちなみに俺は相田寛治(あいだかんじ)

まぁ寛治先生とでも呼んでくれこの学校の二等生と言ってはダメなのかもしれないが

この学校の教員は残念ながら大多数は二等生の教師をする

そして魔法がわかる教員は一等生のところに派遣されていく

そして君たちにはとんでもない凶報がある

俺は魔法のことはよく知らないしわからない普通の教員だ

まぁ俺も君たちと同じで二等教員という事だな

まぁ一年間よろしく頼む

それと雁間お前の妹からお前を呼んでほしいと言われてな

とりあえずテラスに来いという話だそれじゃあ雁間以外の生徒は本校の生徒手帳を出してくれ」

秋は先生にそう言われるとクラスのひそひそ声を無視しながら教室から出て行った

きっと秋に対しての嫌がらせや冷やかしも混ざっていたのだろう

しかし秋はそれを気にせず教室から即座に飛び出した

テラスまでの道は長く二等生校舎と一等生校舎のちょうどあいだ両校舎の二階の渡り廊下に設立されている

それにしても先ほどクラスの担任として赴任した相田先生を秋は信用しきれていなかった

ごくごく普通の先生というところが逆に秋に不信感を齎したのである

秋の所属するクラスがあるのは3階渡り廊下は一階にあるまでは少しばかりの距離がある

少し考えながら歩みを進めた

新クラスでのこれからの自分の立ち位置や振る舞いを考えた

秋は腕章を冬服の下に隠していて服の上からは拝見することはできない

自分は二等生の為基本的には魔法を使うことは許されていない

それに自分は禁忌の魔法を使う魔法使いそれに二等生という立場を付け加えると

学校や外では魔法を自由に使うことはできないと分かっていた

「あっ兄ちゃん!こっちこっち!」

秋が考え事をしていると遠くから聞き覚えのある甲高い声が響いた

声のする方向を見るとそこには秋の妹の桜の声だった

この渡り廊下の二等生と一等生の校舎間、その廊下の前で秋は桜の声に気付いた

桜は大きく手を振りながら秋に満面の笑みを振りまいている

秋も錯乱のその行為に手だけでも振ってこたえるが桜を取り巻いている

桜の友人たちの冷たい視線を感じ取っていた

彼女の友達も一等生の白い制服と一等生の証でもある校章が左胸に華々しく飾られていた

若干の劣等感を胸に抱きながら秋は桜の場所へと小走りで向かった

桜のいた場所につくと取り巻きの女子生徒達の冷ややかな視線が暖かい視線に変わった

秋は内心何か裏でもあるのかと気になったが女子生徒達の思考を読むのを止めた

「そういえば桜どうしたんだ?僕をこんな所に呼んで

僕はさっき教室で寝ようかと思っていたのに

ところでお前の友達かその子達」

桜は誇らしげに胸を張ってうんうんと秋に頷いた

その表情は自身と輝きの視線で秋に向けられていることを秋は感じ取った

きっと何か特別なお願いなのだろう

明らかに桜の視線はいつもの視線とは違って見えた

「なぁなぁ兄ちゃん!今から私とみんなの前で兄ちゃんの魔法を見せてやってくれよ!」

桜はとんでも発言しただけではなくこの大勢と言うには多少少ないかもしれないが

そんな一等生軍団の前で魔法を披露してくれと言い出した

秋はあ然として言葉も出ない

「みんな信じてくれないんだ!

さっきの私の演説でもまったく信じてくれないらしいし

兄ちゃん見せてやってくれよ!

さっき私が壇上で話したみたいな凄い魔法をさ!

私に見せてくれよ!大丈夫!みんな秘密にしてくれるし

どーんとやってくれて構わないよ!さぁ!兄ちゃん!」

秋は半分呆れながら桜の顔を見た

ずっとニコニコしていて曇りの無い笑顔で秋を見ている

桜の取り巻きの女の子達は半信半疑で秋を見つめている

秋はため息をついて桜たちを見た

「桜何を言ってるんだ僕みたいな二等生が魔法を使える訳ないじゃないか

使えるほうが寧ろ可笑しい」

「けど兄ちゃんは!」

「あれは春兄の魔法だ僕は魔法を使える才能なんて持ち合わせていないんだ

それにもう始業式から一等生は授業じゃないのか?

僕の事はいいから早く教室に戻るんだ先生達に眼をつけられたくないだろう?

僕みたいな二等生と家だけでなく学校にでも一緒にいたら先生方に何言われるか分からないぞ?

さっ帰った帰った」

秋はあえて桜に冷たい態度をとった

自分は二等生、妹の桜は一等生、兄妹であるが格と立場は違う

それ故、秋は桜の立場を思いやって冷たく言葉を発した

桜は先ほどの期待に満ちあふれた笑顔ではなく方を落とし

落ち込んだ顔をしていた

「そうだよ桜もお兄さん忙しいんだから呼んじゃ駄目だよ」

「それもそうだし私達も授業あるんだよ?

お兄さんもああ言ってるんだし早く行こう」

「えっ?みんな!ちょっと!」

桜が女の子達を呼び止めようと食い下がる桜だったが

女の子達の歩みが止まる事はなかった

いつもは誇らしげな桜の背中が小さく見えた瞬間だった

秋はそんな桜の背中を見て謝罪やお詫びを入れなくてはならないと強く思った

「どうかな春樹君、この学校の様子や生徒達の態度は」

黒に白の髪質に小柄で小太りな背広を着た老人が

秋と桜のやりとりを遠くから見ていて隣にいる人間に話しかけた

二人からの距離はざっと200mは離れている

「僕が学を学んでいた時と何ら変わりないですね

流石、校長と言った所でしょうか」

校長の隣には雁間家の長男で秋と桜の兄春樹が立っていた

二人が見据えていた先には先ほどの秋と桜のやりとりがあった

「本当に君の弟の雁間・・・秋君そう秋君は本当に禁忌魔法が使えるのかね?

世間では出来損ないとか一族の恥という噂も良く耳にするのだが・・・」

「秋は禁忌魔法が使えるんです

普通の魔法では無く禁忌の魔法すなわち

それに秋は僕や校長でも使えない禁忌魔法が使える

といっても僕や校長レベルなら使える禁忌魔法なら勿論使えるんです

けれども僕や校長が使える普通魔法が一貫して使えないんです

だから」

春樹は少しだけ力を込めて自分の掌に炎の発生させる

そこに春樹の手でも覆うには大きいほどの炎だった

校長はそれを見て感心したのか拍手している

「これがごくごく一般以上の魔力を持つ人間が使える炎です

これを僕や校長、母が少し力を入れると今のこの状況になります

ですから今僕の出しているこの炎は一般の魔力ではかなり力を入れなければなりません

その為僕等の様な多大の魔力のある人間は持て囃(はや)され

そして持ち上げられて世間でも威やでも知られることになる

しかしです

僕が疑問に思っているのはやはり秋の事です」

春樹が校長先生に掌の炎を翳(かざ)す

そしてそれを握り潰す要領で一気に消した

「なぜ禁忌魔法の使える秋が二等生なんです?

それはそれで処置的な問題では確かにまったく問題もない

しかしこの事が公に晒されれば秋でけでなくこの学校自体も被害を受けるのかもしれません

そうならない為にも秋はやはり一等生にするべきかと」

校長はしばらく黙り込んで考えた

春樹も校長の目をじっと見つめている

「春樹君、君には非常に悪くて言いづらいことなんだが・・・」

「なんです?」

「秋君は一等生になることはできないんだ」

校長が申し訳なさそうにペコリと春樹に頭を下げる

「なんでですか?」

「世の中では実力も必要いやむしろ実力魔法社会と言ったほうがいいが

さきほど私も拝見したのだが彼の様な皮肉ぶったり自分の実力を隠すのが得意だったりする人間には一等生は無理なんだ

一等生とは実力を公にして活動しなくてはならない幸いこの学校には広い敷地と施設があっても

彼ほどの実力がある人間はメディアや報道陣は一目散に駆け寄ってくる

それも考慮しなくてはならない人には人権というものがあるからね

それと彼は今、二等生という立場におかれている

勿論二等生の友達はたくさんいるだろう?それも問題の一つなんだよ

一等生は皆とまでは言わないが比較的にプライドが高く自分より地位の低い、能力の低い人間を馬鹿にする者がいる

普通の魔法を使いこなす程度なら構わない

だがしかし二等生がもしそのような一等生に虐められてでもしていたら夏希君や春樹君の様に彼は助けに入れるのかな?

それに仮に生徒を救うために禁忌魔法を使う可能性があるんだ

禁忌魔法は危険な魔法、故に禁忌なんだだから秋君は二等生で我慢して貰うしかないんだよ

周りの対応を変えて欲しいとも私は思うがね」

「ですがしかしまだ秋の意見を聞いていません・・・

決めつけとまでは言いませんが・・・」

「きっと彼は一等生にはならないと言うはずだよ

彼は虐げられてきた

君のような偉大な兄が二人もいて彼の下にも三人も偉大な弟と妹がいて

両親も両方共偉大なのだから

今まで劣等、1人だけ、一族の恥、とでも言われてきた彼が

いきなり私や君から今日から一等生です

はいはい行きますよ

となるわけがない必ず彼は断るだろう

彼は一等生になる前に自分を理解でもしてくれる友人でも探しているんじゃないかな

今まで虐げられた人間は捻くれた皮肉なことを言ってしまうものだ

喜ぶことがあまりないのだから」

そう言って校長はその場を後にした

春樹はしばらく拳を握りしめたまま動かずずっと何かを考えていた

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