キリトSide

俺とアスナは宿で私服から普段の装備に戻して街にでた。

「これからどうするの？」

聞いてきた彼女に俺は三つの案を提示した。

1、グリムロックをとにかく探し回る。

2、残りの『黄金林檎』のメンバーから情報収集を行う。

3、カインズ氏殺害の手口を再検討する、の三つだ。

提示した案にアスナは思案するが、俺はさらに言葉を続けた。

「ただ1と2は欠点がある。1は二人では効率が悪すぎる。

　他のプレイヤー達に協力を仰ぐことはできるが……、これ以上黄金林檎で起こった事を公にはしない方がいい。

　2は場合によっては相手の情報次第では信憑性が薄くなりかねないから、これもイマイチだろうな」

「そうだね……なら3の案でいくしかないわね…」

アスナの言葉に俺は頷きで返した。

彼女はどうか分からないが、俺がここまでこの事件に入れ込むのは圏内PKの手段を突き止める為だ。

『狩人』としてはこの一件は見逃せない。

「だがもう少しSAOの知識が多い人物の協力が得たいな…」

「でも、無闇に情報を話すことはできないわ。ヨルコさんに悪いもの」

アスナの言う通りだ。しかし、俺達以上に知識のあるプレイヤーなど中々………あ。

((あいつ|・・・))がいたのを失念していた。

「一人いるぞ。俺達以上にSAOに詳しい奴」

「え、誰？」

「アスナのところのリーダー」

俺がそう言うとアスナは一瞬固まったがすぐに声をだした。

「まさか……」

俺はニヤリと笑みを浮かべてそいつの名前を言った。

「ああ、ヒースクリフだ」

三十分後。第50層『アルゲード』の転移門広場で待っていた俺とアスナの前に転移でヒースクリフが現れた。

「待たせてしまったようだね」

「問題無い、呼び出したのはこっちだからな」

「すみません団長！　このようなところにお越しいただいて…」

「構わんよ。それに、昼食をかの【黒の聖魔剣士】キリト君に奢ってもらえるなど無いだろうからね」

彼はアスナがメッセージを送って呼んだのだが、その際に俺が昼食を奢ってやると伝えたわけだ。

ちなみに俺達がいる周囲には微かな人の集団とざわめきが起こっている。

「KoBの団長と副団長がいるぞ…」

「《神聖剣》の使い手…最強のプレイヤー、ヒースクリフ…」

「副団長の【閃光】アスナさん…」

「盾無しの片手剣に黒づくめ……【黒の聖魔剣士】キリトもいる…」

といった声が主に聞こえてきた。ここに居るのもあれなので、おれは二人を店に案内した。

店についた俺達。

早速『アルゲードそば』を三人前注文して、ヒースクリフに今回の一件について簡潔に説明した。

「……とまぁそういうわけで、アンタの知識を借りたいってわけだ」

「なるほど。ではキリト君、今回の圏内殺人を君はどうみるかね？」

彼の質問に俺は大まかに三つの可能性を考えて話した。

一つ、正当な『完全決着モード』による((決闘|デュエル))。

二つ、現存するシステム上の穴をついたもの。

三つ、未知のスキル、またはアイテムによるもの。

「こんな感じだが、三つ目はまずない。

　このSAOのルールはフェアネスを貫いたものだからな。まぁ、アンタの《神聖剣》は例外だが…」

笑みを浮かべて言った俺に、彼も笑みを浮かべて返してきた。

俺の笑み…それは俺自身も例外に当てはまるからだ。

彼がそれに気づいているのか、いないのかは知らないがな。

「とりあえずは決闘PKから再検討するか」

「そうしようか……それにしても料理が出て来るのが遅いな…」

いや、知らんがな。妙にそんなことを気にするヒースクリフに呆れながらも、話しを進める事にした。

キリトSide Out

To be continued……