もう一度だけ碧空を:Introduction
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全ての宇宙

 

過去と

未来の

 

全てのうちの

ひとつで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               紡がれたのかも知れない物語

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もう一度だけ碧空を:Introduction

一次創作 Magica Quartet「魔法少女 まどか☆マギカ」

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○運命は予告なしに現れる

 

「鹿目さん、おはよう」

「おはよう!」

 

教室は挨拶でいっぱいだ。鹿目まどか達三人、美樹さやかと志築仁美は待ち合わせて登校するから、いつも同じ時刻に教室に入る。何か分担があるわけではないけれど、さやかは元気よく、仁美はおしとやかに、まどかは……普通に挨拶をする。自分から周りに声を掛けて回るさやか、目線を合わせながら上品に微笑む仁美と違って、みんなは、まどかの名前を、まず呼んでから挨拶をする。まどかはそれが何となく引っかかっていたけれど、それも仕方が無いのかな?とも思ったりする。

十数日前、いや二週間ぐらい前と言った方がいいだろうか。まどかの中に秘密と自信の種が芽生えた。魔法少女契約を済ませたまどかは、もうそれは、雲の先に青い空が広がっているのを初めて発見した人のように、その前後では心構えというか、性格というか、そういう物全部が入れ替わってしまった。けれども、人間の評価なんてそんなにすぐに変わらないわけで、クラスのみんなには、まどかはまだまだ〈夢見がちなぼんやりっこ〉に見えるのだろう。挨拶だって呼びかけないと聞き落としそうなぐらいに。

魔法少女に成り立ての頃は、自分自身のイメージと、他人の評価の違いが、寂しくてしょうがなかったのだけれども、今のまどかは「どこにでもいる普通の、でも少し夢見がちな女の子」を楽しめるぐらいには、心境が落ち着いてきていた。

 

「あ!先生だっ」

 

学校なのだから、先生がやってくるのは当然。なのに、廊下側の男子はまるで、予想外の出来事のようにみんなに報告する。彼の隣の席まで遠征してきていたまどかは、その声を聞いて、急いで自分の席にもどりながら、ふと、振り向いた。今は電圧がかかって遮光されている硝子の壁、その先に二人、人影がいるのが見えた。

「ちょっとぉ、まどかぁ、はやくぅ」

さやかが小さな声で呼ぶ。いつの間にか立ち止まっていたらしい。慌てて席に着いた時、ちょうどガラス戸がスライドして、担任の先生が入ってきた。

 

「今日は皆さんに大事なお話があります、心して聞くように」

 

小柄で童顔。ぱっと見、物静かそうに見える女教師は、大きく咳払いをしたあと、そう宣言した。先生の言うことは、大抵学生にとっては大事お話なのだけど、この先生に限っては仰々しい前置きのあとに続く言葉が、学生にとって重要であったためしがない。曰く。

「目玉焼きとは、堅焼きですか?半熟ですか?」

回答者に指名された中沢君がかわいそうだと思った。質問は重要でなくても回答は重要なのだから。

「……どちらでもよろしい、かと……」

そう答えた彼はワンポイント獲得したようだ。と言っても別に先生は雑学クイズをしている訳でも何でも無く、きっと付き合っていた彼と、そのことで喧嘩をしたと言う単純明快なお話し、に違いない。

彼の回答を聞いて満足した先生は、〈とても為になる演説〉を笑顔で締めくくると、思い出したように補足した。

「あとそれから。今日は皆さんに転校生を紹介します」

「え?そっちが後回し?」

まどかの斜め前の席から、思わずさやかが発したツッコミが聞こえてくる。やはりスライドしたガラス戸から、黒髪を三つ編みにした女の子が静かに姿を現した。

 

暁美ほむら。そう自己紹介した彼女の、その黒髪、顔、そして声。

まどかは驚きのあまり言葉を失った。だって、細かいところで差はあるにせよ、彼女の印象が、今朝夢で見た〈あの娘〉とそっくりだったから。

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アレはとても嫌な光景だった。

 

全てが光り輝く、私達の街、見滝原が、巨大な暗雲に取り憑かれて、色褪せ、打ち砕かれていく。子供の頃からそこにあったあのビル達も、もうなぎ倒されて形を残していない。

 

私は魔法少女服姿で座り込み、先輩魔法少女を膝枕して、自分自身もぼろぼろになって泣いていた。先輩は魔力が尽きて、魔法少女服でいることさえ出来ずに、唇は色褪せて、苦しみの表情のまま私の涙を受け止めている。

 

「私が。倒してくるから」

 

決意を込めた、でもかすかに震えた声が私の前から聞こえた。顔を上げる。そこには見慣れない魔法少女服の背中が見えた。

 

「まどかは、そのままそこにいて」

 

私はあの巨大な敵に、彼女だけで立ち向かうなんて無理だって思った。だから思い直して貰おうと思った。

 

「無理だよ。もう逃げようよ。ここまでやったんだから、きっと誰も恨んだりしないよ!」

 

最後は叫んでいた。でもゆっくり振り向いたその娘は、長いストレートの黒髪を風になびかせながら、悲しそうな目で私を見て、こう言った。

 

「まどか。そんな悲しいこと言わないで。私達、魔法少女でしょう?」

 

彼女は微笑んだ。そして再び敵に視線を向けると、かすかな声で「さよなら、まどか」と言って飛び立った。

 

私はもう、彼女と、巨大な敵との死闘をただ見つめることしか出来なくて、それが悔しくて悔しくて、逃げ出すことすら出来ないのが情けなくて情けなくて……。

 

でも、

 

彼女の背後から、使い魔が迫っているのを見つけた私は。

 

反射的に残った魔力を全て矢に変えて、

弓で放ち、

その娘の名前を絶叫しながら、

意識を失った。

 

 

と言うシーンで目が覚めた。

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その日の休み時間、クラスは暁美さんを中心に回っていた。教卓前にある彼女の席では、女子が名刺代わりに次々と質問をする。それに丁寧に、にこやかに答える暁美さん。

流行に乗り遅れて、教室の後ろ、まどかの席に集まった、いつもの三人組は、その様子をどこかTVドラマの様に感じながら眺めていた。

 

「不思議な雰囲気の方ですわね」

と仁美が感心した。

「心臓の病気で長い間休んでいた、って先生言ったけど、そんな風に見えないよね、明るくて」

さやかも同意する。

 

まどかは。もう不思議なことには大概なれていたけれど、それでも彼女の事が気になった。今すぐにここで先輩に相談すべきなのかも知れないけれど、先輩、多分次は体育だ。声は届くだろうけど、着替え中に話しかけるのも何だし、そもそも今の状況では何をどう相談すべきなのかもわからない。ならば……。

 

「まど、か?」

さやかは突然まどかが立ち上がったので驚いた。でも、まどかはすでに自分の行動が唐突であることすら気がついていない。人の輪に割り込んでいく。

「みんな、ごめんね。暁美さん、今日、この時間は保健室に行かないといけないの。ちょっと借りるね」

アドリブがすらっと出てくるぐらいには肝が据わった、と、まどかは我ながらに思った。

「あ、まどっち保健係か!」

「鹿目さん大変だね」

「じゃあ、暁美さんまたあとでね」

「もしよかったら、お昼とか一緒に食べよう?」

「まどかちゃんご苦労様」

クラスメイトは疑いもせず、それぞれ挨拶をして暁美さんから離れていく。

当の暁美さんは驚いて、じっと目を見開いてまどかを見ている。

「さ、いこっか、暁美さん」

まどかは笑顔で彼女を促して教室を出た。

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二人は教室のある西棟と管理棟を結ぶ長い渡り廊下までやってきた。ここは通る生徒も少ない。実際今もここにはまどかと暁美さんしかいなかった。

まどかは、暁美さんを先導する形で前を歩いていた。その場で思いついた理由で暁美さんを教室から連れ出したけれど、本当に保健室に用事があるわけではない。どこかで彼女に本当に聞きたいことを質問するきっかけを作らないといけない。

教室を出てからずっと、それを考えてはいたけれど、なかなか思うようには切り出せなかった。

毎回こんな出たとこ勝負ばかりしているから先輩に叱られるんだよな、と内心反省はしていたけれど、だからと言って残り時間が増えるわけでもない訳で……。この廊下を渡りきったら保健室だ。

救護の先生に、何の用事なのか問われる前に何とかしないと……。

 

しかし、驚くべき事に、それまで無言でついてきていた暁美さんが、廊下の中央で突然声を掛けた。

「鹿目、さん?何故嘘を吐いてまで、私と二人になりたかったんですか?」

彼女の三歩前を歩いていたまどかは、覚悟を決めてきびすを返す。

「暁美さん。私たち、どこかで出会ったことがあったかな?」

暁美さんは先程皆と談笑していた時と変わらぬ笑顔で、小首をかしげながら答える。

「いいえ。そこにいる鹿目さんとは今日初めて会いました」

まどかは急に体の力が抜けた様に感じた。

「あ、そか。そうだよね、あはは……。なんか今朝見た夢に出てきた女の子とあんまりにもそっくりだったから、前にあったことがあるのかな?とか思っちゃって。はははは……」

暁美さんは一瞬暗い顔をしたように見えたが、それは思い過ごしだったのだろう。ちょっとテンションを上げて聞いてくる。

「そうなんですか!どんな夢だったんですか?」

「いや、あの、その……」

言えない。夢の内容は言えない。先輩と私、そして暁美さんが魔法少女として戦っている夢だなんて……。みんなに秘密で本物の魔法少女をやっている、この私だからこそ言えない。

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○夢についての二、三の事項

 

放課後。

 

もちろん三人は、いつもの様にショッピングセンターに寄り道する気満々で。さやかちゃんは、今日御見舞いに行く前に買っていきたいCDがあるって言ってたし、仁美ちゃんは新発売のドーナッツを楽しみにしていたし。私は新しいボールペン、大好きなキャラクターが上にのっている、それはそれは可愛い奴を買って帰らねばならないわけで。

わけで。

わけ

で。

……。

 

さやかと仁美はお互いに話をしている間に、急にまどかのテンションが下がったので何が起こったのか全然わからなかった。

「まどかさん?どうかしましたか?」

「あ゛っ」

仁美の呼びかけに、まどかは必要以上に驚いた。その「あ」と「ぎゃ」の中間のような叫び声。逆にさやかが驚いている。

「ま、まどか?どうしたの?」

「へ?あ……」

急に押し黙る。

「まどかさん?」

どうしよう。何でこんな時に魔女が出るんだろう。先輩は、先に偵察に行くからゆっくりでも大丈夫、って言ってくれたけど、絶対そんなわけ無い。むしろ後輩の自分が率先して状況把握にでかけないといけないのに……。ああ、いつだって運命はイタズラだ。

でもなぁ……。まずはどうやって二人を説得しよう……。

「あ、あの、私……」

まどかが二人に向かって言い訳をしようとしたとき、まどかの後ろから声がした。

 

「鹿目さん!お待たせしました。私準備できました!」

明らかに驚いた表情のまどかが振り返ると、そこには暁美さんが鞄を持って待っていた。

微笑んで首をかしげる。

「保健室からの帰り道、街を案内してくれるって、言ってましたよね?」

まどかは、そんな約束をした覚えはないけれど、ひとまずはその話に乗ろうと思った。暁美さんには悪いけど、少し街を案内して、そして呼び出しが来たふりをして……。

「え?あ、そうそう。そうなんだ。うんうん。ごめんね、さやかちゃん、仁美ちゃん」

「もーしょうがないなー。そういうのは早く言いなよぉ、まどかぁ。暁美さん、まどかのお守り、よろしくお願いしますね」

さやかはウィンクをする。

「ハイっ!……って私が案内して貰うんじゃ……」

思わず勢いで返事をしてしまった暁美さんは、ちょっとおろおろしながら確認する。

「まどかさんは、どじっこ属性強いですから。気をつけてあげてくださいね」

「もー、仁美ちゃんもひどいよぅ」

まどかはちょっとむくれていった。暁美さんはその様子を見て急にクスクス笑いだした。

「え?暁美さんまで?」

思わず声に出す。まどかの方に視線を合わせて、うらやましそうに言った。

「三人とも仲がいいんですね」

「まあ、腐れ縁、ってとこだからね、わたし達。じゃ、こっちはこっちで行きますか?」

「そうですわね。まどかさん、暁美さん、ごきげんよう」

く、腐れ縁……そこまで言わなくても。でもここで反論をするわけにも行かず、私があわあわしている横で、暁美さんは手を振って去っていく二人に、なぜか深々とお辞儀をしながら言った。

「ハイ、ありがとうございます」

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まどかは急いで帰り支度をして、暁美さんと教室を出た。クラスの雰囲気はどう?とか、街はもうどれぐらい見て回ったの?とか、そういう雑談をしながら校門をでる。まどかは意図的に、さやかや仁美が向かったショッピングモールと逆の方向に彼女を誘導した。大きな交差点、歩道橋を上がり下がり、学校が見えなくなる方向へ曲がったとき、暁美さんは突然立ち止まった。

「鹿目さん。ありがとうございます。もうここで結構ですから」

まどかは疑問に思いながら、彼女に続いて立ち止まった。

「え?でも街を案内するんじゃ……」

彼女はちょっと寂しそうに微笑む。

「嘘です。だって、私、鹿目さんと約束してないですから。保健室に用事がなかったのとおあいこです」

暁美さんは一歩近づいて、まどかの目を見る。

「鹿目さん、用事があるんですよね」

驚いた。なぜそれを。

「え?あ、あの、そうなんだけど……でも」

「早く行ってあげてください。お礼は……、そうですね。日を改めて街を案内してもらえればいいですから」

ちょっと悪戯っぽく笑う。

「えぇえ?う、うん、ありがとう暁美さん、本当にごめんね」

まどかはきゅっと胸の奥が痛くなった。何だろう、この痛み。彼女に助けられたのに本当のことをいえないから?それとも……。

「ごめん、本当にごめん」

まどかは彼女の目を見ていられなくなって、視線を逸らしながら頭を下げた。彼女は自然と数歩下がる。満面の笑み。

「気をつけていって来てくださいね、鹿目さん」

そういって手を振る、彼女への思いを振り切るように、まどかは振り向いて歩道橋を逆に駆け上がっていった。

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まどかはいつものように、先輩――学校の先輩であり、魔法少女の先輩でもある巴マミの家で、今日の戦いについて、反省会をしていた。先輩は一人暮らしだから、ここでは気兼ねなく秘密の話ができる。街の中に隠された魔女の結界を探し出し、その中に巣くう魔女が人間に危害を加える前に退治すると言う、その他人には秘密の活動の話を。

出席者は、巴マミ先輩と私、鹿目まどか。そしてさらにもう一匹。二人と契約を結んだ、魔法のシシャ、猫のような体に垂れ耳ウサギ風の飾り毛が生えた不思議な生物、キュゥべえ。テーブルには、甘い物たくさんと美味しい紅茶。ここはまどかが今、ある意味自宅よりもリラックスできる場所。

 

なのだけれども……。

 

「鹿目さん、今日はどうしたの?」

突然聞かれて、まどかは驚いたように聞き返す。

「え?わ、私何か変でしたか?」

「戦っているときはいつも通りだったけど、その後は何だか生返事で……何か悩んでいることでもあるの?」

「悩んでいることと言うか、あの、その」

歯切れが悪い。

「私は、単に魔法少女の先輩って言うだけじゃなくて、あなたのことを友達だと思っているから……もし話しにくいのなら無理強いはしないけど……」

そういって笑顔を向けたマミさん。言外に話せって言ってるよね、これ……。

「……今日、うちのクラスに転校生が来たんです」

「あら、珍しいわね」

「そうなんです。転校生自体が珍しいし、しかもこの時期ですから。でも直接それが悩みって言うわけでもないんです」

 

今でも克明に思い出せるその夢。特にマミさんの、あの、その、死体の感触が生々しくて、全身に汗をかきながら目覚めたあの朝。アレが夢であって本当に良かったと、そう思ったの今でも覚えている。

でも、この話をするのであれば、できれば思い出したくないあの夢の内容に触れないわけには行かない。それは、私にとっても気が重くなる話しだし。どうしよう……。

まどかは迷ったあげく、まずは、できるだけ軽く触れることにした。

「実は、今朝すごくいやな夢を見て……。私達が登場する夢なんですけど、それ以外にも見知らぬ魔法少女が出てきて……、その娘がその転校生にそっくりだと私には思えるんです」

マミはまだ、それらがどうつなぎ合わさって、まどかを不安にさせるのかがわかっていない。まどかは話を続ける。

「ただ単に夢の中の娘に似ているんなら、そんなこともあるのかなって、そう思うんですけれども。実は、今日マミさんにテレパシーで呼ばれた時、私、友達と一緒にいて。どうやって抜け出そうかって困っていたんです。そうしたら彼女が、架空の用事を作ってくれて……。それですぐに魔女の結界へ、向かうことが出来たんです……」

「つまり、その転校生は、夢に出てきた魔法少女で、鹿目さんが今日私に呼ばれたのを察知して、それで助けてくれたんじゃないかと。そう思っているわけね」

「……はい」

『それは考え過ぎじゃないかな、まどか』

キュゥべえがテレパシーで口を挟む。彼は発声器官を持たないから常に会話はテレパシーだ。

『人間が睡眠中にみる夢に関しては、それまで記憶した事象の断片を整理し、取捨選択する課程であり、実際にその夢に対する意味付けは起床後に行われる場合がほとんどだ。しかも再評価は随時起こり得るから、何らかの相似を、その転校生に見いだしたのは確かなのだろうけれど、夢の中の彼女が転校生だという君のその評価は、転校生を実際に見た瞬間に行われたものだと考えるのが妥当だというのが僕の意見だ』

理路整然とキュゥべえが話す。だがすでにマミの関心事はそこにはなかった。

「ところで、すごくいやな夢だったって言ってたけど、具体的にはどんな夢だったの?」

ああ、やっぱり、それ聞かれますよね……。マミさんが〈私、気になります〉モードに移行したら何が何でも聞き出されてしまうから、まどかは抵抗することをあきらめて、夢の内容を彼女たちに伝える事にした。

「あの……あんまり気分がいい夢じゃないですよ?それでもよければ話しますけど……」

と、前置きして。

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「……」

マミは無言だ。自分が早々に死体として転がっている夢なんだから、気持ちいいはずがない。

『君たち三人が一緒に巨大な敵に立ち向かって、マミは戦死、まどかの魔力は限界、のこった娘は一人で無謀な戦いに挑んだ、と言うわけだね』

キュゥべえ……。たしかに、客観的にはそういうあらすじだけど、もうちょっとオブラートに包んでいってくれてもいいんじゃないかな、君は。

「正夢、だったとしたら、かなりいやな夢ね」

マミはそういうのがやっとだ。

「……すみません。でも、あの、マミさんの頭の重みとかがですね、ものすごくリアルで……力が入らない人間の体のってこんなにも重いんだって言うか……。それが怖くて怖くて……。私も起きてしばらくは放心してましたし」

まどかの発言がフォローになっていたのかはわからない。でもマミは、内心引きずっているのが表情に出てしまってはいるものの、まどかの発言を聞く時間を使って心を落ち着け、なんとか体面を保って質問をすることができた。

「でも鹿目さん、その第三の魔法少女の名前を叫んだんでしょう?転校生の名前と同じだったの?」

「……それが……確かに大声で叫んだんですけれど、なんて叫んだのか、まるで覚えてないんです……」

「それも不思議よね」

『対象が夢なら不思議でも何でもないさ。何かもやもやした概念を、再度振り返って、その娘の名前を叫んだとストーリーをつけただけだからね』

キュゥべえが相変わらず冷静に答える。

マミはすこしムッとした顔でキュゥべえを見た。その後、まどかの方に向き直り、

「今の情報だけだと偶然の一致、というのがもっともしっくりくるけど、ちょっと何かそれだけではない何かを感じるわね」

「……そうですよね。わかりました。私もしばらく気をつけてみます」

その日は、その話題について、マミはそれ以上触れたくないようで、まどかも出来れば避けたかったから、それ以上話し合うこともなく終わった。

 

 

 

【続きは頒布版にて】

 

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コミックマーケット83 1日目(29日) 東5ホール ハ13a 「マドカミ町奇譚」にて頒布します。

説明
全ての宇宙、過去と未来の全ての内の一つで紡がれたのかも知れない物語。それは、秘密の魔法少女鹿目まどかと、人当たりの良い転校生暁美ほむらの、もう一つの出会いの物語。
「ね、なんで知ってるの?」鹿目まどかは聞いた。みんなには秘密の魔法少女生活。なのに転校生暁美ほむらはまるで全てを知っているよう。まどかの質問にほむらは、抜けるような青空を一緒に見に行きましょうと提案する。約束の日、雨の降りしきる中、ほむらはまどかを迎えにやってきた。
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