魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第四十一話 勇紀の『初めて』は奪われていた!!
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 「「「「「「「「「「ニャーニャー!!」」」」」」」」」」

 

 「…ユウキ、何とかして下さい」

 

 「俺には無理だシュテル」

 

 「「「「「「「「「「ニャーニャー!!」」」」」」」」」」

 

 「勇紀、姉であるボクがピンチだ。助けてくれ」

 

 「リスティさん。だから俺にはどうする事も出来ないんですって」

 

 「「「「「「「「「「ニャーニャー////」」」」」」」」」」

 

 「えっと…お気持ちは嬉しいのですが私は今、気になっている人がいるので…」

 

 そう言ってリニスさんがチラリと俺の方を向く。

 ???俺の顔に何か付いてるのか?

 

 「というかリニスさんも大変だなあ」

 

 猫と会話しているリニスさんを見ていると…

 

 「ていうかお前等皆帰れえええええっっっ!!!アタシの癒しを奪うなああああああっっっ!!!」

 

 一人の大きな怒声が皆の耳に響いた。

 

 

 

 もう月日は11月になり、今日はすずかの家でお茶会をする事になり、俺達長谷川家は誘われた。

 月村邸に向かう途中で今日は非番で休みだったリスティさんと出会い、すずかに電話で確認した所、『別に人が増えても心配は無い』という事だったので一緒に来ることになった。

 …のだが月村邸に来た瞬間にシュテルとリスティさんが大量の猫に懐かれ、少し後にやって来たテスタロッサ姉妹とそれに着いて来たリニスさんも猫達に囲まれてしまった。

 そして猫を癒しとしている月村家のメイドをやっているイレインがキレた。この家にいる猫がほぼ全て、シュテル、リスティさん、リニスさんのどこかにいるからだ。イレインの側には一匹としていない。

 

 「何だか凄い光景になってるの」

 

 「シュテるん、猫に好かれ過ぎ」

 

 「あのリスティさんっていう人もシュテルに負けず劣らず凄い懐かれようね」

 

 「リニスは何やら断ってるね。どうしたんだろ?しかも勇紀の方を見てるし…」

 

 シュテル、リスティさん、リニスさんを見ながらなのは、レヴィ、アリサ、フェイトが口々に言う。

 

 「イレイン、駄目だよ。皆は私が呼んだお客様なんだからちゃんとおもてなししなきゃ」

 

 すずかは怒り狂っているイレインを注意している。

 

 「うーん…」

 

 「はやて?どうした?」

 

 さっきからリスティさんを見て唸っているはやてに声を掛ける。

 

 「何かあのリスティさんっていう人どっかで見た事ある気がするんよ」

 

 「街中で見たんじゃないのか?」

 

 「うーん、そうなんかなあ?少し違う様な気もするんやけど…」

 

 首を捻って思い出そうとしている。

 

 「…こうなったら最後の手段を使うしかないな」

 

 …っと、リスティさんが何やら懐から取り出した。

 あれって携帯電話?何する気だろうか?

 

 プルルルル…プルルルル…

 

 「……もしもしフィリスか?お姉ちゃんの危機だ。今すぐ助けに来てくれ」

 

 ピッ

 

 そう言って一方的に通話を終えるリスティさん。

 ん?そういやフィリスさんって今日休みなのか?

 

 「あのー、リスティさん?」

 

 「何だ勇紀?ボクの事はゆうひみたいに『お姉ちゃん』と呼んでくれると嬉しいぞ。というか『お姉ちゃん』と呼べ」

 

 「呼べってアンタ…。それより今フィリスさんに電話してたみたいですけどフィリスさん今日は休みなんですか?」

 

 「何馬鹿な事を…。フィリスは仕事中だぞ」

 

 「いや駄目じゃん!?仕事中に呼んだら駄目じゃん!?」

 

 「だがこの状況を何とか出来るのはフィリスだけだぞ?勇紀もフィリスが動物に近付くとどうなるか知っているだろう?」

 

 勿論知っている。フィリスさん動物に避けられるからなあ。

 

 「何でフィリスさんは動物に避けられるんでしょうかね?」

 

 本人は大の動物好きなのに…。可哀相なフィリスさんである。

 

 「フィリスさん?…フィリスさん…フィリスさん…フィリス先生…っ!!そうや、フィリス先生や!!」

 

 なにかを思い出した様なはやてが手をポンと叩く。

 

 「いやー、あのリスティさんが何や見覚えある思たら海鳴大学病院のフィリス先生とソックリなんや」

 

 「はやて、フィリスさんと会った事あるのか?」

 

 「うん、私の足が麻痺して動かんかった時に一度だけ会った事あるんや。私の担当やった石田先生とは仲良さそうやったしな」

 

 それって夜天の書が闇の書だった時、はやてが闇の書に蝕まれてた時の事だよな?まさかそんなサイドエピソードがあったとは…。

 

 「なあ勇紀君。リスティさんってもしかしてフィリス先生と姉妹やったりするん?」

 

 「その通りだ。リスティさんはフィリスさんのお姉さんだ」

 

 正確にはリスティさんのクローンなんだけどな。

 って、こんな事言ってる場合じゃない!

 

 「リスティさん、携帯貸してくれません?」

 

 「ん?ほれ」

 

 こっちに携帯を投げて渡してくる。

 俺はすぐに電話帳に登録してあるフィリスさんに電話を掛ける。

 

 プルルルル…プルルルルル…ガチャ

 

 『もうっ!!リスティ、いきなり言うだけ言って勝手に切らないでよね!今は休憩中だから良かったけど勤務中だったら私が怒られるんだから!!』

 

 電話の向こうの相手…フィリスさんは大層ご立腹の様である。

 

 「あー…フィリスさん?俺です、勇紀ですけど…」

 

 『……………………』

 

 さっきとは打って変わって今度は静かになる。

 

 『ゆ、ゆゆゆ勇紀君!?え!?何で!?これ、リスティの携帯だよね!?』

 

 慌ててるなあフィリスさん。まさか電話越しの相手が俺とは思ってなかったんだろうな。リスティさんの携帯使ってるから当たり前と言えば当たり前か。

 

 「あー、今リスティさんから携帯借りてるんですよ。フィリスさんの携帯番号分からなかったもんで」

 

 『そ、そう言えば勇紀君には教えてなかったよね。ゴメンね』

 

 「良いですよ。俺もフィリスさんと最後に会ったの結構前でしたから」

 

 『そうだね。元気にしてた?』

 

 「そりゃ勿論。健康体ですよ」

 

 『うんうん。健康第一は良い事だよ。ところで私に何か用があるのかな?(お姉ちゃんとして何か頼ってほしいなあ)』

 

 「いえ、さっきリスティさんが電話して『こっち来い』みたいな事言ってましたけど気にしなくていいので仕事に集中しておいて下さい」

 

 『あっ、うん。大丈夫だよ。勤務中に抜け出すなんて事はしないから(うう…そんな事かあ)』

 

 ???何か若干落ち込んだ雰囲気が感じられる様な?

 

 「勇紀!何を言ってるんだ!?ボクを見殺しにする気か!?」

 

 「別に猫に囲まれただけで死ぬ事なんて無いでしょうが…」

 

 『猫?』

 

 「リスティさんは、自分に群がっている猫を引き離すためにフィリスさん呼ぼうとしてたんです」

 

 『…むうー。それって動物に好かれない私に対する嫌がらせ?』

 

 若干怒ってるのが電話越しに分かる。

 

 「まあ、いずれ動物に好かれる日がきますよきっと」

 

 『私としては今すぐにでも好かれたいのになあ』

 

 「あはは……」

 

 それからしばらくはフィリスさんと話をしてから電話を切った。その際にフィリスさんの電話番号を聞いたので後で自分の携帯に登録しとかないとな。

 

 「はいリスティさん」

 

 「…勇紀。ボクはお前をそんな子に育てた覚えは無いぞ」

 

 「そりゃあ育てられた覚えも無いですから」

 

 周りの猫を誤って踏んだりしない様に慎重にリスティさんの方に近付いて携帯を返す。

 

 「…ユウキ、本当に何とかして下さい」

 

 …シュテルの足元にはさっきよりも群がる猫の数が若干増えている。リスティさんかリニスさんの所に居た猫が何匹か加わった様だ。

 

 「モテモテだね〜シュテル、羨ましいよ」(ニヤニヤ)

 

 「…そう言うなら代わってあげますよアリシア」

 

 「遠慮しとくよ〜。見てる側で充分だし♪」

 

 アリシアの発言に対し不機嫌になるシュテル。

 

 「私とデートですか!?ですが貴方には付き合っている子がいるのでしょう?ならその子に隠れて私なんかとデートするのは感心しません!!」

 

 リニスさんはいつの間にか説教している。

 

 「うがああああっっっっ!!!!!にゃんこおおおおおっっっっっ!!!!!!」

 

 そしてイレインは更にキレていた………。

 

 

 

 あれからしばらくして猫の群れから、何とか解放されたシュテル、リスティさん、リニスさん。

 庭に用意されたテーブルには既に菓子と飲み物が準備されている。

 イレインはノエルさんに連行されていった。

 そして皆がリスティさんに自己紹介した後でお茶会が始まる。

 

 「ふう…。やっとお茶会にありつけますね」

 

 席に着いたシュテルは、ややお疲れの様子。

 

 「フィリスを呼べばもっと早く始められたのに…。勇紀が余計な事をするからだぞ」

 

 「だから仕事サボらせちゃマズイでしょうが」

 

 リスティさんと違ってフィリスさんは真面目なんだから。

 

 「おい勇紀。ボクも仕事は真面目にやってるぞ」

 

 「あー…また人の心勝手に読んだでしょ?」

 

 「ふふん。恐れ入ったか?」

 

 俺のプライバシーは無視なのか?

 

 「???勇紀よ。『心を読む』とは何の事だ?」

 

 ディアーチェに聞かれた。

 

 「ん?それはな…」

 

 チラリとリスティさんを見ると首を縦に振っている。どうやら言っても良いみたいだ。

 

 「リスティさんの能力だな。リスティさんは他人の心を読む能力があるから」

 

 「何だと!?なら我の心の中も読めると言うのか?有り得んと思うのだが…」

 

 「ならリスティさんに向かって心の中で何か聞いてみたら?《念話を使うんじゃなく普通に心の中で聞くだけでいいから》」

 

 「むう…ならリスティと言ったな?我の心の内に答えろ(今日の夕食はクリームシチューにする予定だが貴様はどう思う?)」

 

 「ボクはビーフシチューの方が好きだからソチラをお勧めするね」

 

 「っ!!?」

 

 あ、ディアーチェ驚いてる。ホントに読まれるとは思ってなかったんだな。

 

 「何々?ディアーチェ何を思ったの?」

 

 「今日の夕食について意見を求めただけだ」

 

 レヴィの質問に答えるディアーチェ。

 

 「それはプライバシーの侵害に当たるのでは?」

 

 「君は確かユーリ…だったな?大丈夫だ。ボクも自分から勝手に他人の心を読む様な事はしないさ」

 

 「だったら俺の心も読まないでほしいんですけど?」

 

 「残念だがそれは無理だ。まあ、ボクの事を『お姉ちゃん』と呼ぶなら善処するけど?」

 

 「…ハア〜」

 

 フィー姉といい、ゆうひ姉さんといい、リスティさんといい、どうして俺のお姉ちゃんになりたがるのかねえ?

 

 「勇紀。そこにフィリスも加えてやれ」

 

 「また俺の…って、もういいです。それより何でフィリスさんも?」

 

 「アイツも勇紀を弟にしたがっているからだ」

 

 「そうなんですか?」

 

 「ああ。ゆうひみたいに態度には出さないがアレもかなりなブラコンだぞ」

 

 ブラコンなフィリスさん…。

 ………うん、想像出来ない。

 

 「そう思うなら今度フィリスと一緒に寝てやるといい。次の日にはベッドのシーツが鼻血で染まっている筈だからな」

 

 「まっさか〜」

 

 『あはは』と笑って答える。

 

 「むう…フィリスに対する態度がボク達と違う。…勇紀はフィリスの事が好きなのか?」

 

 「「「「「「「「「「っ!!?」」」」」」」」」」

 

 リスティさんがそう言うと同時にシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、フェイト、はやて、アリシア、アリサ、すずか、リニスさんが反応する。

 

 「フィリスさんですか?好きと言えば好きですよ。真面目で良い人ですし、尊敬は出来ますね。」

 

 「勇紀。フィリスにそこまで毒されて…」

 

 妹相手にそこまで言うかね?

 

 「…とは言え恋愛感情は無いみたいだからお姉ちゃんは安心したよ」

 

 その一言で『ホッ…』と一息吐いているシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、フェイト、はやて、アリシア、アリサ、すずか、リニスさん。

 

 「何でリスティさんが安心するのですか?」

 

 「そりゃあ、妹であるフィリスを潰さなくて済んだからだよ」

 

 「アンタフィリスさんに何か恨みでもあるの!?」

 

 思わず叫んでしまった。妹を潰すって…。

 

 「冗談だよ冗談」

 

 『ハッハッハ』と笑って誤魔化してるけど目がマジだったよこの人。

 

 「シャレにならない冗談は止めて下さい。お二人が喧嘩したら止められる人は限られてるんですから」

 

 「そうかあ?僕とフィリスの喧嘩を止められる奴なんて結構いると思うよ。勇紀だって((魔法|・・))を使えば簡単に止められるだろう?」

 

 「「「「「「「「「「っ!!?」」」」」」」」」」

 

 リスティさんの発言にここに居る俺以外の全員が表情を驚愕の色に染める。

 

 「あ…あの…」

 

 そんな中、リスティさんに声を掛けるリニスさん。

 

 「貴女は今((魔法|・・))とおっしゃいましたよね?」

 

 「言ったよ。ボクが魔法を知ってる理由は昔、そこの勇紀の心を読んだ時に知ったからだ」

 

 皆の視線が俺に集まる。

 

 「あー…すいません。読まれました」

 

 頭を下げて謝る。

 

 「まあ、勇紀に『言いふらす様な事はしないでほしい』と言われてるからボクから誰かに言ったりはしてないよ。さざなみ寮でもこの事を知っているのはボクと那美、久遠ぐらいだしね」

 

 「那美が知っておるのはともかくとして…久遠もだと?」

 

 「久遠ってあの狐だよね?」

 

 「???ユウ、狐の前で魔法使ってるの?」

 

 ディアーチェ、アリシアは久遠の事を思い出し、レヴィが聞いてくる。

 

 「そりゃ、那美さんが居る所には久遠も大抵いるからな(リスティさん。皆久遠が妖狐だって知らないんだから那美さんに断りも無く久遠の正体バラしちゃ駄目ですよ?)」

 

 「(何だ…皆知らないのか?)久遠は那美の飼い狐だからな。那美が勇紀の魔法を見ている側で一緒に見てるという事さ」

 

 俺の心を読んでくれたリスティさんは久遠の正体をバラす様な事はしなかった。

 皆は『なるほど〜』と納得してくれた。

 

 「しかしリニスさん…だったかな?ボクにそんな事を聞いてくるという事はキミも魔法を使えるのかな?それに先程も、猫と喋っていたようだしね。どうやら美緒とはまた違ったタイプみたいだし」

 

 「あ、いえ…それは…」

 

 明らかに動揺してるリニスさん。何とか言い訳を考えようとしているが

 

 「…はい。私も魔法を使えますし、猫と喋れるのも私が山猫を素体にした使い魔だからです」

 

 結局誤魔化す事はせず、正直に話す事にした様だ。

 それを皮切りにここに居るシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、なのは、フェイト、はやて、アリシアも自分が魔導師だとカミングアウトする。それを聞いても…

 

 「…ふーん。意外に勇紀と同じ力の持ち主って結構いるんだね」

 

 特に驚いた様子も無いリスティさん。

 

 「驚かないんですね?」

 

 「君達はあまり知らない事だろうがこの世界の裏社会ではそう言った異能力を持つ人がわんさかいる。この街にも君達の言う魔導師とは違った存在もいるからね。また異能力者の中には魔法と似た様な力を使う者もいるさ。その者達が使う力は『魔術』と呼んで行使しているらしいがね」

 

 わんさか…ねえ。確かに霊力を扱う耕介さんに薫さん、那美さんに電撃を扱う久遠。実体化出来る霊剣の十六夜さんや御架月君。HGS患者のリスティさん、フィリスさんにフィー姉。後は原作知識で知ってるけどこの世界では未だ会った事の無い真雪さんの妹の仁村知佳さん。

 …挙げた人物のほとんどが、さざなみ寮の住人だな。やはり((海鳴市|この街))は何処かおかしいな。人外集まり過ぎだし。

 そんな事考えてるとテーブルの下で服の裾を握られる。

 俺の隣に座っているのはすずかだった。心なしか裾を握る手は若干震え瞳は僅かながら不安に染まっている。

 あー…、夜の一族も裏の世界の住人だもんな。

 

 「大丈夫、((夜の一族|すずか))の事は言わないから」(ヒソヒソ)

 

 そう言ってすずかを安心させる様に服の裾を掴んでいる手を優しく握る。

 すずかの瞳から不安の色は消え、表情からも安心した様子が見て取れる。

 しかしさっきリスティさん『魔術』って言ってたよな?この世界は『リリカルなのは』だから『Fate』的な要素が絡むとは思えないんだが。……俺達転生者の持つ力は例外として。

 

 「その『魔術』っていうのは『魔法』とは違うのですか?」

 

 「さあ?ボクは実際見た事が無いから違いについては分からないよ。そんな力を使う家系があるって薫から聞いただけだし」

 

 フェイトの質問に答えるリスティさん。その様子を見るに嘘を吐いてる訳では無く本当に知らない様だ。

 

 「その家系の名は何と言うのですか?」

 

 シュテルが尋ねる。俺も紅茶を口に含みながらリスティさんの言葉を待つ。『遠坂』とか『間桐』なんて言われたらどうしようか?

 

 「神宮寺家と言ったな」

 

 「ぶふっ!」

 

 思わず紅茶を噴き出してしまった。机の上に紅茶が飛び散ってしまったがお茶菓子や他の人にかかる事は無かった。

 

 「わっ!!ユウ、汚いよ」

 

 「ゴホッゴホッ…。す…済まん」

 

 「神宮寺家の名前を出した瞬間にその反応…勇紀、お前何か知っているな?」

 

 リスティさんの言葉に全員の視線が集まる。

 

 「…俺が4歳の頃、父さんに連れて行かれた所が神宮寺と名乗る人達の屋敷だった事があったんで…」

 

 そうだった…そうだったよ。確かに神宮寺家の人達が使う能力は『魔法』の他に『西洋魔術』と称してたわ。魔法自体もミッド式やベルカ式とは異なる独自の物だし。

 父さん、裏の世界ではホントに有名人だからなあ。俺が魔法を使えると知る前から色々な所に連れて行かれたっけ。『裏の世界について見聞を広めておけ』とか言ってたけど当時の俺としては良い迷惑だった。

 

 「知ってる事といえば政府に認められた古来より、人を妖から護る役割を担ってきた一族の総称『鬼斬り役十二家』と呼ばれる家系の一つでいわゆる退魔師・妖怪ハンター・ベムハンターなどとほぼ同義、それぞれの一族が特殊な能力を持っている模様で妖と戦ってるって事ぐらいですか?その中で俺が父さんに連れられて会った事があるのは神宮寺家と各務森家だけですけど…」

 

 神宮寺家には俺と同い年、各務森家には二つ上の女の子とその妹が居たっけ。

 

 「退魔師…薫と同業者か」

 

 「と言っても俺も実際に魔法や魔術を見た事は無いですね。神宮寺家の家系について聞いたのと向こうの跡取りであろう女の子を紹介されて、友達になったぐらいですし」

 

 「「「「「「「「「「女の子?」」」」」」」」」」

 

 ジロリッ×11

 

 俺を見ていたなのは以外の皆から睨まれる。

 

 「えと…皆さんどうかしましたか?」

 

 思わず敬語で聞き返してしまう。すずかなんかは握力を強めて俺の手を握る。

 …若干痛いです。

 

 「気にしないで下さいユウキ。それでその娘の名は?」

 

 「『神宮寺くえす』だけど?」

 

 ユーリに聞かれたので素直に答える。

 

 「その娘とはどんな関係なのだ?」

 

 「どんな関係と言われても…さっき言ったように友達になっただけだぞ?」

 

 「ふむ。友達になっただけで他には何も無かったのだな?嘘は言ってないな?」

 

 ディアーチェに言われて正直に答えたのに何処か疑う様な感じで聞いてくる。

 他に……か。最初は無愛想で結構高飛車な奴だったけど何だかんだで仲良くなったっけ。それで父さん、母さんと共に一泊お世話になって次の日の別れ際に…

 

 「う…//」

 

 何か思い出したらちょっと恥ずかしくなってきた。

 

 「…ほほう」

 

 ギラリと更に視線を鋭くして俺を見やるリスティさん。

 しまった!!また心の中を読まれた!!!

 

 「勇紀。お姉ちゃんに内緒でそんな事を…」

 

 「???リスティさん、勇紀君とその娘の間に何があったんや?」

 

 「その娘は勇紀と同い年で…勇紀の((ファーストキス|・・・・・・・))の相手らしい」

 

 ピシイッ!!

 

 リスティさんの暴露になのはと暴露したリスティさん以外の皆が固まってしまった。

 何だ何だ?

 

 「ア、アアア…アンタ…」

 

 いち早く再起動したらしいアリサが声を震わせる。

 

 「どど、どういう事なのよ!!?キ…キキキ、キスしたなんて聞いてないわよ!?」

 

 いや、聞いて無いのも当然だろ?言ってねえし。そもそも今の今まで忘れてたし。

 

 ギリギリギリッ

 

 っ!!?

 すずかの握力が更に上がる!!

 

 「す…すずかさん!?手が痛いんですけど!?それに何か怒ってますか!?」

 

 「ベツニオコッテナイヨ。キノセイジャナイカナ?」

 

 気のせいじゃないし!!明らかに怒ってるし!!!

 周りを見渡すが皆瞳から光消えてるし、殺気放ってるし。唯一まともな、なのはは震えてこっちに視線を合わせてくれない。

 …ここに味方はいねえ。

 俺はそう嘆かわずにはいられなかった………。

 

 

 

 「つまり勇紀は自分からキスした訳じゃないんだね?」

 

 「だから何度もそう言ってるんだけどフェイト?俺はむしろ奪われた側だ」

 

 あの後、なのは以外の女性陣がO☆HA☆NA☆SHIしようと襲い掛かってきたのでバインドで拘束し((唯我独尊|オンリーワンフラワー))を使って魔力とリスティさんの力を封じた上で、皆が冷静になるまで待った。

 

 「そう言う事はもっと早く言おうよ勇紀」

 

 「俺は最初から言ってたよアリシア!?有無を言わさず襲ってきたのソッチだよね!?」

 

 「「「「「「「「「「うっ…」」」」」」」」」」

 

 言葉を詰まらせる女性陣。今回は自分達が悪いと思っているようだな。

 

 「ゆ、勇紀君…。もう皆反省してるみたいだし、許してあげてほしいの」

 

 唯一、襲ってこなかったなのはが懇願する。

 …もう流石に襲ってくる様子は無いな。

 俺は無言でバインドと((唯我独尊|オンリーワンフラワー))を解き、身柄を解放する。

 

 「勇紀。魔法でボクの力を封じる事が出来るなんて聞いてないぞ?」

 

 「そりゃあ((唯我独尊|オンリーワンフラワー))は魔法じゃなくて俺固有の能力ですから」

 

 リスティさんに俺のレアスキルについて簡単に説明する。説明し終えた後…

 

 「ユウキ、本当にすみませんでした」

 

 「「「「「「「「「「ゴメンなさい」」」」」」」」」」

 

 「分かってくれればいいんだ。気にすんな」

 

 シュテルを筆頭に皆頭を下げて来る。

 

 「うんうん。皆仲良くが一番なの」

 

 なのはの言う通りだ。出来れば俺に対してのO☆HA☆NA☆SHIは今後一切無くしてもらいたい。

 ……まあ、してきたとしても最近は対処法も出来た事だし油断さえしなければ充分対応出来る。

 

 「ええ、諸悪の根源はユウキではなくその『くえす』とかいう女なのに」

 

 …ん?

 

 「そだね。ユウは悪くない!悪いのはその女だよ」

 

 あるぇ〜?

 

 「ユウキのファーストキスを奪った女…。恐らく嫌がるユウキに無理矢理迫ったのであろう」

 

 もしもし?

 

 「ユウキがキスの意味も知らない内にファーストキスを奪うだなんて、断じて許し難いですね」

 

 いや、キスの意味ぐらいは知ってるよ?

 

 「勇紀とキスだなんて羨ま……破廉恥だ!!これは重罪だよ!!」

 

 「そうだね姉さん。流石に管理局員として見過ごせないよ」

 

 アリシアよ。俺のキスにそこまで価値なんて無いと思うぞ。それからフェイト、管理局員は関係無いからな。

 

 「これは宣戦布告と見てもええよな?シグナム達にも言うておかんと」

 

 んな事で自分の固有戦力使うなよはやて。

 

 「その女について詳しく調べる必要がありそうね」

 

 アリサの目がマジ過ぎる。

 

 「私もお手伝いするよ?アリサちゃん」

 

 止めれすずか。

 

 「私はプレシアとアルフに連絡してまっさ……対策を練る事にしておきます」

 

 リニスさん!?今『まっさ』って言ったよね!?その続きの文字は『つ』じゃないよね!!?

 

 「ボクは公安に掛け合って調べようかな」

 

 リスティさん…アンタもそこまで大げさにすんなや。

 

 「新たな人物の登場ね♪本当に楽しみだわ♪台風の目になるかしら?」

 

 「テメエはどっから沸いて出た椿姫いぃぃぃぃぃっっっっっ!!!!!」

 

 いつの間にか隣にいた椿姫。叫んだ俺は悪くない。

 

 「何やら面白い事が起こりそうな予感に導かれて♪」

 

 クソ!!コイツ絶対に今後の状況を想像してどう自分が楽しもうか考えてやがる。

 そしてその被害の矛先は間違い無く俺に来る。

 

 「で?で?どういう状況なの?」

 

 キラキラと瞳を輝かせながら尋ねてくる。

 

 「知るか。お前が関わるとロクな事にならんから絶対に言わん」

 

 「酷い!!仲間外れにするなんて酷いわ勇紀!!」

 

 『よよよ』と泣き崩れた真似してる椿姫。だが俺はソレを無視して今後について考える。

 このままだと間違い無く俺が巻き込まれる。O☆HA☆NA☆SHIされて喜ぶようなマゾではないんだ俺は。

 

 「(ん?でも俺が今後くえすと再会する保障なんて無いし、もう7年は会って無いんだ。向こうも俺の事覚えてるなんて事は無いかもしれない)」

 

 そう思うと何だか気が楽になった。

 そうだよな。いくらくえすと友達になったと言っても普段から一緒に過ごしてるシュテル達や友達になったなのは達みたいにちょくちょく顔を合わせる程の間柄でもなく家に電話が掛かってきたり手紙、メールでやり取りしてる訳でも無い。

 もう長谷川家とも疎遠になってるから今後顔を合わせるなんて事は無い筈。

 

 「勇紀。それは『再会』フラグかもしれないぞ」

 

 …リスティさんが何か言ってるが無視しておこう。それに…

 

 「「「「「「「「「「その娘に会うのが楽しみですね♪(楽しみだなあ♪)(楽しみだ♪)(楽しみやわあ♪)(楽しみだわ♪)(楽しみだね♪)(楽しみですね♪)」」」」」」」」」」

 

 笑顔でドス黒いオーラを出しているコイツ等に会わせて死亡フラグを乱立させるのもかわいそうだし。

 俺は切にくえすと再会する事が無いように願っていた………。

 

 

 

 〜〜某所〜〜

 

 「へくちっ!」

 

 一人の娘が書物を読んでいる最中にクシャミをした。

 

 「誰かが私の噂でもしてるんでしょうか?」

 

 その少女は書物から顔を上げ、天井を見上げながらふと思案する。

 

 「しかし私の事を噂する人物なんてあまりいないと思うんですけど…」

 

 少女以外、誰も居ないにも関わらず独り言のように言葉を発する少女。

 

 「十二家の誰かかしら?だとすればあまり良い思いはしませんわね。十二家以外だとすれば…」

 

 そこで少女は幼い頃、初めて友達になった少年の顔を思い浮かべる。

 同年代でありながらどこか見た目にそぐわない大人びた雰囲気を持つ少年。そして…

 

 「私の初めての唇を捧げた子…私の初恋の男の子……『ゆうちゃん』////」

 

 少女は頬を染め、その日の事を鮮明に思い出す。

 

 「はあ〜…うふふふ……////」

 

 口元からは涎が垂れ、うっとりとした表情を浮かべている。完全に意識は妄想の中に浸っている(妄想の中はとても11歳が想像するとは思えない程過激な…ぶっちゃけ、えちぃ事想像してます)。

 

 「…ハッ!?い、いけませんわ。淑女ともあろう者がはしたない」

 

 しばらくして意識が現実に戻ってきた少女は頭をブンブンと振り、雑念を振り払う。

 

 「彼も自分の父親の様に裏社会で生き残れる様、必死で鍛錬を積んでいる筈。ならば私も彼と肩を並べられる強さや知識を身に付けなければ」

 

 再び少女は書物に視線を戻す。

 

 「貴方に相応しい((淑女|レディ))となって必ず会いに行きますわ。ですから待ってて下さいね『ゆうちゃん』////」

 

 初恋の男の子、『長谷川勇紀』の事をしっかりと覚えていた少女『神宮寺くえす』。

 その言葉を最後に彼女は再び書物を読む事に意識を集中させるのだった………。

 

 

 

 〜〜某所での一幕終了〜〜

 

 「さて、少年少女達よ。そろそろお茶会はお開きにして帰る準備をしなさい」

 

 手をパンパンと叩いてリスティさんがお開きの宣言をする。

 

 「???まだ4時過ぎですよリスティ?」

 

 「シュテル、最近は物騒だから子供だけで街をウロつくのはあまり感心しないんだよ」

 

 シュテルの質問に答えるリスティさん。物騒といえばこの前の((担任|ロリコン))の一件だな。

 あれから御用になった((担任|ロリコン))は懲戒免職処分となり、現在は刑務所の中にいる。

 さすがに今回は保釈金も認められなかったそうで…自業自得としか言いようがない。

 

 「勇紀、ソレだけじゃない。海鳴市の隣、榊野市榊野町で起きた事件はニュースで見ているか?」

 

 リスティさんに聞かれて思い出してみる。

 そういえば……

 

 「確か((榊野|さかきの))((学園|がくえん))という高校の生徒二人が惨殺された事件…ですよね?」

 

 「ああ、少年一人と少女が一人殺された事件だよ」

 

 リスティさんが頷き答える。周りの皆も『そういえば…』とニュースの内容を思い出している様だ。

 

 「えっと…男の人は自宅のマンションで、女の人は学校の屋上で殺された…んだったよねシュテるん?」

 

 「ええ、そのように報道されていましたね」

 

 シュテルとレヴィの会話を聞き、再び頷くリスティさん。

 

 「男子生徒の被害者は((伊藤|いとう))((誠|まこと))(16)。腹部を何度も刃物で刺され亡くなっていた。しかも被害者の頭部が遺体から切断され、現場から持ち去られている。次に屋上で殺されていた女性は((西園寺|さいおんじ))((世界|せかい))(15)。首筋を刃物で切られた上に下腹部を惨たらしく切り裂かれた遺体で発見された。この西園寺という女性が持っていた包丁に付着していた血液だが男子被害者、伊藤誠の物と一致したため、伊藤誠を殺害したのは彼女だと思われる。ただ…」

 

 一旦言葉を止め一呼吸置いてから

 

 「西園寺を殺したかどうかは分からないが同学園に通う一人の女生徒が行方不明になっていてな。その女生徒の両親から捜索願が出されている。女生徒の名前は((桂|かつら))((言葉|ことのは))(15)。この事件が起こったのと同時期に行方が知れなくなっているから彼女が何か事件に関わっていると思って警察は捜査本部を設置して探していた所…」

 

 「探していた所?」

 

 「…海の沖で桂家の所有してるヨットを海上保安庁が発見した。しかしヨットには誰も乗っておらず男子被害者、伊藤誠の頭部だけが残っていた」

 

 「……まさかその桂って人、自殺したんじゃ?」

 

 「現在はその線が濃厚で調査を進めているが断定は出来ていないのが現状だ。ひょっとしたらまだこの街にいる可能性も捨てきれないし、しばらくは捜索が行われるだろう。それに警察は彼女が西園寺を殺害した犯人だと予想して動いている。もし彼女が犯人でこの辺りに潜伏しているなら被害者がまだ出るかもしれない。それこそ何の関係も無い一般人にも及ぶ可能性がね。だから当面は子供だけでの外出時間を厳しく制限する様に学校に通達される筈だ」

 

 言い終えたリスティさん。周りの皆はリニスさんを含め顔色が悪くなっている。……亡くなった人達の遺体を想像したのだろうな。

 

 「あれ?でも事件があったのは隣の榊野市でしょリスティさん。何で海鳴警察に努めてるリスティさんがそんなのも事情詳しいんです?それにそんなに話していいんですか?」

 

 俺は疑問に思ったので聞いてみた。

 

 「単純に人手が足りないから応援として海鳴警察署からもボクを含めて事件の捜査に五人程関わってるからさ。それに今言った内容は近々ニュースで発表する内容だから少し早いが情報を開示しても問題無いだろう」

 

 いや、有ると思うんだけど。

 

 「そう言う訳で悪いがもう帰る準備をしてくれないか?」

 

 「まあ、そう言う事でしたら…」

 

 俺達は皆帰る準備をして帰る事にする。歩いて帰らずに皆を転移魔法で送る事にした。その方が安全だし、家の玄関内に転移すれば他人に見られる心配も無いだろう。

 すずかに挨拶を済ませて俺達は転移する。『早く犯人が捕まってほしいな』と願いながら。

 …この時、俺は思っても見なかった。

 この行方不明になっている女性が8年後に起きるSts原作のJS事件(この世界ではおそらくJS事件とは呼ばれないと思う)の際に俺達の敵として出会うことになるとは………。

 

 

 

 〜〜第三者視点〜〜

 

 「…ここは何処でしょうか?」

 

 少女は今自分が何処に居るのか分からなかった。前後左右何処を見渡しても自分の目に映るのは沢山の木。

 どこかの森にいるらしい事は理解出来るのだが何故ここに居るのかは理解出来ない。

 

 「私は誠君と一緒にヨットの上にいたのですが…」

 

 今、少女の側に愛しい誠君なる人物はいない。血にまみれている鋸だけが少女の手に握られている。

 

 「誠君とはぐれちゃったんでしょうか?」

 

 そう誰かに尋ねる様に声を発するが答える者は誰もいない。

 めぼしい目印も無いが少女は森の中を歩き始める。

 

 「誠くーん!!どこですかー?」

 

 少女は方角も何も分からぬままひたすら森の中を右往左往する。

 

 ガサガサと草木を分け、歩き続ける事約1時間。

 偶然にも少女は自分が気付かぬ内にいた最初の場所に戻ってきていた。

 

 「困りました。…誠君に会えません」

 

 気落ちする少女。しかしそこへ草むらを掻き分けて新たな人物が姿を見せる。

 

 「誠君!?」

 

 パアッと表情を明るくする少女だがそれも一瞬の事。

 自分の探していた人物でないと分かるや否や表情はまた暗くなる。

 

 「ふむ…この辺りで微弱な次元震が起きたから様子を見に来たのだが…」

 

 新たに現れた人物は男性だった。

 男性は目の前の少女を見やる。

 

 「(服装から察するに何処ぞの良家の娘かな?少なくとも管理局員では無いようだしね)」

 

 男は少女について考察する。

 

 「あの…」

 

 そんな男性に少女は言葉を掛ける。

 

 「何かね?」

 

 「誠君を知りませんか?」

 

 「誠君?」

 

 「はい」

 

 「ふむ…。ここに来るまで私は君以外の人を見かけてはいないな」

 

 「そうですか…」

 

 肩を落とし俯く少女。

 

 「その誠君というのは君の友人かね?」

 

 「いえ、私の彼氏です」

 

 男性の質問に顔を上げて答える少女。

 

 「その彼氏君とはぐれたのかね?」

 

 「はい。少し前まではヨットの上で私と一緒に寝ていたのですけど…」

 

 「ヨット?ここは見ての通り森の中だが?」

 

 「ですよね。私も何故ここにいるのか理解出来なくて…」

 

 その会話で男は推測する。『彼女はおそらく次元漂流者だろう』と。

 

 「この付近には村なんて無いし、人の気配も無い。おそらく君とその誠君というのは次元震に巻き込まれて別々の場所に漂流したのかもしれないね」

 

 「次元震?」

 

 聞いた事の無い単語に女性は首を傾げる。

 

 「次元震というのはだね…」

 

 男性は何も知らないと思われる女性の現状について次元震の説明と共に、自分で推測した内容について語り始める。

 説明を終えた男性。女性は…

 

 「じゃあ、誠君はこの世界にいないのでしょうか?」

 

 男性に聞き返す。

 

 「いるかもしれないし、いないかもしれないね。こればかりには私も断言出来ないよ」

 

 「そんな…私はどうすれば?誠君も私と離れて寂しがっているかもしれないのに…」

 

 悲観に暮れる少女。

 

 「…お嬢さん。私の仕事を手伝うつもりは無いかね?」

 

 「仕事?」

 

 聞き返す少女に男性は頷く。

 

 「丁度、私に助手…というか人手が欲しかった所でね。勿論タダでとは言わないよ。私はその誠君とやらの情報を集めるのに尽力を尽くすとしよう。どうかね?下手に歩き回ってすれ違うより私の元で情報を待った方が再会出来る確率は高いと思うのだが?」

 

 「本当に誠君に会えるのでしょうか?」

 

 「必ずとは言えないが確率は高いだろうね。どうだろうか?衣食住も提供出来るよ?」

 

 「分かりました。お願いします」

 

 少女は頭を下げ、男性に頼む。男性も満足そうに頷く。

 

 「ではこれからよろしくお嬢さん。早速だが名前を聞いてもいいかい?」

 

 「私は言葉…『((桂|かつら))((言葉|ことのは))』と申します。貴方は?」

 

 「私の事は『ドクター』とでも呼んでくれたまえ」

 

 「ドクター…お医者様ですか?」

 

 「研究者の方のドクターだよ。人体を調べた事もあるけどね」

 

 『クックック』と男は笑う。

 

 「さて、ここで長居する事も無いだろう。まずは私の研究所に案内しよう」

 

 そう言ってドクターと名乗った男は歩き出し、言葉と名乗る少女はドクターの背を追って行く。

 

 「(誠君、すぐに見つけますから待ってて下さいね♪)」

 

 「(桂言葉…。見ているだけで精神が蝕まれるような彼女の壊れた瞳と壊れた声色。実に興味がある。一体何が彼女をこんな風にしてしまったのか。私も幾万と壊れた人間を見てきたがここまで((精神|ココロ))が壊れ、狂気に満ちた人間と会うのは初めてだ。もしかしてその誠君とやらが関係しているのかもしれないが本当に興味深い。この様な興味深いのが世界に存在するからこそ私の欲望は果てしなく何もかもを求めてしまうのだよ。クックック…)」

 

 それは偶然か必然か…。

 狂気と欲望が出会い、混じり合ったこの時から運命は少しずつ迫り始める。

 原作とは似て非なる事件の幕へと………。

 

 

 

 〜〜第三者視点終了〜〜

 

-2ページ-

 〜〜あとがき〜〜

 

 …という事で『リリカルなのは』でも『とらハ』でもない他作品キャラを出してしまいました。

 まず『神宮寺くえす』ですが、『鬼斬り役十二家』という事で『PALLADIUM GARDEN』の方じゃなく『おまもりひまり』バージョンのくえす様です。原作の登場キャラの中で作者である自分が一番好きなキャラという理由で登場させました。原作主人公の『天河優人』とも関わりはありますが原作と違い、優人は((もう一人の許嫁|・・・・・・・))であり、優人に猫アレルギーになる魔法は使っていないです。それに一足先に勇紀が出会い、フラグ立てちゃったので(笑)。後、勇紀の父親は((天然規格外|ナチュラルチート))なので鬼斬り役はおろか、退魔師でないにも関わらず、その遺伝子を継ぐ勇紀とくえすが結ばれるのは神宮寺家にとっても良い事だと思っているので勇紀が『本命』、優人は万が一勇紀と結ばれなかった…或いは神宮寺家の期待通りの存在ではなかった時の『保険』といった感じです。後、勇紀自身はくえすが許嫁だという事は知らされておりません。

 

 次に某ヤンデレさんですが、この作品では公式チートの高町家の面々(桃子さん除く)同様にバグキャラとして機動六課の前に立ち塞がる存在として書く予定です。AAAランク魔導師の((防御魔法|プロテクション))ですら鋸で豆腐の様にスパッと斬っちゃいます。『バリアジャケット?何それ?美味しいの?』状態です。一撃で致命傷、もしくはご臨終の攻撃力です。

 始め、この設定で友人達に言った所、『成る程、銀髪トリオはこれで鮮血の結末を迎えるんですね。分かります』と言われましたが自分はそんな事する予定はとりあえず有りません。

 それとアニメ版では言葉様が屋上で殺っちゃう展開は11月では無いのですがこの小説では11月に起きた事件という事でご了承願います。

 

 最後に勇紀達の前世では『おまもりひまり』は漫画やアニメの存在は無く、『School Days』に関しては勇紀、亮太、椿姫は原作知識が無く、銀髪トリオは原作知識有りという設定で行きたいと思います。

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
あとおまもりひまりは原作しか持ってないですけど、ファンですので嬉しいですー♪(海平?)
西園寺世界ってかなりヤバいお方じゃありませんでしたっけ・・・((((;゚Д゚))))(海平?)
ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!?トラウマヒロインが!?誰も居ないがやってくる!?(孝(たか))
StSでバグキャラ化したロリコンが勇紀とヴィータへの恨みとリイン、キャロ、ルーテシア、ヴィヴィオを狙って敵として出てきたりしてw(プロフェッサー.Y)
各務森姉妹はヒロイン入りしますか?(夜刀)
言葉さんこわい。出来れば銀髪トリオに相手をしてもらいたいところです。もっとも、銀髪トリオがStSに関われるかどうか解らないけれど。(chocolate)
思った以上の多重クロス。そして相変わらずのフラグメイカー主人公。最終回になる頃には一体どれほどのフラグを回収しているのか。(chocolate)
誤字報告です。「俺はそう嘆かわずにはいられなかった………。」ですが、「嘆かずにはいられなかった」だと思うのですが・・・(俊)
銀髪トリオがいないと静かだよね(なゆた)
血まみれendじゃなくても、心折られて廃人ぐらいにはなりそうだがな……。(hikage961)
銀髪トリオに某ヤンデレの知識有ってもなぁ……。なんでリリなの≠フ世界にいるんだ!とか喚いて終わるか、油断して怒らせて惨たらしくなるかじゃない?(hikage961)
...とにかく! 彼のハーレムはどんどんupgradeしますね~ 彼のハーレムをどの程度まで行のくか 興味深いてすね.(deltago)
ひょっとすると...ナンバーズに代わる敵sが 桂言葉含む 'ヤンデレs'かもしれない...?! (deltago)
やっぱりかw哀れロリコン(担任)w(tenryu)
何だがどんどんカオスになっていきますね。彼のハーレムはどこまで進むのやら。そしてロリコン、二度と刑務所から出てくるなww(アリアン)
ナイスボーt・・・いや言うまい(笑) ロリコンは余罪多そうだから当面出てこれない・・・といいな。先導するのがいなくなったから学校生活は少しは穏やかになりますかね。さて再会フラグにより更にカオスになりますねw(氷屋)
くえすだけでなく飛白とも顔見知りですか。飛白と飛鈴の姉妹も勇記の事を恋愛対象として意識していて欲しいですね。それと、飛白の繋がりから吸血姫のソフィアに登場して貰って勇記ハーレムの一員に加わって欲しいです。そしてロリコンは刑務所の中ですか。自業自得ですね、いいザマです。(俊)
読んでいったらコラボが増えていったでござる。両方ともそれなりの内容を知っているためふきました。名前も略せば両方とも『ゆうちゃん』上手いな(Fols)
哀れロリコン…まぁ自業自得だよね(シュヴァイツァ)
銀髪トリオ血まみれendじゃねぇのかよ!チクショー!そしてロリコンついにムショに入れられたかw(kaito)
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