真恋姫†夢想 弓史に一生 第七章 第一話 劉徳同盟 |
〜聖side〜
「聖。息のある奴は捕縛して一箇所に集めておいた。」
「おう、一刀お疲れ様!! 逃げた奴らに細作は付けといたか?」
「あぁ。待ってれば報が届くはずだよ。」
「ご苦労。音流、こちらの軍の被害は?」
「一番隊と二番隊にちょこっと被害の出とうばってん、死者は出やないっち話ばい。」
「了解。じゃあ、三番隊に周辺の警備をさせて、残りは休むように言っといて。」
「了解ばい。」
「橙里、あっちの方はどうなってる?」
「先ほど伝令が戻ってきて、明日には着くそうなのです。」
「よし。引き続き伝令を送り、詳しい合流時期を見定める。合流後は作戦通り行くぞ。皆、準備は良いか?」
「「「「はい!!」」」」『応っ!!』
戦後処理が一段落し今後の展開について一通り話していると、劉備軍の面々が訪ねてきたと伝令兵が伝えに来た。
俺は一刀だけを連れて、劉備たちを俺の天幕の中へと案内した。
「まずは、勝利おめでとうと言うべきかな?」
「それは、お互い様じゃないですか?」
「……そうだな。じゃあご苦労様、劉備。」
「ご苦労様です、徳種さん。」
握手を交わし、お互いの健闘を労う。
聞くところでは劉備軍の被害も予想より少なく、今回の戦いは大勝利だということだ。
確かに、この戦でこの衢地を落としたのはでかい…。
この報が各地に伝われば、劉備の名声は一気に高まることだろう。
その事を考えれば大成功と言うのも頷ける。
「で? 何の用事でうちの陣地に来たのかな?」
お互いに被害の話や世間話を持ち出していたが、何ともくだらない腹の探りあいは俺の性分じゃないので単刀直入に聞く。
俺の質問に、劉備軍の面々の表情が硬くなるのが目に見えて分かる。
まったく……もう少し顔に出さないようにしようぜ……。
「あはは……。え〜っと……。」
「大方、お礼に来た名目で何かを頼みに来たってとこだろ……。」
「あは………あはははっ………。」
「図星みたいだな。」
何とも分かりやすく表情が変化する子だ……。
こりゃ、腹の探りあいとかそんな駆け引きしたら全敗だろうな……。
「先ほどから聞いていれば、貴様も義勇軍ではないか!? 何故貴様のほうが上からの立場で話をしている!!」
劉備の心の読みやすさに苦笑していると、彼女の後ろから長い黒髪の女性が声をあげた。
……忠誠心は見上げたものだが……身の程を知らないと今後大変だろうに……。
躾のなっていない子には教育が必要だね……。
「………名前は?」
「我が名は関羽!! 桃香様の一番が槍にして、此度の先陣を仰せ仕った。」
「そうか、関羽。 じゃあ…………立場分かって発言してんだよな?」
「っ!?」
瞬間、辺りの空気が凍りつき、皆の表情が変わる。
関羽は身体が震えている。
劉備と諸葛亮は腰を抜かして震え、泣き出す一歩手前といった感じか…。
……あっ………一刀が泡吹きそうになってる…。俺知らねぇ…。
「………今は大将同士の話し合いだ…。臣下の者がしゃしゃり出てきて良い場じゃねぇ……分かったか?」
「………。(コクコク)」
「いい子だ。(にこっ!)」
俺が笑うと、緊張の糸が緩んだように皆が膝をついて倒れる。
「おいおい…。大丈夫か?」
「あ……あははっ……何とか。」
「ほら、手を貸してやる。」
「あっ……ありがとうございます。」
腰の抜けた劉備を起こし、木の椅子に座らせてやる。こうしないと話が進まないしな。
「その……徳種さん。」
「聖で良い。関羽にも言ったが、大将同士なんだ。お互いに気楽にいこうや。」
「では、聖さん。愛紗ちゃんを怒らないであげてください。」
「………理由を聞こうか。」
「愛紗ちゃんはちょっと突っ走っちゃう事が有るけど、真面目で私のことを第一に考えてくれるからこそさっきみたいなことになっちゃうんです。愛紗ちゃんがしたことは私が謝ります。」
「臣下の手綱を確りと握ってこそ、良き大将だと俺は思うが??」
「……その通りだと思います。まだまだ、皆に助けてもらってばかりで、私には大将としての自覚も能力も無いけど、それでもこの国のことを考えて戦い、それに賛同してくれている仲間がいる。その仲間のために今出来ることをする。それが今の私の役目です。」
仲間ね………。
「成程、良い答えだ。 ……関羽に関しては俺から言うことはない。」
「本当ですか!?」
「あぁ。そもそも、怒る気なんてさらさら無いしな。」
「えぇ〜!!」
「関羽だって、さっきの忠告で分かっただろうからな。なぁ、関羽??」
関羽に話を振ると、申し訳なさそうな顔をしながら『出張ったまねをしてすいませんでした。』と頭を下げたので俺はもう満足である。
「話が脱線しちまったな……。元に戻そうか。」
「そうしましょうか…。 では聖さん。兵と将は必要ではないですか?」
「………つまり、君たちを雇わないかと言うことか…。」
「はい。その方が、この後の戦いでお互いに兵の被害が少なくて済みますよ。」
「………はぁ〜……その代わり兵糧を請求するんだろ?」
「何で分かるんですか!!?」
「義勇軍で起こりやすい問題は、兵の逃亡と食料の枯渇ぐらいだからな……。兵の逃亡者なんかは見受けられない時点で、ある程度予測は出来てるよ…。」
「ほえぇ〜〜〜……。そんな事まで分かるんだ〜…。」
「何れ君にも分かるようになるさ。 さて、この件に関してだが……そちらの要求を呑もう。」
「良いんですか!?」
「あぁ。よろしく頼むよ。」
「やった〜〜!!!! じゃあじゃあ、しばらくは一緒に行動をよろしくお願いしますね♪ 私は劉備、字は玄徳、真名は桃香です。」
「こちらこそよろしく頼むよ。俺は徳種聖。字も真名も持ってないから、呼びたいように呼んでくれ。」
ここに、お互いの利益のため劉徳同盟が結ばれる。
勿論、この戦いが終わるまでの限定的なものとなるだろうが、それでも心強い仲間が増えると言うのは嬉しいものである。
出来るなら今後のことを考えて、桃香たちとは出来る限り仲良くなっておきたいものだが…。
「そう言えば、聖さんの仲間の人って……。」
「顔合わせしとかないと不味いよな……。一刀、皆を呼んできてくれ。」
「分かった。」
一刀が天幕から出て行くと、先ほどから一言も発せず黙っていた諸葛亮が口を開く。
「義勇軍にしては、装備や糧食の保有が潤いすぎてます…。聖さん、あなたの役職はなんですか…?」
「………まぁ、何れ教えるつもりだったから良いか……。 俺は広陵郡の太守をしている。」
「ええぇぇ〜!!!!!!!!」
俺がそう答えると、桃香は両目が飛び出そうなほど目を大きく見開いて驚く。
そして俺はその姿に驚く…。
「広陵郡って……確か町の発展が凄く、この大陸でも有数の発展都市だって……。」
「確かに……でっかくなったよな…。」
「それに犯罪も少なく、商人たちが安心して商い出来る街だって……。」
「新撰組の皆頑張ってるもんな……。」
「その広陵の本当の本当に太守さんなんですか!!??」
「本当の本当に太守だよ。」
「すっご〜〜い!!!! 実は、広陵は私たちの軍の憧れの都市なんです。いつか私達もあんな街を作れるようにならないとねってよく言ってます。」
「おぉ、そりゃどうも。でも、あれは俺一人の力でなく、皆俺の仲間のお陰だけどな…。」
すると、天幕の前に人が来たのが見えた。
どうやら、一刀が皆を連れてやってきたみたいだ。
「皆、入ってくれ。」
俺の一言で次々と天幕の中へ入っていく上で、
「朱里!!!!」
「っ!! 橙里お姉ちゃん!!?」
橙里は、実の妹に久しぶりに会えたのがよほど嬉しかったらしく、勢いよく天幕に飛び込んでくるが否や、諸葛亮を胸に抱きしめた。
端から見れば、姉妹の仲睦まじいシーンなのであるが、よく見ると諸葛亮の顔が橙里の胸に埋まり、諸葛亮が先程から必至に手足をバタつかせている所を見ると、窒息死寸前なのではないかと思われる。
恐るべし……橙里の胸の大きさ……。
「会いたかったのです、朱里〜〜〜!!!!!!」
「ん〜〜んんんんっ〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
「私が水鏡母さんのとこを出て以来なので、実に二年ぶりですかね〜…。」
「ん〜〜!!!!!!!!!!!!」
「朱里は昔からか弱いから、旅に出たと言う話を聞いて心配で心配でたまらなかったのです…。」
「…………。(ピクッ!! ピクピクッ!!)」
「でもこうして生きていてくれて、お姉ちゃん嬉しいのです。」
あぁ……。諸葛亮がピクピクしてら……。
「橙里。諸葛亮の命が今まさに尽きようとしてるぞ…。」
「えぇ〜〜!!!!!!! 朱里!! 朱里〜〜!!!!!」
「…………。(ピクッ……。)」
何とか一命を取り留めた諸葛亮。後に諸葛亮はこれがきっかけで巨乳を嫌いになったと言う。
「ごめんなさいです朱里〜〜。お姉ちゃんが悪かったのです。」
「ふんっ!! お姉ちゃんなんか知りません!!」
「朱里〜〜!!!!」
「姉妹喧嘩中悪いが………諸葛亮、橙里を許してやってくれないか? そうじゃないと、お互いの将の紹介がすまない。」
「朱里ちゃん。私からもお願い……。お姉さんを許してあげて……。」
「桃香様がそう言うのであれば………。」
「本当!! 朱里のそういう優しいところ、お姉ちゃん大好きなのです!!」
「もう………お姉ちゃんは少し反省してよね!!」
「反省してるのです。すっごく反省してるのです!!」
頭を下げて諸葛亮に謝る橙里。
橙里って妹が絡むとこんなんになるんだな……。
「諸葛亮……。」
「何ですか……。」
「お前に対する橙里の態度っていつもこんな感じか?」
「………恥ずかしながら…。」
諸葛亮は困った顔をしているが、それでも嬉しそうだった。
どうやら、この姉妹はお互いにお互いが好きなんだろうな……。まぁ、橙里からの矢印が強すぎるようだけど…。
「さて、ちょっとごたごたしたが、俺の仲間は今はこれだけだ。この他に広陵にもう数人いる。」
「そんなにいるんですか!?」
「優秀な人材は集めておくにこしたことは無いからな……お陰で助けてもらってるよ。」
俺がそう言って橙里たちを見やると、照れながら『それほどでも…。』と言いたそうな顔をしていた。
「俺たちは劉備たちと共に行動し、黄巾賊の本体を叩く。それまでは劉徳同盟を結び、お互いに仲良くやっていこうという事になった。皆、自己紹介してくれ。」
「私達も仲良くするために、自己紹介しよう!!」
この後全員が自己紹介を終え、それぞれが真名を交換し合った。
桃香たちにも他に仲間が居るらしく、残りの将は何れ紹介するということだった。
正直、俺はそこまで認められるとは思っていなかったのだが、桃香曰く、「同盟を結んだのなら、それ相当の誠意を見せないとね♪」だそうだ…。
今後の進軍については明日決めることとして、今日は衢地に築かれている相手が使っていた陣地を使って休むことにする。
どうやら桃香たちも兵を休ませたかったらしい。
と言うのも、新参兵ばかりで組まれた桃香たち義勇軍。
初戦闘と言うことで、多くの兵が精神的に疲労しているそうだ。
「それじゃあ聖さん、また明日。」
「おやすみ、桃香。」
最後に簡単に挨拶を交わし、退出していく桃香たち。
その後を追うように橙里たちも出て行き、俺の天幕内には誰一人としていなくなった。
「ふわぁ〜〜……。今日も戦闘で疲れたから眠いな〜〜………。」
そう言いながら天幕の入り口付近を見る。
「…………だから、用事ならさっさと済ませて欲しいんだけどな、愛紗さん。」
「っ!? ………まさか、気付かれておられるとは……。」
天幕の入り口の布を捲り、中に入ってくる愛紗こと関羽さん。
その顔は申し訳なさそうな顔をしているが、果たして何の用事で再び来たのか……。
「中を伺うような真似をして申し訳ありません……。」
「いやっ、警戒心を怠らないその姿勢は良いと思うよ。で、用事は何かな?」
「今日の賊との戦闘……。あなたが一人で多くの賊を切り倒し、私たち先陣の壊滅を防いでくれたと兵から聞き及んでおります。それについては大変助かりました。」
「なんだ……。そのことなら、俺たちがいた所為で敵が思い通りに出てこなかったんだから、手伝うのは当然のことだろう。」
「それと……先程の立場を弁えない発言。本当に申し訳ないです……。」
そう言って頭を深々と下げる愛紗さん。
そのことは既に済んだはずなのだが……彼女なりのけじめのつけ方というやつか…。
「そのことは気にしないで。もう済んだことだから…。」
「それでは私が納得できません。だから、もう一度確りと謝らせてほしいのです。」
「……真面目なんだな。」
「生まれつきの性分でして……。良い事と悪い事の区別をつけねば気が済まないのです。」
「ほぅ……。」
どうも、愛紗の表情が硬く強張っているように見える。
……どうもこりゃ謝りに来ただけじゃ無さそうだな…。
「悪い事をした者には天罰を下す。それが私の方針でした。」
「……それで?」
「それが基で私は昔、山賊狩りをしていたことがありました。黒髪の山賊狩りと賊の間では噂になっていたそうです。」
「そりゃ、大層なあだ名だ……。」
「そうでしょう? しかし、私が山賊狩りとして恐れられる一方で、賊の間にはもう一つの噂がありました。」
愛紗は一旦言葉をそこで切って、俺の方を確りと見る。
……成程、そのことか…。
「それは、どんな噂かな?」
「その噂とは、賊千人が一人の男の手によって全員殺されたと言う噂でした。賊たちはその男を恐れて『鬼の化身』と呼んでいたそうです。」
「へぇ〜……。そんな男も存在するんだな……。」
巷ではそんな噂と呼び名が出回っているのか……。こりゃ今後益々、天の御使いだということを伏せないといけないな…。
「単刀直入にお聞きします……。 聖殿はその『鬼の化身』ではないですか?」
愛紗の目は鋭く光り、俺の目の奥にある真実を見透かそうとする強い意思が感じられるのだった。
後書きです。
第七章第一話の投稿です。
お互いの利益のため手を組む桃香と聖。
お互いがお互いの力を補うため、その力は三倍にも四倍にも跳ね上がる。
この同盟が、黄巾の乱にどのような影響を与えるのか……。
また、愛紗が天幕を再び訪れた目的とは……??
次話は日曜日に上げようと思います。
今話は都合により土曜日にあげることになってしまってすいませんでした。次話は来週の日曜日に上げるつもりです。
それではお楽しみに。
説明 | ||
どうも、作者のkikkomanです。 愈々第七章の投稿です。 七章になっても物語がぜんぜん進んでいない私の作品ですが、気長に見ていただけると私も嬉しいです。 前話の投稿時、お気に入り登録者数が200人を越えました。本当に皆さんありがとうございます!! |
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