真・金姫†無双 #27 |
#27
曹操たんや春秋姉妹以外にも、訪れてくれる娘はいる。楽進ちゃんに李典ちゃん、そんで于禁ちゃんの3人組や、昼間には雛里と年の頃の変わらない許緒ちゃんが。猫耳フードはいまだ来てないけど、罵詈雑言を聞くくらいなら来なくていいや。お客様は神様だけど、店の雰囲気を悪くする奴は貧乏神だ。売り上げが下がる。
「さぁさぁ、いらっしゃい!とっても美味しい焼鳥だよー!10本買うごとに1本((無料提供|サービス))!さー、まずはひと口!」
今日も今日とて、昼間の営業。売れ行きは上々だ。まだまだ材料はあるし、出来るだけ捌いてしまおうと声を張り上げていれば、じっとこちらを見つめる視線に気づく。
「おぅ、どうした、お嬢ちゃん?」
視線の主は、緑髪をショートカットにしたお嬢さん。許緒ちゃんと同い年くらいか。スパッツのような下衣がいかがわしい。俺が声をかければ、恥ずかしそうにしながらも、とてとてと焼き台の方に寄ってくる。
「あの、訊きたいんですけど……」
「おう」
「このタレ…どうやって作ってるんですか?」
「ん?」
お嬢ちゃんが指差すのは、焼き台の梁に引っかけた、タレの入った壺。
「匂いでなんとなくの材料はわかるんですが、何か引っかかって……」
「ほぅ、匂いだけで?そいつは凄いな。だが、百聞は一見に如かず。百匂は一口に如かず。まずは食べてみな」
「えっと、そうしたいのですが……」
誘ってみれば、途端に口籠る嬢ちゃん。おいおい、まさか。
「お金が…ないんです……」
「マジか」
乞食には見えない。お小遣いも貰えないのか?いや、この世界にお小遣いなんて文化は多分ない。仕方のない事だ。
「じゃぁ食べさせる事は出来ないな」
「そうですよね……」
※※※
ここで、少々補足しておく。一刀は商売人であり、金を持たない人間を相手する事はしない。例えば黄巾党討伐時の天和達は、金こそなかったがその後の旨味を考え、その確実性に目をつけたからこそ救出した。また、徐州での趙雲のように、無銭飲食にはめっぽう厳しい。だが、彼は商売人である前に、1人の人間である。感情だって持っているのだ。そして彼には、雛里という、いま目の前にいる少女と同年代の妹がいる。この少女の悲しげな表情を目にし、そこに妹の面影を見てしまうのも、無理からぬ話だろう。要するに。
※※※
「じゃぁ、食べていいよ」
「えっ!?」
俺は、少女に向けて焼き上がったばかりのムネ串を差し出す。
「……あの、いいんですか?」
「その代わり、客引きを手伝ってもらっていいか?これはその前払いって事で。気に入ったら他にも焼いてあげるよ。どうだい?」
「えと……ありがとうございますっ!」
少女は破顔し、一刀から串を受け取った。
「ちなみに、匂いでどのくらい分かる?」
「そうですね……」
立ち寄る客に串を差し出しながら、俺は少女に問うた。鼻を近づけてくんくんと鳴らし、少女は答える。
「お酒と味醂、それから醤がたぶん2種類か3種類、それに砂糖、あと黒胡椒に大蒜……でも、他にもあるはずです」
「おっ、そこまではだいたい合ってる。じゃ、実際に味わってごらん」
「はい、いただきます」
そして、少女は串を口に含んだ。一切れ串から引き抜いて咀嚼。
「…………」
「その時、少女に電流走る」
いや、違くて。
「えっ、なにこのタレ……醤も普通のものじゃない……それに、ちょっとだけ酸味があって、もっと食べたくなる……」
「そこまで分かるか。お嬢ちゃん、もしかして料理が得意なのか?」
「はいっ!あの、あとでもっと貰ってもいいですか?たくさん働きますから!」
こんな可愛いお嬢ちゃんの頼み、断れる筈がないんだぜ。
「おぅ、任せたぜ、嬢ちゃん」
「ありがとうございます!あと、私の名前は典韋っていいます」
「俺は北郷だ。兄様と呼びな」
「はいっ、兄様!」
……えっ?
※
典韋ちゃんの呼び込みは素晴らしかった。タレの美味さを事細かに、それでいて分かりやすく説明し、肉との相性を褒め称える。その可愛さも相まって、いつの間にか売り切れとなっていた。
「おぉぅ……」
「お疲れ様でした、兄様!」
晴れやかな笑顔で、典韋ちゃんが((労|ねぎら))ってくれる。可愛いなぁ、もぅ。
「じゃぁ、俺たちも昼飯にするか。と言いたいところだが、典韋ちゃんはコレが食べたいんだよな?」
言いながらタレの壺を指差せば、力いっぱい頷く。
「じゃ、悪いけど鶏肉を買ってきてもらってもいいか?」
「えっと、あの……いいんですか?」
お金を幾許か渡せば、典韋ちゃんは戸惑う。どういう事だ?
「その…私がこのお金を持って逃げるとか、思わないんですか?」
「逃げるの?」
「い、いえっ!そんなつもりは!」
「じゃ、お願い。料理が得意なら、目利きも凄そうだ」
「それほどじゃ……でも、頑張ります!」
「おー」
駆けていく典韋ちゃん。ぷりぷりとしたお尻がそそる。
そんじゃ、俺は米でも炊きながら待つとしようかね。
しばらく経って、典韋ちゃんは戻って来た。その手には、鶏肉が入っているであろう包み。
「買って来ました、兄様!それと、こっちはお金の残りです」
「おぉ、偉いぞ、典韋」
「ひゃっ!あのっ、その……」
よくやったと頭を撫でれば、顔を真っ赤にする。可愛いなぁ、もぅ。
「じゃ、米が炊けるまで少し時間があるし、早速焼くとしよう」
典韋ちゃんから肉を受け取って、まな板に乗せ、包丁で切っていく。
「串の種類はわかってると思うけど、鶏は丸々使える。だから、部位ごとに切り分けて、それぞれを使うんだ。一緒に使ったらいけない。何故だかわかるか?」
「味が混ざってしまうからですね?」
「半分正解」
「半分?」
「あぁ。種類を分けるからこそ、別の味も試そうと買ってくれる訳だ」
「なるほど」
料理は得意だからといって、そっち系で商売をしている訳ではなさそうだ。俺は商売に必要な知識も、ついでに教えていく。
「で、均等の大きさに切っていく。これは基本だ」
「はい。火の通りを均一にする為です」
「流石だな。で、あとはこのタレを塗って焼いていくだけ」
壺に挿した木べらで、串に刺した肉にタレを塗っていく。典韋ちゃんが身を乗り出して、タレを観察していた。
「あとは、さっきも言ってくれたように、均一に焼いていく」
「いい匂いです……」
「あぁ、食欲をそそるだろう?」
そうして幾本か串を焼いていき、米も炊き上がった頃。
「このタレを気に入ってくれたようだし、折角なのでふんだんに使おうと思います」
「わー」
パチパチと拍手を受けながら、俺は丼に米を盛る。その上表面にタレを塗っていき、焼き上がった串からモモ肉を乗せていく。最後に、今度は匙でタレを全体に垂らし、最後に刻んだネギと唐辛子。妹たちも大好きな、焼鳥丼だ。
「美味しそうです、兄様!」
「おうっ、たんと食いな!」
「はいっ!」
そんな訳で、お昼ご飯です。
食事をしながら、典韋ちゃんの話を聞く。どうやら、友達が陳留の街で働いているらしく、その友達から手紙が来たとの事だ。
「季衣から手紙が届いたんですけど、字が下手で……」
「どれどれ?……うわ、確かにまったく読めないな」
「なんとか解読できたのが、陳留に住んでいる事と、仕事を貰った事、あと一緒に働こうって誘いだけなんです」
「なるほどね」
「季衣の事だから、きっとどこかの食事処か、大工さんのところくらいしか働くところはないと思うんですけど……でも折角誘ってくれたので邑を出て、それで、今朝この街に着いたんです」
おやおや、こんな幼い娘が1人旅ですか。元気なものだ。
「でも、陳留も広いぜ?それに人だって多い」
「はい。だから、まずは寝床を見つけて、それから季衣を探そうかと」
「そうか」
なんというフラグ!一級建築士()の力は伊達じゃないな。我ながら恐ろしい。
「じゃ、俺のところに来るか?」
「……え?」
「こうして知り合ったのも何かの縁だし、最初はタレの秘密が知りたかったんだろ?店を手伝ってくれるなら、俺は寝床を提供するよ。仕事代だって払うぜ?」
「いいんですか!?」
「あぁ。それに、俺としても可愛い女の子と過ごせるのは嬉しいしな」
「……えっと、それじゃぁ」
「ん。これからよろしくな」
「はぃっ!では、これからは、私の事は流琉と呼んでください!」
「ありがと。じゃぁ、今日から流琉は俺の義妹だな。俺の真名は一刀。ま、好きに呼んでくれ」
「ありがとうございます、兄様!」
6人目、ゲットヽ(゚ω゚)ノ
という訳で、流琉という新しい妹をゲットした俺は、楽しく過ごしている。
「――これが、流琉が不思議に思っていた醤……醤油だ」
「凄い滑らかですね……それに2種類ある」
「ちょいと特殊な造り方でな。広く使われている醤とは一線を画すのさ」
で、いまは流琉にタレの作り方を教えている最中。もちろん門外不出という条件はつけて。
「兄様…あの……」
「知りたいか?」
「はい!」
「じゃ、こっちも同じだ。他の奴に教えたらダメだぞ?」
「はい、もちろんです」
「よし、いい子だ」
「あぁぅ…」
頭撫で撫で。顔を赤くしちゃって、もぅ。
「それと、使う酒も2種類だ。こっちはまぁ、普通の料理酒なんだが、もうひとつの方が特殊でな」
「これって……葡萄、ですか?」
「お、わかるか!」
こっちは、南の方で見つけた葡萄を発酵させて造った酒。ワインのようなもの。え、葡萄なんてあるのか、って?ほら、江東の方って暑いし、出来るんじゃね?
「こないだ流琉が気づいた酸味の正体が、コレな訳だ。ちょっと舐めてみるか?」
「……はい、じゃぁ、ちょっとだけ」
匙ですくい、口に運ぶ。
「んんっ、すっぱぃでしゅ……」
可愛いリアクションだなぁ。
「だろ?葡萄の味はするが、如何せん酸味が強すぎる。上手く出来ればそのまま飲むことも出来るが……俺の腕だと難しそうだ」
そっちに関しては、ちょっと残念。ワインが出来れば、料理のバリエーションも増えるのだが。
「そいじゃ、流琉にはこの醤油2種と、ぶどう酒の造り方を覚えてもらうぜ?」
「任せてください!」
フンスと鼻息を荒くし、流琉が平らな胸を叩く。よーしよしよし、お兄ちゃん、甘やかしちゃうぞー。
流琉が俺の下に来てから数日。今日も今日とて開店の準備。焼き台に火を入れて加熱していると、久しぶりのお客さんがやって来た。
「北郷の兄ちゃん、久しぶりー!」
「お、きょっちーじゃん。最近来てなかったけど、なんかあったのか?」
桃髪サボテン少女・許緒ちゃんだ。
「うん、賊の討伐に行ってたんだ。兄ちゃんの焼鳥が食べたくて仕方がなかったよー」
「そうか。そいつは嬉しい事を言ってくれるね」
「へへー。じゃ、全部10本ずつくださいな!」
「おぅ、任せとけ!」
注文通り、各種10本を皿に乗せる。
「どれからいく?」
「ん…じゃぁ、今日はモモから!」
「あいよっ!」
許緒ちゃんの言葉に従い、モモ串を焼き台に乗せた、その時だった。
「兄様、もう開店するんですか?今日はいつもより早い――」
流琉が家の中から出てくる。そして、固まった。
「季衣っ!?」
「あーっ、流琉だー!」
「ん、知り合い?」
待て待て。そういや、許緒ちゃんの真名が『きい』だったな。……なんで気づかなかった、俺。
「こんなところで何してるの!?」
「それはこっちの台詞だよ!なんでお城に来てくれなかったの!?」
「あんな字が汚い手紙で分かる訳ないでしょ、季衣の馬鹿!」
「馬鹿って言ったな!馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ、馬鹿ぁ!」
そして飛び交う怒声だが、可愛らしい事この上ない。そう思っていたら。
「だいたい、いつもいつも季衣は勝手過ぎるのよ!いきなり邑を出て行ったと思ったら、今度はこっちに来いとか!」
「だって、お仕事をもらったんだから仕方ないだろー!」
許緒ちゃんはどこからともなくトゲ付き鎖鉄球を取り出し、
「……え?」
流琉はバカデカイヨーヨーを取り出し、
「……えっ?」
「やぁああああああああああっ!」
「てぇぇええええええええいっ!」
「ぎゃぁあああああああああっ!?」
互いに向けて、投げ始めた。
「――――で、何か言う事は?」
「ごめん、兄ちゃん……」
「ごめんなさい、兄様……」
屋台が壊され、家もボロボロになり、今日はもう閉店だ。というか、しばらく休業だ。つーか、住むとこねーよ。
「きょっちーの気持ちはわかるよ?お城で仕事をもらえて、曹操さんにも気に入ってもらえて、一緒に働きたかったんだよな?」
「うん…」
「流琉は、苦労して陳留まできて、しかもきょっちーに会えなかったのに、あんな事言われてカチンと来ちゃったんだよな?」
「はぃ…」
命懸けで2人を止めた俺は、説教中。2人は正座中。
「でも、だからっていきなり攻撃するのはよくない」
「「ごめんなさぃ……」」
「という事で、喧嘩両成敗」
「いったぁ!」
「うぅぅ…」
2人の頭に、拳骨を落とす。許緒ちゃんは声を上げ、流琉は頭を抑える。
「よし、そんじゃ2人共」
「「っ!」」
声をかければ、ビクリと身体を震わす。もう怒ってないよ。
「これから曹操さんのトコに行くぞ」
「華琳様の?」
「誰ですか?」
「この街を治めている人で、きょっちーの主だ」
「もう季衣でいいよ、兄ちゃん。なかなか言い出せなかったけど、もっと早く預けたかったんだ」
「あ、そう?じゃぁ、これからはそっちの方向で」
真名ゲットヽ(゚ω゚)ノ
「曹操さんのところで働ける実力があると思って、季衣は流琉を誘ったんだろ?」
「うん」
「で、流琉も、仕事の内容は知らなかったけど、季衣と一緒に働きたかった」
「はい」
「んで、俺のところに居たはいいが、こうして寝床もなくなっちまった」
「「ごめんなさい……」」
「厭味じゃないから。いい機会だ。このまま謁見して、流琉も季衣と同じ親衛隊に入れて貰おう」
「そんな事できるんですか?」
今度は流琉が手を挙げる。
「見たところ、2人は実力も同じ位だしな。それに季衣の親友なら、曹操さんだって認めてくれるだろ」
「うん、そうだよ、流琉!華琳様はすっごく優しいんだから!」
「そうなんだ」
いや、それはねーよ。あるとしても、季衣の将来性を見て破瓜を奪う為だろ。
「それじゃ、流琉。荷物をまとめてきな」
「はいっ!」
ということで、お城へゴー。
――お城。
「お邪魔しまーす!」
「失礼しまーす!」
「いきなりいいんですか!?……あの、失礼します」
季衣がいるので、メンドクサイ手続きはすべてカット。季衣の案内に従い、俺たちは曹操たんの仕事部屋を訪れた。
「ああぁ…ダメです、華琳様ぁ……」
「ふふっ、いい子ね、桂花」
「お邪魔しました」
「……」
「桂花ちゃん何やってるのー?」
扉を開ければ、椅子に座った曹操たんと、そのおみ足をペロペロ(^ω^)する荀ケ。俺は2匹の生娘を引き摺り、部屋の扉を閉める。季衣はよくわかっていないようだが、流琉は顔を赤くしている。あぁ、雛里と同じか。
「という訳で、もう1刻したら来ようかと思います」
「なんでー?」
「季衣!いいから、別の場所に行くよ!」
「うわぁっ!引っ張らないでよ、流琉ー!」
やっぱ百合だったか。
※
「む、一刀か。そんな幼気な少女2人を連れて、何をしているのだ?」
廊下を歩いていれば、秋蘭ちゃんに出会った。
「というか、そちらの娘は?」
「ボクの友達の典韋です、秋蘭様!」
秋蘭ちゃんの問いに、季衣が元気よく答える。
「友達?」
「はいっ、流琉も一緒に働かせてもらいたくて、華琳様のところにお願いにきたんです」
「なるほど。それで、何故一刀もいるのだ?」
「いやな、流琉は季衣に誘われてこの街に来たらしいんだが、何処にいるのかわからなかったんだ。で、俺のところで働いてて、そこに季衣と遭遇。いまに至ると」
「だいぶ簡略化されている気がするが、季衣の事だ。会えなかった原因は、なんとなく想像がつく」
「?」
「あぁ…恥ずかしいよぅ……」
「季衣はそのままでいいんだぞ」
「うん!」
秋蘭ちゃんも流石だな。首を傾げる季衣の頭を撫でれば、元気よく頷いていた。
「では、もう許可を申請はしてきたのか?華琳様の執務室の方から歩いて来たと思うが」
「んにゃ。お取込み中だったから、時間をおいて、また来るよ」
「取り込み中?誰か上奏にでも行っていたのか」
「いやいや、猫耳ちゃんとよろしくやってて、季衣の教育に悪いから逃げてきた」
「兄様、私は!?」
「だって、流琉は意味が分かってんだろ?」
「あうぅ……」
という訳で、1刻後。
「終わった?」
扉をノックして、少しだけ開いて問う。次の瞬間。
「どぅわっ!?」
服の胸元を掴まれ、そのまま部屋の中に引き摺り込まれた。そして、パタンと閉まる扉の音。
「貴方、なんて事をしてくれたのよっ!」
「はぁ?」
「なんで季衣をここに連れてきたの、って訊いてるの!」
なんで怒られてんの、俺?
「いや、季衣の友達が来て、親衛隊に入れて欲しいんだってさ。言い出したのは季衣だぜ?」
間違ってはないけど、城に来ようと言い出した方は俺だ。
「私はね、あの娘を純粋なまま育てたかったのよ!」
「そうなの?」
どうせ、くだらない理由だろうけど。
「そうよ!そして蝶よ花よと育て上げ、熟し始めようとしたまさにその瞬間、無垢な少女のその破瓜を奪うつもりだったのに!さっきのアレで、季衣が性に目覚めたらどうするつもりだったの!?」
「いや、知らねぇよ」
「終わった…きっと誰も教えないだろうから、あの娘は自分で調べていくのね……そして自慰による快感も知らないまま知識だけが増えていき、さっきの私たちの姿がある意味((異常|アブノーマル))である事を理解してしまうんだわ……」
「『ある意味』じゃねーよ。完全にアブノーマルだよ。SMだよ」
「そして、その行為自体に嫌悪感を持ち、私に仕えながらも、心の中では軽蔑していくのよ……」
「いや、大丈夫だろ。理解してなかったし」
「嗚呼!あの娘を失った悲しみを、私はどう癒せばよいのだろう!春蘭や秋蘭、桂花に凪たちはいるけれども、季衣の穴を埋める事は出来ないの!……あ、この穴は女の穴でもあり心の穴でもあるのよ。上手いでしょう?」
「うるせぇよ!!」
「――大丈夫だって。ホントに意味はわかってなかったし、すぐに忘れてくだろ」
「本当に?」
「あぁ。なんなら俺が、あの齢でも十分にこなせる((技|テ))((法|ク))教えてやろうか?そしたら、知識を得るより先に快楽を覚えるだろ」
なんつってな。そんな冗談を言おうとすれば、
「マジ?」
曹操たんが血走った目で俺に詰め寄る。いや、マジで怖い。
「季衣が気にしてたらな」
「くっ……」
流石にそれはひくので、条件をつけておく。という事で。
「入っていいぞー」
「失礼しまーす」
「あの、失礼します……」
2人の幼女を招き入れる。
「あら、どうしたの、季衣?」
「!?」
いつの間にか曹操たんは椅子に座っており、いつもの不敵な顔で2人を出迎えていた。女って怖いね。
「はい、この子は、ボクの親友の典韋です!一緒に親衛隊に入れて欲しくて、お願いしに来ました!」
「あら、そうなの?」
季衣の言葉に、曹操たんは流琉をじっと見つめる。
「あの、はじめまして、典韋です。季衣に呼ばれて、邑からこの街にやって来ました」
流琉たんは緊張しているようです。
「親衛隊に入れて欲しいとの事だったけど、武の方は?」
「ボクと同じ強いです!」
「それは凄いわね」
頷き、チラッと俺に視線を向けるので、補足しておく。
「あぁ。流琉の武は、俺も保障するよ。ついさっき、季衣と互角の勝負を繰り広げていたからな」
「あら、頼もしい」
「お願いします、華琳様!」
「あの、お願いします!私、季衣と一緒に働きたいんです!」
季衣と一緒に、流琉もペコリと頭を下げる。可愛いなぁ、もぅ。
そんな俺の感想と同じ気持ちを抱いているようで、2人が頭を下げて見えていないからか、曹操たんは顔を緩ませている。鼻血でも出るんじゃねーの。
「いいわ、許可をしましょう」
「ホントですか!?ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
そして許可。
「季衣と同等の実力という事だし、貴女にも親衛隊長をしてもらうわ」
「えっ、いきなりいいんですか!?」
「もちろん、親衛隊員の前でその実力を示してからね。季衣と模擬試合でもすれば、みな理解するでしょう。どうかしら、北郷?」
「なんで、俺に訊くの?ま、そうだな。流琉、心配しなくても、流琉ならきっと大丈夫だ。自身を持て」
「はいっ、兄様!」
俺も、肩の荷が下りたというものだ。
「そうだ、華琳様」
「なにかしら?」
嘆願も終え、季衣が手を挙げた。
「さっき、桂花ちゃんと何してたんですか?」
「っ!」
こらこら、あからさまにビクつくんじゃありません。
「ボク、よく見えない内に兄ちゃんたちに引っ張り出されちゃって……」
「あぁ、聞いたら、荀ケちゃんが墨を零しちまったらしいんだ。で、掃除をさせてたんだてさ」
「そうなんだ!でも、桂花ちゃんもお掃除が上手なんだね。どこも汚れてないや!」
「いや、それはさっき俺が手伝ったからだよ。先に俺だけ中に入っただろ?汚れた部屋に、季衣の友達を招き入れる訳にはいかないって、曹操さんがな」
「っ!」
こらこら、あからさまに眼をキラキラさせるんじゃありません。
「ま、俺は掃除の((専門家|プロ))でもあるからな。ささっと終わらせちまった訳だ」
言いながら、俺はポケットから手拭いを取り出す。真っ黒に汚れていた。
「はー、兄ちゃん、何でも出来るんだね」
「まぁな」
「そ、そういう訳よ。待たせて悪かったわね。それじゃ、季衣。典韋に城を案内してあげなさい。典韋の部屋はまた決めておくから」
「はいっ!失礼します!行こっ、流琉」
「きゃっ、ちょっと!あの、失礼しますっ!」
曹操たんの命令に、季衣は流琉の手を引いて部屋を出て行った。いや、俺も帰りたいんだけど、タイミングを逃してしまった。
「その手拭い、いつの間に墨をつけたの?」
「2人と曹操さんが話している隙にちょろっと硯にな。これなら説得力があるだろ?」
「北郷…」
簡単に説明を終える。さて、そろそろ帰らせてくれ。ぶっちゃけ居心地が悪い。
「感謝するわ、北郷。これからは、私の真名を呼ぶ事を許す」
「えっと、ありがと?」
「華琳よ。これからはそのように」
こんな事で預けちまうのか。
「じゃ、俺も一刀で」
美少女には苗字よりも名前で呼ばれた方が嬉しいしな。
「さて、城主の部屋に一般人が長居するのもよろしくないな」
「そう?貴方だったら私は気にしないけれど?」
「まわりが気にするのさ……俺はそろそろ『出ていく』よ」
「そう。またね、一刀」
「ん、またな、華琳ちゃん」
軽く挨拶をして、俺は部屋を出る。
『――華琳ちゃん!?』
驚愕の叫びが扉の向こう側から聞こえてきたが、気にしないでおこう。
という訳で、ボロボロに崩れた家から荷物を運び出し、荷車に積んでいく。華琳ちゃんにも『出ていく』って伝えたし、義理は果たしただろ。
「――兄様、何してるんですか?」
「流琉?」
屋台も解体して荷車に積み直し、さぁ出発だという頃、妹がやって来た。
「その荷物って……」
「あぁ、流琉の新しい働き口も見つかったし、俺もそろそろ向こうに帰らないとな」
「向こう?」
「俺は、長沙の街の出なんだ。こっちに来たのも、商売用の品物を探しに来たのが目的でな」
目的のひとつでな!
「じゃぁ…一緒には暮らせないんですか?」
「……そうなるな」
俺の言葉に、流琉の瞳に涙が溢れる。
「嫌です!兄様のおかげで楽しく過ごせて、季衣とも再会できたのに……まだその恩を返してません!」
「気にしなくていいんだぞ?」
「嫌です嫌です!せっかく本当の兄のように思ってたのに……」
「なに馬鹿な事言ってるんだ」
「えっ……」
「兄の『ように』じゃなくて、俺は流琉の兄貴だろ」
「兄様…」
「違うのか?」
笑顔で問えば、流琉は涙を拭い、飛びついてきた。
「……違いません。兄様は、私の兄様です」
「ん、それでいい」
「でも…離れたくないです……」
抱き着く流琉を抱き締め返しながら、俺はゆっくりと言葉をかける。
「大丈夫だよ、流琉。離れていても、俺はお前の兄貴だ。流琉なら頑張れると信じてる。これからは、この街で働くんだろ?」
「……はぃ」
「だったら、またどこかで出会うかもしれないな」
「本当、ですか?」
「あぁ。俺は商売人だぜ?金のあるところなら、ムー大陸だろうがアトランティスだろうが、何処だって行ってやるさ」
「あの、ちょっとよく分からないです」
せめて((羅馬|ローマ))にしておくべきだったか。
「それに、流琉にも時間が出来たら、長沙に遊びにくるといい。歓迎するぞ?」
「いいんですか?」
「もちろんだ。流琉は俺の妹だからな」
「……はいっ!」
元気よく頷く流琉は、とびきりの笑顔だった。
おまけ
「――今日は一刀の店に行くわよ」
「「はっ」」
「「……えっ?」」
主の声に、夏候姉妹は即座に頷き、親衛隊長たちは思わず軽驚の声を上げる。
「どうかしたの、季衣、流琉?」
問われ、答えたのは新参の親衛隊長。
「あの…兄様なら、街を出ていかれましたけど……」
「うん、ボク達が兄ちゃんのお店を壊しちゃったし……」
「「「……」」」
そんなとある日の仕事上がり。
あとがき
ようやく、魏partが終わりました。
さて、次回はオリキャラが出るよ!
次のページにオマケ絵をつけたので、よかったら見てね!
ではまた次回。
バイバイ。
オマケ
金姫編の一刀くんを描いてみた!
あれ?この絵なら、イラストでランクインできんじゃね?
こいつぁ、流行るぜ!
説明 | ||
前回のあらすじ。 華琳たんが珍しく論破される。 今回のオマケ。 一郎太が初めて絵を描いたよ! |
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無いわ〜www(シャイニングブルー) 俺の期待を返せww(スネーク) おいwww明命は断っておいてあっさりおkなのかよww あらら;屋台まで崩壊したか〜 華琳が壊れたwwwwwwそれに気付いてなかったwww うわ〜・・・ゲスっぽいなwwww(スターダスト) 仕方ないな、そんなに言うなら俺の体で払ってやんよ さぁ一太郎カモーン!!(親善大使ヒトヤ犬) 神だな・・・一郎太さん(前原 悠) 絵、オモロイ・・・・・・(黒†猫) >>ハリマエ様 そそそそんな事ないでゲスヨ!?(一郎太) >>ロンリー浪人様 次も描いてるんだぜ?(一郎太) >>D8様 流琉のお尻は、蓮華たんとは別方向のエロさがあると思うんだ(一郎太) >>相駿様 流琉に言った通り、そろそろ帰りたいんだぜ(一郎太) >>神木ヒカリ様 こ、ここにもロリコンが……(一郎太) >>envrem様 かっこいいだろう?(一郎太) >>将軍様 ギャグSSの華琳様は、どう一郎太が足掻いてもあぁなっちゃうんだ(一郎太) >>ゆぎわ様 そしてこの次も同じようなサムネという(一郎太) >>アイネ様 あぁ、明日には管理会社から苦情が……(一郎太) >>ゆっきー様 カッコいいのは絵の一刀くんかい?(一郎太) >>★REN★様 内容にかい?それとも絵にかい?(一郎太) >>アルヤ様 時間関係をもってくるとめんどいので、数日後あたりで(一郎太) >>不知火様 次回も新しい絵を上げたんだよ!(一郎太) >>一丸様 むしろ絵についてコメントしてくれよぉぉおおおおおおお(一郎太) >>Fols様 ふひひ、どんな時でもギャグを忘れないんだぜ(一郎太) >>更夜様 トゥンクってなに?www(一郎太) >>ロンギヌス様 素直な女の子は可愛いよね(一郎太) >>AliceMagic様 え、内容が?(゚ω゚ )(一郎太) >>駆逐艦様 あ、もう流琉たんの出番は終わりなので(゚ω゚ )(一郎太) >>駆逐艦様 あ、もう流琉たんの出番は終わりなので(一郎太) >>蟹鍋様 え、内容が?(゚ω゚ )(一郎太) >>アル・エビル様 あの眼とか、完全にイッてるよな(一郎太) >>叡渡様 だろう?(一郎太) >>dai様 ……?(゚ω゚ )(一郎太) >>牛乳魔人様 かっこいいだろう?(一郎太) >>赤ペン様 どう見ても一刀くんじゃないっすか(一郎太) >>東文若様 え、何が問題なの?(゚ω゚ )キョトン(一郎太) >>アサシン様 えっ、なんで?(゚ω゚ )キョトン(一郎太) >>きまお様 適当な穴につっこめばいいと思うよ!(一郎太) なんか語尾に「デゲス」とつきそう・・・・もしくは「ヤス」とも言いそう・・・・(黄昏☆ハリマエ) イラストwwwww (ロンリー浪人) 腹がwww特に最後の絵wwwあと流琉可愛い(D8) 期待を裏切らない一刀w しかし、次はどこへ流れるやら。地理的に言えばおバカ二人+苦労人のところかな?(相駿) 華琳の気持ちはよく分かる!!(神木ヒカリ) 全くなんなんだよこの金姫の一刀のイラストは・・・ポッ///(happy envrem) さすが華琳さまww イケメンすぎて全俺が爆笑www(将軍) 新着のサムネがちょうど右上の金だけが写っていて、金姫見る前から笑ってしまったww(ゆぎわ) 深夜だというのに最後のイラストで大爆笑してしまったwww (アイネ) くっ・・・すこしだけかっこいいと思った俺が憎い・・・そんで顔がうぜwww(ゆっきー) もう爆笑wwwww(リンドウ) 一刀が出て行ったのに気付くまで何日だったんだろう(アルヤ) 最後の一刀くんに全部もっていかれたww 次回も絵を上げてくださることに期待します! (神余 雛) 可愛い、相変わらず可愛い。相変わらず、恋姫の魅力存分に引き出しますね。もう、出てくる恋姫みんな可愛いから、続きを読むのが楽しくてしょうがないじゃないですかww・・・ではでは、続きを楽しみに待ってます。・・・PS.絵については、ノーコメントでww(一丸) あっははは!!文でも笑いましたが、絵でも笑わせてもらいました。(Fols) 自分に素直な一刀△(ロンギヌス) くそっこの一刀さんカッコよすぎる・・・(Alice.Magic) ロリばんざーーーい ろりばんざーーい ろりだいすきのいちろうたさんがかえってきたーーーーー(駆逐艦) これはひどいwww(八幡の蟹鍋) くそっ なんて恐ろしいイケメンオーラなんだ!!(アル・エビル) ・・・(^ω^)(dai) やだ・・・かっこいい・・・(牛乳魔人) 安定の華琳 + なんだこの絵は・・・(デーモン赤ペン) 流行ったら、流行ったで問題だろ…(;・ω・)(東文若) その絵はダメ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?(アサシン) おい、どこからつっこめばいいんだ!(きまお) |
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真・恋姫†無双 一刀 金姫 ぶれない華琳様 可愛いなぁ、もぅ。 こいつぁ、流行るぜ! | ||
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