凶刃月光
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第一話 初めましてに血の雨を

 

少女の目は赤かった。

その少女の周りには異形の何かの死体。

そして息を荒くして倒れている制服の女子。

そして剣を振るった俺。

少女の周りの死体は全て『かつて人間だったモノ』

通称堕ち人だ。

人の形を超え、その憎悪や悲しみと言った負の感情の具現化である。

そして…、そこに立っている少女は…最早少女と言える程優しいものではなかった。

「黒剥ぎ事件、そして業物強奪事件の犯人だな?」

俺はそいつに言った。

だが、そいつは少女の様な幼い笑みを浮かべただけだった。

「祟り神の僕に…勝てるの?」

祟り神、そう…コイツは祟り神と呼ばれる類の堕ち人だ。

だが…、堕ち人をも超えてしまったのが祟り神。

 

 

さて、ここでこの事件について説明しておこう。

堕ち人は人が生命の営みを始めた頃から存在した。

だが、普通の武器では勝てないのだ。

堕ち人は、決して地球外生命体とか、改造実験で出来た生命体とかじゃない。

堕ち人は人がある一定のラインを超えたらなる怪物である。

それを倒すには、人の血が固まって出来た血詠(ケツエイ)というモノが必要になる。

それを埋め込んだ武器で戦うしか、堕ち人を倒す方法はない。

そんな中、堕ち人を超えた祟り神が生まれ。

その祟り神を倒せる者のみに与えられる業物武器が出来た。

しかし、祟り神がそれを奪取した。

これが業物強奪事件。

被害者は三人で、

大鎌ムーンサイスの持ち主と、中型銃ムーンレインの持ち主、

そしてナイフのムーンエッジの持ち主。

どれもかなりの実力者が持つ者だ。

それは…目の前の少女がたった一人で行った事だ。

そして、黒剥ぎ事件というのは呼んで字の如く。

黒い衣服を剥ぐという奇天烈な事件だ。

それだけならそんなに問題視はされない。

しかしながら、衣服を剥ぐと共に血が抜かれているのだ。

堕ち人は、健全な人の血を吸うと完全に理性が飛んでしまう。

だが、一度はその身になりかけた俺は分かる。

堕ち人は人に戻ろうと、血を求めるのだ。

だが、実際は更に悪化するのだ。

妹と同じ様に…。

しかし祟り神はそうはならない。

それ自体を奴らは知っていて、同時に何の意味もない事を知っている。

だとすれば何かの性倒錯か…。

まぁとにかく、これら二つが結構な事件という事だ。

 

 

「…さぁな」

俺は少女の問いに答えた。

「僕が勝つよ、今までずっと前線を離れていた奴に負ける僕じゃない。

鴉谷無矢(カラスダニ ムヤ)、君は負けるよ。」

その声は、随分変わっていたが聞き覚えがあった。

「だな…、あの人と会うのが怖くて逃げてた俺に負けるお前ではない。」

「なぁんだ…君は僕に心当たりがあるんだ…?

僕も君に対してあるはあるんだけど…、姿が変わっているのかもしれないね。」

俺は恐怖で震える手を効き手で抑え、高振動電磁刀を鞘から抜き出した。

刀身が青く光り、激しく振動して発火する。

大抵の奴らは驚いて逃げてくれた、けれど…

(やっぱり無理だよな)

目の前の少女、祟り神は動じていなかった。

「ねぇ?勝てると思ってるの?」

「…」

さぁな、とはいえなかった。

彼女と俺の間には確実な、圧倒的な差がある。

そして彼女も、業物を扱い出せば本来の所有者を超える戦闘力を発揮するだろう。

ただ事じゃなかった、コイツがその祟り神。

恐ろしかった。

「周りとあまり会いたく無い君へ、一つ忠告。

こんな所見られたら、一瞬で君のお姉さんと二人きりになっちゃうぞ」

「ッ!!??」

俺は彼女のそんな言葉に驚いて後ろを振り向いた。

見た事のある車両部隊だ。

あのエンブレムは…、まさしく対堕ち人機関

ヘルメスだった。

「逃げるの、手伝ってあげよっか?」

「は…?」

「あれから逃げたいんでしょ?。」

ヘルメスの車両との距離は徐々に近付きつつある。

やむを得なかった、ヘルメスに捕まって姉とご対面するよりましだ。

「助けてください…」

俺は自分に素直になった。

祟り神の少女は快く頷いてくれた、それを見て俺は安堵した。

 

 

「…杭成(クイナ)さん、さっきのって」

「そうね、まさかあんなに怖がられるとは思わなかったわ。」

私は、先ほど車内から確認出来た少年について、上司でアマテラスである鴉谷杭奈さんに確認した。

結果は大当たり。

ここ最近有名な堕ち人の無差別排除事件は、月光刀の持ち主である彼のようだった。

「…。」

「複雑?彼が祟り神と関係があるかもしれないと思うと」

私は頷いた。

私は水野可奈(ミズノ カナ)、彼とは小学校から一緒だ。

だが、きっと彼に面識はない。

私が転校して来て初日、何だか友達になれそうだったから話しかけたがあっさりと拒絶されてしまったし。

だからきっと、面識はない。

だが、最近はちょこちょこメールのやり取りもする様になった。

実際はかなりいい人だ。

だが…、やはり小学校からの噂が頭を離れない。

彼が、そんな人だとは思えない。

 

「…麒麟先輩、あれってヘルメスの車両ですよね?」

「そうだよ。」

僕は、高い杉の木の上に居た。

監視対象の追跡だ。

隣には後輩の田中裂羅(タナカ サクラ)、

今視界内に入ってるヘルメスの部隊員、水野可奈の親友でもある。

「降りよっか、ここからじゃ状況把握も難しい。」

「あっ、可奈と喋っても良いですよね?」

「構わないよ。」

僕らは対堕ち人執行機関、

彼らは同業者だが事件の取り合いでは良く喧嘩になる。

そして僕達は降り立った。

 

説明
それは、未だ神や妖達が現存する世界の話。

少年は自らの為に自が剣を振るう。
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