天使と悪魔の代理戦争 十二話 |
なのはちゃんの考えというのは、平たく言えばジュエルシードを賭けての一騎打ちだった。
それは周りに被害を出さないよう、管理局の人たちが作ってくれた空間で行うことになり、僕たち(僕とユーノくんとアルフさん、それと帝威くんと真神くん)は、結界内の遠くの建造物で万が一に備えて待機している。
フェイトちゃんが来るかどうかが一番の心配だったが、それは杞憂に終わった。
やって来たフェイトちゃんにアルフさんが念話で呼びかけたが、フェイトちゃんの意思は堅く、首を縦には振らなかった。
「本当の自分を始める前ために、始めよう? 最初で最後の、本気の勝負!」
その言葉で始まった二人の戦いは、序盤、航空機動と射撃魔法の撃ち合いはフェイトちゃんの優勢で始まった。
基本的にフェイトちゃんは直射型、なのはちゃんは誘導型を使用しているが、やはり魔法戦の経験で勝るフェイトちゃんが優勢だった。
杖による打撃が混じり始めた中盤戦ではほぼ互角。得物が違うけれどもなのはちゃんは近接戦闘の心得もある。
そして、フェイトちゃんが勝負に出た。数十もの魔力弾発射スフィアを展開し、設置型のバインドでなのはちゃんの動きを封じる。
「ファランクス――撃ち、砕けぇぇぇ!」
そのスフィア群から何発も紫電を纏う金色の魔力弾が放たれ、なのはちゃんを襲う。その数はもう目では数え切れないほどで、狙われたなのはちゃんのいた辺りはもう粉塵で見えなかった。
最後にスフィアが一つに集まり、金色の槍を構成する。
「スパーク……――」
その掛け声と共に槍はなのはちゃんがいるであろう位置に放たれ――
「――エンド」
一点で炸裂し、周囲が雷で蹂躙される。
(なのはちゃん……!)
フェイトちゃんは大魔法の後なため肩で息をしているが、それを受けたなのはちゃんは安否も分からなかった。下手をすれば非殺傷であるにも拘わらず、なのはちゃんは怪我をしているのかもしれないと思わせるほどであった。
立ち上った粉塵はなのはちゃんの後ろにあったビルを破壊したため膨大な量であったが、それも吹きゆく風が散らして、やがてなのはちゃんの姿が見えた。
その姿はバリアジャケットの至る所も破れてはいるものの未だ健在で、フェイトちゃんに向けてカノンモードになったレイジングハートを構えていた。
それを見て接近しようとしたフェイトちゃんであったが、手足に桜色の光輪が現れ、その動きを封じた。
「ディバイィ……ン、バスターーー!」
レイジングハートのトリガーが引かれ、フェイトちゃんに太い桜色の光の砲撃が迫り、それをフェイトちゃんは唯一動かせる左腕でシールドを張って防ぐが、なのはちゃんの砲撃はシールド越しにフェイトちゃんのバリアジャケットを削っていく。
そして、フェイトちゃんのマントがハラリと落ちた時、なのはちゃんの砲撃も止んだ。
防ぎ切ったフェイトちゃんがため息を吐くと、辺り一体から光の粒が立ち上る。そして、その光の粒はなのはちゃんが構えるレイジングハートの前に集まり桜色の球体を作り出す。
『((Starlight|スターライト)) ((Breaker|ブレイカー))』
巨大な環状魔法陣が桜色の球体を取り巻いて回転を始めると、桜色の球体の大きさがなのはちゃんの何倍という大きさまで膨れ上がった。
(収束砲撃……)
それは砲撃魔法の最上級スキル。周囲に散らばった魔力を集め、再び放つ大魔法。
「受けてみて、これが私の全力全開!」
桜色の球体のフェイトちゃんのいる面に向けてミッドチルダ式の魔法陣が現れ、フェイトちゃんもそれに対抗して五重のシールドを展開する。
「スターライト……ブレイカーーーーー!!」
その後は表現するのもバカバカしいほどの威力を持った桜色の光条が五重のシールドもあっさりと破壊して、フェイトちゃんを飲み込み、シールドに弾かれた余波だけで周りの建物が倒壊……いや、消し飛ばされている。
「絶対にあれだけは喰らいたくないなあ……防げる気がしない」
「「同感だよ(だね)」」
撃ったなのはちゃんも疲れてるみたいだけどさ……廃ビル群みたいだった周りが今じゃ単なる海だもん。更地だよ。重機要らずだよ。
僕たちのいる場所にも余波が飛んできたけど、流石に余波ならユーノくんが防いでくれた。僕だったら無理だったろうけど。残りの二人は吹き飛んだ構造物の割と大きめな残骸が当たって気絶してる。デバイスが既でバリア展開してたけど間に合わなかったみたいだ。
なのはちゃんが純魔力砲撃で気絶して海に落ちたフェイトちゃんを助けて倒れたが海上に出ているビルの上に引き上げて、気がついたフェイトちゃんが飛んだときだった。結界内の空に黒雲が現れた。
(多分……この前と同じ次元跳躍攻撃。狙いはなのはちゃんか……またフェイトちゃんか……)
辺りに紫色の雷がいくつも落ちる。考えていても仕方ないので、せめて攻撃を防ぐために二人の元へ駆けつけようと飛行魔法を発動した時だった。
目の前に突如((白雪色|スノーホワイト))のミッドチルダ式でもベルカ式でもない魔法陣が現れ、僕の行く手を遮った。
(中央に迷路のような模様の((縁|ふち))に術式が書かれた正方形がそれぞれ逆方向に回転し、それを囲むように垂直に交わった菱形とそれを囲う四角形……それぞれの頂点にはこれも縁に術式の書かれた円の内側に蜘蛛の巣? 召喚魔法陣!?)
その考えは正しく、スノーホワイトの魔法陣から燃え盛る火の鳥が現れる。それと同時に一際大きな紫電が落ち、フェイトちゃんを飲み込んだ。そして、そのフェイトちゃんを助けようとしたなのはちゃんのレイジングハートを、あの仮面の人が掴んでいた。
「……者権……レイジングハート、ジュエルシード放出」
『……Put out』
「えっ……!」
それを遠目で見ていたユーノくんが驚く。何故なら、((レイジングハートが|・・・・・・・・・))((仮面の人の|・・・・・))((指示に従い|・・・・・))、ジュエルシードを中から出したからだ。
仮面の人は取り出されたジュエルシードを全て掴むと、僕たちの目の前にいる火の鳥を呼び寄せてすぐにどこかへと転移した。
なのはちゃんは一瞬ジュエルシードを盗られた事に驚いたものの、彼が転移したのを見てすぐに海中に沈んだフェイトちゃんを助けに行った。
(くそっ……)
僕は、唇を強く噛み締めるしかできなかった。
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なのは VS フェイト | ||
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