少年達の挽歌 日韓戦争編 第六話 |
第六話 吉林攻略作戦
小野寺上等兵は野戦昇進で兵長になり二〇九高地の戦いで壊滅した第二七歩兵連隊は再編成されて新たな第四小銃分隊の副長に任命された。
UH−1J改汎用ヘリで最前線にある配属先の部隊に向かう中、あることを思い出していた。
第四小銃分隊の分隊長は宮本清吾曹長という男で、世間では五十嵐裕也大尉に次ぐ人気を誇っていた。
彼の家は元々武士の家で、新聞に掲載していた写真には銃剣突撃の時に代々から受け継がれていた日本刀を振るって突撃する姿が写されて有名になり、『切り込み隊長』と呼ばれていた。
この小隊長の下で働くことに最初は驚いたが、今ではどんな人物かと興味があった。
機内から外を見渡すと一面の雪景色に変わっており、前線では凍傷などに注意するように命じられていた。
数十分後ヘリは吉林市から五十キロ離れた宿営地に着陸して、小野寺は自分の装備と小銃を持って降りる。
すると目の前に迷彩服三型に日本刀を帯刀したアンバランスな姿をした兵士が立っていた。
「君が小野寺兵長だな?」
俺はアンバランスな姿に戸惑いながらも返事を返す。
「はっ!小野寺魁人兵長であります。」
「俺が『切り込み隊長』こと宮本清吾軍曹だ。よろしくな。」
紹介を終えて握手するとすぐに部隊のテントに案内されて、他の隊員との紹介を終える。
そのあと装備を置いてテントにある電気ストーブの前で暖を取っていると、懐かしい声が聞こえた。
「小野寺!お前が第四分隊に配属と聞いてな。」
隣にある簡易ベットに座ったのは新海兵長だった。
久々の再開に喜び、自分がいない間に起きた話を聞いていた。
新海兵長は二〇九高地の戦いのあと軍曹に昇進し、戦死した前田軍曹の後任に第六小銃分隊の分隊長になったらしい。
「すみません!ここは第四小銃分隊ですか?」
するとテントの入口の方から声が聞こえ、振り返る。
そこには自分よりも年下に見え、あどけない顔の男が多くの装備を抱え立っていた。
「そうだ、お前は?」
「はい!今日から第四小銃分隊に配属になりました新海力一等兵です。」
名前を聞いた新海兵長は振り返り、顔を見てとても驚いた顔をしていた。
簡易ベットから立ち上がって、近づいて行くと新海一等兵も驚き、恐れていた。
「力、なんでここにいるんだ!高校はどうした!」
「ご、ごめんお兄さん!だけどお兄さんだけ行かして心配で・・・。」
この会話で二人が兄弟だと悟り、さらにある矛盾に小野寺兵長は気がついた。
「軍は“兄弟は一方のみ入隊を認める”と言ってなかったか?」
すると隣にいた宮本曹長がその問いに答える。
「この戦争は物量戦だ。人員の足りない国防軍は人員確保になりふり構ってられないんだろう。」
すると会話が終わり、新海兵長は泣きながら小野寺兵長と宮本曹長に頭を下げて頼み込んだ。
「お願いだ、弟を生き残らせてくれ。頼む。」
それから五日後総攻撃が始まった。
早朝の朝、雪に覆われた地面に匍匐前進で白色外衣を羽織った第四小銃分隊の面々がいた。
敵は町の郊外に作られた要塞を撃破され、代わりに周囲に塹壕が掘られていた。
宮本曹長が時計を見ると総攻撃開始まで数分しかなかった。
「総員、着剣。」
兵士達は一斉に銃口辺りに銃剣を取り付け、宮本曹長は鞘から白光する日本刀を抜く。
そんな中、小野寺兵長は新海一等兵に言う。
「俺の後ろに付いていろ。」
「了解しました。」
総攻撃開始時間になり、遠くから砲撃音が聞こえ頭上を砲弾が風を切る音が聞こえた。
砲弾は町の至るところに着弾して建物などを吹き飛ばし、地面を震わす。
さらに空軍の爆撃機が俺たちから遥か高空から大量の航空爆弾を投下する。
町中が黒煙と炎に包まれ、砲撃が止むと共に突撃ラッパが鳴り響き、各分隊長の指示で一斉に兵士達が立ち上がり突撃する。
「突撃!」
宮本曹長が叫ぶと、第四小銃分隊の面々は一斉に立ち上がり塹壕に突撃する。
韓国兵は機銃や迫撃砲が砲撃で潰され、効果的な火網が形成できずにいた。
すぐに宮本曹長が塹壕に飛び込み、中にいた韓国兵の喉に突き刺す。
続いて小野寺兵長が目の前にいた韓国兵の胸に銃弾を撃ち込み、飛び込むと宮本曹長に言った。
「敵は防弾チョッキをしてなさそうです。」
「わかった、俺は右側をやる。」
宮本曹長は銃剣を付けたAK−102で突撃してくる敵兵の突きをかわすと背中を逆袈裟斬りで斬る。
斬られた傷に沿って血が噴出す。
小野寺兵長は曹長の素晴らしい剣術に呆れつつも、目の前にいる敵を倒していく。
新海一等兵は小野寺兵長の後ろに付いて来ていると、目の前に敵兵が現れ即座に十七式小銃を構える。
だがいざ引き金を引こうと思ったときに躊躇してしまう。
すぐに気付いた小野寺兵長が新海一等兵を退かして敵兵に銃撃を加え倒した。
「最初は躊躇するが、だんだん慣れるさ。」
「はい。」
新海一等兵が立ち上がるのを見て、再び小銃を構えると小さく呟いた。
「人間に戻れなくなるが。」
塹壕を片付けると、とうとう町に入り込んだ。
第四分隊は同じ小隊の第三分隊と共に釜山と同じように十式戦車を先頭に進むが、なかなか敵とは出会わずにいた。
上空では空軍が航空優勢を固めて次々と地上にいる機甲兵力を潰している。
「静か過ぎる。」
宮本曹長がそう呟いた次の瞬間何処からともなく対戦車誘導弾が白煙を吐きながら高速で戦車上面を貫いた。
戦車内部にあった砲弾に誘爆して大小の破片が飛び散り周囲にいた兵士達が負傷する。
すると一斉に周囲の建物から雄叫びと共に多くの韓国兵が飛び出して来るのが見えた。
「すぐに防御陣形を取れ!」
宮本曹長は9mm機関拳銃を構えて迫り来る敵兵に銃弾を浴びせる。
各人は崩れた建物の瓦礫を盾に、銃撃を加えて接近を食い止める。
「くそ!孤立させるのが目的だったのか。」
小隊長は通信兵を呼び、近くの部隊に救援を求めるように命じた。
だがどの部隊も同じように攻撃を受け包囲されていると聞くと航空支援を要請した。
通信兵が上空にいる戦闘機と通信を開いた。
「こちら第二小隊、D8区にて敵に包囲されてます。退路の確保の為空爆を要請します!」
《こちらアレス1、了解。目印を教えてくれ。》
「了解。」
通信兵は近くにいた兵士に命じて発煙手榴弾を投げ込ませた。
我々と敵兵の中間地点に落ちた発煙手榴弾は、白い煙を吐き出した。
「白色の発煙手榴弾を投げた。そこから南の方の通りを空爆してくれ。」
《了解。》
すると一機のF−5B戦闘機が高速で飛び去ると、二発の通常爆弾を正確に敵兵のいるところに投下する。
韓国兵は爆発に巻き込まれ、体中火達磨にされたり体がボロボロになった兵士がいたがすぐに楽にした。
「総員、後退しろ!」
命令と共に援護を受けて一部の兵士が撤退する。
新海一等兵が立ち上がったとき一発の銃弾が彼の胸を貫く。
背後で倒れる音が聞こえた小野寺兵長はすぐに彼の装備を掴んで体ごと引張り瓦礫の傍に横にした。
すぐに衛生兵を呼ぶ。
素人でも血の量と出血の仕方からして肺をやられた事がわかった。
銃創から空気が漏れる音が聞こえ両手で塞ぐが出血は止まらない。
だが諦めない兵長との約束があると思い。
「くそ、これはだめだ。」
傷を見た衛生兵はそう言ったのに対して、小野寺兵長は怒った。
「お前衛生兵だろ!どうにかしろよ!」
すると傍に宮本曹長が滑り込んできた。
「韓国兵が迫っている!急いで後退しろ!」
「しかし!」
すると新海一等兵は小野寺兵長の手首を掴んで、振り向かせた。
「兄にこう言ってください・・・一緒に暮らせて・・・よかったと。」
そう言って首をうな垂れて、呼吸が止まった。
「急げ!小野寺!」
小野寺兵長は涙ながらに彼の首から認識票を取ると急いで後退した。
だが発射されたロケット弾が近くで炸裂して吹き飛ばされる。
すぐに味方が俺を引き摺りながら後退する時に違和感に気付いた。
音が片方からしか聞こえず、左目に急激な痛みが感じ視界が半分になっていた。
俺は悟った、左目と左耳が使い物にならなくなったことを。
それから小野寺兵長は後方の軍病院に搬送されたあと本土の中央病院に運ばれ、彼の戦争は終わった。
しかし本当の戦争はこれからだった。
【後書き】
少し間が空いてすみません。高二最後の定期テストで更新が遅れました。
最近暖かくなりアーチェリーをするには絶好の時期になりますが、あともう少しで高三。
私立一貫校で長い間いたこの学校にもあと一年で卒業となります。
最後に何かしたいと思い生徒会選挙の選挙管理委員になってみたりしている。
さて次話は彼らの戦後の生活を書いていこうと思います。
説明 | ||
IS二次小説『学園の守護者』のサブストーリー。 少年達が虐げられるISの世界で彼らは様々な理由で戦争に赴く。 小野寺魁人の配属された部隊『第六小銃分隊』を通してISの世界の戦争、日本の社会を映し出していく。 |
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コメント | ||
あと六年間も同じ学校にいるとなんだか愛着と言いますか、わかりませんがそうしたくなっちゃいます。(BarrettM82) 設定上は終戦後すぐに作られた国防軍は旧陸軍と米陸軍の両方の流れを汲んだ日本国国防陸軍ですからね。(BarrettM82) 旧日本軍の太平洋戦争の一シーンみたい・・・。それと、学校に何かしてあげたいと思う心を持てるのが羨ましい・・・(F-15eagles) |
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